author-banner
涙乃
涙乃
Author

Novels by 涙乃

婚約者を寝取った義妹と浮気した婚約者に命懸けの復讐をしようと思います〜待っていたのは、溺愛でした〜

婚約者を寝取った義妹と浮気した婚約者に命懸けの復讐をしようと思います〜待っていたのは、溺愛でした〜

「うふふ、お姉様ってば、やぁだ、顔が死人のようですわ。あら、やだ、私ってば本当のことを……」 ツインテールの髪を指でもて遊びながら、にたにたと笑っている義妹イリナ。 無垢な聖女とは名ばかりで、私の婚約者を寝取り、しかも私を殺そうとした義妹。 大人しく殺されたりなんかしないわ。 「どちらが正しいかはっきりさせましょう」 聖女の儀式を行うことで、復讐するわ!
Read
Chapter: あの時のこと
「あぁ、ユリア、ここにいたのですか、探しましたよ」 「カイル?ふふふ、どうかしたの?きゃぁ」 窓辺にあるソファーで寛いでいると、血相を変えたカイルが室内に飛び込んでくる。 私の姿を捉えると一目散に飛びつくようにぎゅうっと強く抱きしめられた。 「ど、どうしたの?ちょっと紅茶を飲んでいただけよ」 「これからはどこにいるのか逐一報告してください」 少し掠れた声と吐息が耳に入ってくる。 その様子からかなり心配をかけてしまったのだと反省する。 カイルの背中に手を回して「家の中なのに?」と安心させるように明るく問いかける。 「んん⁉︎」 すると、ぐるんと視界が反転したかと思うと、カイルの膝に乗せられて、唇を塞がれていた。 「家の中でもです。どの部屋にいるのか逐一私に、お願いですから」 「え、えぇ、分かったわ、カイルは心配性なのね。でも、レオナルド殿下やイリナがここに来るとも……思えない……カイル?」 あれ?なんだかひんやりしてきたわ。 カイルの膝に乗せられた状態なので、上から覗き込むようにカイルと視線を合わそうとする。 「ねぇ、カイル?少し瞳が……何か気に障るようなことを言ったかしら……」 「──」 「え?カイル、なんて言ったの?」 「ユリア、あなたの口からバカルド殿下のいや、もう廃嫡されたのだったな、バカルドという言葉が聞こえたからです」 「バ?ちょっと、カイル、いくらなんでもそんな呼び方はいけないわ。人を貶めるようなことをしてはだめでしょう?」 「散々、あいつらはユリアに酷いことをしたのに?あぁ、ユリア、あなたは優しいですね」 「んっ!ちょっ、カイル、まだ、こんな時間に…」 またしてもカイルにベッドへと連れ去られそうになるのを、なんとか制止しようと試みる。 「カイル、でも、お仕事は大丈夫なの? カイルのような優秀な魔術師がいなくなって、今頃は混乱しているでしょうね、そう言えば、この国での私たちの立場はどうなっているの?」 「知りたいですか?」 どこかいたずらを仕掛ける前の子供のような無邪気な笑みを浮かべたカイルは、そっと私をソファーへと腰掛けさせる。 そして空間から花束を取り出すと、私の前に膝をつく。 「わぁ、きれい!私に?」 「ユリア、覚えていますか?あの時のこと。こうして、あなたにプロポーズをした」 「えぇ、
Last Updated: 2026-07-12
Chapter: 懲りないイリナ③
流行る気持ちを抑えて、カイルの立ち去った方向へと歩き出す。 もし、もしも、カイルがイリナと愛し合っていたら…… カイルのいない世界ではもう生きている意味なんてない…… 絶望感に苛まれて足取りも重くなる。 その時、指輪が熱くなるのと同時に、背中にすごい衝撃を感じた。 (お姉様許さない! 死ね! 呪いをかけた者が死ねば呪いが解けるはずよ! 死ね死ね!) 「きゃーーーー」 「人が、人が、刺された!すぐに騎士団を!」 何が……起こったの… 地面に倒れていくときに、銀髪の男性が遠くに見えた。 朦朧としているので、男性が二人いるように見える。 もう……私……だめなのね…… カイルがイリナと愛しあっている所を見なくてすむのだから、良かったのかもしれない あなたのいない生活なんて……もう考えられないから…… もう………死んでもいいわ…… 「ユリア‼︎ ユリア!くそっ!あばずれでもやはり聖女か! 聖女の力には私の防御でも防げないのか! 」 ✳︎✳︎✳︎ 「ユリア? ユリア?」 「んん……?」 「あぁ、ユリア良かった!良かった!」 深い眠りから目が覚めて、まだぼんやりとしていると、ガバリと上体を起こされて抱きしめられた。 「え? カイル?カイル! 戻ってきてくれたのね!うぅ…カイル……私、あなたがイリナと……うぅ……夢だったのね…カイル…もうどこにも行かないで!」 カイルの首に手を回して力の限り抱きしめる。 もう、絶対に放さない 「ユリア……どこも、なんともないですか? 」 トントンと優しく背中をさすってくれるカイル。 カイルの温もりを感じて、現実なのだと実感する。 「えぇ、大丈夫。なんだか長い夢を見ていたみたい……心配かけてごめんなさいカイル」 両肩に手を置いて心配そうに顔を覗きこんでくるカイル。 サファイアのような瞳が、揺れている。 どうしたの? そんな表情をするのはどうして? あれは夢ではなかったの? 「ユリア……(許してください) 愛しています」 「私の方が愛しているわ!」 空白の日数を埋めるように、二人は、何度も何度も求めあい気持ちを確かめあった。 ✳︎✳︎ユリアが寝静まったころ✳︎✳︎ 水晶に手をかざし、カイルはぶつぶつと何やら呟いている。 「ユリア……純粋な貴方に嘘をつく私を許してください……
Last Updated: 2026-07-11
Chapter: 懲りないイリナ②
