author-banner
ふわり
ふわり
Author

Novels by ふわり

舞いし炎。飛ぶは空。

舞いし炎。飛ぶは空。

機械の力で最強の軍事国家となったスカーデッド王国。 その国を巨大な地震が襲った。 崩壊した首都アクアストールと、無傷のまま聳え立つ王の宮殿。 炎を自在に操る【炎の巫女】と、古代に存在した【空の王】が、 革命のため。悪い歴史の終結のため。力を合わせて戦うストーリーです。
Read
Chapter: 紡がれる
戦争から2年。まだまだ途上ではあるが、幸せな雰囲気が街には溢れていた。壊れたものを立て直すことは非常にツラい作業と言える。しかし苦しい期間が長かったこの国では、その復興作業すら、幸福の風のように感じてしまう。カタリナは時折、海辺に腰掛けて、空と会話していた。(ねぇロシェ。今のこの国は笑ってる。笑ってるんだよ。私たちがずっと手に入れたかったモノ。この国が本当の意味で笑顔になれるってこと。それは叶ったんだよ。)「ママ?」小さな女の子が、カタリナの右手を握る。「どうしてママは1人でお話してるの?」カタリナは、女の子の頭に手を置いて答えた。「パパとお話してるんだよ。」「パパはお空にいるの?」「うん!いつも見守ってくれてるんだよ。」「いつかパパにも会いたいなぁ。」子供の悪気ない一言が、カタリナの心をエグる。「いつか……。きっと会えるよ!」カタリナは滲む涙をこっそりと拭った。民の祈りが草木を肥やすかのように、国は緑溢れる平穏な地へと変貌を遂げていく。小鳥の声も以前より溌剌としているようにも感じられる。カタリナは、ロシェとの間に生まれた奇跡の子に、ルーナと名前をつけていた。ルーナ・カエルム。それが次の時代を紡ぐ者。空と炎を紡ぐ者の名前だ。
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: 心に宿すものⅢ
「私に隠していることがあるよね?」「気づいていたのか?」「気づかないわけがない。」 カタリナは賢い。ゆえに人よりも小さな情報から結論を見出すことができてしまう。「ちゃんと話す。聞いてくれ。」 ロシェがそう言うと、カタリナは頷いた。「僕たちは時代を変えることができた。復興作業をする人たちの顔。辛いだろうに笑顔に溢れている。」 ロシェの言う通り、人々の表情に笑顔は戻りつつある。「そうね。」 カタリナは静かにそう答える。ロシェの服は先ほどよりも染み付いた血の量が増えてきている。「カタリナ。すまない。僕は。」 ロシェはそこまで言ったところで口から血を吐き出した。体には古の機械との戦いで負った傷が戻り始めている。「ロシェ。」 カタリナはロシェの肩を支えた。溢れてくる涙を必死に我慢しながら。目の前で起ころうとしている現象から目を背けてはならない。そんな風に思っているのだろう。ロシェは一度深呼吸をして話を続ける。「僕はやっぱりあの戦いで死んだんだ。カタリナがアクアリングに祈ってくれたから、最後に少しだけ新時代を歩く時間がもらえた。でももう時間切れみたいなんだ。」 ロシェはそう言いながら涙を拭う。「私はけっきょく、あなたに何もしてあげられなかった。全部一人で背負わせてしまった。」 カタリナは溢れ出る後悔を口にする。あの時一緒に戦っていればこんなことにはならなかったかもしれない。しかしそれを今更言っても時間は戻らない。「それは僕が望んだことだ。それにカタリナと過ごした時間は僕にとって大切なものになった。君がいてくれたからどんなことも乗り越えられたんだ。」 ロシェの言葉が、悲しみに暮れたカタリナを優しく包み込んでいく。「結婚の約束。守れなくてごめん。」 それにカタリナは被りを振る。「今日まで一緒にいてくれたじゃない。それで十分よ。」 カタリナは溢れ出る涙を拭い、ロシェの手を握った。「僕は空から見守り続ける。勝手なことを言うようだけど、これからも僕を愛していてほしいんだ。」「そんなの。あたりまえよ。」「ありがとう。カタリナはもう三つの鍵を手に入れている。あとはその想いを胸に舞えばいい。」 ロシェは最終奥義のことを言っているのだろう。しかし今のカタリナはロシェとの別れに頭を持っていかれていて、整理がつかない。「立派な国にしてくれ。」
