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西しまこ
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Novelas de 西しまこ

サボテンの恋~年下のきれいな男の子に毎日ごはんを作ってもらうお話

サボテンの恋~年下のきれいな男の子に毎日ごはんを作ってもらうお話

「ごはんだよ」で起こされ 帰宅すると「ごはん出来てるよ」で迎えられる幸せ。 波瑠はある日、猫ときれいな男の子、千颯を拾った。 「ここに置いてください」と千颯に言われ、「ごはんを作ってくれるなら」と 波瑠は千颯を家に置いてあげることにした。 朝目が覚めたとき「ごはんですよ」と言われる幸せ。 帰宅したときに「ごはん出来ていますよ」と言われる喜び。 波瑠は毎日朝起きるのが嬉しく、また早く仕事から帰りたくなっていく。 これは、ごはんがおいしいお話です。 そして、年下の男の子にごはんを作ってもらうお話。
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Chapter: 第11話 家を出る――祖母と猫との生活
 第一志望の学校に合格し、|波瑠《はる》は父からも母からも「おめでとう! よく頑張ったね!」と言ってもらえ、頑張ってよかったと心から思った。 小さい妹と弟がいるから外食は難しく、出前をとってお祝いしようということで、お寿司をとることになった。 みんなで食卓を囲むなんて久しぶりだと波瑠は嬉しさでいっぱいになりながら、お寿司を食べた。途中から、母は妹の真珠や弟の琥珀の相手をするために席を立ったが、それでもやはり嬉しかった。 受験勉強、頑張ってよかった! 波瑠が穴子握りに箸を伸ばしたとき、父が言った。「波瑠、中学生になったら、おばあちゃんちに行きなさい」「うん、ちゃんと挨拶に行くよ。中学生になる前に行きたいな」「そうじゃなくて。……おばあちゃんちからの方が、学校に近いだろう?」「それは、そうだけど……」「それに、うちには小さい子もいるから、お前の勉強の邪魔になると思うんだよ。それに、おばあちゃんも一人暮らしでさみしいだろうから、波瑠が一緒に住んでくれると嬉しいと思う」「……それは、お父さんの考え?」「お父さんとお母さんで話し合って決めたことだ」 そうか、もう決まっていることなんだ、と波瑠は思った。 波瑠は、|真珠《まじゅ》と|琥珀《こはく》の相手をしている母を見た。 私はあの中に入れない、ということを改めて実感した。 波瑠は父親に視線を戻すと「うん、分かった。学校、おばあちゃんちからの方が近いもんね。私のためを思ってくれたんだよね。……ありがとう」と言った。 涙が出そうだったけれど、何とか堪えた。 その後食べたお寿司は何の味もしなかった。いや、砂の味がした。 黒い砂漠で食べるような、黒い砂の味。咀嚼して飲み込むだけ。 マグロもサーモンも甘エビも、そうして波瑠の闇の中に飲み込まれて行った。 山茶花の生け垣の祖母の家に行く。 その日も一人だった。 大きな荷物は後から届けられるの
Última actualización: 2026-06-16
Chapter: 第10話 年の離れたきょうだい
 そんなあるとき、一つの転機が訪れた。「お母さんね、赤ちゃんが出来たのよ」 「赤ちゃん!」  そのとき|波瑠《はる》はもう小学三年生になっていた。 「お母さん、ほんとうはずっと、下の子が欲しくて……でも、なかなか出来なくて。ようやく授かることが出来たの」  母はいつになく幸福そうで、波瑠はとても嬉しくなった。  母のお腹の中の赤ちゃんは、女の子だと、分かった。波瑠は妹が出来るのだ、と興奮し、妹が生まれたらたくさんお世話しようと心に決めていた。「ねえ、波瑠。塾に行かない?」 「塾?」 「そう、勉強の。波瑠には私立受験して欲しくて。私立の中高一貫校に行けば、高校受験をしなくてもいいから。波瑠もお姉ちゃんになるし、頑張って欲しいの」 「うん! 私、頑張るよ!」  波瑠はそうして塾に通うことになった。  塾に通い出すと、祖母の家になかなか行けなくなったことが、波瑠にはさみしいことだった。塾の勉強はとても難しく、塾がない日も塾の宿題をしなくてはいけなかったのだ。 波瑠の塾通いが始まって少ししたとき、母が仕事を辞めた。  それは波瑠には青天の霹靂のように感じる出来事だった。  いつも忙しく働き時間に追われていた母が仕事を辞めて家にいると言うのだ。父も「俺の給料も上がって安定したし、しばらくは子育てに専念してもいいんじゃないか?」と賛成したのだ。  波瑠は嬉しかった。  今まで仕事で忙しく、家事をやり慣れない母を手伝って、また妊娠で悪阻のある母に代わって、波瑠はよく家のことをした。勉強をして塾に行って家事をして。  とても大変だったけれど、母が波瑠に優しいのが何より嬉しかった。「波瑠、いつもありがとう。お母さん、たすかるわ」 「お母さん、お腹に赤ちゃんがいるんだもの。私、簡単なごはんなら作れるよ。片付けも出来るから」 「波瑠、いい子に育ったわね」  妹が生まれるまでのその時期、波瑠はもしかして一番幸福な時間を過ごしたのかもしれない。 「お母さん、私、オムライス作ってみたの。……お母さん、悪阻、大丈夫? もし食べられるなら、食
