人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~

人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~

last updateآخر تحديث : 2025-08-18
بواسطة:  黒蓬مكتمل
لغة: Japanese
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気が付くと見知らぬ場所に居た。 突然現れた観音様によると元の世界で俺は死んでしまったが、予定外のことらしく望めば別の世界で復活できるらしい。 突然のことで何が何やらだが、まだ死にたくはないし異世界で人生の続きを頑張ってみるか。 ・・・え?俺商人なのに金銭NGって冗談だろ?

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الفصل الأول

第1話 突然の選択肢

目が覚めると一面が真っ白な世界だった。

「なんだここは?俺は何でこんなところに?」

明らかに普通の場所ではない。スモークなどを焚いているのだとしても広すぎる。

目覚める前のことを思い出そうとするが記憶が朧気で思い出せない。

自分の名前、沢渡観世(さわたりあきつぐ)、25歳、職業:商人。

大丈夫。自分のことは覚えている昔の記憶も思い出せる。

分からないのは直近の記憶だけのようだ。

「そこの人間」

そんな風に自問自答しているとどこからか声が聞こえた。

「誰だ?」

「こっちだ」

声を頼りに後ろに振り返った途端、そのまま尻もちをついた。

そこには巨大な観音菩薩の仏像が浮いていたのだ。

「か、観音菩薩?なんでこんなところに?というかさっきまでなかったよな?どうなってるんだいったい・・・」

「お前を呼んだのは私だ」

「し、しゃべった!?」

再度、驚きの声が出る。確かに声は目の前の像から聞こえている。

誰かが揶揄っているのかと周囲を回ってみたが誰も居ない。

「納得したか。では、本題に入ろう」

「本題?」

「そうだ。いきなりでは信じられないだろうがお前は死んだ」

「は?俺が死んだって、何の冗談だ?」

「冗談ではない。お前は旅の途中、暴走してきた車に撥ねられて即死だった」

車に?そう言われて記憶に引っかかるものがあった。突如坂を乗り越えてこちらに迫ってくる車の映像がフラッシュバックする。

「ぐっ!今のは、、まさかあれが死ぬ間際の?」

「思い出したか。では、お前には二つの選択肢がある」

「待て待て、自分が死んだってことすらまだ信じられないのに。突然選択肢とか言われても・・・」

「そうだろうな。好きなだけ悩んで構わない。選択肢は天国へ行くか異世界へ行くかだ」

「異世界?いや、天国はまだ分かる。死んだら行くって言われてるからな。異世界ってなんだ?」

唐突に聞こえた不自然な単語に思わず疑問が声に出た。

「お前は選ばれた。輪廻の均衡を維持するための例外として。とはいえ元の世界に返すわけには行かない。だから別の世界で生きよということだ」

「輪廻の均衡ってなんだ?」

「詳しくは話せぬが、世には極稀にまだ死ぬべきでない者が早死にすることがある。そのような者達を全て死後の世界へ送ってしまうと輪廻に歪みが生じてしまう。それを防ぐため選ばれた者に生を謳歌させ均衡を保つようにしている。お前も選ばれた者の一人だ。」

説明を聞いても良く分からないが、たぶん生と死のバランスを取ろうとしているとかそういうことなのだろうか。

何にしろその話が本当なら俺には別の世界で生きるチャンスがあるらしい。

「なるほど。その異世界っていうのはどういうところなんだ?」

「お前の世界とは全く異なる成長を遂げた世界だ。科学技術ではなく魔法やスキルの力で発展している。」

「ま、魔法?」

またすごい単語が出てきた。いい大人ならとても信じられないだろう。

最近の一部の若者の間ではそういう話が流行っているらしいが俺は詳しくなかった。

「魔法やスキルって、その世界は安全なのか?」

「難しい話だな。お前の住んでいた日本という国を基準にすれば安全ではないだろう。その世界では街道を外れれば魔物に襲われることもあるようだ」

「魔物って、、熊とかライオンみたいなものか?いやいや、とてもじゃないけどそんなのと戦うなんてできないぞ」

「人里に現れる可能性は低いだろう。交通事故などに合う可能性とさほど変わらないと思うが」

そんなことはないと言いかけて思わず口を噤む。自分自身がその交通事故で死んでいるのである。

「それに町や村には門番や冒険者なども居る。旅をするなら護衛を雇うのも良いだろう。世界に適応させるため、お前の元の世界での知識、経験が異世界のものに変換されるので、有用な能力を身に着けられる可能性もあるだろう。」

