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第9話 カイルの過去

Penulis: アイさん
last update Tanggal publikasi: 2025-12-22 11:31:13

グレンの魔力が溜まるまであと2分をきったがカイルにしてみたらこの時間は非常に長く感じた。

腕の筋肉が痙攣しすぎて既に感覚が無くなっていた。

「あともう少しだけ持ち堪えろ、騎士団の団長。あと少しでこの悪夢を終わらせてやるよ。」

「たの…むっ!」

しかし、黒い根っこは時間が経つに連れて再生するスピードを上げてくる為どんどん追い込まれていくのだった。

だめだ…追いつかない!

そう思った時、カイルの頭の中で声が聞こえた。

「あんたって、すぐ諦めるよね。なっさけないなー!」

その声は綺麗な声であるが口が悪く少し男勝りな感じがした。

そして頭の中でその声の主を連想させた。

…エミル!

「あんたまた親に逆らったのかよ?」

目の前にいるのは俺の昔からの腐れ縁で親友の女の子。エミル・ウォーマリン。

明るめの綺麗な水色の髪をした短髪の少女。服は露出が目立った半袖のTシャツにショートパンツを履いていた爽やかな感じだった。

「うるせーな。あんな親は親じゃねーよ。毎日仕事仕事で俺の事なんかどーでも良いと思ってる癖に家にいる時だけ親づらするとかありえないだろ。」

俺の家はちょっとした金持ちの家で父も母も共に魔法関係の職に就いていた。

それはエミルのも同じ悩みを持っていて2人はその裕福な家庭を持つものの悩みが一致したのもあり、仲良くなったのだ。

「それはあんただけじゃないだろ?それに今回はあんたが学校サボったから怒られたんじゃねーか。」

「そんな事、別に学校行かなくても俺は俺のままで生きていけばいいんだよ。」

「へー、あんたみたいな知識もない男がこの魔法社会で生きていけるとでも?」

「学力じゃねーよ!俺はいつか騎士団に入団して敵を倒しまくって戦績を上げてやるんだよ!」

「あははははっ!!あんたみたいな弱い男が騎士団に入れるわけないだろ?」

その時の俺は確かに弱かった。当時は剣は良くても神級魔法の引き出し方が分からなかったため魔法実技ではいつも最下位だった。

一方エミルは学力優秀、魔法実技じゃ彼女に敵うものは男子でも居なかった優等生だった。

そんな彼女を俺は羨ましかったんだろう。いつも挑発していた。

「うっせー!いつかお前も超えてやるよ!」

「あーそう。じゃあ今すぐ超えて見せなさい?」

「あー、やってやるよ!」

そう言っていつも剣の勝負をするがいつも負けてばかりだった。

「くそー!また負けたぁ!」

カイルは仰向けになりながら悔しがった。

「まだまだね。けど、カイルは剣の腕上げたじゃねーか。魔法はイマイチだったけど。」

「ふんっ!そーやって見下してろ!俺は諦めねーぞ!絶対に騎士団になって見返してやるよ!」

「見返すね。…じゃあ、賭けをしない?」

するとエミルは俺が寝転がってる横に腰掛けた。

「もし、あんたが騎士団に入らなかったら私はあんたを殴る。」

「なっ、殴る?」

「うん、けどその変わりもし騎士団に入ってあんたが業績を上げて団長になれたらさ…私も騎士団に入れて欲しいな。」

この時、エミルは頬を赤くしていた。

「言われなくてもお前は一緒に来てもらうつもりだぞ?」

「へっ!?ちょっとそれどういう…」

「そんなもん、成長した俺の姿をそばで見てもらう為に決まってんだろ。」

カイルの一言でエミルは一瞬目を大きく開けたが次の瞬間吹いて笑った。

「プッ!…あはははっ!やっぱりあんたは面白いわ。…いいわ、その時は嫌ってほど見てあげるから。期待してるぞ。」

「ああっ。」

2人がこの会話をしてる時は夕方で夕日が2人の姿を輝かせていた。

俺とエミルは家にいる時以外はずっと一緒だった。

親からの愛情をあまり受けたことがない俺にしたらエミルは俺の家族みたいなもんだった。

だけど、そんな日は長くは続かなかった。

「エミル。おまえ、最近エリオン家のせがれと仲良くしてるらしいな。」

突然エミルに問いかけるエミルのお父さん。青髪でメガネをかけ前髪がきっちりと整えられた40前半の男性だった。

「急に何?私が誰と仲良くしようと関係ないでしょ?」

父の問いかけに反抗的な態度を取るエミル。

「別にそんな事言ってる訳ではないだろ。ただ、友達はもう少し慎重に選んだ方が良いんじゃないのか?ましてや、あのエリオン家のせがれと……」

俺の親とエミルの親の仕事は商売敵の様な関係らしくあまり良好な関係ではなかったらしい。

エミルの親は俺の家名を口にしただけで嫌な顔をした。

「お父さんな、エミルには幸せになって欲しいんだよ。お前は将来ヴィアーランス家の長男と見合いさせ幸せな生活を送らせたい。」

「嫌よ!そんなの。どう考えてもこの家の利益を優先して私を利用しようとしてるだけでしょ!?それに私は愛のない結婚なんてごめんだから!」

エミルの父は呆れてため息をついた。

「じゃあ、エリオン家のせがれには愛があるっていうのか?」

「えっ!そ、そんなんじゃな…」

突然変な事を言われて戸惑うエミル。

「ほらみろ。お前のその様な半端な考えがいけんのだよ。…今からでも遅くはない。エリオン家のせがれとは縁を切れ。でなければお前をイフリーク以外の学校に転校させる。いいな?」

