セーラ・ウォードの作品群の中で特に光るのは、『The Love Song of Miss Queenie Hennessy』でしょう。
この小説は『The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry』のパラレルストーリーとして書かれ、前作の出来事を別の視点から描き出しています。ウォードの真骨頂は、登場人物の内面を繊細に掘り下げる描写力にあります。クイーン・ヘネシーの孤独や後悔、それでも続く希望が、読者の胸にじんわりと染み渡るように伝わってくるのです。
特に印象的なのは、手紙という形式を巧みに使いながら、時間を行き来する構成の妙。過去と現在が織りなすハーモニーが、この作家ならではの情感を生み出しています。人生の儚さと尊さを同時に感じさせる手腕は、まさに現代英国文学の粋と言えるでしょう。