LOGIN【記憶を失った悪女の、人生を立て直す為の奮闘記】 池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われていることを知る。どうせ記憶喪失になったなら、今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知ることになる――
View More「どうもありがとう」御者にお礼を述べ、馬車を降りて校舎を目指して歩いていると背後から私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。「ユリアーッ!」振り向くとその人物はマテオだった。「あら、おはよう。マテオ」「ああ、おはようユリア」「いいの? ベルナルド王子の側にいなくても」「ああ。もういいんだよ。何しろ王子の方から俺達に離れてくれと頼んできたんだから」「ふ~ん……何故かしらね」すると今度は背後で大きな叫び声が上がった。「「あーっ!!」「げっ! アーク! オーランド!」マテオの顔色が変わる。「マテオッ! 勝手に抜け駆けするな!」「全く何て奴だ!!」「うるさい! 俺の勝手だろうが!」アークとオーランドが駆け寄って来ると3人は私の頭の上で口論を始める。どうやらこの3人は私のことを取り合いっこしているらしい。そもそも何故3人がこのような行動を取る様になってしまったかと言うと、オルニアスの話によれば、ノリーンが仕組んだ事の様だった。私の方からベルナルド王子への興味を失わせようとする為に、マテオ達をオルニアスの魔力で私に惚れさせて、彼等に口説かせて誰かと恋に落ちてしまえば王子からの婚約破棄に応じるだろうと言う筋書きだったらしい。オルニアスはノリーンに命じられるまま彼らに私を好きになる魔法をかけ、結果彼らは私の虜? になってしまった。そしてオルニアスのかけた魔法が解けた後も何故かマテオ達は私に好意を寄せたままの状態だった。オルニアスの見解ではマテオ達はどうやら始めから私を好きだったから魔法が解けても何も変わらないのだろう……と言うことだった。「はぁ~……もう付き合ってられないわよ」私は激しく口論を続けるマテオ達からそっと離れると急ぎ足で校舎の中へ入って行き、偶然にもテレシアに会った。「あ、おはよう。テレシアさん」「おはよう~見たわよ。またあの3人に絡まれていたわね?」「そうなのよ……本当に嫌になるわ」今では私とテレシアは親友と呼べる仲になっていた。「それで? ベルナルド王子はどうしてるの?」2人で廊下を歩きながらテレシアに尋ねた。「あ? やっぱり気になるの?」「う~ん……まぁ多少は? 何しろあのノリーンと付き合っているんだから」「そうよね~でもいずれ別れさせられるんじゃないかしら? 何しろ結局は王族と平民の仲だからね」「やっぱり…
呼び声に応えるかのように、突然何も無い空らセラフィムが姿を現し、私の前に立つとオルニアスと対峙した。「オルニアス。もうノリーンとユリアは和解したんだ。ノリーンはユリアの命を奪う事を願ってはいない。おとなしく魔界に帰るんだな」するとノリーン……いや、里美が声を上げた。「はぁ? ちょっと何言ってるのよ! 確かに和解はしたけれど、命を奪う事は願っているわよ? だって美咲の命を奪わなければ、私は一生彼から生活費と召喚代金としてお金を搾取され続けるのよ。冗談じゃないわ! 破産しちゃうわよ!」「ああ、確かに生活費は必要だな。おまけに魔力の全く無い人間に呼び出された為に人間界に現れるまでにえらく苦労させられたからな」オルニアスが頷く。「ノリーンには支払能力があまり無いんだ。少し位まけてやれないのか?」「ええ、そうよ。まけてちょうだいよ」セラフィムの言葉にノリーンは頷く。何ともスケールの小さい話を彼らは私抜きで始めた。「ちょ、ちょっと! 肝心の私を忘れないでよ!」ついに我慢出来ず、私は彼らの間に割って入ってきた。「どうした? ユリア」何故かオルニアスが妙に優しげな声で私を見る。そんな彼に警戒しながら訴えた。「お金が問題なら私が彼女の代わりにあなたに全額まとめて支払うから……お願いだから、そのお金を持って魔界へ帰ってちょうだい! そして二度と私の命を狙わないでよ!」「そうよ。