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伊藤ほほほ
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Novels by 伊藤ほほほ

老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~

老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~

ノブルス子爵家の長女マーガレットは、幼い頃から頭の回転が早く、それでいて勉強を怠らない努力家。 婚約者も決まっており、相手はなんと遥か格上の侯爵家で、王都で噂されるほどの美貌の持ち主らしい。田舎貴族のノブルス子爵家にとって、奇跡に等しい縁談であった。 そして二人は結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ……と、なればよかったのだが。 新婚旅行の当日、マーガレットは何者かに殺されてしまった。 しかし、その数日後、マーガレットは生き返ることになる。 全財産を使い、蘇りの秘薬を購入した人物が現れたのだ。 信頼できる仲間と共に復讐を誓い、マーガレットは王国のさらなる闇に踏み込んでいく。
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Chapter: 77.愛する人たちのいる場所で
――それから五年後。 バロンブルグ王国は、かつてないほどの活気に満ちていた。 王都の大通りには新しい店が並び、地方と王都を繋ぐ街道はよく整えられ、人と物の流れは以前とは比べものにならないほど滑らかになっている。各地の騎士団詰所には改良された通信装置が置かれ、緊急時の連携も早くなった。職人たちは新たな仕事に恵まれ、商人たちは国の未来を語り、平民も貴族も、この国はこれからもっと豊かになるのだと信じていた。 その繁栄の中心に立つのは、アスリー・レイ・ギルフォード国王だった。 即位から二年。 あの方は、口にした通りの王になった。 民を見下ろすのではなく、近くで見ようとする王。必要とあれば泥のつく仕事も引き受けるくせに、その手でちゃんと明日を示してくれる王。 バロンブルグ王国はいま、愛によって治められている――そう言えば大袈裟かもしれない。けれど、少なくともマーガレットには、それ以外にうまく表す言葉が見つからなかった。 その国政を支える柱の一つとして、いまやファーブリック公爵家の名も広く知られている。 事件の後、ダグルドは第二王子派を支え抜いた功績と、その後の王政改革への尽力を認められ、公爵へと陞爵した。さらに、エンヴィが再び立ち上げた工房と機械開発、それを支えるファーブリック家の後ろ盾は、国の経済を大きく押し上げることとなった。 そしてその流れの中で、マーガレットもまた、自分の立場を確かなものにしていた。 表向きの肩書きは公爵家夫人。 けれど実際の彼女は、それだけではない。 人と人、家と家、商会と貴族、王城と地方。表に見えるものと、まだ表に出ていないもの。その間にある流れを見極め、繋ぎ、時には危険の芽を先に摘む。 女だからと軽んじられたことも一度や二度ではないが、それでも今では、困り事を抱えた者が「まずはマーガレット様に」と口にすることも増えていた。 彼女はもう、守られるだけの令嬢ではなかった。 自分で選び、自分で立ち、自分の名で生きる人間になっていた。 そんな日々の中でも、今日ばかりは仕事のことを考える余裕はない。 ファーブリック公爵家の私室。陽だまりの落ちる広い部屋で、マーガレットは深く息を吐きながら、ゆったりとした椅子に腰掛けていた。丸みを帯びた腹にそっと手を当てる。出産を間近に控えた体は重
Last Updated: 2026-06-26
Chapter: 76.私の名で、歩いていく
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Last Updated: 2026-06-25
Chapter: 75.あなたと生きる未来