「知識や経験を変換?それってどうなるんだ?」

「分りやすいもので言えば言語だ。異世界では言語が異なるがお前が送られる地域の標準語に変換される。複数の言語に精通していれば他の地域の言語も理解できるだろう。」

なるほど。確かに言葉が分からないのは致命的だ。ということは知識としてあるものは異世界で同様のものに置き換わると考えて良さそうか。

「一応聞くけど、向こうの世界の金銭価値とかも分かるようになるんだよな?」

「同様だ。お前が送られる地域を基準として日本の知識がその地域の知識に置き換わるはずだ」

「分かった。あとその世界って旅商人とかはいるのか?」

「あぁ、存在している」

良かった。それなら俺の職業知識も生かせそうだ。

「心は決まったか?」

俺の考えを見透かしたかのように観音菩薩が聞いてきた。

「その前にあと一つだけ聞いても良いか?」

「なんだ?」

「あんた、いや貴方は神様なんですか?」

今まで混乱したまま流れで色々聞いてしまったが、よく考えるとすごく失礼な対応をしてしまっていたかもしれない。

「お前達の世界の考えからすると近い存在かもしれないな。態度についてなら気にすることはない。突然死んだと聞かされたのだ。無理もないことだろう」

「やっぱり心が読めるんですか?混乱していたとはいえ申し訳ありませんでした」

「構わない。ではどうする?」

「異世界へ行きます」

「分かった。最後に、ここでの記憶はしばらくすると忘れるだろう。生きる上では不要なものだからな。では、さらばだ」

次の瞬間、俺の意識を失った。

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第1話 突然の選択肢
目が覚めると一面が真っ白な世界だった。 「なんだここは?俺は何でこんなところに?」 明らかに普通の場所ではない。スモークなどを焚いているのだとしても広すぎる。 目覚める前のことを思い出そうとするが記憶が朧気で思い出せない。 自分の名前、沢渡観世(さわたりあきつぐ)、25歳、職業:商人。 大丈夫。自分のことは覚えている昔の記憶も思い出せる。 分からないのは直近の記憶だけのようだ。「そこの人間」そんな風に自問自答しているとどこからか声が聞こえた。「誰だ?」 「こっちだ」声を頼りに後ろに振り返った途端、そのまま尻もちをついた。 そこには巨大な観音菩薩の仏像が浮いていたのだ。「か、観音菩薩?なんでこんなところに?というかさっきまでなかったよな?どうなってるんだいったい・・・」 「お前を呼んだのは私だ」 「し、しゃべった!?」再度、驚きの声が出る。確かに声は目の前の像から聞こえている。 誰かが揶揄っているのかと周囲を回ってみたが誰も居ない。「納得したか。では、本題に入ろう」 「本題?」 「そうだ。いきなりでは信じられないだろうがお前は死んだ」 「は?俺が死んだって、何の冗談だ?」 「冗談ではない。お前は旅の途中、暴走してきた車に撥ねられて即死だった」車に?そう言われて記憶に引っかかるものがあった。突如坂を乗り越えてこちらに迫ってくる車の映像がフラッシュバックする。「ぐっ!今のは、、まさかあれが死ぬ間際の?」 「思い出したか。では、お前には二つの選択肢がある」 「待て待て、自分が死んだってことすらまだ信じられないのに。突然選択肢とか言われても・・・」 「そうだろうな。好きなだけ悩んで構わない。選択肢は天国へ行くか異世界へ行くかだ」 「異世界?いや、天国はまだ分かる。死んだら行くって言われてるからな。異世界ってなんだ?」唐突に聞こえた不自然な単語に思わず疑問が声に出た。「お前は選ばれた。輪廻の均衡を維持するための例外として。とはいえ元の世界に返すわけには行かない。だから別の世界で生きよということだ」 「輪廻の均衡ってなんだ?」 「詳しくは話せぬが、世には極稀にまだ死ぬべきでない者が早死にすることがある。そのような者達を全て死後の世界へ送ってしまうと輪廻に歪みが生じてしまう。それを防ぐため選ばれた者に生を謳歌させ均衡
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第2話 こんなスキルでどうしろと?