ユリアが払ってくれれば、それでいいわ」「まぁ……ユリアは公爵令嬢だから、支払い能力はあるかもしれないが……」ノリーンとセラフィムが頷く。「……イヤだね」オルニアスは少しの間、私を黙って見ていたがそっぽを向いた。「何でよっ!!」里美はもう私には殺意は多分? 抱いていないのに、それでもオルニアスは私の命を狙っているのだろうか?「何でだって? それを俺に尋ねるのか? 前にも夢の世界で言っただろう? 殺すにはあまりにも惜しいって」確かに言われた気がするけれど……。すると次にオルニアスは耳を疑うようなことを言ってきた。「俺はユリアが好きだからな。傍にいたいから帰らないんだ。ユリアはもう王子のことはどうでもいいんだろう? だったら俺が相手でも構わないよな?」オルニアスが私の手を握りしめてきた。「はぁっ!?」その言葉に耳を疑う。「「ええええええっー!?」」ノリーンと
「ごめんなさい……美咲。私は前世で貴女に酷い嫌がらせばかりしてきたわ。それだけじゃない。交通事故に遭って死んでしまったのだって……私のせいなのよ……」里美が顔を覆って泣き始めた。「だから……だからきっと罰を受けたのね。前世の時よりも平凡な顔で生まれて魔法も使えない平民と言うポジションしか与えられなかったのよ……」「そ、それはちょっと違うと思うけど……」「いいえ! 違ってなんか無いわよ! 美咲は被害者だったから、公爵令嬢として……挙句にそんな美い容姿で生まれ変わることが出来たのよ!」そして里美は涙に濡れた瞳で私を見つめた。「美咲……今までごめんなさい……。だから……死んでちょうだい!」「はぁっ!?」いきなりの爆弾発言で驚いた。「ちょ、ちょっと待ってよっ! 普通、この話の流れなら、『どうか今までのことは全て、水に流してこれからは仲良くしてちょうだい』と来るのが筋じゃないの? それなのに、死んでちょうだいだなんて!」すると里美がヒステリックに叫ぶ。「だって仕方がないのよ! 呼び出した相手が言ったのよ! 『召喚者がこんなに未熟で魔力が全く無いとは思わなかった』って! それで……」 その時――「そうさ。この人間界に来るまでにどれ程の魔力を消耗たことか。普通なら召喚者の魔力を分けて貰うのだが、これっぽちも魔力を持っていないんだから驚きだよ」突然声が聞こえ、私と里美は慌てて声の方角を振り向いた。すると地面の上に光り輝く円が現れ、中からオルニアスが姿を現したのだ。「オルニアス! 生きていたのね!?」「ユリア…何を言っているんだ? 勝手に死んだことにしないで貰えるか?」オルニアスは呆れた様子で肩をすくめる。すると里美が声を上げた。「ほ、ほ、ほら! ここにターゲットがいるわ! 貴方にあげるから、これで契約も終わりよ! もうこれ以上付きまとわないでよ!」「里美……ひょっとして、あなたオルニアスに酷い目に遭わされていたの!?」オルニアスに生贄? として捧げられてしまうのは嫌だけれど、里美の置かれた状況も気になる。「人聞きの悪いこと言わないでくれ。俺はただ呼び出した責任を取って貰っていただけだ」呼び出した責任……? 一体何のことだろう? 私にはさっぱり見当がつかなかった。「呼び出した責任て何?」私は里美に尋ねた。「そんなこと、決まってるじ
「そうだったの……? いくら前世の記憶を無くしてたからと言って、貴女には酷いことをしてしまったのね」「ええ、そうよ。魔法が存在しているファンタジーみたいな世界に生まれ変われたのよ? なのに私は少しも魔法が使えなくて……まるで『お前は余所者だ』と突きつけられているようで心細くてたまらなかったところに、あんたが現れたのよ。それに私と同様魔法が使えないことが分って、ようやく自分はこの世界に1人じゃないんだって思えた矢先……。あんたは私のことを馬鹿にして、意地悪ばかりしてきたのよ! だけどこの世界じゃ、あんたは公爵令嬢、そして私はただの平民。どうすることも出来ないじゃないの!」里美……ノリーンは憎々し気な目で睨み付けて指さしてきた。確かに私は記憶の中で彼女を散々虐めていた。自分が魔法を使えないコンプレックスをノリーンにぶつけてきたのだ。それは明らかにノリーンの方が私よりも立場が弱かったからだ。魔法も使えず、さらに平民である彼女は私――ユリアにとっては都合が良い存在だった。 