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2-4

مؤلف: 海野雫
last update تاريخ النشر: 2025-10-06 19:00:26

 月曜日。

 響は大学に着くと、すぐに音楽室へ向かった。約束の時間まではまだ一時間あったが、落ち着かなくて、早めに来てしまった。廊下を歩く足音が、妙に大きく聞こえる。

 音楽室には誰もいなかった。響はアップライトピアノの前に座り、USBメモリをぎゅっと握りしめた。手のひらに汗が滲む。

 ――本当に、渡していいのだろうか。

 迷いが、また湧き上がってくる。だが、もう引き返せない。藤堂は本気で、自分の曲を求めている。それに応えないのは、失礼だ。

 そう自分に言い聞かせていると、扉が開いた。

「おはよう、響!」

 藤堂が笑顔で入ってきた。その明るさに、響の緊張が少しだけ和らいだ。

「……おはよう」

「で、曲は? 持ってきてくれた?」

 藤堂は期待に満ちた目で響を見た。響は無言でUSBメモリを差し出した。その手が、わずかに震えている。

「これに、入ってる」

「ありがとう!」

 藤堂はうれしそうにそれを受け取った。

「早速聴いていい?」

「……好きにしろ」

 藤堂は音楽室のオーディオ機器にUSBメモリを接続し、再生ボタンを押した。

 静かなピアノの旋律が、部屋に流れ始める。

 響は藤堂の反応を見ないようにした。見るのが怖かった。もし、彼が顔をしかめたら。もし、「やっぱり暗い」といったら。心臓が早鐘を打つ。呼吸が浅くなる。

 曲は三分ほどの短い作品だった。だが、響にとっては、自分の心そのものだった。孤独の夜に流した涙、誰にも言えなかった想い、そして――消えない傷。すべてが、この旋律に込められている。

 曲が終わった。

 沈黙が流れる。

 響は息を止めて、藤堂の言葉を待った。時間が永遠のように感じられる。

 しばらくして、藤堂が口を開いた。

「……すごい」

 響は顔を上げた。藤堂は目を輝かせて、響を見ていた。その瞳には、驚きと感動が宿っている。

「すごいよ、これ。めちゃくちゃ美しい」

「……本当に?」

「本当に」

 藤堂は力強く頷いた。

「悲しいけれど温かい。孤独なのに、どこか誰かを求めている。そんな気持ちが、強く伝わってくる」

 響の目が、潤んだ。胸の奥で、何かが溢れそうになる。

「もう一回、聴いていい?」

 藤堂は再生ボタンを押した。再び、旋律が流れる。

 藤堂は目を閉じ、じっと聴いている。その表情は真剣で、まるで曲の中に入り込んでいるようだった。体を微かに揺らし、旋律に身を委ねている。

 曲が終わると、藤堂は大きく息を吐いた。

「この曲、歌詞はあるの?」

「……ない。インストゥルメンタルのつもりだった」

「じゃあ、歌詞つけてもいい? 俺が」

 響は驚いた。

「……君が?」

「うん」

 藤堂は頷いた。

「この曲に、言葉を乗せたい。お前の音楽に、俺の言葉を重ねたい」

 響は迷った。自分の曲に、他人の言葉が乗る。それは、自分の心を誰かに翻訳されるようなものだ。もし、その言葉が自分の想いと違っていたら――。

 だが、藤堂の真剣な表情を見て、響は頷いた。

「……わかった。任せる」

「ありがとう!」

 藤堂はうれしそうに響の手を握った。

「絶対、いい歌にする。お前の曲を、俺の声で届ける」

 響は、藤堂の温かい手を感じながら、小さく微笑んだ。その笑顔は、この数年間で初めて心から浮かんだ、本物の笑みだった。

 ――もしかしたら、これが始まりなのかもしれない。

 自分の音楽が、誰かとつながる。そんな未来への、小さな一歩。

 窓の外では、太陽が雲の間から顔を出していた。朝の光が音楽室に差し込み、ピアノの黒い表面を照らす。

 部屋の中に、光が差し込んでくる。

 響は、久しぶりに希望を感じていた。それは儚くて、今にも消えてしまいそうなものだったが――確かに、そこにあった。

 藤堂は響の手を握ったまま、もう一度曲を再生した。二人は並んで、その旋律に耳を傾けた。

 孤独の旋律が、もう孤独ではなくなり始めていた。

 それは、二人の楽章の始まりだった。

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  • 響きあうカデンツァ   2-3

     ライブ後、響は会場の外で藤堂を待った。他の観客たちが次々と帰っていく中、響はビルの前でじっと立っていた。夜風が頬を撫で、遠くから酔客の笑い声が聞こえてくる。初夏の夜は心地よく、街路樹の葉が風に揺れている。 しばらくして、藤堂が出てきた。汗を拭きながら、響を見つけると満面の笑みを浮かべた。「響! 来てくれてたんだな!」「……ああ」「どうだった?」 藤堂は期待に満ちた目で響を見つめた。まるで、子供が親に褒めてもらいたがるような、純粋な期待。響は少し迷ったあと、小さく頷いた。

  • 響きあうカデンツァ   2-2

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  • 響きあうカデンツァ   第二章 陽の歌声

     藤堂晴真から逃げてから、三日が経った。 響は大学に来ても、音楽棟には近づかなかった。講義に出て、すぐに帰る。図書館にも行かない。学食にも行かない。ただ、人目につかないよう、影のように大学内を移動する日々が続いた。 だが、逃げ切れるはずがなかった。「おーい、そこの!」 講義棟の廊下で、明るい声が響いた。振り返ると、藤堂が手を振りながら駆け寄ってくる。周囲の学生たちが一斉に藤堂に視線を向ける。彼はそれだけ目立つ存在だった。華やかなオーラを纏い、笑顔が太陽のように周囲を照らす。 響は足を速めた。逃げないと。心臓が

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