この規模のヒットには理由がいくつかあったと感じます。まずキャスティングと演出が大きく作用しており、ホアキンの演技は批評でも話題になり、賞レースの追い風も興行を後押ししました。さらにR指定という制約がありながらも成人向けのダークなテーマが逆に話題性を生み、観客の興味を刺戟した点も見逃せません。社会的な論争や批判がメディア露出を増やし、興味を持った層が劇場に足を運ぶ構図になったのだと思います。比較対象として名前が挙がりやすい『The Dark Knight』とは制作規模やフランチャイズ性が違うのに、興行的インパクトという点で並ぶほどの存在感を示したのは興味深いですね。
公開当時の興奮は今でも鮮明に覚えている。制作費に関する公式発表は分かれているものの、一般に報じられているのは制作費が約5500万ドルという数字だ。興行収入は世界で約10億7400万ドルに達しており、単純に比較すれば約19.5倍という驚異的な比率になる。
もちろん、制作費以外に宣伝費(P&A)がかかる点や、劇場と配給の取り分がある点も考慮するべきだ。宣伝費を例えば1億ドルと仮定すると総コストは約1億5500万ドルになり、収入配分を踏まえたスタジオの手取りを見積もると実際の最終的な利益はもっと複雑な計算になる。それでも、制作費が比較的抑えられていたことは間違いなく、投資効率の高さでは『Joker』は例外的な成功例だ。
個人的には、リスクを抑えつつ強烈な話題化を生み出した点が興味深い。商業的成功と芸術的評価の両立は珍しく、同じような低めの制作費で大きな結果を出した例として『The Dark Knight』とはまた違う軌跡を描いたと感じている。