 ノブルス家との再会を終えた夜。  平民街の小さな家には、久しぶりに穏やかな静けさが満ちていた。 窓の外では、夜風に揺れた木の葉がささやくような音を立てている。遠くで犬が一度だけ吠え、また静寂に戻った。戦いの最中には気にも留めなかった、ありふれた夜の気配だ。 マーガレットは二階の自室で、姿見の前に座っていた。 今日の涙の跡はもう消えている。けれど、胸の奥にはまだ、家族に抱きしめられたときの温かさが残っていた。死んだと思われていた娘が戻ってきたのだ。喜びも、戸惑いも、悲しみの余韻も、全部が入り混じっていた。  そしてそのどれもが、今の自分を確かに“生きている者”にしてくれている。 鏡の中の自分を見つめていると、控えめなノックの音がした。「マーガレット。起きてる?」 エンヴィの声だ。「ええ」「少しだけ、話してもいい?」 少しだけ、という言い方が妙に彼らしい。  マーガレットは小さく息を吐き、立ち上がって扉を開けた。
Last Updated: 2026-06-24
Chapter: 74.帰る場所、残るもの
 第一王子カイセルの失脚が公にされると、王都の空気は一変した。 それまで水面下で繋がっていた夫人会の残党は、潮が引くように静かになった。もっとも、静かになったからといって罪が消えるわけではない。ダグルド侯爵家の一室では、その後処理が着々と進められていた。 大きな机の上には、夫人会に属していた女たちの名と、ヴェルン商会との接点を書き出した紙が並んでいる。モルガン夫人が捕らえられたあとも残っていた緩い繋がりは、思った以上に広かった。  ただ、その性質はさまざまだ。 深く関わり、実際に細工や連絡役を担っていた者。  名だけを貸し、流れに乗っていただけの者。  何かおかしいと感じながら、立場を失うのが怖くて目を逸らしていた者。 全てを同じ重さで裁くべきではない。そう判断したのは、ダグルドだった。「罪の軽重を見誤れば、また同じことが起きる」 青い瞳を細め、彼は紙の束を前にそう言った。「恐れから沈黙した者と、積極的に手を汚した者を同列に並べるのは違う。見せしめだけで終わらせれば、残るのはまた怯えた沈黙だ」 その言葉に、マーガレットは静かに頷いた。
Last Updated: 2026-06-23
Chapter: 73.王冠から零れ落ちるもの
 第一王子カイセルの微笑が、ついに消えた。 小謁見の間に満ちていた空気は、もはや社交の場のものではない。誰もが息を潜め、ただ次の言葉を待っている。  拘束されたグラウス、ヤーサック男爵夫人、ベルトラン。彼らの視線は泳ぎ、主の顔色をうかがっていた。だが、今この場で彼らを救える者は、もはや誰もいない。 アスリーは一歩前へ出たまま、兄を見据えていた。「兄上。まだ続けるか?」 カイセルは返事をしなかった。  代わりに、ゆっくりと周囲を見回す。ダグルド侯爵。クリス。エンヴィ。リシェラ。最後に、マーガレット。 その視線が彼女に止まった瞬間、かすかな憎悪が滲んだ。「……死んだ女が、よくもまあ」 低く零れた言葉に、部屋の温度がさらに下がる。 だが、マーガレットは怯まなかった。「死んだ女だからこそ、見えるものがあります」 静かに返すと、カイセルは鼻で笑った。「見える? お前に?」
Last Updated: 2026-06-22
Chapter: 72.崩れる王子の微笑
 その場にいた三人の身柄が押さえられても、小謁見の間の空気は緩まなかった。 ヴェルン商会の番頭グラウスは騎士に腕を取られたまま、脂汗を浮かべている。ヤーサック男爵夫人は顔色をなくし、今にも椅子へ崩れ落ちそうだった。第一王子近習ベルトランだけは、なおも平静を装っていたが、その唇はわずかに引きつっていた。 アスリーは立ったまま、冷えた目で三人を見下ろす。「まだ兄上のお名前は出てこないか」 その問いに、誰も答えない。 だが、マーガレットには分かっていた。ここから先が本番だと。  慈善会の細工を示し、商会と夫人会と近習の線を並べた。だがそれだけでは、第一王子本人へまでは届かない。向こうはきっと、配下が勝手にやったことだと言い逃れるだろう。 だからこそ、ここから先は一段深く刺さなければならない。「殿下」 マーガレットがアスリーを見た。「兄君をお呼びください」 小謁見の間が静まり返る。 ダグルドが、低く息を吐いた。
Last Updated: 2026-06-21
異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜

異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜

技術革新により、超長距離ワープが可能となった日本では、別の世界に行けるようになっていた。 ワープの際に肉体が変質し、スキルと呼ばれる特殊能力に目覚めることが判明した。 別世界での冒険を配信する異世界配信が流行し、 若者達は有名配信者を目指した。 ―――――――――――――――――――――――――― 勇太のセリフは、滑舌が悪いため※で翻訳しています。
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Chapter: 決意
 ベッドで横になればすぐに眠れると思った。  目を瞑れば楽になれると考えていた。  部屋に戻ってきた時は、頭の中が真っ白だったのに。  その白は、白い文字の塊だった。  少しずつ脳が冷えてくると、パズルが崩れるように今日の会話が蘇ってくる。  言葉のピースが溢れてくる。  どれだけ試しても、決して完成しないパズルだ。  途端に思考の渦に飲み込まれた。 ナタリアの友達は、魔王ディアブラ・サイクスだった。  魔王は、ナタリアと結婚する為に誓を立てた。  俺が魔王と戦うまで、この世界は平和である。 そこに、新しいピースが加わる。  この世界に来てからの会話、見た景色、食べ物、色々な思い出が混ざりあって、頭の中がぐちゃぐちゃになる。  もう眠りたいのに。  俺の頭はそう言っている。  でも、心がそれを許してくれない。  パズルを完成させろと急かしてくる。 王様と出会い、ランデルと冒険に出た。  初めて見た魔法はとても美しかった。  ミノタウロスに殺されかけた。  四天王の一人、狂乱の一角獣ライトニングビーストを倒し、世界が平和に近づいた。  そして、アルに出会った。  優しさ、怖さ、愛らしさ、アルという最愛の人を知った。  そして、ナタリアという天使が産まれた。  ネフィスアルバが死に、闇皇帝が消えた。  魔王さえ倒せば、この世界は平和になる。 もう分かっている。  あと一つピースをはめればパズルは完成する。  公園で魔王が契約をした時点で気付いていた。  ただ、考えたくなかっただけだ。  早く眠らせて欲しい。  この苦しみを和らげたいだけなのに。「ただいまー!」 ナタリアが帰ってきた。  目に入れても痛くない、俺の天使。「にゃちゃりあ、きょっちにおいぢぇ?」 ※ナタリア、こっちにおいで?「どうしたの?」 首を傾げたナタリアが、不思議そうに歩
Last Updated: 2025-05-12
Chapter: 再会
「あたし! あ、あたしは……ディーは初めて出来た友達だし、その……あたしも好きだけど……でも、まだ結婚とかは違うと思う。それに、あたしはダディより強い人がいいなって」「ふむ、そんな簡単な事でよいのか。|勇者よ《・・・》、お手並み拝見だのう?」 ディーが右の口角を歪め、邪悪な笑みを浮かべる。  小さな体から漆黒のオーラが解き放たれた。  それは渦を巻き、龍がうねるかのように立ち昇っていく。  膨大な闇が衝撃波を発生させ、大地が砕け散る。  ナタリアは咄嗟に後ろに飛んで回避したようだが、俺はそうはいかない。  竜巻に巻き込まれたかのように吹き飛ばされ、|錐揉《きりも》み状に|捻《ねじ》れた全身の骨がメキメキと音を立てて折れていくのが分かった。  空に投げ出された俺は、痛みと共に目の前が暗くなっていくのを感じた。 終わった……。 そう思った時、後頭部に感じたポヨンと柔らかな感触が意識を繋ぎ止めた。  誰かに抱き留められたようだが、どうやら俺は死ぬ寸前らしい。  目を開けることすら出来ない。 抱き上げられたまま地上に着地すると、口に何かが入ってくる。  カレーのようなスパイシーな香りだ。  その臭いで脳が覚醒した。  何かを思い出したかのように喉が動き、その液体を飲み込もうとする。  あまりの不味さに体が拒否反応を起こし、吐き出したくなるが、そんな力すら残されていなかった。  ただゆっくりと、俺の体に染み込んでいくのが分かった。 なんだか体の調子が良くなった気がして目を開けると、涙を浮かべて俺の顔を覗き込むアルがいた。  俺はアルに助けられたらしい。   「私もナタリアちゃんのお友達が気になっちゃいましたっ。ナタリアちゃんを探してたら、パパが飛んで来てびっくりしたんですよっ! えへへっ」「ありゅ……」 ※アル…… 胸が締め付けられるような気持ちになり、俺はアルを抱きしめた。  アルの柔らかさが、体温が、生きている事を実感させてくれた。 すぐにナタリア
Last Updated: 2025-05-11
Chapter: このガキ、いっちゃっていいすか?