Última actualización: 2026-06-15
Chapter: 第9話 優しい手はいつも祖母の手だった
 思えば、|波瑠《はる》は物心ついたころから母親に嫌われていた。  理由は分からない。  或いは理由なんてないのかもしれない。  もしかして、「嫌われている」というのは気のせいかもしれない。  だけど、波瑠が幼いころ、共働きの両親に代わって面倒をみてくれたのは祖母だったし、波瑠が私立中学への進学が決まったとき、祖母の家からの方が学校に近いからと、家を出されたのも事実だった。 波瑠にとって不思議だったのは、母親は実の母親である点だった。  幼いころ、母親は自分のお母さんではないから、いつか本当の優しいお母さんが迎えに来てくれると夢想していたこともあった。でも、事実はシンプルかつ残酷で、波瑠のことを嫌っている女が波瑠の本当の母親で間違いがなかった。 働いている多くの母親は子どもを保育園に入れる。  でも、波瑠が通ったのは幼稚園だった。幼稚園に行く前は、祖母の家に預けられていた。幼稚園には祖母が送り迎えをしてくれた。  だから、まだ大人と手をつないで歩く年齢であるころ、手をつないでくれていたのは祖母だった。  家に迎えに来た祖母と手をつないで祖母の家に行く。或いは公園に。幼稚園に行くようになってからは幼稚園に。祖母の手は優しく、つないでいるといつも安心した。 家よりも、祖母の家で過ごした時間の方が多い幼年時代だった。  何しろ、両親は共働きで忙しく働いており、ほとんど波瑠と過ごす時間などなかったのだ。祖母の家で晩ごはんを食べ、家に戻る。しかし、だいたい家は暗く静まり返っていて、両親はまだ帰っていなかった。 「お父さんもお母さんもお仕事頑張っているからね」  祖母は優しくそう言い、波瑠の頭を撫でた。  あの祖母の手があったから、波瑠は真っ直ぐ生きてこられたのだと思っている。 「おばあちゃんはね、波瑠がいると元気になれるんだよ」  いつも、そう言ってくれていた。 波瑠の父親である自分の息子が大学を卒業するというときに、事故で急に夫を亡くした祖母。息子が就職して家を出て――その後ずっと一人で暮らしていた祖母。  波瑠がいるから生活に張り合いが出たのは事実だろう。  だけど、波瑠の面倒を見るのは大変だったはずだ。波瑠が生まれたときまだ五十代になったばかりだったとはいえ、小さい波瑠を一生懸命に育ててくれた。「波瑠っていう名前はね、おばあち
Última actualización: 2026-06-14
Chapter: 第8話 ごはんにお味噌汁、そして生姜焼き
「ただいま!」  がらがらと古い戸を開けると、「おかえりなさい、|波瑠《はる》さん」と|千颯《ちはや》が出迎えてくれた。  ああ、いつ見てもきれいな顔! それにうちに来てから、肌艶がよくなったみたい、と波瑠は思いながら「今日の晩ごはんは何?」と訊いた。  キャンディが波瑠の足元にすり寄ってきていて、それもかわいかった。「キャンディ、ただいま!」  千颯はキャンディを抱き上げると、にこりとして言う。 「今日は生姜焼きにしました。すぐに食べられますよ」 「きゃーん、生姜焼き! すぐ食べる!」 波瑠は自室に行き、スーツを部屋着に着替えると台所に行った。  すると食卓にあたたかそうなごはんが並んでいた。 「ああ、家に帰ってすぐごはん! 幸せ! しかも作りたて! ……よね?」 「波瑠さんが帰宅予定時間を教えてくれるので、それに合わせて作っているんです」  千颯は少し照れながらそう言った。 「嬉しい! いつもありがとう、千颯くん!」 「冷めないうちにどうぞ」 「いただきます!」  波瑠はまず、お味噌汁を飲んだ。  にぼしとかつおぶしの出汁の味がする、白味噌のお味噌汁だった。具は豆腐とわかめ。味噌の濃さもちょうどいい。出汁の味がおいしい。  次に、生姜焼きに箸を伸ばす。  豚の肩ロース肉と玉ねぎ。  生姜の味がよく効いていて、疲れた身体に豚肉のおいしさが染み渡るようだった。「どうですか?」  千颯はいつも、遠慮がちに心配そうに訊く。 「おいしいわ! 千颯くん、お料理上手ね。嬉しい!」 「レシピ見ながら作っているものもあります」  千颯は感情があまり現れないタイプだが、料理を褒めると嬉しそうにする。少しはにかんだようなその顔もいいな、と波瑠は思った。  波瑠はキャベツのサラダを食べた。しゃきしゃきした触感がいい。キャベツそのものの甘さが噛むたびに口の中に広がった。 「おいしいものって、幸せ。キャベツもおいしい」 「それは、ただのキャベツの千切りですよ。少し、味付けしていますけど」 「千颯く