「う、うぅん」目が覚めるとそこは森の中だった。中とはいっても直ぐ側に街道のようなものが見える。森の端のほうなのだろう。 神のような存在との会話はまだ覚えている。恐らく意味も分からずこの世界に降り立ってまた混乱しないようになのだろう。まずは自身の状態を確認する。確かにこの世界の基本的な知識が分かる。 次に持ち物なども確認してみる。 服装はこの世界の旅人の標準的なもののようだ。 持ち物は何やら色々入った背負い鞄を持っている。 どうやら死んだときに持っていたのと同程度の品物があるようだ。 ありがたい。これならうまく売ることさえできれば一先ず生活に困ることはないだろう。あとは、能力か。魔法は残念ながら使えない様だ。 スキルはあるな。良かった、こんな世界で魔法もスキルもなかったら生きていく自信を無くすところだった。 早速スキルの内容を確認してみる。-------------------------------- スキル:わらしべ超者Lv1 自分の持ち物と相手の持ち物を交換してもらうことができる。交換レートはスキルレベルと相手の需要と好感度により変動する。 スキル効果により金銭での取引、交換はできない。--------------------------------・・・・・・は? 信じられない気持ちで見直すが何度見ても結果は変わらない。 金銭での取引はできない?なんだそれ、商人として終わってないか? いや、確かに田舎の村では農作物と薬や消耗品などを物々交換していたこともあるが、基本は金銭での取引だった。 この世界の常識と照らし合わせてみても基本は金銭取引だ。 それになんだ交換レートは好感度により変動するって! いやまぁ、嫌いな人からは買いたくないとか好きな人には奮発するとか分からなくもないけど、これどの程度変わってくるんだ? スキルの詳細を知ろうとしても情報は出てこない。とりあえずどこかの村や町で試してみるしかないか。 何だかいきなり商人としての道に影が差した気がして気落ちするが、まずは生活基盤を何とかしないとそれ以前の問題になってしまう。 手持ちの食糧も心もとないしまずは町か村を見つけないとな。 そう考えてまずは街道に出て周りを見渡してみる。 幸いなことに視界の端の方に村のようなものが見えた。 スキルはともかく
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第3話 初めての取引
金がない。というか金があってもたぶん払えない。 死ぬ前に持っていた向こうの通貨は宝石に変わっていた。 それに宿代の支払いは恐らく商取引に該当するだろう。(・・・どうすんだこれ?宿屋もだが食事や道具の補充などあらゆる支払いができないってことだよな?・・・物々交換?宿代や食事代の支払いを?食事はともかく宿泊は物じゃないよな。家自体を交換して貰うことはできるかもしれないが、今の持ち物じゃ流石に足りないだろう。)考えれば考えるほど今後に不安が募っていくが、現状通貨を得る方法がない以上できることを試してみるしかないか。 そう考えて食堂兼宿屋となっている建物に入る。「いらっしゃい。外のお客さんとは珍しいな」中に入ると主人と思われる男が声を掛けてくる。「あ、あぁ。食事と宿を頼みたいんですが」 「1泊20リム、食事付きなら30リムだ」 「あ~その、支払いなんだがこれでお願いできますか?」そう言いつつ、小粒の宝石を出してみる。「いや、そんな物出されてもな」 「そ、そうですか。俺は商人なんですが、さっき門番の人にこの村では薬が不足気味だと聞きました。そこで、この薬では宿代の代わりにはならないでしょうか?」そういって今度は何種類かの薬を出してみる。「いや、薬が不足気味なのは確かなんだが・・・やはり現金で払ってもらわないと困るな」先ほどの宝石よりかなり興味は引けたようだがやはり結果はダメだった。 物での支払いを拒否しているのか、スキルの影響で拒否されているのか判断が難しいが、間があったことから考えると後者の可能性の方が高そうな気がする。 仕方がないので、別の方法を試してみることにする。「分かりました。。変なことを聞いてすみません。これは詫びとして取っておいてください」そう言って主人の目線から欲していたと思われる薬を渡す。「え?いいのか?いやでも流石に悪いような・・・」 「いえいえ。当てができたらまた来ます」そう言ってそのまま宿屋を後にした。 もちろん意味もなくタダで薬を渡したわけではない。 主人に先に利益を齎すことで好感度を上げておき、相手の好意で1泊泊めて貰えないかと考えたのだ。最悪食堂の隅を借りれるだけでも外で野宿よりはマシだろう。 何だか商売の裏道や抜け道を探しているようで多少の罪悪感があるが身の安全には代えられない。 まぁ、こ