✳︎✳︎✳︎ (だぁー! もう!なんなのよ! むかつく! むかつく! むかつく!うっとうしい! ) ツインテールの髪を振り乱し、手当たり次第に目についたものを投げつけている女性。可憐な容姿とは裏腹に、鬼のような形相を浮かべている。鬼気迫る様相に、本当に聖女であるのかと疑うレベルだ。 「わぁ⁉︎ イ、イリナ、やめてくれ! 危ないだろう! どうしたんだ、イリナ、落ち着くんだ!」 (もう、なんなのよ! なんなのよ! うっとうしい! どうして私がこんな生活をしないといけないのよ! 私は聖女なのよ! どうして王族でもなくなったこんな人と結婚しないといけないのよ! あんたなんか、見た目がいいだけじゃない! 第三王子殿下との婚約話はどうしてなくなったのよ! 王命ってなによ!認めない認めない! 私は聖女なんだから! もう、こっちに来ないで! ) 「イ、イリナ、落ち着いてくれ! 僕がこんな姿になったせいで……」 レオナルドは車椅子に手をかけて、哀しげな表情を浮かべている。 (本当にそうよ!全部、全部、あんたのせい! ) 「僕がユリアのグラスに毒を入れたせいで……きっと、神の怒りに触れたんだ……すまない……聖女であるイリナが声を失うなんて…全部僕のせいだ。イリナ……」 どんなに物を投げつけられようとも、怯むことなくレオナルドはイリナへ近づくために必死に車輪を回す。 赦しを請うように胡乱な目を向けられて、イリナはふと手を止める。 (そうだわ、あの女……、お姉様はどこに行ったの? あの儀式の後からどうもおかしいわ。 私に夢中だったはずの殿方達からは、手紙さえ届かないし。 巡礼に行かないと援助は打ち切ると国王は脅迫してくるし! あの、おいぼれ達のうるさいことったら、あーむかつわ! あ、そうだわ! お姉様を探して連れ戻せばいいのよ。 声がでなくなったのもお姉様が何かしたのね? あはは、お姉様てば、嫉妬に狂ったのね? 大丈夫よ、元通りにすればいいんだから。お姉様、レオナルド殿下はお返ししますわ。もう、用無しよ。 私は第三王子殿下と結婚しますわ。 あはは) 「──イリナ? 機嫌が直ったの? 」 (触らないで!) レオナルドの手を叩き落とし、イリナは不敵な笑みを浮かべて走り去った。 (ぶるぶると悪寒がする。何かしら?) イリナは誰かの視線を感じて、周囲を
Last Updated: 2026-07-09
Chapter: 懲りないイリナ①
「なるほど……バカではなくクズだったか……そちらがその気なら、私も遠慮なく動けるというもの。手を出すとどうなるのかの見せしめになってもらおうか。ふふふ……思いしるがいい! ──っ⁉︎ 」 「カイル? どうしたの? 誰かと話しているの? さっきからノックをしているのに、返事がないものだから……勝手に開けてしまってごめんなさい。また後から来るわね」 「ユ、ユリア⁉︎ ち、ちがうのです……ちょっとした……そ、そう、研究をしていたのですよ。このままここにいてください! もう終わりましたから! 」 執務机の上にある水晶に手をかざし、ぶつぶつと呟いていたカイル。立ち去ろうとしたユリアを引き止めようと、血相を変えて駆けつけると背後から抱きしめる。 「ちょっと、カイル、びっくりするじゃない。あの水晶で何かの研究をしているの?」 ぎゅうっと更に強く抱きしめられて、私の肩に顔を埋めているカイル。 首筋に柔らかな感触がする。カイルの唇が無意識にあたっているのかしら。 なんだか、段々と痛みを感じているような……? 「カ、カイル! ちょっと、ダメ、跡がついたら困るわ。やっとデコルテの開いたドレスを着られるようになったのに……」 あぁ、これはきっとまたくっきりと跡がついてしまったわ。また首元まで隠れるドレスに着替えないと……。 「ユリア、着替える必要はありませんよ。恥ずかしがる必要はありません、私しかみないのですから。心配しなくてもここには誰も訪れませんよ。ユリアを誰の目にも触れさせるものですか。それとも、どこかに出かけたいのですか? 何か足りなかったでしょうか? 何か欲しいものがあれば私が手配しておきますから」 確かに、ここに暮らし始めてから、カイル以外と会ったことはない。部屋は清潔だし、食事や入浴の準備もされている。 着替えは一人でもできるようになったけれど、ほとんどカイルが全ての世話をしてくれる。 魔法で全て……? うーん、色々謎だけれど、不自由はしていないしとても充実している。 今までは次期王妃となるべく、一日のスケジュールが王妃教育のカリキュラムでビッシリだった。 授業のない時には、お茶会という名目の交流会やら、夜会での諸外国の要人の接待やら、レオナルド殿下の代理のような真似をさせられていたわね。 おかげで窮屈なコルセットが苦しくないくらいに痩せてしま
Last Updated: 2026-07-08
Chapter: 溺愛されていました
「ユリア、何を考えているのです?何か不安なことでもあるのですか?ユリアを悩ませることがあるなんて耐えられません。 全て私が消し去りますから。もしかして、まだあのバ……レオ…ふぅ、口に出すのも嫌ですね。ユリア──」 ぎゅうっと囲いこむように抱きしめられて、カイルのいい匂いが身体の中まで充満する。 初めてカイルに抱きしめられた時は、あまりにも恥ずかしくて、真っ赤になったものだから、熱があるのかと心配かけてしまったのよね。 ねぇ、カイル。復讐してすっきりはしないけれど、レオナルド様のことは何とも思ってないわ。 だって、「あぁ」とか「そう」とか、「イリナは?」とか、レオナルド殿下の発する言葉は少ないの。まともに会話したこともないもの。 だから、カイルが、バカ王子と言いそうになったことも、全然気にならないわ。 