「にゃちゃりあしゅみゃにゃい! おりぇは……」 ※ナタリアすまない! 俺は……「ダディ、何してるの? あ、ディーを紹介するね! この子、あたしがダディやママと一緒に居ると、恥ずかしくて会いに来れないみたいだから!」 コメントから散々脅されていたので全力の謝罪をしようと思ったのだが、ナタリアは気にしていない様子だ。  それどころか、ディーと話す機会をくれるらしい。 ナタリアに話しかけられたディーは、表情に不満を浮かべて嫌がっている。  ナタリアに腕を掴まれたディーは、観念した様子で俺の前にやって来た。「ひゃじみぇみゃしちぇ。にゃちゃりあにょぴゃぴゃぢぇしゅ」 ※初めまして。ナタリアのパパです「うむ、話には聞いている」 ……それだけ? この少年は、挨拶をしたら挨拶を返すという礼儀を知らないのだろうか。  自己紹介をされたら自分も返すという当然の事が出来ないのだろうか。  ナタリアがディーを紹介するという事は、俺やアルと一緒の時にも会いに来て欲しいという表れでもある。  それほどに、ナタリアは初めて出来た友人を大切に思っているのだろう。 握りしめた俺の右手がプルプルと震えている。勇太:さて、一発くれてやりますかね。 コメ:ナタリアちゃんより強いディーに? コメ:一発貰うのはお前だけどなwww コメ:尾行がバレた上に、ガキにボコボコにされる情けない父親の姿を見せたいのか?w コメ:とりあえず会話を広げようぜ?「じーきゅんは、きょにょちきゃきゅにしゅんぢぇりゅにょ?」 ※ディー君は、この近くに住んでるの?「さあな」 ……さあな? 俺は、「はい」か「いいえ」で答えられる簡単な質問をしたはずなんだけど。  まさか斜め上の回答を貰うとは思わなかった。 二人で楽しく遊んでいた所を邪魔してしまったのは、俺が悪いと思う。  ディーが機嫌を損ねても仕方ないだろう。  でも、今後ナタリアと友達として付き合っていくのなら
Last Updated: 2025-05-10
Chapter: ナタリアの友達
 ついに街に入った。  建物の影に隠れたり、|塀《へい》に張り付いたりしてナタリアの後をついて行く。「おじさんおはよう! 後で買いに来るかも!」「おっ、ナタリアちゃん! お出掛けかい? 今日はサンドリザードのいい肉が入ったから楽しみにしてな!」 ナタリアと屋台のおじさんが親しげに会話している。  おそらく頻繁に買い物をする店なのだろう。  対象の行動パターンを把握するのに重要な情報を手に入れた。勇太:こちらアルファー、サンドリザードの串焼きが食べてみたい。 コメ:ブラボー了解。腹ペコ名探偵は任務を続けろ。 コメ:デルタ、ナタリアたんが可愛い!【一万円】 勇太:デルタありがとう! コメ:もういいってそれ!w 城から街の外まで続く真っ直ぐな大通りを、|遮蔽《しゃへい》に隠れつつ慎重に尾行を続けていく。  すると、何かに気づいたナタリアが建物の角を曲がって路地裏に入った。  俺は、その建物の壁に背中をつけ、片目だけ出して様子を確認した。  そこには、手を振ってナタリアを呼ぶ少年の姿があった。 おそらく、アレがディーという俺の娘についた虫だろう。  ナタリアと同じく中学生くらいの年齢に見える。  センター分けの短い銀髪は清潔感を感じさせ、大きなライムグリーンの瞳が美しい。  闇皇帝に匹敵する整った容姿をしている。  少し吊り上げた口角がニヒルな笑みを作り上げ、白いシャツに白いパンツが王子様のような雰囲気を出している。コメ:イケメンやんけ! コメ:美男美女のカップルだね。 勇太:みんなには、あの男がまともに見えるんですか? 名探偵ユートルディスしか気付いてないのか? コメ:どういうこと? コメ:爽やかな好青年て感じだが。 勇太:シャツのボタンを二つも外して胸元を|曝《さら》け出してる。アレは不良だ! コメ:勇太くんて、すげえ馬鹿なんだねw コメ:言い掛かりで草 ディーの元にナタリアが駆け寄る。  ディーは、ナタリアが上から手を乗
Last Updated: 2025-05-09
Chapter: 尾行
