LOGIN異世界に転生した、まさにその瞬間のことである。 【終末逆転システム、ロード完了。マスターの運命の軌跡をシミュレート中……】 【16歳。故郷を離れ、「俺の伝説がここから始まる」と豪語する】 【38歳。冷遇されながらも、「俺は遅咲きなだけだ」と意地を張る】 【65歳。ゴブリンを掃討しながら、「生涯現役だ、俺はまだ終わらん」と抗い続ける】 【75歳。老い衰え、ゴブリンの手に掛かって死亡。死後の経緯は定かではないが、やがて世界には厄災の黒い潮が降臨する】 【棺桶が揺れ動き、システムの力で土中から這い出したあなたは、終末の世界で運命を逆転し、神となって世界を救うことを誓う】 【チュートリアルクエスト:3日以内に「汚染された凶犬」を発見し、討伐せよ】 田舎の少年に転生したばかりの鈴木維人(すずき いと)は、目の前に浮かんだチュートリアルクエストを見て、しばし考え込んだ。 朗報。転生してすぐにシステムが手に入った。 悲報。その大事なシステムは、どうやら数十年早く来てしまったらしい。
View More矢を受けたガースは痙攣しながら苦悶のうちに息絶え、地面には血が広がっていた。その光景はフィンチにかつてない恐怖を味わわせた。彼は地面に跪いたまま震え続け、先ほどまでのならず者じみた威勢は欠片も残っていなかった。凄んで見せたところで、本物の命知らずには敵わないのだ。大人しい者をいじめ慣れたチンピラも、自分を殺す気満々の維人のヤバい気配にぶつかった途端、凶悪な狂犬から尻尾を振って命乞いする負け犬へと一瞬で成り下がった。濃い血の匂いが鼻先にまとわりつき、泥と腐葉土の気配と混ざって、吐き気を催す臭いを作っていた。維人は何度か深呼吸し、気持ちを落ち着かせた。それから狩猟ナイフの腹で、フィンチの青ざめた頬を軽く叩いた。「立て」フィンチはサソリに刺されたかのように全身を震わせ、転がるようにして慌てて立ち上がった。だが両脚はガクガクと震え続け、まともに立っていられなかった。彼は地面に転がるガースの死体をもう一度ちらりと見たが、すぐさま目を逸らした。まるで一秒でも長く見れば、自分も同じ末路を辿るとでもいうように。維人は狩猟ナイフで、まだ温もりの残るガースの死体を指した。「こいつを運べ。ついてこい」「お、俺……」フィンチの上下の歯が触れ合い、ガチガチと音を立てた。維人の冷ややかな眼差しの中で、フィンチはゆっくりとガースの死体へ近づき、腕を掴んで引きずり起こそうとした。何度か引いたが、死体は動かなかった。濃い血の匂いが鼻腔に流れ込み、フィンチは両脚から力が抜け、また膝をついた。「お、俺には……運べません……許してください……お願いします……」維人は眉をひそめた。フィンチがとぼけているわけではないことは分かっていた。ガースは体格が大きく、体重は少なく見積もっても85、90キロはある。フィンチ自身は元々痩せているうえ、今は恐怖で腰が抜けていた。彼1人に死体を引きずらせるのは、確かに無理を強いる話だった。維人には、ここで時間を潰している余裕などなかった。彼はそれ以上何も言わず、前に出てガースの片脚を掴んだ。もう片方の手で狩猟ナイフを握り締め、フィンチへ向ける。「お前は反対側を持て」フィンチは震えながら這い寄り、ガースのもう片方の脚を掴んだ。2人は左右からガースの死体を引きずり、足元を取られながら、白樺の
「俺がオークヘイブンから逃げ出すと思っているなら、どうして見逃さない?逃げた孤児なんて、お前たちにとってもう何の脅威にもならないはずだろう」「このまま逃がしたら、俺たちのメンツが丸潰れだろうが」ガースは木の棒で維人を指した。「執事様が言ってたんだ。わざわいの……根を……ええと、なんだっけ?」彼はその言葉を思い出せず、そこで詰まった。横にいたフィンチが慌てて促した。「禍根を絶て、だ!」「そうだ!禍根を絶て!」ガースははっと納得したように叫んだ。「今日はこのガキの脚をへし折って、借用書に血判を押させねえと、俺たち2人は帰って報告できねえんだよ!」それを聞き終えると、維人はふっと気が楽になったように笑った。「禍根を絶て……お前たちの執事様は、悪役ボスみたいに、やると決めたら容赦がないな。正直、自分のやり方は少しばかりえげつないかもしれないと思っていたが、お前たちの執事様に比べたら、俺なんてチュートリアル中の初心者みたいなものだ」ガースとフィンチには、維人が何を言っているのかまったく理解できなかった。悪役ボスだのチュートリアル中の初心者だの、普段は黙りこくっていた少年が、病をしたせいで頭までおかしくなったのだろう。ガースはしびれを切らし、木の棒を振り上げると、早足で維人へ近づいた。「ごちゃごちゃうるせえ。まずはてめえを――」ビンッ!ガースが2歩目を踏み出したその瞬間、維人は弓を引き絞り、強化された視力でガースの顔を捉えた。弓弦が低く震える音を立て、静まり返った森の中でひどくはっきり響いた。弦を離れた矢は、銀色の稲妻のように2人の間の空気を切り裂いた。ガースには何も見えなかった。ただ、口元から抉られるような激痛が走った。矢は彼の開いた口へ正確に飛び込み、そのまま首を貫いた。「ぐ……ごぼっ……」ガースは悲鳴すら上げられず、喉の奥から意味をなさない掠れた音を絞り出すことしかできなかった。彼は信じられないように目を見開いた。手にした木の棒がカランと地面に落ち、両手でむなしく自分の口を押さえる。生温かい血と砕けた歯が、指の隙間からどくどくと流れ出した。突然の光景に、傍らのフィンチは完全に凍りつき、頭が真っ白になった。彼が何の反応もできないうちに、一つの黒い影が風を巻いて目の前まで迫っていた。
