言語の違いを実際のやりとりで直観的につかむのが自分には合っているから、まずざっくりと枠組みを示してから例を出すね。
軋轢意味(ここでは会話含意、つまり話し手が言葉を通じて『直接は言わないが聞き手が推測する意味』を指すもの)と、対立(語と語の間にある論理的・語彙的な関係。たとえば矛盾や反義)とは、本質が違う。軋轢意味は文の真偽には直接関わらない付加的な読みで、文脈や常識に強く依存する。典型的なテストは「取消し可能性」:話し手が後で明示的に否定できることが多い。
例を二つ。英語で "Some of the cookies were eaten." と言った場合、多くの人は "Not all of them were eaten" と暗に受け取る(これがスケール含意)。だが話し手が続けて "In fact, all of them were gone" と言えばその含意は簡単に取り消せる。一方で対立はもっと強い。たとえば "太郎は来た" と "太郎は来なかった" は互いに矛盾していて、どちらか一方しか真になり得ない。矛盾は取消しに耐えられないし、文の真理条件に直接関わる。こうした観点から、含意は推測(pragmatic)で、対立は意味的・論理的な関係(semantic)だと理解すれば分かりやすいと思う。