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第4話 商人との交渉
「ん?さっきの商人さんじゃないか。商売は上手く言ったかい?」泊まるだけの稼ぎがあったかと聞きたいのだろう。 生憎商売ができても金銭は手に入らないのだが。「そのことなんですが、やはり薬での支払いはできませんか?」 「あ、いやさっきは悪かったな。もちろん構わないよ。貰った薬の効き目も良かったしな。とりあえずそれで1泊分にしておくよ。追加はどうする?と言ってもこの村に長居するほど見るものもないと思うけどな」宿屋の主人はあっさりと前言を撤回した。その上先に渡した薬も代金に含めてくれるという。やはりスキルの影響があったということだろう。 何にしろこれで野宿は避けられそうだ。「そうですね。道具屋と雑貨屋は今日回ったし、次はロンデールに行ってみようかと思っているのですが」 「ロンデールか。まぁ、ここから次に向かうならそこか南のハイン村のどっちかだろうな」南にも村があるのかそっちの情報も聞いておきたいな。「とりあえず1泊で。あと良ければロンデールやハイン村のことについて教えて貰えませんか?」 「あぁ、良いぜ。ロンデールはこの辺だと大きめの町だな。近くにダンジョンの入り口があるから冒険者が結構多い。ダンジョン産のアイテムも出回るから商人ギルドもあるし商店も多いな。」ダンジョン。魔物が巣食う洞窟や遺跡のことだったか。現実味がないがやはりそういうものがあるんだな。なるべく近寄りたくないが。 商人ギルドには早めに行ってできるなら加入しておきたいな。知識によるとギルドカードは身分証にもなるようだし、横の繋がりを得られるのも重要だ。あとギルド発行の仕事を受けられたりもするんだっけ。・・・あれ?報酬って当然現金だよな?俺の場合どうなるんだろう? まぁ、そこも試してみれば分かるか。「ハイン村は大きな牧場があるのが特徴でな。ホワイトブルやフラワーシープなんかの牧畜をやってる。小さいが冒険者ギルドもあるぞ」ホワイトブルは草食で大きめの体をしている。肉は部位ごとに触感や味が異なりどれも美味しいらしい。 メスのホワイトカウの方はミルクが取れてそちらも美味しいらしい。 フラワーシープは花のように様々な色の体毛を持つ動物で貴族のドレスなどの材料として重宝されているらしい。 肉やミルクは日持ちが厳しそうだが毛糸なら取引に使えそうだな。「ハイン村には商人ギルドはないんです
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第5話 野営
村の入り口に着くとエリネアさんが一人で待っていた。(う~ん。口数も少ないし3人の中で一番話し掛け辛いんだよな。)とはいえ無視するわけにもいかない。 「お待たせしてすみません。他のお二人は?」 「・・・いえ、二人はまだ支度中です。もうそろそろ来ると思います」 「そうでしたか。そういえばミルドさんとエリネアさんはチームで活動されてるんですか?」 「・・・えぇ」一応答えてはくれるが、目はそらされているし避けられている気がする。呼び方などからそうかなと思ったが、やはり二人はチームで活動しているようだ。 そして会話が途切れる。(エリネアさんも話し掛けられたくないみたいだしおとなしく待つか)少しするとハロルドさんとミルドさんが戻ってきた。「いや~すみません。ついいつもの調子で話していたら遅くなってしまいました」 「いえいえ、お気になさらず」そうして、4人でロンデールに向けて出発したのだった。 出発してしばらくは平和そのもので特に何かに出会うこともなく順調に進んでいた。「リブネントに来るときもこの街道を通られたんですよね?危険な動物に遭遇したりはしましたか?」 「いえ、この辺では滅多に会うことはありませんよ。森の奥に行けば話は別でしょうが、街道にでて何かすれば狩られることは向こうも理解しているんでしょうね」 「そうですか。安心しました」 「ははっ。仮に出てきてもミルドさんとエリネアさんなら問題なく対処してくれます。