Masuk甲高い金属音が、闘技場の空気を震わせた。
エレンの剣が、シイナの剣と噛み合う。ほんの一瞬、力が拮抗して止まる──と思った次の刹那、シイナの剣がぐにゃりと形を変えた。いや、違う。割れたのだ。一本だったはずの刃が、中央からするりと分離し、二本の剣へと姿を変えていく。 「むっ──!?」 エレンの喉から、短い驚きが漏れた。 鉄属性。魔力の続く限り、鉄そのものを生み出し、練り上げ、形を変える属性。生成系の中でもとりわけ扱いが難しく、使い手の技術と理解の深さがそのまま戦力に直結する気紛れな力だ。ただ鉄塊を出すだけの凡人と、刃を自在に変形させる達人では、まるで別物と言っていい。 ──もし自分に属性を扱う資格があったなら。 エレンは心のどこかで、この力を欲しいと思った。それほどまでに、鉄という属性は奥が深い。 思考は一瞬。二本に分かれた刃が、同時に振り下ろされてくる。 「っ──」 エレンは横薙ぎの一閃で、その二本をまとめて受け流そうとした。刃と刃がぶつかり、鈍い衝撃が腕に走る。受け止めた──その判断の直後、シイナの加速は止まらなかった。 一撃、二撃、三撃。 分かれた二本の剣が、交互に、時に同時に、容赦なく叩きつけられてくる。息つく間もない。シイナの黒いジャケットの裾が、動きのたびに鋭く翻り、両手のガントレットから伸びた刃が、闘技場の照明を冷たく弾いた。 (……鉄。やれることが、やたらと多い属性だ) 地面を一歩、また一歩と擦りながら、エレンは冷静に思考を回す。 (多くの者は、引き当てた時に嘆くと聞くがな) それも事実ではあった。遠距離では炎や風に及ばない。派手さもない。ただ鉄を生み出すだけの属性を、使いこなせぬままお荷物のように抱える者も多いと聞く。 ──だが、この男は違う。 近接戦闘に限って言えば、鉄属性は他のどの属性にも引けを取らない。むしろ、使い手次第では頭ひとつ抜ける。刃の形、長さ、重心、分離、再生。そのすべてを戦術に織り込めるのだから。 シイナは、まさにその域にいた。 二本の刃が雨のように降り注ぐ。エレンはそれを一つひとつ、確かな手応えで受け、弾き、いなしていく。金属同士が擦れ合う音、打ち合う音、火花が散る音が、断続的に闘技場を叩いた。 打ち合いの中で、少しずつ──ほんの少しずつ、エレンの剣筋が勝っていく。 受けが、受けで終わらない。いなしの動きの中に、次の一撃への布石が混じる。シイナの刃が叩きつけられた直後、その反動を利用して、エレンの剣先がひとつ鋭く伸びる。シイナが半歩、下がる。 (さすがに、シオン程の突破力はないか) 冷静な評価が、エレンの中で静かに降りる。あの風の傭兵の連撃は、受け続けること自体が試練だった。間のない嵐のような攻め。それに比べれば、この打ち合いはまだ、読める。 (……まぁ、あの男との戦いが、私を鋭くしたのかもしれんがな) 口の端が、ほんの僅かに持ち上がった。 刃と刃が噛み合った、その瞬間。 エレンの剣が、下から斜めに跳ね上がった。鋭い軌跡が銀の閃きを描き、シイナの刃の腹を的確に捉える。甲高い金属音とともに、シイナの剣の一本が、真上へと高く弾き飛ばされた。 「ちぃ──……!!」 シイナの舌打ちが漏れる。だが、その反応は早かった。弾かれた刃を追うことはしない。代わりに、空いた左手のガントレットから、新しい刃が一気に生成される。今度はやや小ぶりな短剣。右手に残った直剣と合わせ、長短二本による応戦が再開された。 リーチの違う二本。間合いの読みが、ひとつ難しくなる。 ──が、この程度ならば。 エレンは静かに構えを整え、打ち込まれる斬撃をひとつずつ捌いていく。直剣を半歩で流し、短剣の鋭い突きは最小限の角度で逸らす。攻め返しはしない。ただ、待つ。 「くそ……! エレンさん、守りが硬いですね……!」 歯を食いしばった声が、打ち合いの合間に飛んでくる。 