翻訳作業において、タイトルは常に最大の難関の一つです。この場合、『Disqualified from Being Human』なども考えられたはずですが、『No Longer Human』の方が文学的で、かつ海外読者にとってのインパクトを考慮した選択だったのでしょう。太宰文学の翻訳史の中でも、特に成功した例だと言えます。
『人間失格』の英訳で特に印象的なのは、冒頭の『私は、いや、人間でさえなかった』という一文ですね。Donald Keeneの翻訳では『I have even lost the right to call myself human』と訳され、主人公の自己否定感が強く伝わってきます。
太宰治の原書では『生れて、すみません』という言葉も有名ですが、英訳では『I was born to apologize』という表現に。このニュアンスの違いは翻訳の難しさを物語っています。特に『すみません』のニュアンスを英語で再現するのは至難の業で、訳者によって解釈が分かれる部分です。