「い、嫌よ!なんでお父さんにそんな事決められなきゃいけないの!?そんなのおかしいよ!」

エミルはそう言うと走って自分の部屋に戻った。

「何にも知らないくせに…何にも…なん…に…も…」

次の日から、エミルはあまりカイルと話す事が少なくなった。

昼休みも他の女の子と一緒で学校が終わると1人で先に帰った。

俺はなんで急に話する事が減ったのか分からなかった。

もしかしたら俺が何かいけない事したのかもしれない。そう考えると話しかける事が怖くて俺もエミルに喋りかけなかった。

学校が終わってからは1人で剣の素振りや魔法の特訓を欠かさずやっていた。

エミルが喋りかけなくても目標は変わらない。ただ、エミルを超える為に。この時はそう思ってた。

「はぁ、はぁ、俺の影魔法はどうやら他の人のやつよりちょっと違うらしいな。こうやって対象の敵の影が自分の影と重なるまで範囲を広げて。」

するとカイルの影は目の前にある木の影と重なるくらいまで範囲を広げた。

「そして俺の影に入った対象の敵は触れなくても俺が剣を振る事で…木は真っ二つって事だな。」

カイルが剣を振ると目の前の木は横に切られ、そのまま倒れた。

「おぉっ!我ながらこの魔法は結構使えるぞ!よし!これを強化してエミルを…」

「私が…何?」

するとカイルの後ろにはエミルが立っていた。

「エミル…何だよ、急に。」

「いや、ちょっとあんたの様子見に来ただけ。凄いじゃない、その魔法。」

「ちぇ、見られてたかよ。まあこれが完成したのもお前っていう目標があったからなんだけどな。」

カイルが悔しそうにふてくされてるのをエミルは笑って。

「ぷっ、言ってくれるじゃんチビカイルのくせに。」

「なっ!何だと!お前今に見てろ!俺はお前の身長も超えてみせるからな!」

「えー、背の高いカイルなんて想像しただけで…笑っちゃうわ。」

そう言ってエミルは爆笑しながら走って逃げた。

「こ、このヤロー!待てエミル!」

カイルも怒りながらエミルの後を追いかけた。

「あはははっ!やっぱ背の低いカイルは足も短くて走るの遅~い!」

「うっせー!俺の影魔法でぶった切るぞ!」

「女の子に暴力振るうのか?カイルほんとサイテー。あはははっ!きゃっ!」

前を見ずに走っていたエミルは足元にあった木の根っこにつまずいてこけた。

「何やってんだよエミル。足見せてみろ。うわっ、血が出てんぞ。」

「へ、平気だよこんなの。唾でもつけたら治…って何してんだよ!変態!」

「何って、血を吸ってやってるんだよ口で。」

「そんな事自分でするからやめてよ!もう!」

「何怒ってんだよ…ったく。…ほら、乗れよ。」

「え?」

「おぶってやるから乗れよ。足怪我してんだから当然だろ?」

「でも、さすがにそれは…」

「いいから早く乗れって!」

仕方なくエミルはカイルの背中におぶらせてもらった。

その時エミルは心の中でこう思っていた。

何この背中?小さすぎて乗り心地悪すぎ。でも、何だか温かくて落ち着く。何でだろう…カイルといると安心する…

「んっ?なんか言ったか?」

「べっ、別に!!ほら、さっさと家まで連れてって!あんたのちっこい背中におぶってもらうのも結構疲れるのよ!」

そう言ってエミルは誤魔化した。

家に帰る途中、エミルが急にカイルに向かって。

「あのさ、カイル。最近私あんましあんたに話しかけなかったけどごめんね。」

「何だよ急に。てか、それって俺がなんかしたから怒って喋んなかったんじゃねーのか?」

「あんたがした事で怒った事なんか…あー、結構あるわ。けど、そんな事で話さなくなったりなんかしない。…私のお父さん知ってるでしょ?」

「あー、あの気難しい人?知ってる知ってる。…もしかして、その人に俺と喋るなって怒られたの?」

「そう、私らの親ってお互い嫌い合ってるから子供が仲良くしてるのが気に食わないみたい。それでお父さん、私とカイルが仲良くし続けるなら私を他の国の学校に転校させるって…ごめんね、あんたは何にも悪くないのに。」

エミルはカイルの背中にうずくまりながら涙を流した。

それに対してカイルはまっすぐ前を向きながら。

「それはお前が悪いわけじゃないだろ?じゃあ、そんな中で今日は何で俺の前に現れたんだ?」

「家にいても暇だし、やっぱりカイルと一緒の方が楽しいから。」

「そっか。だよな、親の都合で親友の仲を裂くのはやっぱり間違ってるよな。俺もお前がいない日は退屈で面白くない。転校なんてさせない。お前がいるこのイフリークが好きだから。」