「カイル、ふふふ、悩みなんてないわ。あまりにも幸せすぎて、現実なのか信じられないだけよ。」 「ユリア、そんなことを言ってくれるなんて、私の方こそ夢を見ているのか?」 思わず頬をつねそうとしたので、そっとカイルの手を止める。 「もう、カイルったら。貴方の顔を自分で傷つけないで。大切な……んだから……」 すぐ目の前というあまりにも密着した状態で、カイルに見つめられてぼぼぼっと頬が紅潮する。 「ユリア、そんな可愛いことを言ってくれるなんて、責任はとってもらいますからね」 「責任って…昨夜も…沢山……」 「ユリア……」 言葉は優しいのに、貪るように唇を重ねてくる。 「カイル……待って……」 「もう、待ちません、ずっとずっと我慢してきました……あぁ…かわいい……ユリア……私のものです誰にも渡しません……どうして計画を全て打ち明けてくれなかったのです?」 赤い愛の痕を残しながら切なげな声でカイルが問いかけてくる。 「カイル……ごめんなさい…あなたを巻き込みたくなくて……」 「あなたが死ぬ気だと分かっていました。だから私も万が一の時は、後を追おうと覚悟していました……けれど、倒れた貴方を見た時、やはり我慢ならなかった。貴方を死なせるものかと必死で……気づいたら、あなたをあの場から連れ去っていました……」 「カイル……」 嬉しくて、頭がぽーっとする。 朦朧とする中で、ふと疑問が残る 「カイル、もしかして……死ぬつもりだったの?」 「ユ
Last Updated: 2026-07-07
Chapter: 待っていたのは……
✳︎✳︎✳︎ 私は聖女ではない。どちらが正しいのか、はっきりさせたいだけ。 浮ついた心で何も学ぼうとしないイリナへ、忠告したでしょう。 あなたは、どちらが聖女であるかはっきりさせましょう、と言っていたけれど。 何度も言っているわよね。聖女は、あなただと。 でも、聖女の儀式の条件を満たしてないけれどね。 この儀式が行われなくなったのは、道徳的な部分もあるけれど考え方の変化もあるのよ。 光魔法を使えること、 清らかな乙女であること、 殺生を行っていないこと、 肉を食していないこと、 全ての民に無償の愛を注ぐこと、 人を欺き裏切らないこと 以下略 とにかく細かく聖女の条件が記載されているの。国民の理想像の聖女の項目だから、あまりにも現実的ではなく、廃止になったのだけどね。 古は魔力持ちの家系は、生まれた時からベジタリアンを貫いたそうよ。 純潔を守るのは当然だけれど、最近は初夜にこだわらない風潮もあるし、聖女だから正妃になるとは限らないしね。 でも、イリナは聖女だから、当てはまらない項目が多いけれど死ぬことはないわよ。ただ、無傷ですむかは分からないけれど。 私は聖女でないから、本来なら死ぬはず……。 でも、儀式を冒涜する出来事が起こると、冒涜した者には裁きが下る。 私の聖水だけ少し濁っていたわ。急いでいたのか、完全に解けきっていないのに置いたでしょ? ねぇ、レオナルド殿下、どうしてそんなに殺したいほど私を嫌うの? あなたがもっと正式な手順をふんで、イリナとの婚約を望めばよかったじゃない。 イリナの行動を改めさせて勉強を勧めて、周囲を納得させる気概を見せないのはどうして? 私は婚約者として、ずっと努力してきたのに、こんな形で終わりになるなんて…… さようなら ✳︎✳︎✳︎ 「おはよう、愛しいユリア、よく眠れたかい?」 爽やかな声色で耳元に語りかけられてぱっちりと目を開ける。 「カイル、おはよう」 サファイアのような瞳が憂いを帯びて大きくなる。これ以上の幸せはないという笑顔をカイルは向けてくれる。 私はカイルに抱きしめられて朝を迎えていた。 亡命してからもう数ヶ月はたつ。 まさか、こんなに幸せな生活が送れるなんて思ってもみなかった。 この日の
Last Updated: 2026-07-01
傷だらけの令嬢〜逃げ出したら、騎士様に溺愛されました〜

傷だらけの令嬢〜逃げ出したら、騎士様に溺愛されました〜

母が亡くなり、父の遣いを名乗る者が訪ねてきて、貴族の邸宅に引き取られることになったソフィア。 到着早々に伯爵である父と、義姉アンジェリカの容赦ない罵声が、ソフィアの幼い心を打ち砕く。 「おまえはここで死ぬまで働くのだ!」 「邪魔よっ。あなたの顔を見ると虫唾が走るわ」 躾と称して酷い暴力を振るわれるソフィア。耐えて過ごしていたソフィアだったが、意を決して逃げ出した。  そして、治安部隊の騎士グレッグと出会う。                     「ソフィア、何か困っていることはないか?」                                      何かと気にかけてくれるグレッグに、徐々に惹かれていくソフィア。                                   自分の気持ちに正直になってもいいですか?      傷だらけの令嬢ソフィアと、一途な騎士グレッグのストーリー
Read
Chapter: 後日談 ソフィアの社交界デビュー