 魔王の調査が始まってから三週間が経過した。 ダメ元でやってみた商品紹介は大不評だったし、城下町探索ツアーも二日で飽きられた。  特にイベントが起きない城での配信は、企画力の無い俺にとって厳しいものであった。  アルとナタリアのファンだけが残り続けてくれている。  あの二人がキャスターだったら、花のある配信になるのだろうが。 以前アルは、産まれてから一カ月で大人の姿になったと言っていたが、ナタリアは少し背が伸びたくらいでそんなに変わっていない。  愛らしい少女のままだ。  俺とアルの子供なので、ここからは人間のようにゆっくりと大人になっていくのかもしれないとアルが言っていた。  親としては、成長を見守れるので嬉しい限りだ。 成長といえば、教育ママと化したアルが、ナタリアにお金の使い方を覚えさせるべきだと言い出した。  金貨を渡して好きに買い物をさせれば、金の価値が分かるようになると。  人間の世界で暮らすナタリアにとって、知らない人と接する事も重要であり、俺やアルが近くにいない状態で色々と経験させるべきだというのが、アルの意見だった。  俺は、一人で行動をさせるのは危ないのではないかと心配したが、プァルラグを瞬殺するナタリアに何か出来るような人間がいる訳がないと説得された。  そんなこんなで、ナタリアは一人で出かけるようになり、寝る前に彼女が何を経験したのかを聞くのが日課となった。 驚くべき事に、初めて買い物に出かけたナタリアは、その日の内に友達を作って帰ってきた。  同じくらいの身長で、ディーと名乗る男の子だという。  道端で腹を空かせて|蹲《うずくま》っていたディーに、屋台で買った肉串を分けてあげたのがきっかけで仲良くなったらしい。  彼はいつも一人らしく、おそらく孤児だと思われる。  ナタリアが一人で外出すると、必ず声を掛けてくるみたいだ。  俺やアルと一緒にいる時は姿を見せない不思議な少年である。  毎日のように二人きりで遊んでいるらしい。 友達が出来たのは喜ばしいのだが、俺としては見過ごせない状況である。
Last Updated: 2025-05-08
Chapter: 魔王捜索
 四時間くらい空の旅を楽しんでいたら、空が暗くなる頃にジャックス王国に到着した。  明日の朝、今後についての会議をするらしい。 俺達家族にはベッドが四台ある城の客室が割り振られていたようで、部屋に入るとアルとナタリアが笑顔で抱きついてきた。「パパっ! お帰りなさいっ!」「ダディお帰り!」 愛しい家族の頭を撫でまわし、俺は鎧を脱いだ。  その動作が、物語に出てくる|一仕事《ひとしごと》終えて家に帰った騎士のように思えた。  自分とはかけ離れた別の人間になった気がして、少し歯痒かった。 少し疲れたのでベッドに横になった。  すぐさま布団を掻き分け、ナタリアが潜り込んでくる。  あっという間に俺の右腕が枕にされてしまう。  二の腕にほっぺたの柔らかさを感じた。 嫌な予感がする。  アルを見ると、悪戯を考えている子供のような表情を浮かべていた。「私もっ!」 アルがベッドに飛び込んできた。  俺の体は押しつぶされ、車に|轢《ひ》かれた蛙のような情けない声が漏れる。  俺の左腕も枕にされてしまった。  頭を擦り付けてくるので、角が当たって痛い。  二の腕の皮が|捲《めく》れていなければいいのだが。「ねえダディ、闇皇帝はどうだった? どうやって倒したの?」「しりゃにゅいぢぇいっしゅんぢゃっちゃよ」 ※|不知火《シラヌイ》で一瞬だったよ「えぇー! やっぱりダディは強いんだね! 闇の中のドラキュリオはママでも勝てないって聞いてたから、少し不安だったんだよね」「ナタリアちゃん、パパは誰にも負けまちぇんよっ!」コメ:不知火なんて使えねえだろ!w コメ:子供の前でカッコつけようとすんなwww コメ:判決を言い渡す。美女独占罪で死刑! コメ:ナタリアたん可愛いんじゃあ【二万円】 コメ:僕はアルちゃんに一票!【一万円】 コメ:羨ましくてムカつくから勇太に不知火食らわせたるわ。で、不知火ってどうやんの? コメ