「私も、カイルがいるイフリークが好き。この街から離れたくない。」

そう言ってエミルはカイルの背中を締め付ける力を強めた。

「カイル…私、ずっとあんたに言いたい事が…」

「出てきたらどうなんだ?いるのは分かってる!姿を現せ!」

「えっ?」

突然辺りを見渡しながら怒鳴るカイル。すると木の陰から複数の黒い服を着た集団がカイルの周りを囲んだ。

黒い服を着た集団は全員男で顔がバレないように仮面を被っていて、手には短刀を握っていた。

そしてその中のリーダー格らしき人物が前に出てきた。

「エリオン家のせがれとウォーマリン家の一人娘だな。まさか敵対してる家系同士の子供が一緒にいるとはな。」

「そこを通せ!」

「通すわけないだろう。こんな大物の子供が2人もいるんだ。誘拐してたんまり金を要求してやるよ。」

パチンッ!

「ヤレ!」

リーダー格の男が指を鳴らした瞬間、後ろにいた1人の男性がカイルの腹を蹴飛ばした。

「ぐっ!」

「カイル!うっ!何するの!」

その衝動でエミルはカイルから離れてしまい、そのまま男はエミルを身動きできないように腕を掴んで拘束した。

「エミル!てめえらエミルから離れろ!」

カイルは男たちを囲むくらいまで影を広げて剣を振った。

「グワッ!」

するとエミルを拘束している男の腕に切り傷が入り、思わず男はエミルを離した。

他の男たちも傷を負ったが致命傷までにはいかず、全員腕に切り傷が入る程度の軽傷だった。

「くそっ!まだ威力はないか…エミル!」

「カイル!」

男から離れたエミルはカイルの元へ走った。

「させるか!止まれ!」

「うっ!何コレ!…動かないっ!」

するとリーダー格の男が止まれと言うとどういう訳かエミルの動きが止まった。

「さっきこいつに腕を掴まれた時に仕掛けた拘束魔法だ。これで俺の命令には逆らえないぞ。」

「エミル!くそっ!」

カイルが再び影を広げて剣を振ろうとするとリーダー以外の男がカイルの腹を殴ったことで広げた影が無くなってしまった。

「がはっ!」

カイルはあまりの痛みに地面に倒れてしまった。

「ふん、所詮子供。俺たち大人に敵うわけないだろう。おいお前ら、この2人を連れて行け!」

リーダー格の男の言葉でカイルとエミルは男たちに連れて行かれた。

次に気がつくと俺とエミルは地下牢のような所に閉じ込められていた。

暗くて風の通りが悪く息苦しかった。

隣にいたエミルはすぐには起きなかったがしばらくするとしんどそうに目覚めた。

「こ、ここは?」

「気がついたか。俺にも分からんが俺ら2人を人質にして親に金を要求すると考えられる。」

「じゃあ…もし、親が拒否すれば?」

「その時は俺ら2人は死ぬだろう。」

カイルがそう言うとエミルは一瞬曇った表情をした。

「もう、ダメかもな俺ら。親にも愛されず、学校でも特別待遇の様に周りから変なプレッシャーを受け、最後はこんな誘拐犯に捕まって殺されて…もうこんなの嫌だ…もう死んだ方がマシだ!いっそ殺してくれ!」

カイルは死ぬかもしれない恐怖によって今まで我慢してきた不満を叫びまくった。

この時の俺は本当に死を覚悟した。死んだら楽になると考えてた。

パンッ!

頬に激しい痛みが走った。

この痛みはエミルが俺にビンタをしたからだった。

「あんたってすぐ諦めるよね?なっさけない!死ぬなんてダサい言葉で何でも片付けようとすんじゃねーよ!確かに今の暮らしは辛いことばかりだけど、まだ私たち子供だから、…きっと、大人になれば自由になれる…だから…死ぬなんて言葉で逃げるなよ…頼むから…」