煌びやかに着飾った貴族達が本日の主催者へ挨拶の列を作っている。 「フォルスター侯爵様、本日はお招きいただきましてありがとうございます」 「リリアーナ様は侯爵夫人に似て、とてもお美しいですね。ぜひ私共の息子を紹介━━」 「おかしいですね?客観的に見てもリリアーナは私に似ているのだが?妻からも自分よりも私に似ていると常々言われている。あなた方の目はふし穴か? それとも私の容姿を愚弄しているのか?」 エドフォード侯爵は、ギロリと目線を動かし威嚇する。 「い、いえ! た、た、確かに侯爵様にそ、そっくりでございます! そ、それでは、失礼致します! いくぞっ」 挨拶もそこそこに、逃げるようにその場を去る貴族達。 エドフォードの逆鱗に触れることがあってはたまらないと、以降の貴族達は余計な事を口走ることもなかった。 あわよくば、息子をリリアーナの婚約者にと考える者も多い。滅多に社交の場に姿を表すことのないリリアーナがいるので、取り入る機会を窺っていた貴族達にとっては絶好のチャンスのはずだった。 「あなた、いくらリリアーナが可愛いからとはいえ、そのようなお顔をされていたら、皆が怯えてしまいますわよ」 笑っているのを隠すように、扇子で口元を覆いながら、レティシア侯爵夫人は夫へ苦言を呈する。 「別に普通にしているだけだ」 「うふふ、わざと怖いお顔をされているのでしょう? でも、あと少しの辛抱ですわよ、ねぇ? リリー」 「リリアーナ、本当に良いのか? 今ならまだ取りやめることもできる。お前が望むなら、断ることもできる」 「お父様? 王家からの申し出を断るおつもりですか?」 周囲に聞こえないように、リリアーナも扇子で口元を覆い小声で話す。 「相手が誰であろうともだ。私は、私達は、お前の幸せを誰よりも願っている」 「うふふ、リリー、子離れができないこの人にあなたの気持ちをきちんと伝えてあげて」 レティシア夫人に背中を後押しされるように、リリアーナは侯爵に向かい言葉を紡ぐ。 「お父様、私はアレクを、アレクセイ様をお慕いしております。私はとても幸せです」 「そうか、お前のその笑顔を見て安心した」 「どうか、心配なさらないで。お父様、その前に、ソフィアのお披露目をお願いしますわ。新しい家族の一員を」 「そうだな
Last Updated: 2025-12-21
Chapter: 後日談 アンジェリカの末路
※第二部 21 ソフィアside⑤の後 ✳︎✳︎✳︎ 「髪が……私の髪が……なんでよ!なんで私がこんな酷い目に合わないといけないの!」 アンジェリカはグレッグによって切り捨てられた自身の髪の毛を拾い胸に抱き締める。 「あぁ……」 かつては毎日念入りに手入れされていた髪━━ここしばらくは匿われていたとはいえ、逃亡生活のせいで充分なケアができなかった。 それでも、ソフィアなんかとは比べものにならないくらい価値がある私の髪よ。 大きな宝石があしらわれた髪飾りをつけて、夜会に参加していた時に思いを馳せる。 ちょっと話しただけで、殿方から沢山の贈り物が届いたわ。私に気に入られようと必死にアピールしてきてたのよ。私は選べる立場の人間なの! なのに……なによあの騎士は! 「どうしてよ!……私は何も悪くないのに!」 虚な目を動かすと、先程の銀髪の騎士がソフィアを抱きしめているのが見える。 アンジェリカは、自身の親指をギリギリと噛み締めた。 「ソフィアのくせに!全部あんたのせいよ!」 グレッグとソフィアが抱き合っている姿を見ながら、ぶつぶつとアンジェリカは毒を吐く。 グレッグの傍に置かれた剣から、キラリと鈍い光が放たれる。 その瞬間、アンジェリカは我に返る。 「いやよ……殺されるなんていやよ……」 先程グレッグに剣を向けられた恐怖が甦る。 あの男は私を殺す気だわ 思い通りにさせない! アンジェリカは物音を立てないように立ち上がる。淑女教育は厳しく受けてきた。音を立てないように動くなんて、簡単なことよ。 こんな時に役に立つなんて皮肉だけれど。 アンジェリカは息を押し殺しながら、部屋からそっと抜け出すことに成功した。 (あはは!やったわ!そんな貧相な女に気を取られるなんて愚かな男。容姿は綺麗かもしれないけれど、その時点で大した男ではないわね) 最初はゆっくりと歩いていき、距離が取れた後は一目散に駆け出した。 「許さない!許さない!許さない! どうしてこの私がこんな目に…… 覚えてなさい馬鹿なソフィア!絶対に許さないんだから!」 人の気配がする度にアンジェリカは物陰に隠れてやり過ごした。 薄暗い地下なので上手く進めていたが、邸に辿り着いてからが厄介だった。 複数の騎士が邸の
Last Updated: 2025-12-21
Chapter: 番外編 グレッグの妄想理論ふたたび
22 ソフィアsideの後 グレッグ独自の妄想理論です ✳︎✳︎✳︎ グレッグはソフィアを横抱きにして、部屋から出ようとして立ち止まる。 「ソフィア、ジャック殿を探しに行く前に、確かめたいことがある。 ストックホルム症候群を知っているか?」 「ストック……? す、すみません、聞いたことがありません」 「知っている者の方が少ないかもしれない。 ストックホルムとは、とある国の地名らいい。 ここではない、どこか別の異世界のことを書き記した文献に記載されていたのだ。」 「異世界ですか?」 「あぁ、異世界で実際に起こった事件に由来するそうだ。 誘拐や監禁など、犯人の拘束下に置かれた 被害者が、長時間共に過ごすうちに、犯人 に対して特別な感情を抱いてしまう状態の ことだ。 恋愛感情を抱く者もいるらしい。 もしかしたら、ソフィアも…… ジャック殿に対して……恋心を抱いてしまったのではないかと…… すまない……今はそんなことを言っている時ではないと分かっているのだが…… ソフィアに捨てられるのではないかと 不安なのだ……」 「捨て……? グ、グレッグ様どうなさったのですか? 私がグレッグ様以外を好きになるなんてありえません! あ、あの、私ったら何を言って……恥ずかしい… グレッグ様は、色々なことにお詳しいのですね。 ですが、その症候群には私は当てはまらないと思います。 ジャックは、そもそも犯人ではありませんし……お世話になった方ですし」 「だが、長時間拘束された状態で、非日常的な経験を過ごしている…… 精神的負担も大きかっただろう。 それでだな、ソフィア、その……考えたのだが、私も同じ状況を経験した方がいいと思う。 そうすることによって、ソフィアの気持ちが理解できるし、どのようなケアが必要かも分かるはずだ。 ソフィア、つまりだな……コホン……私を縛ってくれ」 「えっ!縛るだなんてできません。わ、私は大丈夫ですのでっ」 「ソフィア、心的な負担を負っていることは、本人が気づかない場合もある。 何も縄で縛って欲しいと言っているのではない。 このままの状態で、首に腕をもっと強く回して……そして」 グレッグ様は私のことを…好…きですよね…?」