「お前は、攻める力が足りないぞ」 エレンの応答は短い。刃を捌きながら、まるで稽古をつけてやるような口振りだった。 「はは……言ってくれるじゃないですか……! なら──!」 連撃の最中、シイナの左手の短剣が、不意に伸びた。 するすると、刃が根元から引き伸ばされるように形を変え、鋭い穂先を持った槍へと姿を変える。斬撃の応酬に、突きという選択肢が加わった。右の直剣、左の槍。攻め手の幅が、一気に広がる。 だが──。 (さん、に──) エレンの視線は、目の前のシイナを捉えたまま、僅かに別の線を追っていた。 先ほど、真上へ弾き飛ばした一本。 シイナは、目の前の応戦に必死で、自分が失った刃の行方を忘れている。上空で頂点に達した刃が、ゆっくりと落下に転じていた。風の音と、金属の軋みだけが、頭上から降ってくる。 (……いち) その瞬間、エレンの剣が動いた。 神速、と呼んでもいい剣戟だった。一度の踏み込みで、シイナの直剣と槍を、ほぼ同時に打ち払う。右を跳ね上げ、返す刃で左を弾く。二つの武器を、たった一呼吸の中で同時に殺したのだ。 シイナの身体が、ぐらりと後ろへ仰け反った。 ちょうどその頭上、二人の間の空間へ──弾かれていた剣が、落ちてくる。 エレンが、足を上げた。 「え──??」 シイナの目が、その足の軌道を追う。意味が分からない、という顔だった。 「ここだ」 短く、静かな声。 落下してきた剣の柄を、エレンの足の甲がぴたりと捉えた。狙いすましたような一点。そのまま、鞭のように脚が跳ね上がる。柄を蹴り上げる凄まじい勢いが、剣そのものを一本の投擲武器へと変えた。 銀の刃が、空気を裂いた。 目標は、ただひとつ。仰け反ったシイナの、顔面。 『ちょ、エレン!? さすがにそれは危なくない──!?』 体の内側で、エレナの悲鳴じみた声が跳ねた。 確かに、それは過剰な一撃に見えたかもしれない。祝福の鎧がなければ、怪我では済まない。下手をすれば、試合どころの話ではなくなる。 ──だが、エレンの内側は、冷ややかなほどに凪いでいた。 (心配するな、エレナ) この男は、この程度で音を上げる器ではない。 闘技場の観客席まで届いていた打ち合いの音が、ほんの一瞬、途切れた。────エレナの視点──── 石造りの螺旋階段を、私たちは息を切らしながら駆け上がっていた。 ごつごつとした壁が、手に持つ灯りの光を不気味に反射している。下層から響いていた激しい戦闘音は、もう聞こえない。石段を踏みしめる足音と、荒い息遣いだけが、神殿の静寂を破っていた。 「グレンさん、大丈夫ですかね……!?」 ミストさんの不安そうな声が、静寂に包まれた階段に響いた。その声には、仲間への深い心配が込められている。 「……きっと、大丈夫!」 何の確証もない。けれど、私の胸の奥で、温かい光のようなものが「大丈夫だ」と囁いていた。それは昔から私の中に宿る、聖女としての直感のようなもの。 「私の直感が、そう告げてるの!」 「えぇ!? そ、そんな直感が……!?」 ミストさんが驚きの声を上げる。 (私も原理は分からんが……エレナには、その力が間違いなく備わっている。運命そのものを、その祈りの力で強引にねじ曲げてしまうような、不思議な力がな。だから、今回もきっと大丈夫だ) エレンの声が、私の内側で静かに響いた。 (うん……!) 彼の言葉が、私の直感を後押ししてくれる。 「それなら良いが……慢心はするなよ」 シイナさんが、冷静に釘を刺した。 「未来が見えるからと、それに胡坐をかいて行動するようでは、今の暗明の聖女と何も変わらないからな」 「……うん、そうだね。私は、この直感を絶対に正しいなんて、傲慢なことは思わないよ」 私にできるのは、この直感を信じつつ、でも決して過信しないこと。神様のお導きを感じながらも、自分の足で歩むこと。 「そこが、エレナさんの素敵なところですね」 シオンさんが、静かに微笑んだ。 その時、長く続いた階段が終わり、私たちの目の前に、だだっ広い広間が見えてきた。天井は高く、月光が差し込む窓から、青白い光が石床を照らしている。 「きっと、ここにも残りの騎士が待ち構えていることだろう」 「その時は、私が残ります」 シオンさんの言葉に、ミストさんが待ったをかける。 「いやいやいや! そこは私でしょうー!!」 「……?」 シオンさんが、心底不思議そうに首を傾げた。 「そのお顔はなんですかァァ!?」 「いえ……だってあなたは、戦いがあまり得意な方ではないでしょ