「エミル…」

エミルはカイルの両肩を掴み、顔をカイルの胸へと近づけ涙を流した。

「…そうだな。大人になれば自由だよな。こんなとこさっさと出て、2人で自由を手にしよう!」

「カイル。…うん!」

エミルは腕で涙を拭い、ニッコリと笑顔を作った。

「しかし、この鉄柵をどうするか…剣はあるんだがこれじゃあ切れ…剣がある?…そうだ!」

するとカイルは影を広げて剣を振ると鉄柵がポキポキと切れて、ちょうど子供が通れる様な穴が開通した。

「あんたの剣って便利ねえ。」

「なんか液体や気体以外の物質なら何でも切れる事がお前がいない間に分かったんだよ。よし、行くぞ!」

2人は鉄柵の間をくぐって外に出ると、階段があったのでそれを登って上の階に行こうとした。

外に出ると案の定黒い男の集団が待ち構えていた。

「おい、お前らどうやって牢を…うがっ!」

カイルは走りながら影を広げて前にいる男たちを影で囲み、剣を振ると男たちの体に切り傷が出来た。

しかし、傷が浅いため再び体制を整えて襲ってきたがこれをエミルが出した水の砲弾を男たちの急所へ的確に当て次々に撃沈させた。

「やるじゃねえか、エミル!」

「オトコは弱点多くて楽勝ね。これなら楽に突破出来そう!」

そして、俺たちは最後の外への扉へ到着するが外にはリーダー格の男に加え、それよりも強そうな大柄な男が待ち構えていた。

「全く、仕事中に騒がしいねぇ。君たち、痛い目を見る前に早く牢に戻りなさい。」

「誰が戻るか!てめえら倒して俺らは自由を手に入れる!」

「自由ねぇ。君らの家にはお金があるんだからそれだけでも十分幸せじゃないか。一体何が不満なのかな?」

「お金があるのと幸せはイコールじゃない!そんな事しか頭にない親から決別する為に、私たちは知識と魔力をつけて自立する。これが子供の仕事よ!」

「なるほどな。でもね、世の中には君たちの言う仕事を味わえない悲しい人生を送る人だっているんだよ。俺みたいにね。」

リーダー格の男が仮面を外すと左目は殴られたのか潰れていて顔には爪で引っ掻かれたような傷が所々にあって髭の生えた中年の男だった。

「俺の様な金もない、親から暴力を受けながら育った奴にしたら君たちは羨ましいよ。人間はある一定の暴力を受ければ死ぬんだから…君たちにはその死を味わった事があるのかな?」

リーダー格の男は魔法で地面から棘のついた鉄の鎖を出し、エミルとカイルに向けて飛ばした。

カイルはその鎖を剣で弾き、自分の影を広げて鎖を切った。

しかし、鎖は一本だけではなく5、6本あったため全部は切れず、残った鎖がカイルを襲った。

「危ない!」

エミルが水で作った蛇で鎖を弾き、カイルを守った。

「サンキュー!エミル!」

そしてカイルはリーダー格の男と大柄な男を囲むまで、影を広げた。

「思いっきり切ってやるよ!」

そしてカイルは剣を思いっきり縦に振った。

「ぐああああああ!!!!」

「ぶっ!」

リーダー格の男の左腕は切断され、大柄な男は体一直線に切り傷が入り、そこから血が吹き出た。

「うげっ!人の血を見るのは初めてだから気持ち悪い…」

「何ビビってんだよ!こいつらは誘拐犯だからそんな事気にしなくていいのよ!」

エミルはそう言って両手に水色の魔力を溜め込んだ。

「ちょっと凄い魔法使うわよ!雨ノ神、その水の槍で大地の渇きを癒せー」

そう唱えるとエミルの手に溜め込んだ魔力から水の槍が次々とリーダー格の男と大柄な男を襲った。

その威力は凄まじく、周りに飛び散った水しぶきでさえ頑丈な壁にヒビを入れるくらいだった。

それをまともに食らった2人はタダでは済まないだろう。

「それは、水魔法の最上級魔法!しかも詠唱付きで…」

「成長してるのはあんただけじゃないのよ!私だって勉強してるんだよ!」

いや、あんたのその魔法は普通高校で学ぶやつだから…やっぱりこいつは化け物だわ…。

この時にこいつは恐ろしいと再び確信した俺だった。

「よし、じゃあ帰るか。やっとここから帰れるぜ!」

俺がそう言って帰ろうとして後ろを振り向くと大柄な男がいつの間にか血まみれになったエミルの頭を掴んで持ち上げていた。

「あっ…がっ、…」

「グフフフ、ヤッパリ女ハ血マミレガ似合ウナ。」

大柄な男は汚い笑い方で鼻息を立てた。

「おい!てめえ何やってんだこのヤロー!!」

影を広げて思いっきり剣を振った。

グシャっと肉が切れる音はしたがどういう訳か大柄な男の切り傷が綺麗さっぱり再生した。

「俺ニ剣ハ効カネー。俺ハ再生魔法ノ使イ手。ンデー。」

大柄な男が一瞬でカイルを殴り飛ばすとカイルは壁に衝突した。

「俺ハ接近戦ヲ得意トスル!フンーーー!!!」

大柄な男はそう言って鼻息を荒くした。

「カ…イ…ル…」

エミルは力細い声で言うとそのまま気を失った。

俺には…力が…ない。くそ、こんなんじゃ自由は手に入らない…こんなんじゃ…こんなん…じゃ…。

壁に衝突したカイルは身体中痛くて立ち上がれず、頭の中で嫌な事が思い出されていた。

「あんたって、すぐ諦めるよね?なっさけない!」

すると頭の中でエミルの声が聞こえた。

エミル…

「大人になればきっと自由になれる!だから…」

……。

「私も、あんたがいるこのイフリークが好き…。」

そうだ。俺は諦めない…諦めるな!カイル・エリオン!何が自由が手に入らないだよ!そんなもん自分で掴み取るしかないだろ!

そして大好きなイフリークで、エミルと一緒に騎士団に入って側にいてもらう。

これが俺達の自由だ!