Last Updated: 2025-12-20
Chapter: 番外編 グレッグの妄想理論セラピー
※グレッグの独自理論です。事実とは異なります ✳︎✳︎✳︎ ソフィアの部屋にて グレッグとソフィアは並んでソファーに腰掛けている。 「ソフィア、タッピングセラピーを知っているか?」 「タッピングセラピーですか? いいえ、聞いたことがありません…… それはどういったセラピーなのでしょうか?」 「タッピングセラピーとは、感情や感覚をつかさどる経路を、タッピングすることで、扁桃体を落ち着かせるのだ。 つらい記憶や、心理的ストレスを緩和する効果がある。 それでだな…ソフィア。 私は、タッピングセラピーの心得がある。 試させてもらえるか? ソフィアのつらい記憶を、忘れさせたい のだ。 傷ついた心を、私に癒させてほしい。 ソフィアはただ黙って、身を任せてくれた らいいから。」 「グレッグさまは、博識なのですね。私のためにありがとうございます」 「では、オホン……最初に念を押すが、これは治療なのだ。決してやましい気持ちはない」 「分かり……ました。よ、よろしくお願いします」 「では、ソフィア始める。 途中で辞めると効果が半減する。 なので、私が終わりの合図をするまで我慢してほしい。 ソフィア、まずここに座ってもらえるか?」 グレッグは、ソファーの上で胡座を組んで座り直してソフィアを誘う 「えぇっ⁉︎ そ、そこ……でないといけないのでしょうか…」 「あぁ、これも治療の一貫なのだ」 「そ、そ、そこに……座るのですね……?」 グレッグは躊躇うソフィアの腕をとると、ぐるんと回転させながら自身の足の上に座らせる。 ソフィアを背中から抱きしめて、その肩の上に顎をのせる 「まずは、耳からだ」 「ひゃっ⁉︎ あ、あの、」 ソフィアは座っている場所も落ち着かないのに、背中に密着したグレッグの顔が急接近してきて、あわあわするばかりだ。 「ソフィア、動かないで……じっとして…」 グレッグは、ソフィアの背後から耳を軽く喰んでいく。 「動かないで」と、耳元で時折囁きながら、ゆっくりと喰んでいく。 耳、頬、首元へと順番に唇を落としつつ、喰んでいく そして、首筋を舌でなぞると、ちゅうと勢いよく吸い付き始める ソフィアはチクリと首筋に軽い痛みを感じて、両手でそっとグレッグを押し退けようとする 「いゃっ、グレッグ様、待
Last Updated: 2025-12-20
Chapter: エピローグ
✳︎✳︎✳︎ 囚われてノーマン邸で一夜を過ごし、 全てから解放された時には、空が茜色に染まる頃だった アレクセイ様とリリアーナ様とは、早急にお別れの挨拶をした 何度もリリアーナ様によって一緒に連れて行かれそうになったけれど、グレッグ様が断ってくれた 近日に必ず会いましょうと声をかけてくださったのが嬉しい ジャックは一人で帰路についた 何度も謝罪されたけれど、ジャックのせいではないのに…… ジャックには改めて、今度グレッグ様と三人で会いたいと思う グレッグ様と共に、ノーマン邸から馬車で街まで戻ってくることができて、見慣れた街並みを見てほっとする 「ソフィア、三日月亭までもう少しだ。 少しだけこのベンチで待っていてもらえるか? すぐに戻る」 声を出す気力がなく、黙ってコクリと頷いた あたりの店は、ちらほらと閉店の札を掲げつつあった。 グレッグはソフィアの安全確認を怠らず、常に周辺を警戒しながら、早急に近くの店に飛び込んだ 「ちょっと尋ねるが、この店に今薔薇の花は何本ある?」 「いらっしゃいませ、贈り物にご利用でしょうか? 何本の希望ですか?」 「今何本あるだろうか? できれば 999本お願いしたい」 「えぇっ⁉︎ そ、その本数はないかと思います」 「ここに出ているだけなのか? パッと見たところ282本といったところか…… 珍しいな、青い薔薇があるのか」 「はい、こちらの花言葉は夢叶う・奇跡などです。プレゼントにもおすすめですね」 グレッグはざっと青い薔薇の本数を目視で確認する 「ならば、101本お願いする。早急にだ。釣りはいらない」 「ひゃく……しょ、少々お待ちください」 心なしか慌てふためく店員から、花束を受け取り店を後にする ソフィアには、やはり赤よりも青いものを手渡したい 自分の瞳を思わせる青いもので…… グレッグは購入した花束を持って、ソフィアのもとへと戻って行く 噴水の傍のベンチに腰掛けたソフィアは、グレッグが戻るのを待っていた 今日は色々なことがあり、心身共に疲弊していた そのせいもあって、自然と足元を見るように俯いていた 「ソフィア」 ふと頭上から優しく呼びかけられたかと思うと、グレッグが片膝をついてソフィアの目線を
Last Updated: 2025-12-20
Chapter: (閑話) 証明