**────エレナの視点────** 「じゃあ皆、各々準備してくれ。五分後にはここを出て、リディアさんを助けに行くぞ」 シイナさんの力強い言葉に、私たちは一斉に頷いた。この小さな家の中に、静かだが確固たる決意が満ちている。みんなの表情に迷いはない。先ほどまでの混乱が嘘のように、今は一つの目標に向かって心が結束していた。 五分という短い時間の中で、私たちはそれぞれの装備を確認し、心の準備を整える。月光が窓から差し込み、武器の金属部分を青白く照らしていた。この静寂が、嵐の前の静けさのように感じられてならない。 「準備はいいか? 今回、ジンが大方の騎士は無力化してくれたという話だ。恐らく…すぐに四騎士との戦闘になるだろう」 シイナさんの声に緊張が走る。四騎士——この国の最強戦力との戦いが待っているのだ。 「ここの騎士たちの数は多かったからね。でも、気を付けて」 ジンさんが軽やかに言葉を続ける。 「流石に全部を倒すわけにもいかなかったから、十人程度は残ってるはずだから」 「それでも、そんなに多くの騎士を戦闘不能にするなんて……」 私は驚きを隠せなかった。一人でそれほどの騎士を相手にするなんて、どれほどの実力者なのだろう。 「はは、聖女様に褒めてもらえるなんて。なんだか嬉しいよ」 ジンさんの表情に、子供のような無邪気さが浮かんでいる。しかし、その奥に潜む何かが、私の心に小さな不安を芽生えさせた。 「ね、念の為に聞くのですが……殺しはしてないですよね……?」 恐る恐る尋ねた私の質問に、ジンさんの表情がふっと変わった。まるで別人のような、冷たい光が瞳に宿る。 「……剣を抜いた以上、お互いの命が尽きるまで刀を振り合うべきだと僕は思っているんだ」 その一言に、背筋が凍りつくような恐怖を感じた。ジンさんの声音には、戦いへの狂気じみた情熱が込められている。私の心臓が、ドクドクと激しく鼓動を刻んでいた。 「でも……今回は大丈夫。殺してないよ」 そう言って見せる笑顔は、まるで何事もなかったかのように穏やかだった。しかし、その急激な変化が、かえって不気味さを増している。 (今回は……? ということは、普段は……?) 心の奥で、暗い想像が渦巻いていた。 * * * 五分後。静寂を破って、私たちは行動を開始した
**────エレナの視点────**「という訳なんだ」ジンさんの軽やかな口調で語られた残酷な現実に、私の心は氷のように凍りついてしまった。リディアさんが捕らえられて、処刑される。その事実が、どうしても受け入れることができなかった。「そ、そんな……嘘ですよね??」私の声が震えている。まるで悪夢から覚めたいと願うかのように、その言葉にすがりついた。「……こんな時に嘘なんてつかないよ」ジンさんの飄々とした口調が、現実の重さをより一層際立たせる。「……くっ!!!」シイナさんが拳を強く握りしめ、歯を食いしばっている。その青白い顔に、激しい怒りと悲しみが刻まれていた。「皆は先にこの国を脱出してくれ……!俺は……俺はリディアさんを助けに行く!!」シイナさんが勢いよく立ち上がり、扉に向かって歩き出そうとする。その瞳に宿る決意の炎は、誰にも止められないほど激しく燃えていた。「待てよ!!そんなの俺たちだって同じ気持ちだ!」グレンさんが力強く立ち上がる。