「ぐっ……待ってろよエミル…俺が必ず…助け出すから…」

カイルは痛みを堪えながらゆっくりと立ち上がった。

目を開けるとカイルの黒い瞳はどういう訳か赤色に変わっていた。

「ヌ?何ダ…ソノ目ハ。何ダ、ソノ刀ハ?」

カイルの刀はどういう訳か黒く変色しているが本人は気づいていなかった。

そして、カイルは影を広げていないにも関わらず剣を軽く振った。

するとエミルの頭を掴んでいた腕がスパンと切り落とされ、エミルは地面に落ちた。

「何ッ!?」

「よくもエミルを!許さねえ!」

するとカイルはいつの間にか大柄な男の目の前に立っていた。

「イツノ間ニ!?グワァァァァ!!!」

そしてカイルは大柄な男を再生が追いつかない速さで切りまくった。

ズタズタに切られた身体は再生するのを止めてしまい、大柄な男の意識は盲ろうとしていた。

「アッ…アガァ……」

「はぁ、はぁ、お前を…喰ってやる!」

「ヤ、ヤメ…ヤメロぉぉぉぉぉお!!!!!!」

カイルはそう言うと口角を吊り上げ、そしてカイルの剣から出てきた影が大柄な男を飲み込んだ。

その後、俺は気を失ったが気がつくと俺は自分の家のベッドで寝ていた。

あの後俺とエミルは警察に助け出されたらしく、俺たちを誘拐した犯人達はそのまま全員連行された。

家に帰ると親に初めてビンタされたが、その後は強く握りしめながら泣いていた。

初めて俺はこの時、親からの愛情というものを知った。

エミルも怒られたのかな?そして俺と同じこと思ってるのかな?そんな事は分からないけど心配だ。

しかし、一番強そうな大柄な男が見当たらなかったのが謎だな。俺は壁に衝突してからの記憶がないし。

…まあいいや、エミルと俺は無事だったし明日から学校でまた話とかしよう。

痛ててて、壁にぶつかったせいで身体中めちゃくちゃ痛い!

そして俺はそのまま疲れたから寝た。あと、早く明日になってエミルに会いたいな。

次の日、俺は学校に着いてからエミルの席を見たがまだ来てなかった。

いつもなら俺よりも早く到着するのに珍しいなとこの時は思っていた。

チャイムが鳴り、先生が入ってきたのにエミルはまだ学校に来ていなかった。

「はい、みなさんおはよう。今日なんだが、先に悲しい知らせがある。」

「うちのクラスにいたエミルなんだが、彼女は親の仕事の都合上南の国シルフの学校に転校されたそうです。」

その先生の言葉に、俺は一瞬思考が追いつかなかった。

「エ、エミルが…転校…。」

嘘だ…嘘だ嘘だ…俺は信じない!信じたくない!あいつがこの国から居なくなるなんて知りたくない!

嫌だ!なんで…なんで俺の前からいなくなるんだよ!俺が何をしたって言うんだ!

そして気付いた。エミルは言っていた。

「俺と関わったら他国の学校に転校…」

「どうしたんだ、カイル?」

「俺のせいだ…俺のせいなんだよぉぉぉ!!」

そして俺はそのまま教室を出てしまった。

俺は教室を出てからいつも修行している場所に座っていた。

「あー、早くも俺と一緒に騎士団に入るって夢が無くなったな…くそ!俺はこれから、何を目標にしたら良いんだよ…」

カイルは空の雲をなだめながらブツブツと言っていると後ろから女性らしき人が近づいてきた。

「エ、エリオン君!」

その人はエミルと仲の良かったハンジという茶髪でぱっちりした目が特徴の女の子だった。

「ハンジ…何の用だ?」

「ごめんね、エリオン君。私、知ってたの…エミルがこの国から出て行くこと。」

「何だと…何で言わなかったんだよ!」

俺はその時気持ちがだいぶ荒れていたので思わずハンジに怒鳴ってしまった。

「ご、ごめんなさい!でも、言うなって言われたの。エミルに。」

「そ、そうなのか…すまん。」

「ううん、私も罪悪感はあったの。…それで、これ。」

するとハンジはポケットから一枚の手紙のような物をカイルに渡した。

「これは?」

「エミルがエリオン君に書いたメッセージよ。読んで。」

カイルはそう言われて手紙を広げた。

カイルへ

お前とはいつも一緒だったな。そりゃ小さい頃から同じ境遇で育ってきたんだから気も合うし仕方ないよな(笑)でも急にごめん。私の親とカイルの親は昔から犬猿の仲だからあんたとあんまり喋るなって親に言われた。本当は私辛かったけどカイルと離れるのはもっと辛いと思った。けど、結局は転校する事が決まってたらしくてね、だから転校する前日にカイルに会いに来た。やっぱあんたは凄い。私なんかすぐ追い抜かれそうだ。けど、私を追い抜いたからって良い気になるなよ。これからはあんたは騎士団に入って私を守るって言った事の様に私の大好きなイフリークをこれからも守って。今更って感じもするけど、私はあんたの事が…好きだ!