里美の怒りはまだ続く。「だから私はあんたに仕返ししてやろうかと思ったのよ。王子が婚約者だって知って、あんたが王子に良く思われていなことが分ったから、誘惑してやろうかと思ったけど……。所詮、こんな平凡な容姿じゃ無理だったのよ。だからあんたに仕返しして色々やってみたけど、どれもうまくいかなかったわ。いえ、違うわね。あんたを始末するのに自分の手を汚したくなかったのよ。それで召喚魔法を使って魔物を呼び出したのよ。私の代わりにあんたの始末をして貰う為にね。幸い私の祖母が腕の良い召喚士だったから呼び出すことは造作なかったわね。尤も下級魔族しか呼び出せなかったけど」「え……? 下級魔族?」そんな……ノリーンが呼び出したオルニアスはどう見ても下級魔族には思えない。だって彼は堕天使なのだから。ひょっとすると、ノリーンは自分が何を召喚したのかわかっていないのだろうか? だけど、私はもう逃げ続けるのは嫌だ。それに、全ての記憶をとり戻した今、自分がどれ程嫌な人間だったのかを知っている。「ごめんなさい、ノリーン。いえ……里美」私は膝をつくと、その場に座って土下座した。「は? あんた……一体何してるのよ?」「いい訳になってしまうかもしれないけれど、この世界での私は本当にいやな人間だったわ。家で家族から見下されて
「里美……それに……」立っていたのは小学生の頃からの友人だった里見だ。そして彼女の隣には気まずそうな様子で立っている元彼の圭介。「あら~凄い偶然ね。たまたま店の前を通りかかったら美咲の姿が目に留まったから声をかけようと思って来たのよ。ね、圭介?」「……あ、ああ。そうなんだ……」圭介は私と視線を合わせようとしない。それはそうだろう。私と5年も付き合った挙句に、彼はよりにもよって私にとって因縁の悪友ともいえる里美と深い関係になった挙句、別れを告げてきたのだから。その理由は……。「里美、いいの? ふらふら出歩いたりして、お腹の子に障らない?」そしてチラリと圭介を見た。そう、私と圭介が
「キャアッ! で……ムゴッ!」 「こら、騒ぐな!」突如現れた青年に私は口を塞がれた。「いいか? 静かにするんだ? 分かったか?」思い切り口を塞がれた私はコクコクと無言でうなずく。「よし……分かったならいい」青年は私から手を離すとため息をついた。「あ、貴方……さっきの男の人じゃないの…?」私は青年を見ると尋ねた。「いや、そっくりに見えるかもしれないが別人だよ」青年は隣の席に座ってきた。確かによく見ると着ている服が違う。先程の人物は濃紺のジャケット・スーツにYシャツ姿だったが、今目の前にいる彼はジーンズ姿にデニムジャケット姿だった。中にはパーカーを着ている。「あの……それで
「そう言えば、さっき学生食堂でノリーンとか言うメガネの女子生徒がまたベルナルド王子にまとわりついていたよな?」オーランドの話にアークが頷く。「ああ。それでベルナルド王子に命じられて俺たちが追い払ったんだよ。全くしつこい女だよ。俺から言わせれば、あんな王子のどこがいいんだか、気が知れないぜ」「俺だってそう思うさ。まぁ、相手が王子だからその地位に惚れて付きまとっている可能性もあるがな」「成程、そうなのね……」納得して頷く。それにしても彼らは分っているのだろうか? 仮にも王子に仕える身でありながら、言いたい放題言っている。こんなことが王子の耳に入ったら不敬罪に問われるのではないだろうか?
「ジョ、ジョン……」ジョンの姿に、気づけば打ち上げられた魚のようにパクパク口を動かしていた。嘘でしょう? ど、どうしてジョンがここに……?いや、そうでは無い。私はいつどこでジョンに命を狙われていてもおかしくないのに、セラフィムがジョンに傷を負わせて一時的に追い払った話を聞いて、すっかり油断してしまっていたのだ。しかも肝心のセラフィムは側にいないし、頼りにならなくてもいないよりはマシなベルナルド王子だっていないのだ。逃げなくてはいけないのに、逃げられない。いや、そもそも逃げ切れるはずもない。私の動揺をよそに、ノリーンはジョンに話しかけた。「え? ジョンさん? おはようございます。随
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