彼の声には、シイナさんに負けないほどの強い意志が込められていた。「ええ……彼女には計り知れないほど多大な恩があります。なので……グレンと私でリディアさんを救出に向かいます」シオンさんの顔に、鋼のような決意が浮かんでいる。「シイナ、あなたこそエレナさんやミストさんと共に先に脱出してください」「だめだ!今回はパーティリーダーの責任として、俺が行く!」「シイナ!」「俺が、彼女を助けてすぐに戻ればいいことだろう!」「おいシイナ!俺がやられたテッセンとかいうやつの事を忘れたわけじゃないだろ!?少し落ち着け!」三人の激しい言い争いが、小さな家の中に響き渡る。誰も一歩も引かない様子で、感情のままに言葉をぶつけ合っていた。「あわわわわ……みなさん!こんな時に言い争ってる場合じゃないですって!」ミストさんが慌てて三人の間に割り込もうとするが、激しい感情の渦に巻き込まれ、弾き飛ばされてしまう。「ぎゃー!!」(みんな……冷静さがすっかり抜けて、これじゃあ救える命だって救えないよ……!)(それに……私だってリディアさんを助けたいのに……)私の心の中で、やりきれない想いが渦巻いている。みんなの気持ちは痛いほど分かるけれど、このままでは誰も救えない。そう考えていた、まさにその瞬間だった。私の意識が、まるで深い
**────ジンのの視点────** やる気か、と。僕は心の中で、小さく呟いた。 ここは冒険者ギルド。依頼と情報が交差する、いわば中立の聖域だ。そんな場所で騎士が刀を抜き、殺し合いを演じようというのだから、面白い。実に、面白い。 僕は向かってきた騎士の剣戟をいなすどころか、その勢いを逆に利用して体ごと弾き飛ばした。空中で無様に体勢を崩した彼の喉笛へ、僕は逆手に持ち替えた刃を、まるで吸い込まれるかのように滑らせる。「がぁっ……!」 声にならない呻きを漏らし、騎士が床に崩れ落ちた。口からごぼりと泡を吹き、痙攣する手足が、彼の命が尽きかけていることを示している。 仲間の一人が一瞬で無力化されたというのに、残された騎士たちは状況が飲み込めていないらしい。驚愕に見開かれた目が、滑稽なほどにこちらを向いていた。「き、貴様っ! 正気か!?」「あはは、面白いことを言うね、君。先にその物騒な鉄の獲物を抜いたのは、そっちじゃないか」「そ、それにしてもだ! 我々騎士に刃向かうなど、あってはならないことだぞ!?」「残念だけど、僕はそんな立派な冒険者様じゃない。僕はジン。世界を渡り歩く、ただの傭兵だからね」「ジン……!?」 その名に、騎士の一人が息を呑んだ。どうやら僕の名も、多少は裏の世界に知れ渡っているらしい。「くそっ……! やられて黙っていては、騎士の名が廃る! こいつも捕縛しろ!」 別の騎士が、その手に蒼い水の魔力を纏わせながら、僕へと突進してくる。ギルドの中で属性魔法を放つ? ああ、本当に、愚かだな。「はぁ……後悔しても、知らないよ」 僕は腰に差した愛刀「雪月花」の鯉口を切ると、一閃、抜き放った。 (鳴神式抜刀術――神威の型。) 空気を切り裂く音だけが響き、騎士の右腕が、ごとり、と鈍い音を立てて石床に転がった。「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!! お、俺の腕がァァァァッ!!」 やかましいね。腕の一本や二本、飛んだくらいで喚くなんて。自分から仕掛けておきながら、いざ返り討ちに遭えば獣のように吠え立てる。弱者の典型だ。「お、お前……! 自分が何をしたか、分かっているのか!?」「さっきも言ったはずだよ。先に始めたのは、そっちだってね」 僕は刀身に付いた血を振るい、ゆらり、と笑みを浮かべた。「まだまだ足りないな。……もっと、殺り合おうよ」 ああ、い
(この声に気配……覚えがある)エレンの意識が、私の奥底で警戒の炎を燃やし始める。