お二人とも優秀な冒険者ですから」 「あまり煽てないでくれ。俺たちはまだCランクだ。」 「いえいえ、その歳でCランクは十分優秀ですよ。本来ならこんな危険の少ない街道の護衛を依頼するべきではないのでしょうが・・・」 「前にも言ったが気にしないでくれ。あなたは命の恩人だ。護衛料も十分な額を貰えているし問題はない」 「と、こんな感じでしてね。私としても信頼のおける人間に護衛して貰いたいというのもあってついつい甘えてしまっているんですよ」なるほど。これまでのやり取りでこの3人には何か連帯感の様なものを感じていたが、そういう理由があったのか。 ミルドさんが言ったCランクというのは冒険者ギルドのランクのことだろう。A~FランクまでありAが一番高いらしい。Cランクということは中堅の上の方くらいになるのだろうか。「命の恩人ですか。ちなみ
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第6話 ロンデールの町
夜の番はミルドさんとエリネアさんが交代で行ってくれることになった。 自分もそのくらいは手伝いたいと提案はしてみたのだが、一晩くらいなら問題ないので休んでおいてくれとやんわり断られてしまった。 まぁ、二人からすれば急に増えた人間に任せられないというのは当然かもしれない。ハロルドさんは馬車の中で休むようだ。 俺も焚火の側に厚手の敷物を敷いて寝ることにした。 ミルドさんからテントを使っても良いと言われたがさすがにそこまで甘えるわけにはいかない。幸いにも夜でも寒いというほどにはならなかったので、寝るのに支障はなかった。 次の日、物音で目が覚めるとミルドさんがテントを片付けようとしているところだった。「おはようございます」 「あぁ、起きたか。おはよう。朝食を食べたら早々に出発しよう」 「分かりました」見るとハロルドさんも起きていて朝食と思われるパンと飲み物をもってきていた。 そして各自朝食を取るとロンデールに向けて出発する。 道中時間もあったので商業ギルドのことをハロルドさんに聞いてみることにした。「そういえば、ロンデールには商業ギルドがあると聞いたのですが、ハロルドさんは所属されているんですよね?」 「えぇ、もちろん。ギルドの所属有無の差は大きいですからね。年会費は必要ですが、ギルド所属であれば入国、入町税の軽減やギルドで扱っている商品の融通など色々な恩恵がありますからね。まぁ、私の場合は他国まで仕入れに行くことはあまりありませんが」 「実は俺はまだ所属していないのですが、所属する際にはどのような手続きが必要なのでしょうか?」 「そうだったんですか。なに、難しいことはありませんよ。登録情報の記載と登録金を支払うだけです。年会費についても各町にあるギルドであればどこでも支払いが可能ですし」ふむ。思ったより手続きは簡単なようだ。だが、まったく審査がないのは大丈夫なのだろうか?「なるほど。ですが、それだと恩恵目当てに商人以外の人が登録したりもするんじゃないですか?」 「そうですね。ですので、年会費を払う際に実績の確認があるんです。商人ギルドからの依頼やギルドを介した取引など一定の実績がなかった場合は権利を剝奪されて、何らかの理由がないと再登録はできなくなります。 またそういう情報は他のギルドにも連携されるので本人の立場が厳しいものになります
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第7話 宿屋の歌姫
ギルドを出て、さっそく教えて貰った宿屋に向かう。「いらっしゃいませ」中に入るとすぐにカウンターから女性の声が聞こえてきた。声の方に顔を向けると、そこには20代半ばほどの女性がいた。「お食事でしょうか?それともご宿泊ですか?」 「宿泊でお願いします。とりあえず1週間分お願いできますか?」 「畏まりました。食事付きで1泊40リムとなりますがよろしいでしょうか?」リブネントより10リムほど高いが、町と村の差を考えればむしろ安い方だろう。1週間としたのは情報収集と、できれば大きい町で例の木彫り細工の売り先の当てを付けておきたかったからなのだが、この額なら問題なさそうだ。そう考えて宿屋の女性という点から必要としていそうなものを提示する。「あぁ、この辺の商品を対価に取引したいのだがどうだろうか?」 「そうですね。