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第10話

Author: 霧島柳乃
理玖は病室の中を見回したが、どこにも梨央の姿はなかった。

思わず病室に付属したシャワールームまで確かめに行ったが、そこにもいない。

胸の奥がざわつき、得体の知れない焦りが込み上げる。

彼は足早に病室を出ると、目に入った看護師に声をかけた。

「すみません、VIP003号室の患者はどこへ行きましたか?

検査にでも行っているんですか?」

看護師はカルテを確認し、それから答えた。

「朝倉梨央さんですか?

もう退院されましたよ」

理玖の表情が変わる。

「そんなはずないです。

あれだけの怪我をして、退院できる状態じゃないだろう」

看護師は困ったように眉を下げた。

「そうなんですけどね。

主治医も、少なくともあと三日は入院して様子を見たほうがいいって止めたんです。

でも、ご本人がどうしてもっておっしゃって……私たちにも引き止めきれませんでした」

梨央の無茶な行動に、理玖の目に怒りが滲む。

あの状態で退院するなんて、何を考えているんだ。

外へ出てすぐ、道端で倒れていてもおかしくない。

彼はすぐにスマホを取り出した。

さっき送ったメッセージには、やはり返信がない。
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