(私もそう感じてた……なんだか、すごく(身に覚えがあるような……)(確か、夜の街で我々を襲撃してきた傭兵……名は確かジン……と言ったか)その名前を耳にした瞬間、あの記憶が、鮮血のように鮮やかに脳裏へと蘇ってきた。霊たちが彷徨う夜の街で、昼間の平穏な探索が一変した瞬間。突如として現れた謎の傭兵——。その圧倒的な実力は私には理解の範疇を超えていたけれど、エレン曰く、これまで戦った敵の中でも別格の強さを誇っていた……と。(そ、その人がなんでこんな場所に!? まさか、私たちを追ってきたの!?)(さあな。だが……敵意は微塵も感じられない。それに何か重要な情報を知っているようだ)(ここは一か八か、直接対峙してみるのも選択肢の一つだろう)「エレンが敵意は感じないから……出てみるのも一つの手だって……」私はシイナさんに、内心の不安を隠しながらそう告げる。「敵意を感じない……か。グレンもミストも意識を取り戻したことだし、直接話してみるか?」シイナさんの声に、慎重な判断力が込められている。(ああ、そうしてみてくれ)「そうして見てほしいって……」エレンの助言をそう伝えると、シイナさんが深く頷き、警戒を込めて扉の前へと歩を進めた。「何用だ」シイナさんの声が、扉越しに響く。「あれ、やっぱりいるんじゃないですかー」その飄々とした口調に、底知れない余裕が滲んでいる。「やあ、僕はジン。リディアっていう方からの重要な伝言があるんだけど、扉を開けてもらえないかな?」「残念だが、こちらにも複雑な事情があってな。このままでお願いしたい」シイナさんの慎重な対応に、扉の向こうから軽やかな笑い声が響く。「……あーそっか、いまこの国から追われてるんだっけ。それなら心配しなくていいよ」「大体の騎士は僕が片付けたから」「な、何だと!?」シイナさんの声が、驚愕に震える。「えっ!??」私も思わず声を上げてしまった。「ま、待て! この国の騎士一人一人は精鋭と言っても過言ではないほどに優秀だ。それをお前は単身で制圧したというのか?」「はは。まぁ確かにこの国の騎士はよく鍛錬されていたね。でも、僕も実力には自信があるんだ」その軽やかな口調で語られる内容の恐ろしさに、私たちは言葉を失った
**────エレナの視点────**次の日。「みなさん!!!!本当にご迷惑をおかけしました!!!」「本当に面目ねぇ……!!!今回迷惑かけた分は、必ず挽回するぜ!」二人が目を覚ましたんだ。あんなに傷だらけで、ずっと目を覚まさなかったグレンさんも元気になって、本当に良かったと思う……。でも……。聞かないといけない。二人に、何があったのか。「それより……二人に何があったんですか?なんで……グレンさんはあんなに傷だらけだったんですか……?」私がそう尋ねると、グレンさんが急に口を噤んでしまう。数秒の重い沈黙が部屋を支配すると、やがて言いにくそうにグレンさんが口を開き始めた。「お前たちが情報収集に行った数時間後、とんでもなく強い奴が現れたんだ」「とんでもなく強い奴?」シイナさんの声に、緊張が走る。「ああ。全身に見たこともない鎧を着て、刀を使っていた」(見たこともない鎧に刀……か)エレンの声が、意識の奥で静かに響く。「そいつは……全く俺の攻撃が通じなかった」「なに!?グレン、お前の攻撃がか!?」シイナさんは心底驚いたような様子を見せる。グレンさんの実力を知っている彼だからこその驚きだった。(…………)エレンが沈黙している。何かを考えているみたいだ。「ああ、正直全く底が見えなかったぜ。戦ってる感触としては……エレンに近かったかもな」「エレンに……?」私の声が震える。エレンと同じくらい強いなんて……。「それは……かなり厄介そうですね」シオンさんの美しい顔に、珍しく深刻な表情が浮かんでいる。「厄介なんてもんじゃねぇよ。あいつは俺の攻撃を全部受け止めやがった」グレンさんは、私たちのパーティ内でも屈指の攻撃力を持つ







