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第855話

作者: 風羽
しばらく迷ったあと、慕美はそっと身を引き、扉を開ける。

周防本邸には人が多い。

廊下で誰かに見られたら、想像しただけで顔が熱くなる。

澪安は、その心配を読んでいた。

部屋に入るとすぐに彼女の手を引き、ソファへ座らせる。

彼は片膝を曲げ、その上に彼女を横向きに乗せるように座らせた。

片やタキシードのまま、片や白い浴衣一枚。

アンバランスなのに、不思議と完璧な絵になっていた。

澪安は彼女の細い手首を指先で弄び、ぽつりと言う。

「みんなが気づかないと思ってるのか?」

慕美の頬が、ふっと染まる。

「気づくのは構わないけど、堂々と見せるものじゃないでしょう」

澪安の手が、彼女の腰へ滑り落ちる。

「俺のどこが恥ずかしい?それとも、まだ選択肢が欲しい?」

選択肢。

その言葉が落ちた瞬間、二人の思考が静かに同じ場所へ向かう。

――允久。

本来なら、允久は今夜の秋分に慕美を誘おうとしていた。

その事実だけで、澪安の胸の奥に嫉妬が静かに燃え上がる。

嫉妬した男は、容赦がない。

指先に力がこもり、慕美は思わず小さく息を呑んだ。

「澪安」

彼は彼女の身体を抱き上げ、
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已鎖定章節
評論 (1)
goodnovel comment avatar
良香
なりたい自分になりつつある慕美ちゃん。 良いと思う。庄司さんもきっと良い人なんだけど、心が震える相手が澪安なら一緒に生きていけば良いと思う。ただなぁ〜本当に舞さんをなぞるような生き様だね。
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