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第2話

Auteur: 木二つ森ならず
詩織が口を開きかけた時。病室のドアが静かに開き、優子が大きな花束を抱え、お見舞いの品らしき箱を持って目の前に現れた。

「高遠社長、奥様、失礼いたします。会社の者を代表して、奥様のお見舞いに上がりました」

優子は陽介のもとで働き始めて三年になる。陽介は彼女に言及するたび、いつも褒めちぎっていた。

スタイル抜群で、頭も切れるし、とても気が利く、と。

会社の取引の多くは彼女がまとめてきたものだ。

だから、会社に利益をもたらしてくれる人間として、陽介も詩織も彼女を気に入っていた。

陽介は優子を一瞥すると、冷ややかに頷いただけだった。それが優子への返事の代わりらしかったが、彼の視線は片時も詩織から離れなかった。

だが、この状況――優子の殊勝な態度も、陽介の詩織だけを気遣う素振りも――すべて彼らが自分に見せているだけの芝居に過ぎないことを、詩織はとうに見抜いている。

「ありがとう。でも、もう休みたいの」

拒絶の言葉だったが、声はか細く震えていたかもしれない。

詩織は彼らに背を向けた。優子はこれで察して出ていくだろうと思ったのに、彼女はこともあろうに椅子を持ってきて、陽介のすぐ隣に陣取るように腰を下ろした。

陽介があくまで詩織の背中を労わるようにマッサージしているその傍らで、優子はなんと、すっくと立ち上がり陽介の肩を揉み始めた。

三人の奇妙な構図に、病室のガラス越しに多くの看護師たちが訝しげな視線を送っていた。

陽介は優子の馴れ馴れしい仕草を咎めもせず、むしろ、どこか満更でもなさそうな表情さえ浮かべていた。

病室にいた介護士や看護師たちはいつの間にかそっと部屋を出ていった。考えるまでもなく、部屋の外では好奇と非難の入り混じった様々な憶測が飛び交っていることだろう。

優子の手は次第に大胆になり、肩からゆっくりと下腹部へと滑り降り、意味ありげに一瞬その動きを止めた。

陽介は苦虫を噛み潰したように眉をひそめて優子を睨んだが、優子はそれを「続けろ」という合図と受け取ったかのように、挑発するかのように、さらにあからさまな動きを見せた。

優子の手が彼のシャツのボタンの隙間からねじ込まれ、そのなまめかしい指先が、彼の熱い素肌に直接触れる感触が伝わってくるかのようだ。途端に、詩織の背中を揉んでいた陽介の手に、ぐっと力がこもった。

詩織は固く目を閉じ、身動き一つできなかった。呼吸さえ、必死に平静を装い、浅く、浅く抑えていた。

陽介は詩織が本当に眠ってしまったと思ったのだろう、マッサージしていた手を引っ込めると、今度は優子の腰を指先で軽くつねった。

優子が待っていたとばかりに自ら身を乗り出して熱いキスをすると、陽介はためらいなくそれを受け入れた。

詩織はわずかに薄目を開け、窓ガラスの歪んだ反射越しに、目の前で繰り広げられる裏切りの光景を見つめた。熱い涙がとめどなく溢れ、ゆっくりと枕を濡らしていく。

陽介はまるで獣のように心に火でもつけられたかのように、激しいキスを不意に短く切り上げ、ちらりと詩織を見た後、優子を連れて病室を出て行った。

詩織は息を殺して二人の後を追い、角を曲がった別の病室の前までたどり着いた。

無遠慮に開け放たれたドアが、詩織を嘲笑っているようだった。毎日あれほど甘い愛を囁いていた陽介が、どれほど偽りに満ちていたかをこれ以上ないほど物語るようだった。

ドアの隙間から見えたのは――陽介が優子の首を鷲掴みにし、ベッドに押し倒している瞬間だった。

「詩織の前では慎めと、何度も言ったはずだぞ!」

優子はくすくす笑いながら、陽介の胸元に手を滑らせてなおも煽っていた。

「だってもうずっと彼女に付きっきりじゃない。私とお腹の子、寂しかったんだから……

陽介さん、ここで、『試して』みない?このフロアは全部私たちが押さえてるんだし、誰にも見つからないわよ」

陽介はもう何も言わなかった。優子がためらうことなく、首にかかっていた彼の手を自分の豊かな胸へと導くと、陽介は衝動を抑えきれないように優子の首筋に顔を埋めてキスをした。

「んっ……優しくして。赤ちゃん、まだ小さいんだから……」

「黙れ。加減は分かってる!」

もうこれ以上見ていられなかった。逃げるように背を向けてその場を走り去る間も、二人の生々しい喘ぎ声が、まるで呪いのように耳元から離れない。

まさかあの二人が、すぐ隣の病室で、詩織を憚りもせずあんな破廉恥な真似をするとは、思いもしなかった。

残酷な現実が、耐え難い強烈な一撃となって詩織を打ちのめした。

詩織は崩れるように力なく廊下の冷たい床にへたり込み、ただただ無様で、惨めだった。

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