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第4話

Author: にゃー
その言葉に、全員が沸き上がった。

「鉄は熱いうちに打て、今日ここでプロポーズしちゃえよ!俺たち同級生みんなが見届け人になってやるからさ!」

海斗の表情が硬くなる。

「今日だって?いや、式もなければ、花も指輪もない。そんなのはあまりにも軽率すぎる」

景子は嬉しさのあまり涙を潤ませ、何度も首を振りながら、言葉を詰まらせた。

「海斗……あなたがプロポーズしてくれるなら、何もなくてもいいの。私、あなたと結婚できるならそれだけで幸せよ」

二人はお互いを見つめ合い、そこに熱い想いが溢れていた。

その光景を静かに見つめながら、凛音の胸には言いようのない痛みが走っていた。

こぶしを強く握りしめ、手のひらを爪で刺して血を流しながら、目の奥に寂しさがよぎった。

海斗が抱く、心からの愛がそこにあることは分かっていた。

たとえ自分と結婚した前世であっても、海斗の心には常に景子しか存在しないのだ。

かつての凛音は、独りよがりで身の程知らずだった。無理やり彼を手に入れ、時間をかければいつか海斗の心も自分に向くはずだと信じていた。

けれど今は違う。現実を思い知り、ようやく目を覚ましたのだ。

凛音が視線を向けると、海斗は景子を抱き寄せ、優しく囁いていた。

「お前はそれでいいと言うかもしれないが、俺は嫌だ。愛する女を中途半端なまま嫁がせるようなことはしたくない。30分だけくれ。すぐ手配する」

そう言うとすぐに秘書の久保晴人(くぼ はると)を呼び出し、式の準備を命じた。指輪や花、さらにはドレスとメイクの手配まで始めた。

居合わせた同級生たちも興味津々で手伝い、プロポーズに必要なものが次々と整えられていく。

式を前に、景子はカメラを手に取ると、隠し切れない得意げな顔で凛音の前に立った。

「お願いがあるの。頼んでいたカメラマンが来られなくなっちゃって。凛音は写真上手でしょ?私たちを撮影してくれない?」

ちょうどそれを見ていた海斗は、凛音には妨害する理由があるはずだと思い、止めに入ろうとした。

しかし、予想外にも凛音はそれを受け入れ、黙ってカメラを受け取った。

「いいわよ。精一杯、お二人の幸せな瞬間を撮らせてもらうわ」

海斗は驚きに動きを止めた。あの凛音がこんなにおとなしく従うなんて、信じられなかったからだ。

少し考えたあと、海斗は凛音にメッセージを送った。

【お前の望み通り、俺はお前と籍を入れた。だからこの先、景子を妻にすることはできない。景子がプロポーズを望んでいるから、その願いを叶えるだけだ。今日どれだけ嫉妬しても、絶対に邪魔はするな。もし景子に何かあったら、タダでは済まさないからな!】

その画面を眺め、凛音は声を出さずに微笑んだ。

二人の恋路に割って入ったせいで、一度死んだ身だ。また同じ過ちを犯すはずがない。

凛音は返信はせず、ただカメラを会場の中心へと向けた。

レンズ越しに、スーツ姿の堂々とした海斗がバラの花束を持ち、景子の前に歩み出て、片膝をつくのが見えた。

海斗はリングケースを開き、そっと景子の手を握りしめ、その瞳には尽きることのない深い慈しみが溢れていた。

「景子、出会った時から決めていた。4年間、お前との時間は人生で何よりもかけがえのないものだ。俺と結婚してくれ。一生かけて大切にするから……妻になってくれないか?」

その偽りのない真心と深い愛情のこもった告白が凛音の耳に届くが、心はどこか現実味を感じていなかった。

数歩先では、景子がプロポーズを受け入れ、指には輝くリングがはめられていた。

二人は抱き合い、海斗はその唇に口づけを落とした。

歓声と拍手が、いつまでも鳴りやまなかった。

凛音はその晩の幸せな様子をすべて記録し、最後の役目を果たした。

式が終わり、凛音は景子に歩み寄ってカメラを返した。

「おめでとう。長年の想いが、ようやく実を結んだのね……」

祝福の言葉を言い終える間もなく、会場に突然悲鳴が上がった。

何が起きたか理解するより早く、凛音は何者かの力で前に押し出された。

次の瞬間、凛音は倒れてきたシャンパンタワーにまともにぶつかり、血まみれになって床に倒れ込んだ。

冷たい酒と割れたガラスが全身を容赦なく襲う。

波のように押し寄せる激痛が、神経を引き裂いていく。

額から温かい血が流れ出すとともに、視界はかすみ、意識が暗闇へと吸い込まれていった。

重いまぶたを無理やり開けると、景子を抱きしめ、心配そうに見つめる海斗の姿が見えた。

「景子、大丈夫か? さっき凛音を突き飛ばして防いだが、怪我はないか?」

なるほど、自分は海斗に盾にされ、突き飛ばされたのだった。

凛音は真っ青な顔のまま、自嘲な笑みを口元に浮かべた。

そして微笑みながら、目からは冷たい涙がこぼれ落ちる。

この涙の跡こそが、意識が途絶える寸前まで感じていた、唯一の感覚だった。

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