ではこれらを対価として頂きますね」交渉も問題なく済み部屋へと案内される。「こちらになります。何かご不明な点がありましたらいつでもお呼びください」 「ありがとうございます」女性が部屋から出て行った後、俺は部屋の中を改めて確認した。 部屋の広さは6畳ほどで、ベッドと机が置いてあるだけのシンプルな内装だった。しかし、掃除は行き届いており清潔感があった。 そして何より、2階にも関わらず窓からは街が一望できる見事な景観だった。街の東側には賑やかな商業区が広がっており、反対の西側には高級そうな建物が多く見える。恐らくは貴族街なのだろう。(・・・そういえば、ハロルドさんに他に細工物が好きな貴族が居ないか聞いてみるべきだったな。)知っていれば既にハロルドさん自身が交渉しているだろうと思って考えから除外していたが、よく考えたら雑貨屋の店主の制限で当てがあっても手を広げられなかった可能性もある。明日会えるようなら聞いてみるか。 あとは、この町の市場や商店を回って商品の仕入れ先を見つけること。そして、できれば他の商人と仲良くなって情報交換をすることか。 まぁ、本格的に動くのは明日にして今日は食事をとって早めに休もう。 そう思い部屋を出て1階
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第8話 招かれる客
商業区では様々な人達で賑わっていた。 店の前で客引きをしている店員もいれば、露天を開いている一帯もある。そこへ市民や旅人と思われる人など客もそれぞれに興味を持つところへ向かっている。 客が少ない時は露天の店主同士での雑談も見られる。普段から付き合いのある知人なのかもしれないが、話し掛けるきっかけとしては使えるかもしれない。 そう考えて、比較的空いてそうな露天の店主に話しかけた。「すみません。少し良いですか?」 「ん?なんだ。お客さんかい?」 「いえ。私は旅の商人なのですが、こちらで露店を開くにはどこかの許可など必要なのでしょうか?」 「あぁ、そういうことか。許可とかは必要ねえよ。この辺は自由に商売することが許されていてな、違法な場所取りや押し売りみたいなことをしない限りは捕まったりすることはねぇ」 「なるほど。そうなんですね。実は昨日この街へ来たばかりで、良ければお隣で色々聞かせて頂いてもよろしいですか?」 「あ~まぁ、客が居ない時は構わねぇよ。うちはそんなに客も来ねぇしな」店主は多少ばつが悪そうにそう答えた。 改めて見てみると、売り物は茶碗や壺など様々な陶器を扱っているようだ。 隣で適当に露店の準備をしながら聞いてみる。「扱っているのは陶器のようですが、もしかしてご自身で作られているんですか?」 「あぁ、元は趣味みたいなもんだがな。せっかく作っても一人で使いきれるもんじゃねぇし、ここで適当に売ってるんだ」 「それはすごいですね。しっかりした品の様に見えるんですが、陶芸歴は結構長いんですか?」 「そうだなぁ、もう12年程度になるか。祖父が陶芸家でな。小さい頃から教えられてたんだが、亡くなった時にその工房を引き継いでな。それからはこうやって日用品をちょくちょく作ってるってわけだ。」なるほど。元が趣味という割にしっかりして見えたのは祖父の影響と経験によるものだろうか。芸術的なものではないが一般家庭で使うには申し分ない品物だと思う。とはいえ、割れ物である陶器は私には扱いづらいな。。「なるほど。道理で本格的な物だと思いました。良ければ私に合いそうな茶碗などないでしょうか。できれば旅使いできそうな耐久性があるものだとありがたいのですが」 「旅使いか~ならこの辺のは割れにくい作りにしているからおすすめだぜ」
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第9話 貧民街の少年