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: 心に宿すものⅡ
数日後。王が死んだことを知った国は一時混乱に陥った。喜びを噛みしめる者もいれば、路頭に迷う者もいた。二人はその全ての人たちに手を差し伸べて、決して見捨てることはしなかった。その小さな努力が積み重なって、三ヶ月が経つころには、皆の顔は同じ方向へと向かっていた。何者にも支配されない幸せな国を築いていこうと。  ロシェとカタリナはアクアストールにいた。民たちの活躍もあり、ゆっくりだが確実に復興は進んでいるように見える。「カタリナ。一つ思い出したことがあるんだ。」 ロシェが唐突にそんなことを言い出した。「なに?」「炎の巫女の最終奥義についてだ。」 カタリナは目を丸くした。「もう戦いは終わったのよ?最終奥義は必要かしら?」「地形操作の舞を知っているか?」「知ってるもなにも。私はそれがされた場所で修行を積んだの。」「そうか。なら話は早い。フィナは邪竜を追い払うために何者と生存できない地形へと変化させた。これに逆があるとすれば?」 ロシェの話を聞いて、カタリナは驚いた。「つまり命が芽吹く地形に変形させられるってこと?」「そうだ。」「でもどうやって。やり方がわからないわ。」「僕の勘が正しければ、ここの地下に巨大な神殿があるはずなんだ。そこに手掛かりがあるかもしれない。」「それなら探してみましょう。」 二人はサウンズロッドの内部へと入った。月日が経っても中は何も変わっていない。迷路のような一階フロアはカタリナが、吹っ飛ばしていたので捜索は案外スムーズに進んだ。「カタリナ。ここだ。」 二人は地下への扉の前に立つ。そしてロシェがゆっくりとその扉を開いた。「随分長い階段ね。」「古の機械の封印にはそれなりの巨大な空間が必要だったと思う。この先はかなり広く続いているだろう。」 ロシェがそう言うと、カタリナは小さな炎で辺りを照らした。「行こう。」 二人は地下へと足を進める。階段を下り終えると、そこにはカルトゥナやガリュウの時とは比べ物にならないほど広大な敷地が広がっていた。「たしかに広いわね。」「あぁ。でもここがかつての空の城の地下だとすれば僕にはどこに何があるか理解できる。ついてきてくれ。」 ロシェはそう言うと奥へと歩き出した。カタリナもそれについて行く。しばらく歩くと、古い扉が視界に入った。「あそこだ。」 二人はそこに向かった。
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: 心に宿すもの
ロシェとカタリナはグレートニールに向かって歩いていた。ロシェが古の機械と戦った時、カムはアクアストールを封鎖していたようで、目撃者などはおらず、民は王が死んだことなどもちろん知らないままであった。唯一変わった状況といえば、人型機械が活動を停止したことだろうか。人工気候装置が破壊されたことにより、太陽が常に出ているわけではなくなった今、あれだけの高性能な機械を維持する体内エネルギーが枯渇してしまったのだろう。道中には動かなくなった人型機械がたくさん転がっていた。この光景を見て、民たちは国の異変に気づくのだろう。「ねぇ。ロシェ。」 カタリナが突然口を開いた。「どうした?」 ロシェは優しく聞き返した。「本当にもう平気なの?体。」 カタリナが心配になるのも、仕方のない話である。なぜならあの時、ロシェの心臓は完全に止まっていた。たしかに死んでいたのだ。「あぁ。大丈夫だ。心配してくれてありがとう。」 ロシェは優しい笑顔でそう答えた。「それよりカタリナ。これからこの国をどう立て直していくんだ?」「そうね。もう王はいらないわ。みんなの力を合わせることが大事ね。」「そうか。国は壊すことよりも築くことの方が難しい。」 