エミルより

その手紙には所々に水滴が落ちた跡があった。

そして、これを読み終わった俺はハンジがいるにも関わらず号泣した。

そして、決意した。

俺はこのイフリークを死んでも守る!あいつが愛したこのイフリークを…必ず守ってみせると。

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    カイルの影の斬撃によって舞い上がった黒い魔力が引いていく。「…ミーナちゃん!大丈夫か?」幾ら本気の勝負だとしても、あれだけの攻撃をまともに喰らえばただでは済まない。心配になったカイルはすぐに影の円展開を解除し、ミーナの方に駆け付けた。しかし、ミーナは何事も無く立っていた。「…あれ?私、確かにカイル君の攻撃を喰らった筈だけど?」傷一つ付いていないミーナは自分自身でも何が起きたのか分かっていない表情をしていた。するとバンジョウが終了の合図と一緒にその理由を説明した。「勝負あり!カイル殿の勝ち!…2人とも、中々凄い戦いだった。」「この道場は今日だけ特別な"結界"を張ってるんだ。安全にテストが出来るように、[この中では如何なる理由があっても他者を殺す事が出来ない]という条件を付け加えて。」「結界?」初めて聞く用語に首を傾げるミーナ。するとグロードがバンジョウに聞いた。「結界術を扱えるのですか?」結界術。それは魔法とは違い、魔力では無く条件を成立させる事により一定範囲の空間に結界を張る術である。「ええ。まあ我は簡単な結界術しか扱えないですけど。条件が厳しくなるとそれだけ術者に掛かるリスクも高くなるから。」リスク。それを聞いてグロードは少し疑問に思った。もしかすると、ベリエルが使った呪いというのはこの結界術がベースなのかと。しかし確証がない為、思っていても皆んなには言わなかった。「では、気を取り直して。今度は…」バンジョウは他の人のテストを行う為に仕切り直そうとするが、その時であった。バンジョウの腕に付けていた腕時計から大きな音が鳴り始める。ピリリリリリリリ!!!あまりにもうるさい音にびっくりするカイル達であるが、八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーだけは全員緊張感のある顔になっていた。何故ならこの音は彼らにとっての緊急事態を意味するからだ。バンジョウは腕時計に付いてるボタンを押してその音を止めると、腕時計のレンズから人の姿が現れる。「こちらスイゲツ!た、大変です!バンジョウさん!」ホログラムで映し出された人物は今日はこの場に来ていなかったスイゲツであった。声の感じからして物凄く慌てているのが分かる。「どうしたんだ、スイゲツ?何故緊急連絡用の通信に繋いだ?」バンジョウとその他の八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーは、慌て

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    エミルとフィナが道場に到着した午前8時頃。実はグロードも既に道場に到着していたのだ。それは丁度ネルが作った修行空間からカイル達が戻ってきた後、ボロボロの姿になったカイルを見てエミルがネルにキレていた時だった。「お前ぇ!!…カイルに、何をした!!」怒鳴り声は外までよく聞こえてきた為、到着したグロードは止めようと思ったのだが、カイルがエミルを制止した。カイルは事の顛末を後から来たエミルとフィナに説明した。「(成程。ネルはカイル君達に修行を付けてただけなのか。)」外で聞いていたグロードはカイルの説明を聞いて状況を理解した。「(……さて。どのタイミングで入ろうか。)」カイルの説明を聞いていたせいで、道場に入るタイミングを完全に逃してしまう。グロードは取り敢えず気にせずに入ろうと思ったのだが。「何であいつの事そんな簡単に信用するの!?あいつがフィナさんの国でどんな事したのか、カイルは知ってるんでしょ?」再びエミルの声が聞こえてきた為、またまたタイミングを逃してしまう。カイルとエミルはしょっちゅう喧嘩はしてるものの、それは痴話喧嘩に近い感じだ。しかし、今回は違う。エミルは泣きながらカイルに訴えかけていた。そして口論はヒートアップし、捲し立てるエミルに対してカイルが言った。「エミルだってネルの事何も知らないだろ!!」カイルの声にエミルは喋るのをピタリと止めた。そしてカイルは続けて言った。「確かにネルはシルフを壊滅寸前まで追い込んだ。殺した人も星の数だろう。到底世間にも、フィナさんやライクとニケルにも許されないと思う。」「でも、それはエミルも一緒だっただろ?現に元盗賊だったせいでイフリークの騎士団には最初認めてもらえなかった。盗賊なんて、世間から見れば悪人なんだからな。」「な!…違う!私は…」カイルの発言に動揺するエミルだが、ヒートアップしたカイルは喋るのを止めない。「違わない!エミルは自分がされた事と同じ事をネルに言ってるんだ!エミルだけじゃ無い!この場に居る全員、立場が変われば被害者と加害者なんだよ!」「だから皆んな。どっちかがずっと被害者面ばかりするなよ。俺達が偉そうにネルだけを非難する資格なんて、無いんだよ。」カイルの言葉によって道場の中の空気が一気に変わったのがグロードにも分かった。「(カイル君…それは正しい事だが、今

