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第1315話

Auteur: 風羽
結安はおずおずと章真を見上げた。

しばらく迷ったあと、小さな声で呼ぶ。

「……葉山さん?」

章真は不満そうに眉を動かした。

秘書でもない。

まだ十八歳にもなっていない小娘だ。

そもそも自分は未成年を働かせる趣味もない。

それに――十五億円も使わせておいて、もう少し可愛い呼び方はないのか。

結安は少し考え込む。

それから、恐る恐る口を開いた。

「……お兄ちゃん?」

その瞬間。

章真の胸が、妙にざわついた。

言葉にできない感覚だった。

芽衣以外に、そんなふうに呼ばれたことなどなかったからだ。

会社の女たちは彼を恐れる。

外の女たちは媚びる。

ダーリンだの、名前を甘く呼ぶ女はいても。

「お兄ちゃん」なんて呼ぶ子はいない。

結安は自分より十二歳も年下。

しかも現役の女子高生だ。

身長一八五センチの章真は窓際に立ったまま、ふと妙な想像をしてしまう。

制服姿の結安。

プリーツスカート。

両手を揃えて、車の横で行儀よく立っている。

自分が窓を下ろして手招きすると、アヒルは逆らえないみたいに近づいてきて――

「お兄ちゃん……」

そう小声で呼ぶ。

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