~27話後~ グレッグはリリアーナに対して、敵対心を剥き出しにする。 「リリアーナ嬢、あなたはひとつ重要なことを忘れている。そもそも私以上にソフィアのことを大切にできる者など存在しない! いや、存在できる訳がない! (ソフィアに懸想する者が現れようものなら、問答無用で相手が誰であろうと消すからな だが、万が一、万が一にでも、ソフィアが 私以外の男を…… ダメだ、考えたくない。だが…… もしもソフィアが私以外の男に好意を寄せ、ソフィアのことを大切にしてくれるのならば…… その時は死ぬ‼︎ 生きてる意味などない)」 「最後のその長い間はなんですの? グレッグ殿、私にはあなたの心の呟きが聞こえましたわ。 ソフィアに危害を加えることはなさそうですが、あなたは俗に言う所のやばい人ですわ。 ちょっと顔が整っているからと言って許されることではありませんわ! アレク、あなたと交流があるようですけれど、排除しても構わないかしら?」 「う~ん、殺しても死なないと思うよ。 リリー、できれば短時間でお願いできるかな。ソフィア嬢を休ませてあげたい」 「ご心配なさらずとも、秒で決着つけますわ。ソフィア少しだけ我慢してちょうだいね」 「リリーは一度言い出すと誰の言葉にも耳を貸さないから。ソフィア嬢、立っているとしんどいだろう。こちらへ座るといい」 先程の黒いマントを身に纏った男性が、どこからかソファーを運び入れていた グレッグのマントに身を包んだソフィアは、アレクセイにエスコートされてソファーに腰掛ける 「殿下! ソフィアと離れてください」 「ん?あぁ、分かった……って、グレッグ、お前なぁ。お前こそリリーを傷つけるなよ」 「アレクセイ様、申し訳ありません。」 「いや、ソフィア嬢が謝ることではない」 グレッグの鋭い視線に耐えかねたアレクセイは、ソフィアと距離をとって腰をおろした 「あ、あの……いったいお二人は何を争っているのでしょう?」 ソフィアは、自分のせいでまたグレッグに迷惑をかけているのではないかと自己嫌悪に陥っていた 「ソフィア嬢は何も心配することなない。まぁ、少し見物しようか」 ソフィアは困惑するものの、二人の間に割り込めそうにないので、大人しく様子を窺うことにした
Last Updated: 2025-12-18
本当はあなたを愛してました

本当はあなたを愛してました

ゴーテル商会で働いているルーカスとリナは幼馴染。誰よりも想いあっていて、いずれは結婚するだろうと信じていた二人。 ある時、リナは取引先のエミリオから食事に誘われる。 その現場を目撃したルーカスから、浮気したと責められて、一方的に別れを告げられる。 きちんと話し合いたいのに、男爵令嬢のサラが商会を毎日訪れるようになり、二人の距離はどんどん開いていく。 大切に想うあまりに、別れることを決意したルーカス。受け入れられないリナ。そして、サラ、エミリオの想いも交錯する。 それぞれの辿り着く先は一一。
Read
Chapter: 最終話
体調も回復した頃、私はレナルドお兄様から呼び出しを受けた。 どんな時も表情を崩さないお兄様にしては珍しく、厳しい顔つきをしていた。 部屋の空気も重く感じられ、挨拶もなく用件を述べ始めたことに、私は言いようのない不安を感じた。 「サラ、あれだけ忠告したのに、君には伝わらなかったようだね。 ━━サラ、もう商会を君には任せておけない うちは信用が第一なんだ。 君たち二人揃って仕事を放棄して、何をやっているんだ! ルーカスのことは……君の耳にも入っているよね、健康上の理由だから仕方ないとして、君の軽率な行動は見過ごせない。 まるで、ルーカスに隠し子がいるかのように尋ねて回ったそうだね? 噂が私の耳にも届いたよ。 あぁそれから、君がルーカスを略奪したとか、今はどこかの富豪の愛人だとか色々とね。 いったい、きみは何がしたいんだい? この商会を潰す気なのか!」 「それはっ」 「何も言うな、聞け」 「この商会は私が引き継ぐ。 残念だけど仕方がない。 これ以上醜聞を広めることはできない。 今後、ゴーテルの名を名乗ることは許さないわかるね? ここからの発言は、兄としてだ。 サラ、身体のことは……女性にとってはつらいことだろう、 後継ぎが産めないことは致命的だ。 せめてもの家族の情として、 連れ戻すことはしない。 傷モノのお前の行き場は、限られてくるからな。 それなりの金額は渡す。 だが、そこまでだ。 後は自分でなんとかしろ。 あれだけ仕事がしたいと、女でも自立できると言っていたお前なら、大丈夫だろ? ルーカス達には、生活に困らないように援助をするつもりだ。 こちらにも責任の一旦はあるからな。 お前は二度と関わるな。」 口を挟む隙を与えず言い終えたレナルドは、言い忘れたことがあると付け加える。 「父上に泣きついても無駄だ」 「お父様も…同じ意見なの?」 「父上は、お前に甘い。父上が許したとしても、勘違いするな! 数年して私が当主になったら、すぐに追い出す。 家の汚点のお前を置いておけない。 つけこまれて、足元をすくわれかねない」 「レナルドお兄様……」 「私には━━もう……妹はいない」 レナルドは、一瞥することもなく立ち去った。 こんなにあっさりと縁を切られるとは、思わなかった……。 何をしても許
Last Updated: 2025-08-22
Chapter: 犯人