ロシェのその言葉に、カタリナはカムの言葉を思い出した。「そうよね。」「あぁ。みんなが同じ方向に向かうのが一番難しいことだと思う。ましてや率いる者を立てないのであれば。」「そうね。」 カタリナは少し俯きながらそう答えた。「カタリナ。何も焦る必要はない。ゆっくりと一歩ずつ進んで行けばいいと思う。」 ロシェは笑顔でそう言った。カタリナはその笑顔を見て、再び心に誓ったことがあった。この国を素敵な笑顔に包まれた国にしようと。  思い返せばアクアストールで全てが始まって、戦場から戦場へと移動を重ねた。あの時もロシェとカタリナはこの道を歩いていた。その時は気づきもしなかったのだが、ここにも美しい花は咲いている。きっとカタリナが目指している理想の国には、こういう小さな気づきが溢れているのだろう。安泰な平和とはまだまだ言い難いほど国は疲弊しきっているのが現状だけれども、二人は確実にその一歩を踏み出している。国民全てがその姿を描ければ、それが同じ方向を向くということに繋がる気がする。いつかは花が満開に咲くと信じて、二人は歩いている。「カタリナ。見て
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: 革命Ⅲ
カタリナは最上階の扉を開こうとしていた。ふと外が静かなことに気がつく。頭の中には色々な憶測が飛び交ったのだが、その雑念全てをかき消して、自分が成すべきことに注力すると決意した。そしてゆっくりと扉を開く。「ミレアを倒したか。」カムはソファに腰掛けたままそう聞いた。「えぇ。」カタリナはそうとだけ答える。「モニター見てみろ。空の王ロシェ=カエルムは死んだ。古の機械も滅んだ。全ては俺の想定の範囲で進んでいた。誤算だったのはおまえだけだ。」モニターには見るも無惨に穴だらけとなり横たわっているロシェの姿が映っていた。カタリナは込み上がってくる感情を懸命に押し殺した。「私は選択を間違えてしまったようね。」「そうだな。俺の想像を遥かに凌駕するおまえの力があれば、ロシェ=カエルムが死ぬことはなかったかもしれない。でもおまえは自分の目的を優先してここへ来た。」「あなただけは何が何でもここで葬る。」カタリナはフレアリングに祈りを込めた。「フレア。煉獄の監獄。」カムの周り半径十メートルほどに炎のサークルが形成された。「そこから出ようとすると、全身を焼かれ死ぬことになるわ。そのソファから一歩たりとも動かないことね。」カタリナのその言葉を聞いて、カムは背もたれに腰を預けた。「なぜそこまでして俺を恨む?」「恨んでないわ。ここにくる時、あなたの兄の墓を見たわ。あなたも根っこから腐ってるわけではないようね。無理に悪を演じている。そんな風に私には見えるわ。」「おまえは知らないのだろう?俺の父がどのような人物だったのか。心優しく民からも愛される王だった。しかし突然命を奪われたのだ。それなら俺は逆に悪のカリスマとして国を支配すると決めたのだ。」「そう。あなたには同情するわ。でもしてはいけないことに手を染めて、奪った命が多すぎる。」「そうだろうな。」カムは頭がいい。こう話してるうちに何か打開策を練っているのかもしれない。しかしカムの額に滴る汗からは現状に覚悟を決めているかのようにも見える。カタリナにはこの男がよく読めなかった。「たかだか炎を操るだけのちっぽけな存在だと考えていたが、まさかおまえがこれほどの力を有していたとはな。どうだ?おまえの信じる王はもう死んだのだ。俺のこれからを信じてみないか?」「ふざけないで。あなたにこれからはない。ここで確実に死ぬべき人間
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: 革命Ⅱ