Última actualización: 2026-06-12
Chapter: 第7話 早く家に帰りたい
 |波瑠《はる》は高速で仕事をしていた。 いつもならもう少し休憩を入れながら仕事をするのだけど、とにかく早く家に帰りたかった。 ああ、今日の晩ごはんは何だろう? ふと、ごはんのことを考える。 じわりと甘いものが胸いっぱいに広がる。 メニューは訊いていない。「ただいま!」と帰ったとき、「おかえり、波瑠さん。ごはん、出来ているよ」と言われ、そのにおいでメニューを想像するのが楽しみだからだ。キャンディと一緒に出迎えてくれる|千颯《ちはや》の顔を想像すると、なんとも言えず幸福な気持ちになった。 ああ、幸せ! 早く家に帰りたい。 波瑠がそう思ってパソコンの画面に向かったとき、肩を叩かれた。 振り返ると、黒岩が立っていた。「黒岩課長。何かご用ですか?」 波瑠は仕事モードで答えると、黒岩は「ちょっと話があるんだけど」と言った。「今ですか?」 波瑠は仕事を早く片付けてしまいたかったので、そう言うと、「今すぐだ」と黒岩は言い、「ちょっとミーティングルームに来て欲しい」と言った。 波瑠は仕方なく、黒岩の後に続いてミーティングルームに行った。「何でしょうか?」 早く仕事に戻りたかったので、波瑠はそわそわしながらそう言った。「……何でしょうか、じゃないだろう? 連絡出来ないんだけど?」「……ああ」 波瑠の中ではすっかり終わったことになっていたが、そう言えば黒岩とはつきあっていて、そして別れたのである。――一方的に。「ブロックしているのか? なぜ?」「なぜって、課長とはもう終わりましたから」「そんな話は聞いてない」「今、お話しました。もう、終わりにしましょう。別れます」「なぜ?」「……なぜって」 波瑠は眉間に皺を寄せて怖い顔をしている黒岩を見ながら、笑いそうになってしまった。なぜ、とあなたが言うの? 三人目が生まれて、幸せそうな家族を見せつけた、あなたが。「&helli
Última actualización: 2026-06-11
Chapter: 第6話 お弁当作ってもいいですか?
 その日、|波瑠《はる》は会社に来たときから、お昼を楽しみにしていた。  何しろ、今日はお弁当があるのだ!  昨日、|千颯《ちはや》が深刻そうな顔で「波瑠さん、お願いがあるのですが」と言ったときは、てっきりこの、波瑠にはパラダイスな生活から抜け出したいのかと思った。ごはんを作るのが嫌になったのかと。  しかし、そうではなかった。「何、千颯くん」 「お弁当作らせてください。……いいですか?」 「お弁当! いいに決まってるじゃない! ていうか、私こそいいの? って思うけど?」 「はい。……あの、僕の分も作っていいですか?」 「いいに決まってるじゃないの!」 千颯が学費やその他必要なお金をどのように工面しているかは、波瑠は知らなかった。ただ、お金がそんなにないことは何となく分かった。たぶん、お昼ごはん代も彼には負担なのだろう。  波瑠はお弁当を作る提案を受けたとき、一瞬、ごはんを作ってもらうお金をあげようかと思った。しかし、千颯が受け取りそうもないなと思って、言うのをやめた。それに、お弁当も、千颯が作りたいときに波瑠の分も作るというものだったので、ありがたく「気まぐれお弁当の日」を受け入れることにした。 そして、お弁当である!  波瑠は、誰かが作ってくれるお弁当なんて、本当に久しぶりだ、と思った。 「どうしたの? 波瑠。今日はなんだか嬉しそうだよ」  同期の瑛万《えま》に言われて、波瑠ははっと顔に手をやった。 「あのね、お弁当があるの!」 「お弁当。……珍しい」 「えへへ」 「……あ、なんかあるな! お昼休みに詳しく教えて!」 「うん!」  お昼休みが待ち遠しい。  ロッカーに入ったお弁当箱を思い浮かべながら、波瑠はにやにやすることが止められなかった。  波瑠はケーブルテレビ局に勤めている。  コンテンツ部に所属して番組制作をしており、忙しいけれど、毎日充実していた。  仕事において、黒岩は非常に頼りになる存在であり、感性あるアドバイスに何度も助けられていた。 「でも、もういいや」
Última actualización: 2026-06-10
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