ルーカスが突然いなくなって、商会の雰囲気全体が沈んでいた。 私が追い出したのではないか、とか陰口も飛び交っていた。 商会のことを放棄することが増えていた自分は、完全に皆からの信頼を失っていた。 以前なら、自分の陰口を耳にすることなどなかったのに……。 ルーカスがどこに行ったのか、気にはなるものの、日々の仕事が滞ることがないように黙々と処理した。 責任者の自分がいるから回っているが、これが逆だったら業務に支障がでていただろう。 そう、以前自分がいなかった時のルーカスの大変さが身に染みて分かった瞬間でもあった。 そこで、ふと先ほど紅茶を用意したことを思い出す。 ルーカスの分を用意していた時の名残りだった。 気分転換に少し休憩をしようと、 カップを取りに向かった。 室内に入ると、誰かが用意していたカップに何か入れているのが見えた。 「何してるの?」 ふいに声をかけると、帽子を被ったその人物は、飛び上がらんばかりに驚いた様子で、慌てて走り出て行った。 不審に思い後を追いかける。 「待って!ちょっと」 走り去る後ろ姿を見失わないように、必死に追いかけた。 こんなに脇目もふらずに走ったのは、人生で初めてかもしれない。 これ以上走るのは無理かもしれない。 体力の限界を迎えそうな時に、 運よく逃走者が転倒した。 起き上がろうとしているところを、必死で後ろから掴もうとした。 その拍子に、被っていた帽子が脱げ落ちた。 隠れていた黒い髪が流れ落ちる。 見覚えがある人物だった。 「あなたは━━メグミさん?」 「あーあ、見つかったわ、ざーんねん、ほんとに悪運の強い人ねあなたは」 「どういうこと、どうしてあなたが商会にいるの?何してたの」 「はははは!何って?ほんとにおかしなお嬢様ね。 あーあ、思ったより元気そうじゃない もっと苦しんでると思ったのに あなたなんかいなくなればいいのに━━ 死ねばいいのに」 よく知りもしない相手から、明確な殺意を向けられて、頭が真っ白になった。 「なーにその顔は?分からない?でしょうね、でも先に奪ったのはあなたでしょ」 「奪う?」 「そうよ、ダーニャが死んで、チャンスだったのに 唯一の子のナタリーを取り込んで、フェリクスの遺産を独り占めする計画だったのに、横から急に入りこんできてさ!
Last Updated: 2025-08-22
Chapter: リナを探して
「二人に協力してほしいことがあるの」 私は、全てを打ち明けることにした。 政略結婚から逃れる為に、ルーカスと婚約を結ぶことになった経緯も含めて。 軽蔑されることを覚悟の上で。 そして、自分の行いを悔いて、ルーカスの為にも、リナを探していることを。 最初は、リナの父親へコンタクトをとった。リナに大切な話があるから、居場所を教えてほしいと。 リナは、心機一転出て行ったと、もう構わないで欲しいと一蹴された。 何度もおねがいしたけれど、 用件は自分が伝えるからの一点張りだった。 結局、連絡先は教えてもらえなかった。 仕方なく調査してくれる人を雇った。そして、リナが隣街に住んでいることが判明した。 子供がいることも。 いてもたってもいられずに、教えられた近辺に尋ねて回った。 引っ越してきたのは何年前か、 子供の容姿など、とにかく情報が欲しかった。あれからリナがどうなったのか、気になって仕方がなかった。 タイミング悪く、リナには会えなかったけれど。 「誰にも邪魔されずにリナと話をしたいの。もしも、リナと連絡が取れたら、この邸の部屋を借りてもいいかしら?」 「サラなら、いつでもこの邸は自由に使っても大丈夫だよ。 邸のことはいいんだけどさ、込みいったことを聞くけど、サラはその人と会ってどうしたいのか聞いてもいい? まぁ、私も人のことを言えるほど綺麗な人生送ってないんだけどね」 「━━償いをしたくて」 「償い? サラ、 厳しいことを言うようだけど、その人はサラに会いたくないんじゃないかな。 それでも、会いたいと言うのならば、その人をこれ以上傷つけないようにする努力は必要だと思う。 この先、同じように後悔することがないように」 「えぇ、分かってるわ。 もう、これ以上後悔したくないの。 だから、どうしても彼女に会いたいの!」 固い決意を込めた瞳で、フェリクスを見つめる。 フェリクスは、サラの強い意志を汲み取ると、これ以上止めても無駄だと判断した。 「そう……そこまで決意しているのなら、仕方ないね、応援するよ。 でも、一人で勝手に突き進まないで。 相談して。 いつでも話は聞くから。」 「ありがとう、フェリクス」 いい加減だと思っていたフェリクスだけど、親身になって相談に乗ってくれる一面に胸を打たれた。思わず目が潤ん
Last Updated: 2025-08-22
Chapter: 毒
✳︎✳︎✳︎ 「何をしている!」 「これは、調べているんです」 「手に持ったものを渡すんだ!」 「それはできません」 「これは何だ!何をいれたんだ!お前は誰だ?」 「何を騒いでいるの⁉︎」 騒がしい声が聞こえてきて扉を開けると、ルーカスとデボラが言い争っていた。 ルーカスは、嫌がるデボラの手首を掴んで、スプーンを取り上げようとしていた。 「ルーカス、デボラの手をはなして!」 ルーカスの手を振り解こうと近づいた瞬間、ルーカスは後ずさった。 まるで、ほんの少しでも私に触れられるのを拒否するように。 嫌われてることは知っているけれど、さすがに傷つく。 「デボラ、来てたのね。大丈夫?どうしたの、そのスプーンは……」 見覚えのあるスプーンをみて、デボラが何をしていたのか理解した。 そして同時に、そのスプーンが変色していることに気づき動揺する。 デボラは無言で頷く。 「ルーカス、デボラは私達を助けてくれたのよ!これは飲んではいけないわ!」 「サラ、また君は……。はぁ、 前にも言ったよね、新しく人を雇う時は教えてと」 新しく雇う? 以前ルーカスは、デボラのことを見かけたから、知らない人がいると驚くと言ったのではないの? 忘れているのかしら。 「飲んではいけないって、君が用意したものだよね?」 「た、確かに私がさっき用意したものだけど、おそらく私が離れた後に、誰かが何かしたのよ!」 「何かしたって、まるで毒でも入ってるみたいに言うんだね」 「多分、毒…かもしれない… 私も驚いてるわ、でも誓って私は何もしてない!」 「はっ!やってないか、犯人の常套句だね。 やはり自作自演か… 少しは改心したのかと、あやうく騙されるところだった。 もう同じ空間にいるのも耐えられないよ! 失礼する」 「ルーカス!」 立ち去るルーカスが少しよろめく。 心配で手を伸ばそうとしたけれど、振り払われる。 ルーカスの顔色が悪い。 よろめくルーカスの様子に既視感を覚えた。 まるで、体調不良だった時の自分のようだ。 大丈夫かしら。 やっとルーカスと挨拶くらいは交わせるようになっていたのに……。 唯一の接点だったのに。 いったい誰が毒を入れたの? 「サラお嬢様、お飲みにならなくて良かった