「あちゃ。やっぱり強いな。」「もう十分でしょ?行かせてもらうわね。」カタリナはそう言うと、背中を向けて歩き出した。「待って。」「まだ何か?」「私まだやれるよ。もっと遊んでよ。」ミレアは立ち上がっていた。そしてダークリングに祈りを込めている。「カムという男は、あなたがそこまでして守りたい人なの?」カタリナの問いかけにミレアは被りを振った。「私は今、カム様を守るために戦ってるじゃない。楽しくて戦ってるのよ。」「そう。確かにあなたは巫女としての素質は高いわ。でもね。経験が浅い。あの頃の私を見ているかのようなの。」「経験値かぁ。そればっかりはどうしようもないね。」「これから積めばいい。その後にまた相手してあげるわよ。」「だめよ。私はもう決めてるの。自分の死場所はここだって。」「そう。ならもう何も言わないわ。」カタリナはフレアリングに祈りを込めた。「炎剣の舞。」「そうこなくっちゃ。闇剣の舞。」ミレアは闇の剣を持って、カタリナに向かって走る。「フレア。疾風の炎舞。」カタリナは炎の剣を持ったままそう呟いた。次の瞬間、カタリナはミレアの後ろに立っていた。ミレアの右腕を斬り落として。「見えなかった。」「でしょうね。」ミレアは斬り落とされた右腕を見ながら、小さく笑った。「これじゃあ。もうダークリングも使えない。」「それが狙いだからね。じゃあ私は行くわ。殺人の趣味はないの。」「待ってよ。ちゃんと殺してから行って。」「全て終わったら回復させてあげるから、そこまで待ってなさい。」カタリナがそう言うと、ミレアは株を降った。「そんなこと望んでない。ちゃんと殺してって言ってるの。でなければここから先に行かせるわけにはいかない。」「なぜ命を粗末に扱うの?」カタリナが聞くと、ミレアは少し考えてから答えた。「大事に扱っているからこそ、炎の巫女の手で終わりにしてほしいのよ。生きていてもいいことなんてないって分かっているから。」ミレアにも辛い過去があるのかもしれない。カタリナはかつての自分と重ね合わせた。「そう。分かったわ。でも私も急いでいるの。一瞬で終わらせてもらうわ。」「ありがとう。」カタリナは炎の剣でミレアの首を斬り落とした。「私も出会う人が違えばこうなっていたのかもしれないわね。」カタリナはそう呟くと、ミレアの骸に背を向け
Last Updated: 2026-06-30
舞いし炎。飛ぶは空。Ⅱ~空と炎を紡ぐ者~

舞いし炎。飛ぶは空。Ⅱ~空と炎を紡ぐ者~

炎の巫女カタリナは、亡きロシェとの子ルーナと共に平穏な日々を過ごしていた。 ルーナの15歳の誕生日、カタリナはルーナに父親のことを教えるため、空の民に縁のある国ヤンガミへと連れていくことにする。 暗躍する組織。魔界。空の王。炎の巫女。そしてルーナ。 新たな戦いが始まる。
Read
Chapter: EP7 歯車
カタリナは遠のく意識の中、フレアリングに祈りを込めた。 造られた炎の剣が、ルーナの手元に納まる。 振り下ろされた闇の剣を、ルーナは懸命に炎で受け止めた。 「うぅ…。」 感じたことの無い衝撃に、全身の筋肉が悲鳴を上げる。 重力に引っ張られるかのような重たさに、剣術の心得のないルーナの身体は耐える術を知らない。 (お母さん…。こんな思いをずっとしてきたんだ…。) ルーナの膝が崩れ落ちた。 「継ぎ接ぎの女!相手は私だ!」 肋骨が折れたカダインが、長弓を構えて言った。 継ぎ接ぎの女は、すぐにルーナとの押し合いを辞めて、離れようとする。しかし炎が紐状になって脚を捉えている。 「くっ…。炎の巫女か…。」 カタリナの意識は無い。 カダインは矢を放った。その矢は光を放って、継ぎ接ぎの女の腹部を正確に貫いた。 「うぅ…。」 継ぎ接ぎの女の腹から血が流れ出す。 「貴殿も一応は人間なのだな。」 カダインはすぐさま2発目を放つ。 今度は右の太ももを貫いた。 「くくくくくくっ。ははははは。」 継ぎ接ぎの女は高笑いをする。 「なんだ?」 カダインとルーナの声が揃う。 「目的なんて忘れてしまおう。うん。忘れよう。全部消してしまえばいい。ははははは。」 (目的…?) ルーナはその言葉に引っかかった。対してカダインは、目の前の精神の壊れた化け物への対処法を模索する。 「まずはおまえからだ。」 闇の剣はあっという間にカダインの前にいた。 「舐めるな!化け物が!」 