サカナクションの『忘れられないの』は、日本語のニュアンスを英語に変換するのが特に難しい楽曲だ。歌詞全体に漂う曖昧な情感と、断片的な記憶を紡ぐような言葉の選び方は、直訳では絶対に伝わらない。例えば「波の音が聞こえる場所」というフレーズは、単に『the place where you hear the waves』と訳すより、『where the tide whispers your name』と詩的なライセンスを取った方が本質に近い。
英語圏のリスナーに届けるなら、文法よりもリズムとイメージを優先すべきだと思う。『記憶が風になる』を『memories turn to breeze』と訳せば、日本語の比喩の繊細さを残せる。サビの『忘れられないの』は『I can't let you fade』がしっくり来る。文字通りの意味から離れて、山口一郎が込めた「消えかけた記憶を必死に掴む」感覚を英語で再構築する作業こそが真の翻訳だ。