とはいえ、維人の道具を貸してほしいという頼みを、マークは断らなかった。彼はこっそりと家に忍び込み、すぐにニレの木の短弓、十数本の矢が入った古い矢筒、そして革の鞘に収まった柄のすり減った狩猟ナイフを持ってきて、まとめて維人の手に押し付けた。最後に、彼は懐から油布で包まれた小さな袋を取り出した。中には乾燥した火口と、硬い火打石が入っていた。「ほらよ。親父には内緒にしてくれよな、バレたら半殺しにされるから」維人は道具を受け取り、胸を打たれた。弓矢や狩猟ナイフは狩人にとって最も重要な仕事道具であり、家の食糧よりも価値があるものだ。マークが二つ返事で貸してくれたのは、自分を本当に親友だと思っている証拠だった。「マーク、やっぱりお前は最高の親友だ。将来俺が大物になって成り上がったら、必ずお前にもうまいもんを食わせてやるし、ピチピチのお姉ちゃんがいる大人のパラダイスで豪遊させてやるからな」「へへっ」マークは照れ笑いした。「いっそのこと、俺の義弟にならないか?マリーンはお前にガチ恋してるんだぞ」維人は真顔になって言った。「俺がそんな女の尻を追いかけて人生棒に振るような、安い男に見えるか?」マークは瞬きをした。どこか違うと感じたが、うまく言葉にできなかった。維人は慌てて話題を変えた。「そうだ、フォードにゆすられていることは、おじさんには言うなよ。俺が帰ってくるまで待ってくれ」「分かった、お前なら何とかしてくれると思ってた」マークは維人の装備を一瞥し、それでもやはり心配そうに言った。「エルヴィン、明日は俺も一緒に行こうか?2人の方が心強いだろ」「いや、1人で大丈夫だ」維人はきっぱりと断った。彼が向かうのはゴブリンを探しに行くためであって、本当に薬草を採りに行くわけではない。もしマークが真相を知れば、絶対に彼の足にしがみついて森へ行くのを止めるだろう。マークに別れを告げた後、維人は弓矢を背負い、腰に狩猟ナイフを下げた。装備を身につけた安心感を肌で感じる。彼は荒れ果てた自分の茅葺き小屋には戻らず、そのまま村の外へと向かった。夜通し歩き続け、明日の朝一番でゴブリンのクエストを完了させるつもりだった。維人の予想が正しければ、フォードはここ数日には手を下してくるはずだ。一刻も早く身を守る力を手に入れなければならない。
マリーンの頬は赤く染まっていた。彼女の手には、薄く蜂蜜をまとわせたしなびた野の実が握られている。しばらくためらった後、ようやく勇気を振り絞って維人の前にそれを差し出した。「エルヴィン、これ食べる?」残された記憶によれば、この体の本来の持ち主であるエルヴィンの顔立ちは整っており、肌も同年代の少年より白かった。近隣の村々でも唯一の美男子と言っていい。そのため、彼は女の子たちからかなり人気があった。維人は目の前のマリーンを見た。おそらく狩人の家系の遺伝子を受け継いだのだろう。わずか13歳にして、すでに大柄でがっしりとしている。引き締まった体格、四角く素朴な顔立ちに、太い眉と大きな目、厚い唇。実に頼もしい若武者といった風情だった。今、この勇ましい女の子は、大きな目で維人をこっそり窺い、そして慌てて俯いた。この好意に対して、維人は気まずさを隠しながらも礼儀正しく微笑み、蜂蜜漬けの野の実を受け取るしかなかった。「ありがとう」維人の声を聞いて、マリーンはさらに顔を赤くし、急いで母親の元へ走って戻った。横でこの光景を見ていたマークは、すぐに近づいてきて維人に目配せをし、肘で小突いた。彼は親友が自分の義理の弟になることを全く気にしていなかった。維人は呆れたように彼を睨みつけた。普通の兄なら、親友が妹をたぶらかさないよう、ほかの男から守るみたいに警戒するものだ。それなのにこのマークというやつは、自ら親友を妹に差し出そうとしている。バートがなかなか帰ってこないため、手持ち無沙汰になった維人は、マークの弟と妹に物語を聞かせ始めた。維人が「桃から生まれた少年が、きびだんご一つで猛獣たちを雇い、鬼の島へカチコミをかける話」に差し掛かった頃、外の空はすでに夕日に染まり、鮮やかなオレンジ色になっていた。粗末な木の扉が「ギィ」と音を立てて開いた。光を背にして、筋骨隆々とした人影が戸口に立っていた。肩には重そうな大弓を担ぎ、腰には狩猟ナイフと矢筒を下げ、手には丸々と太った野ウサギを2匹提げている。夕日の残光がその後ろ姿に金色の輪郭を描き、汗と山野の草木の匂いが入り混じった風が吹き込んできた。バートがついに帰ってきたのだ。彼が家に入ると、薄暗い火の光が風雪に耐え抜いた顔を照らし出した。そこには歳月と山林の過酷な痕跡が刻ま