Last Updated: 2025-05-07
闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい

闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい

女神によって異世界へと送られた主人公は、世界を統一するという不可能に近い願いを押し付けられる。 分からないことばかりの新世界で、人々の温かさに触れながら、ゆっくりと成長していく。
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Chapter: 旅路へ
 ヨールとして冒険者にになり、3年が経った。 今ではオリハルコンランクの2級。名ばかりで何もできなかった頃から考えると、随分と遠くまで来たもんだ。気がつけば、上級冒険者として名簿に名を連ねるようになっていた。 人族の国『ヒューマニア』に点在するダンジョンは、ほぼすべて踏破した。命を削るように戦い、身ひとつで切り抜けてきた。貯金もそれなりにできたし、生きていく上での不安はもうない。 ――やっと、次に進める。 旅の最初に立てた目標は、世界平和。笑われるような理想だった。薄暗いボロ宿で一人、シミだらけの汚い天井を眺めながら、どうやって世界を統一しようか……なんて、一生懸命に考えていたあの日が懐かしい。  でも、それはただの夢じゃない。俺がこの異世界に飛ばされた理由は、世界を一つにしなければ元の世界に帰れないからだ。 次に目指すのは、獣人の国『ビーストリア』。 人族とは何世代にもわたり対立してきたと聞く。けれど、俺には失うものも、守るものもない。その分、恐れずに飛び込める。冒険者という立場が、せめて対話のきっかけになればいい。 まずは向こうの冒険者たちと関係を築こう。共に依頼をこなし、実力を認めてもらえれば、やがては国の中枢に声が届くかもしれない。急がない。
Last Updated: 2025-05-11
Chapter: 最強の肉体 side健崎 加無子
 戦斧と盾を置き、岩山を駆け登っていると、ロックリザードが懲りもせず襲いかかってきたが、噛みつきをバックステップで避け、ハンマーのように右手を脳天に叩きつけると岩のような表皮は砕け、頭蓋を砕く音が聞こえ、ロックリザードは舌を出してぐったりと力なく倒れた。回収する数が増えてしまったけどラマツンがいるから大丈夫だろう。 2体のロックリザードを回収すると、山間を薄いオレンジ色に染め上げながら太陽が昇ってきていた。そろそろラマツンも交代しているだろう。地面を慣らすように尻尾を持ってトカゲを引き摺りながら大急ぎで岩山を降りた。 門に近づくと、ラマツンと交代した門番が目を丸くしながら口をあんぐりと開けていた。「ラマツン、行くよ」「よ、よし行くか。回収したやつはアジャが見てくれるから、門の横に並べておこう」 交代した門番はアジャというらしい。ラマツンよりも小さいが「お、おいラマツン。その怪力の女の子は彼女か?」「ラマツンは僕の手下」「そう、私はケンザキ様の下僕……って違うだろ!」「行くぞ我がラマツン」「だから違うって! 武器は持っていかないのか?」 無視して山を登り始める。ラマツンはやれやれと首を振っているが、僕は早く終わらせて寝たい。 上から順に回収していく。一往復で大体1時間半くらいかかり、僕が2体、ラマツンが1体の計3体だと7往復で終わる計算だ。 3往復し、4往復目に差し掛かるとラマツンが遅い。「ラマツン遅い」「ぜぇ……はぁ……少し休憩しないか?」「だからモテない」「な……!? やるよ、やりますよ!」 ラマツンが元気になったみたいだ。両頬を叩いて気合を入れているようだが、顔面蒼白で体調が悪そうだ。恐らくそれが巨人族の絶好調なのだと思う。 途中ラマツンがロックリザードに襲われた。武器を持っておらず、疲れから反応できていない様子だったので、飛び上がって
Last Updated: 2025-05-10
Chapter: ゴネ side健崎 加無子