  • 悪魔祓い(デビルブレイカー)   第42話 加害者と被害者達③

    「……だから、俺が強くなる為にネルは修行を手伝ってくれただけなんだ。今回、あいつは何も悪く無い。寧ろ感謝してるくらいなんだ。」カイルはネルの事を誤解しているエミルに今までの経緯を話した。ーーだからこんなにもボロボロだったのか。信用していない相手が自分の好きな人をこんなボロボロの状態にされてエミルが黙ってる筈が無い。けれど、今理由を知った事で誤解が解かれたエミルは落ち着きを取り戻……。してはいなかった。それを聞いたエミルは仰向けで倒れているカイルの方を見ながらボロボロと涙がカイルの顔に滴っていた。そして。「何であいつの事そんな簡単に信用するの!?あいつがフィナさんの国でどんな事したのか、カイルは知ってるんでしょ?」エミルは怒りながらカイルに言うも、その言葉にはどこか心配も含まれている様に感じられる。「ああ。勿論知ってる。けど、昨日ミーナちゃんも言ってた様にあいつにはもう悪意が無い。修行も純粋に俺達を強くする為に手伝ってくれてた。」「そのお陰で俺は昨日よりも確実に強くなれた。」カイルの返答に対し、エミルは負けずに大きな声で捲し立てた。「昨日たった1日しかあいつの事見てないんでしょ!?きっと今はこうやって良いところだけを見せてるだけ!その後から裏切る事だってある筈よ!」「人はそう簡単に変わらない!変われないのよ、悪人は特にね!そんな奴がちょっと良い事しただけなのに、皆んな簡単に騙され過ぎなのよ!」「エミルだってネルの事何も知らないだろ!!」カイルは捲し立てるエミルに負けないくらいの大声で一喝するとエミルは喋るのをピタリと止めた。そしてカイルは続けて言った。「確かにネルはシルフを壊滅寸前まで追い込んだ。殺した人も星の数だろう。到底世間にも、フィナさんやライクとニケルにも許されないと思う。」「でも、それはエミルも一緒だっただろ?現に元盗賊だったせいでイフリークの騎士団には最初認めてもらえなかった。盗賊なんて、世間から見れば悪人なんだからな。」「な!…違う!私は…」カイルの発言に動揺するエミルだが、ヒートアップしたカイルは喋るのを止めない。「違わない!エミルは自分がされた事と同じ事をネルに言ってるんだ!エミルだけじゃ無い!この場に居る全員、立場が変われば被害者と加害者なんだよ!」「だから皆んな。どっちかがずっと被害者面ばかりするな

  • 悪魔祓い(デビルブレイカー)   第42話 加害者と被害者達②

    [ライクとニケル]サイド。目の前の悪魔達に対し、2人共雷神と風神の姿へと変貌した。「一気に潰してやるよ!」「魔力操作"極(ぎょく)"!火雷(ほのいかづち)!」ライクの背中の上から2番目の鼓が光ると右手から高電圧の雷が溜め込まれる。今までの火雷はそのまま一瞬で放たれるも、魔力操作"極(ぎょく)"により溜め込み時間が普段より10秒くらい掛かる。溜め込まれた右手の雷を悪魔達に向けて一筋の矢の様にして一直線に放たれる。ドカァァァン!!!炎を帯びた雷の大爆発は魔力操作"極(ぎょく)"により、普段よりも10倍以上の威力を発揮した。その威力により、1回の爆発で100体以上の悪魔が一気に消滅した。「っしゃあ!やりぃ!」魔力操作"極(ぎょく)"が上手くいき、調子付くライク。ーーこのままやってけば、あっという間に。しかし、そんな希望は一瞬で崩れ去る。ライクの雷で消滅した側から、再び後ろの方から悪魔が再生していった。「いぃっ!?何だ!?何でまた再生したんだ!?」「…成程。どうやらこの修行、悪魔達を全員殺すのが目的じゃないみたい。」「どう言う事だ、ニケル?」「つまり、この永遠に湧き出てくる悪魔を3日間、休みなく戦い続けなければいけないって事だ。」そう。ニケルが言った通り、2人の修行はこの悪魔達を全員倒す事が目的ではない。絶え間なく湧き出てくる悪魔達を魔力操作"極(ぎょく)"を使って戦い続ける為の持久性を鍛える事が目的であった。「だからライク。そんな大技を放ったところで意味は無い。ここからはペース配分を考えて戦わなければいけない。」「成程な。効率良く戦えって事か?」「それだけじゃ無い。こいつらは魔力操作"極(ぎょく)"でしか倒せない。だからもっと成功率も上げないと。」2人は雷神と風神の力による効果で更なる力を得たのだが、持続性が無いのが欠点である。そしてもう一つ。これはライクとニケル自身の問題。2人は雷神と風神の力を過信し、いつしかそれに頼る戦いが定着しつつあった。この修行では2人のその定着した悪癖を直すのに打って付けであったが、それは只直すと言うにはあまりにも過酷な修行であった。ライクとニケルはまだ完成したばかりの魔力操作"極(ぎょく)"はまだ不安定であり、失敗する事の方が多い。その上、魔力を溜める時間に10秒必要というのも、実戦

