グリム童話の『眠れる森の美女』とディズニー版の『眠れる森の美女』を比べると、まるで別世界の物語のようだ。原作では、王女が100年眠り続ける間に城は茨に覆われ、多くの騎士が命を落とす。ディズニーがこの暗い要素を削除したのは当然かもしれないが、それ以上に驚くのは悪役の変化だ。原作の呪いをかけるのは13人目の妖精という脇役的な存在だが、ディズニーではマレフィセントという複雑なキャラクターに昇華している。
音楽と色彩の魔術もディズニーならではだ。『Once Upon a Dream』のワルツは、原作にはない情感を生み出している。アニメーション技術を駆使したバックグラウンド美術は、中世ヨーロッパの雰囲気をよりファンタジックに描き出した。特に城のデザインは、グリム兄弟が想像したものよりはるかに華やかで、現代の子供たちの夢に残るイメージを作り上げている。
王子の役割も大きく変わった。原作では単なる「目覚めのきっかけ」でしかなかったが、ディズニー版ではフィリップ王子は自らの意思でマレフィセントと戦う。この変更は、受け身だった女性像を変える試みとして評価できる部分もある。ただし、原作の持つ運命論的な味わいが失われたのは少し寂しい。