「街に入りたい」 僕は今街の門の前にいる。門番が街の中に入れてくれなくて困っている。「だからダメだと言っているだろう! 夜間の門の開閉はゴールド級冒険者以上もしくは許可された者以外には出来ない!」 僕よりも背の高いメロンのように逞しい肩をした巨人族の門番がガミガミと怒っている。「ねえ、街に入りたい」「いつまで続けるつもりだ!」「街に入れるまで」「それでは朝になってしまうな」「じゃあそうする。街に入れて」「気でも触れてるのかこの娘は! 怪しい格好に怪しい言動、通せるわけがないだろう!」「じゃあ脱ぐ」 盾と戦斧を地面に置き、上着のボタンを1つ外す。「何をしている貴様! 服を着ていようが着ていまいが朝まで街には入れんのだ!」「僕を通さない、冗談も通じない。つまらない人」「な、なに……。この俺がつまらないだと!? よーし分かった。貴様はどうせ朝まで街に入れんのだ、門が開くまで俺が話に付き合ってやろう! 俺の名前はラマツンだ」「僕はケンザキ」 ラマツンは肩に担いでいた5メートルはあるだろうロングハンマーの先端を下にして地面に立てるように置き、腰に手を当てて仁王立ちになった。「ケンザキは冒険者なのか? 何故1人でゴールド級が依頼を受けるような場所にいる?」 返答に困る質問だ。なんて答えようか。「冒険者じゃない。岩トカゲを倒してた」「岩トカゲってロックリザードのことか? 南の森にいるストーンリザードではなくてか?」「ちょっと待ってて」 辺りは真っ暗で月明かりと星明かりしか頼るものがないが、何も見えないわけではない。盾を地面に突き刺し、岩山を駆け上がり、一番街に近い位置で倒したトカゲの尻尾を掴んでラマツンの元へ持って帰ってきた。「これ」「ロックリザードじゃないか! ふむ、確かにソロで倒すには骨が折れる相手だ。日が暮れてしまうのも頷けるな。ちなみに俺ならソロで1時間もかから
Last Updated: 2025-05-09
Chapter: お友達 side八王子 麻里恵
「じゃあこのリパッパデルコーサをお願いしまーす!」「かしこましましたー、こちらの席へどうぞ」 自信満々に注文したけどわたしは何を頼んだんだろう。日本円で1300円てまあまあの値段だったから失敗してないといいんだけど。 ウエイトレスさんが持ってきてくれた水は薄くピンクがかった色をしている。氷は入ってないけどひんやりと冷たい。「頂きます!」 あ、これ多分ワインを薄めたやつだ。アルコールはあまり感じないけれど、ほんのりと赤ワインの香りがする。「お待たせしましたー、リパッパデルコーサでーす!」 透けるように薄く切られた円形の巨大な大根で魚や色彩豊かな野菜が包まれてる。美術展に展示されていても気づかない程の完成された美しさに、ほぅと思わず溜息が出る。 木のナイフとフォークで食べるようだ。大胆に半分に切ると、中からソースがとろりと溢れ出し、同時にわたしのヨダレも溢れ出した。恐る恐る一口大に切り分けたそれを口に運ぶ。「うんまっ! なにこれー!」 これは当たりだ、大当たりだ。息つく間もなくぺろりと平らげてしまった。さて、デザートが気になりますねぇ。「ウエイトレスさーん、甘いものってありますー?」「こちらのゲロンデなど如何でしょうか?」「はーい、それにしまーす!」 名前は不吉な感じがするけど、このお店のならなんでも美味しい気がする。大丈夫でしょ。「こちらゲロンデになります」「はー……何これ?」「こちらゲロンデというカエルのモンスターの鼠径部付近の脂肪をギロングヤシの実からとれたミルクで味付けしたものになります」「な、なるほど……」 カエル……。ぶつ切りの白くてシワシワでぶにゅぶにゅした見た目の塊がココナッツミルクのような液体に浸っている。どうしようか、勇気を出して食べてみようか。えーい、いっちゃえ!「お、美味しい。美味しすぎる!」 甘みが強く酸味のある香り高いココナ
Last Updated: 2025-05-08
Chapter: 軍団 side八王子 麻里恵