  • 悪魔祓い(デビルブレイカー)   第42話 加害者と被害者達

    その後、グロードの空間移動で全員をカイルの家の前へと転移させた。カイルが家に入るとカイルの母親であるカルラが出迎えてくれた。「おかえり、皆んな。あれ?今日はまた知らない人が居るみたいね。」初対面であるグロードとネルがカルラの目に入った為、すぐにグロードはカルラの前に出て挨拶をした。「申し遅れました。自分の名前はグロードと言います。元々ここに居るライクとニケル、フィナと旅を同行していた者です。そしてこの隣に居るのはネルという者です。」グロードは丁寧にカルラに挨拶をすると、隣に居たネルを手で指し示した。「ネルと言います。」ネルはグロードに続けて一言だけ挨拶をした。「母上。この人達もしばらくの間、泊めて欲しいんだけど…。」カイルは少し躊躇いながら自分の母親であるカルラに尋ねた。幾らカイルの家が大きく親が寛大だからといって、こう何人も居候の人が増えると言うのは母親への負担が大きくなると思ったからだ。流石に迷惑かな?そう思ったカイルであったが。「ええ、良いですとも!さ、上がって下さい!」「良いんですか?」カルラが笑顔で快諾した事が予想外だった為、グロードは戸惑っていた。「はい!何だかね、カイルが色んな人を連れて来てくれるお陰で、広くてどこか寂しかった我が家が楽しい空間に変わってる感じがしてね。」「それに、今更2人増えたところで我が家は何も変わらないわよ。だから、いつまでも居て大丈夫ですよ。」「そう言って頂けるなら嬉しい限りです。本当に、ありがとうございます。」グロードはカルラの器の広さに感謝しながら再びお辞儀して感謝の気持ちを伝える。その姿を見てネルもグロードと同じ様にお辞儀した。「あり…がとう、ございます。」相変わらず、感謝の気持ちを伝えるのが下手なネルはぎこちなくそう言った。「では、どうぞ中に入って下さい!」そう言って全員カイルの家の中へと入って行く。中に入るとカイルの妹であるレイアがカイル達に気付いた。「あ、お兄ちゃん!皆んな!おかえり!」レイアは居間で本を読んでいたが、カイル達に気付くと本を閉じてカイル達の方に駆け寄った。「レイアちゃん、ただいま!」「ミーナちゃん!…ムッ。修行した後はあまり近づかないで欲しいです!」ミーナはレイアが可愛いあまりほっぺをスリスリしようとしたが、汗の匂いもあって近寄って欲しくない

  • 悪魔祓い(デビルブレイカー)   第29話 愛情の欠落

    これは愛を知らずに育ってきた男の話。彼はこれまでの人生の中で物心ついた頃から愛という物に触れる事なく生きてきた。ネル・ナイトフォース。彼は5歳まで北の大国の中心都市部にある貴族の家で奴隷として過ごしてきた。物心付く前から奴隷として仕えていたが、そこでは人権というものが存在しなかった。「おい、ゴミ!さっさとこの食器片付けろよ!」その屋敷の主である中年男は仕える奴隷に向けて済んだ食器を片付ける様に命令した。「…はい。」命令を受けて出てきたのは当時4歳のネル・ナイトフォースだった。彼は肌着同然の薄い半袖の服にヨレヨレのズボンを履いていた見窄(みすぼ)らしい少年だった。身体を洗わせ

  • 悪魔祓い(デビルブレイカー)   第14話 存在意義②

    時は少し遡り、場面はミーナとイフリークの国民達に変わる。現在、彼女らはティラーデザートとは別の場所で窮地に立たされていた。大量の悪魔達が周囲を取り囲み、エミルと騎士団の人達が応戦している。それを何もできないまま只々見ているだけのミーナとイフリークの国民達。国民の中には、騎士達が守らず心臓を取られてしまう者もいた。何故、この様な事になったのか。どうしてティラーデザートから離れた場所にいるのか。現在に至るまで更に30分程、時間を遡る。シルフを目指し、猛暑の中を歩き続けるイフリークの国民達は途中で大きなクレーターを発見した。「何だ、この大きなクレーターは。隕石でも落ちたのか?」「

  • 悪魔祓い(デビルブレイカー)   第14話 存在意義

    この時の俺はどんな人だったのか、今でも鮮明に覚えている。しかし、どうしても思い出せない事が1つある。自分の本当の名前だ。名前は悪魔祓いになったと同時に捨てたからだ。今も過去の記憶は覚えてても、自分の名前に関する記憶だけはどうしても思い出せない。覚えているのは、楽しかった日常が一夜にして地獄に変わってしまった事。そして…あの時俺を逃してくれた俺の兄の最後を、俺は今でも覚えている。11年前ーキュアリーハート。それは(癒しの心)という意味を込められた平和の国。この国は東西南北にある四大国の中心に位置している。四大国に比べて経済力があるとか、規模が特別大きいなどそういった事はなく

  • 悪魔祓い(デビルブレイカー)   第13話 南の大国シルフ②

    「月の民殲滅は確かにシルフの国王が提案し、様々な国の魔道士達を招集させて殲滅していく、というのが一般的に知られている事です。」 「はい、俺もそういう風に聞きました。」 「でも本当は違うの。シルフの国王は元々平和主義を心掛けていた心の優しい人で当時も月の民殲滅には反対していたのです。けど、あの男が来てからシルフの国王は変わりました。」 「それは、さっき言っていた思考を操る魔法か?」 フィナの口ぶりで何を言いたいのか察したグレンが口を挟んだ。 「はい。12年前に突然やって来たハイド・スペクターが原因だと思います。彼は何故なのか分かりませんが会った当初から国王に気に入られ、その日

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