Last Updated: 2025-08-22
Chapter: 体調不良
✳︎✳︎✳︎ ある日のこと。 この日は、珍しくルーカスと鉢合わせた。 極力顔を合わせることがないように、必要な書類などは誰かに橋渡しを頼んでいた。 「お疲れさま」 「あぁ」 無視するわけにもいかないので、挨拶をした後立ち去ろうとした。 「サラ」 呼び止められて、ドキッと心臓が跳ね上がる。 何か文句を言われるのかもしれない。 思い当たることが多すぎて、耳を塞ぎたかった。 逃げるわけにもいかないので、姿勢を正して向かい合う。 すると、射抜くような視線を向けられた。 ルーカスの目をまともに見ることができずに、すぐに視線をそらす。 「新しく人を雇う時は、僕を通すか、一言連絡してほしい。 突然見慣れない人がいると、驚くじゃないか。 あぁ、それとも僕への嫌がらせで知らせないのかな? こっちは君と違って、お遊びで仕事している訳ではないんだよね。 お気楽なものだよね? 気が向いたときだけ働いて、都合が悪くなったらいなくなって。 こっちはその間必死で働いているというのに! せめて一言何か言うことはできないのか? 必死に探し回る僕を見て嘲笑っているのか? 君の署名が必要な書類があったののに……。 悪趣味だね……。まぁ、もっとも、君に何を言っても無駄だろうけど。 あぁ、それにその雇った人には、君は あまり好かれてないみたいだね。 飼い犬に手を噛まれるともいうしね。 せいぜい気をつけることだね」 「ちがう! 彼女は、従業員ではないわ━」 まただわ。 ぐらりと身体がよろめいた。倒れそうになるのを、近くにあった棚に手をついて支えることができた。 ルーカスは、ぴくっと片眉をあげて不審そうな顔をしている。 「はぁ、都合が悪くなったらそういう演技をするのか。 君って本当に……。」 「これは、本当に気分が……」 答え終わる前に、ルーカスは見向きもせずに退室した。 演技ではないのに……。 ルーカスの言っていた見慣れない人というのは、デボラのことだろう。 デボラは、表情に表さないだけで優しいのに。 何も知らないくせに。 あぁ、知らないのはお互いさまか。 いまさらどうしたらいいの……。 こんな私なんて、追い出せばいいのに! 立場上追い出せるはずないか。 分かりきってることなのに。 あぁ、気持ち悪い……。 一度、診
Last Updated: 2025-08-22
Chapter: 心境の変化
「バタフライピー? あぁ、もしかして彼女は、月のものの最中ではないですか?」 「えぇ」 先程、マリの着替えの介助をしたので間違いない。どうしても不安感が拭えなくて、この邸のメイド達だけに任せることができなかった。特に怪しい動きを見せる者はいなかったので、そこまで監視する必要はなさそうだった。 月経による貧血なのかしら……? 「バタフライピーには、子宮収縮作用があるのです。 アントシアニンという成分が、含まれていましてね。妊娠や月経中に飲みすぎると、出血が止まらなくなる恐れもあるのですよ。 なるほど、それが原因とも考えられますね。 旅の疲れも重なったのかもしれないですね。 しばらく安静に休ませてください。 それではお大事に」 「ありがとうございます」 一人で納得した様子で、医師は立ち去って行く。 長く呼び止める訳にもいかず、お礼を言って見送った。何の根拠もなく疑うのはよくない。まずは、自分で確認することが先決。 さっそく図書室の入室許可をもらい、バタフライピーについて調べてみる。 結果、医師の言っていた通りの内容が書かれていた。 飲食物の成分にまで、気が回らなかった。自分の落ち度に、気が滅入る。 異国の食べ物が口に合わずに、体調を崩すこともあると、聞いたことがあるのに……。マリには可哀想なことをしてしまった。やはり、ここまで連れてくるのではなかったわね。早く回復するといいのだけれど。 不可抗力だったのに、人為的なものではないかと、疑ってしまった自分に嫌気がさす。 あの時のマリの言った言葉が、少しひっかかるけれど……まだ、話せる状態ではないものね。 元気になった時にでも、詳しく尋ねてみましょう。その時は、笑い話になっているといいのだけれど。 ✳︎✳︎✳︎ 数日後。 マリの容態は、芳しくなかった。その為、このままここに留まるよりも、帰国したいというマリの強い希望を聞き入れることにした。 本来なら、回復してから帰国するつもりだったのだけれど。 無理のないように、休憩をとりながらゆっくりと進んだ。 帰り着いたのは、当初予定していた1ヶ月はとうに過ぎていた。 マリは、療養を兼ねて実家へと帰すことにした。 早く元気になってほしいわ。 この出来事は、何年も後に思い出すことになる。 ✳︎✳︎✳︎ 「サラ!よく来てくれ
Last Updated: 2025-08-22
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status