昨日と同じように宿で朝食を済ませてから、商業区で露店を広げる。 念のため物々交換の看板は少し見えにくい位置に移動させた。 お客さんも見落とす可能性はあるが、そこは適宜伝えればいいだけだ。 昨日の店主は見た感じ今日は来ていない様だった。 スキルの効果も問題ないようで、露店を開くと今日もお客さんが次々と訪れる。 ただ、こうなると物々交換という制約上荷物が段々と増えていく。 なるべく小さくて価値の高いもので交換して貰ってはいるが、早めに上位の道具袋を手に入れるか馬車の購入を検討したほうが良いかもしれない。そんなことを考えながら取引をしているうちに時間も夕暮れ時になってきた。 俺は昨日と同じように店じまいをして宿への帰路に着く。 すると、昨日とは別の曲がり角で、昨日の少年が飛び出してきた。 注意しながら歩いていたことで咄嗟に反応できた俺は避け様に彼の腕を掴んだ。「やっぱり君か。2日連続となると偶然じゃないよな?」 「ちっ!知らねえよ。さっさと放せ!」 「そうはいかない。懐中時計はどうした?返さないというなら、衛兵に突き出すしかないが」 「そ、それだけは止めてくれ!悪かった。そ、その時計は売ってしまってもう持ってないんだ・・・」そういうと少年は許しを請うように土下座してきた。 彼の必死さから嘘ではなさそうだと感じる。証拠もないのにしらばっくれるという選択をしなかったのは衛兵に捕まってしまうと余罪でバレてしまうのを恐れたからだろうか?「その様子だと商業区に出るスリの噂はやっぱり君か。なんでそんなことを?そこまで生活に困っているのか?」 「そ、それは・・・確かに生活は苦しいけど、街からの補助もあるし生きていけないほどじゃない。でも今は妹が病気で、薬代を稼がないといけないんだ。もし、今俺が捕まっちまったら妹が死んじまうんだよ!」なるほど。そういうことか。この様子だと恐らく両親も居ないのだろう。自分以外には妹を助けられないから仕方なくだとは思うが、かといってこのまま盗みをさせるのも良くないだろう。「その妹さん、何の病気なんだ?」 「詳しくは分かんない。スラムの子供なんて医者は嫌がって診てくれないから。咳が酷くて体が弱ってるみたいだから、咳止めと栄養がありそうなものを食べさせてるんだけど・・・」やっぱりこれだけ
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第10話 ハロルドからの依頼
朝起きると今日も窓の外からリリアさんの歌声が聞こえてきた。 窓から覗いてみるとやはり洗濯物を干しているようだ。 邪魔しない様にその歌声を聞きながら朝の支度をする。 今日はなんだかんだで行けていなかったハロルドさんのお店に行ってみるか。街に着いたときに教えて貰った店の場所を思い出しながらハロルドさんの店を探していると、とある店の前でちょうどハロルドさんが誰かと話しているのが見えた。 何だか真剣に話しているようなので邪魔をしては悪いかと思い、先に店の中でも見せて貰おうかと思ったのだが、近くを通りがかった時にハロルドさんの方から声を掛けられる。「おぉ、アキツグさん。いらしてくださったんですね」 「あ、えぇ、せっかくなのでお店を見せて頂こうかと。取り込み中の様でしたので、後程ご挨拶させて頂こうかと思っていたのですが」 「そうでしたか。いえいえ、お気になさらず。ちょうど話は終わったので。良ければ中で少しお話でもどうですか?」 「そのつもりでお伺いしましたので、ハロルドさんが良いのであれば」 「良かった。ではこちらに」そう言ってハロルドさんの案内で店の中に入っていき、応接室と思われる部屋に通される。何だか道中人の目を気にしていたように見えたのが少し気になるが、何かあったのだろうか?「さて、良くお越しくださいました。と言いたいところなのですが、実はアキツグさんにお願いしたいことがありまして。急な話で誠に申し訳ないのですが聞いていただけますか?」 「お願いですか?ハロルドさんにはお世話になりましたので、できることならお手伝いしますが、どのような内容でしょう?」 「ありがとうございます。お願いしたいことは単純で、サムール村までとある物資を届けて欲しいんですよ」 「物資の運送ってことですか。確かに私でもできそうな内容ですが、他の方には頼めない理由があるのですか?」 「えぇ。ですが、ここからの話はかなりリスクのある内容を含みます。もし、それを承知できないということであればここで断わって下さい」そこまで言うとハロルドさんは真剣な目でこちらを見つめてきた。 本当に急な話で混乱しかけていたが、向けられたその視線からそれだけ切羽詰まった状況だということが読み取れた。「そのリスクというのは命の危険なども含まれるのですか?」 「場
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