高校の入学式。 体育館には少し緊張した空気が漂っていた。新しい制服、新しいクラス、新しい人間関係。期待と不安が入り混じる中、私は何気なく周りを見渡していた。 ――その時だった。 壇上の先生でもなく、隣の席でもない。 少し前の列に座る男の子が目に入った。 整った横顔。ふと笑ったその表情に、心臓がどくんと音を立てる。「……待って、あのイケメン、タイプなんだけど。」 隣に座る幼なじみの蒼人へ、小声で話しかける。 蒼人とは幼稚園からの付き合いだ。家も近く、気づけばいつも隣にいる。兄妹でも恋人でもない。ただ長すぎる時間を一緒に過ごしてきた、腐れ縁みたいな存在。「私、頑張ってアタックする。」「……頑張って。」 返ってきたのは、いつも通りのそっけない一言。 蒼人は昔からそうだった。励ましもしないし、余計なことも言わない。返事だって驚くほど淡白。 それでも、不思議と冷たいとは思わなかった。 長年一緒にいるからわかる。 この短い言葉の中に、ちゃんと私の話を聞いてくれていることも、応援してくれていることも。 だから私は安心して何でも話せた。 この時はまだ知らなかった。 この恋が、三年間ずっと続くことも。 そして、私が必死に誰かを追いかけている間、ずっと変わらず私を見つめ続けている人がすぐ隣にいたことも。
Last Updated : 2026-07-23 Read more