「うわぁ……。大分増えちゃったなぁ」 わたしの目の前には187体のゴブリンが規則正しく整列している。更にまるおを含めた25体のスライムが私の周りでぴょんぴょん飛び跳ねていて、5体の体毛が全くないかわりに苔に覆われている猪が近くで寝ている。モスボアという名前らしい。フカフカの苔が日差しを浴びて温かくなっているので、寄りかかってソファー代わりにすると凄く気持ちがいい。何故モンスターの名前が分かったかというと。(ステータス) 八王子 麻里恵  レベル:17  属性:魔 HP:420  MP:1410  攻撃力:210  防御力:210  敏捷性:210  魔力:3600 スキル  ・モンスタールーム レベル1  ・モンスター合成 レベル1 魔法  ・テイム レベル2 このモンスター合成というスキル、例えばゴブリンを指定してみると。(ゴブリン30体を合成し、ボブゴブリンを作成しますか?) こんな感じに脳内に文字が表示される。テイムしたモンスターにしか使えないけど、これでモンスターの種類が分かるようになったってわけ。あ、テイムもレベルが上がって3000体までモンスターを従えることが出来るようになったよ。 で、ですね。何故仲間になったモンスター達を集めているかと言うと、どのタイミングでモンスター合成をしようかなって話なんだよね。スライムはどんどん合成していった方がいいとは思うんだけど、モンスターを見つけて来てくれるゴブリン達を合成するとかなり効率が悪くなるのよね。「キモスケ、キモジロウ、こっち来てー!」「「ゲギッ!」」 右手を挙げて返事をすると、2体のゴブリンが駆け足でやってきた。(モンスター合成) スキルを使用するとキモスケと他の29体のゴブリンが眩い光に包まれ、29体のゴブリンが丸い光の玉となりキモスケに集約された。 キモスケを包む光は徐々に大きくなり、霧散するように光が弾け飛ぶと、中からはゴムのよ
Last Updated: 2025-05-07
Chapter: 冒険者 side武藤 零ニ
 最初にこちらを威圧するような態度だったので高圧的な嫌なやつかと思ったが、中々話のできる良い奴そうだ。「俺も冒険者になりゃあ強くなれんのか?」「ははは、試してみるといい。良いパーティーが見つかるといいな」「1人じゃ駄目なのか?」「ふむ、パーティーを組めばより強いモンスターと戦える。ソロでダンジョンに挑む馬鹿はおらんしな。早く強くなりたいのであれば、仲間を探すべきであろうな」「そういうもんか、じゃあ俺も冒険者ってのになってみっかな! 強くなったら俺のパーティーにおっさんも誘ってやるよ!」「それは熊ったなー。ぶぁーっはっはっはっは!」「おいおっさん、つまんねえぞ!」「ぶぁーーっはっはっはっは!」 冒険者か、今は何より強くならなきゃいけねえしいいかもしれねえ。しかしパーティーか、よええのと組まねえように気をつけねえとな。街の中心に冒険者ギルドってのがあるらしいから、そこで登録すりゃあ誰でもすぐに冒険者になれるみてえだ。 頭の中でおっさんの話をまとめていたら閂の外れる音の後にゆっくりと門が開いた。クリスと……なんだありゃ、首の長え奴がいやがる。キリンの獣人か、あんなのになってたら生活に不便すること間違いなしだったぜ。「お待たせしましたー! 衛兵長のジラフォイですー!」 声高すぎだろ、しかもジラフォイってなんだよ。こいつ笑わせにきてやがんな!「あ、あぁ。こっちは待ってる間にそこのおっさんにいい話が聞けて良かったぜ。街には入れるのか?」「まずはテストをするフォイ! 合格したら入れてやるフォイ!」「ぶふぉ……くっ、くく……。そ、そうか」 このキリン野朗畳み掛けてきやがった。笑いを堪えてたとこにこの不意打ちは卑怯だろ。獣人てのはこんなのばっかりなのか?「ジラフォイ隊長、いい加減笑う奴はいい奴っていうテストはやめた方がよいのではないか? 意味がない気がするのだが」「今日はもう遅い、この狼獣人の子供も早めに宿をとっ
Last Updated: 2025-04-28
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