カダインは長弓を背中へと背負い、2つの短剣で応戦する。 「シュプルーン騎士を舐めるな!!」 カダインの剣技はどんどん速くなり、ついに継ぎ接ぎの女の剣速に追いついた。 「そこだぁ!!」 カダインの渾身の一撃を、継ぎ接ぎの女は右手で受け止める。と言うよりは右手を貫かせて動きを止めたと言う方が正しい。 滴る血が不気味な時間を生み出している。 「闇に沈むと良い。」 継ぎ接ぎ女とカダインの周りを闇が包み込む。 「なんだ?」 カダインは咄嗟に離れようとするが、短剣が右手から抜けずに離れられない。 「奥義。底闇のナーガ!」 取り巻く闇の渦は蛇の形になってカダインを縛り付ける。さらに地面に闇が現れて、その空間へとカダインを飲み込んでいく。 「なんだこれは…。」 身動きの取れ
Last Updated: 2026-07-01
Chapter: EP6 15年の継ぎ接ぎ
20:00…。まだ何も動かない。少し強い風が吹いていて。不気味さを幾分にも掻き立てる。 カダインは村の各方面に、1万の大軍を配置させている。動きがあればすぐに知らせが届くはずだ。「炎の巫女殿。敵が来ない可能性もあるのではないか?」カダインの問いかけに、カタリナは被りを振る。「必ず来るわ。私がここにいる限りね。15年の因縁は…お互いに深いものなのよ…。」「だといいのだが…。」カダインは何も起きない戦場に、少し焦りを見せている。「隊長殿。敵はもう眼前にいるものと考えた方がいい。」「眼前?」カダインが聞くと、カタリナは頷いた。「相手は山賊。奇襲は得意中の得意。さらに率いるのは人型機械。人知の範囲で測るのはリスクが高いってことよ。」その時、東の方から赤い火が昇った。「来たか!」カダインはすぐに近衛を率いて東へ向かおうとする。「隊長殿。待って。」カタリナが止める。「どうされた?」「妙だわ。」「何がです?」カダインの問いかけに、カタリナは冷静に答える。「この村に来てから、色々と詮索していのだけれど…。いつも被害が大きかったのは南と西。東はただでさえ防護柵が強固な上、外部から侵入が難しい立地。」「そこをあえて突いたのでは?」カダインの問いに、被りを振る。「この大軍は均等に配備されている。それは向こうも事前に調べているはずよ。どこを突いても敵の数が同じなら、あえて消耗するルートを選ぶ理由があるかしら?」カタリナの言う通り、東の地理が最も頑丈である。「ならば。東は囮?」「その可能性が高いわね。隊長殿。各場に配備した騎士団の指示役には、どうご命令されています?」「戦況に応じて対応せよ!…と。」「その騎士たちの実戦経験は?」「猛者は皆、大国との睨み合いに出陣している。ここにいるのは経験の浅い者ばかりだ。」カタリナは考えた。「その情報も敵に漏れてるとしたら…。私たちはもう手のひらの上…。」「我が軍に裏切り者がいると?」「相手は人型機械です。1度視界にいれれば、相手の経験値など容易く解像できる。」「ならば…。まさか…。」「その通り。向こうの狙いはただ1つ。ここ!本陣よ!」カタリナの読みに、カダインは固唾を飲む。「まさしく…。敵は眼前というわけか…。」近衛兵は、カダインとカタリナを取り囲む。「くる!」カタリナ
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: EP5 シュプルーンの女騎士
シュプルーン王国。 宮殿フランベの第1会議室は朝から騒々しかった。その原因は、カタリナからの書簡。 (シュプルーン国王殿。今宵。グリンベールの大軍がアルバレム村へと進行してくるでしょう。おそらく組織のリーダー直々に出向いてくる。数によっては、私だけでは対応しきれないと思われる。軍の派遣をお願いしたい。炎の巫女カタリナ。) 「かの有名な炎の巫女殿から直々に送られてきた書簡。無視は出来ない。」 国王の言葉に、公爵を筆頭に伯爵等も頭を抱える。 というのも、シュプルーン王国は広大な敷地を持っており、南の大国との睨み合いを長年続けている。 そこの人員に、騎士団長級の大半は派遣している。大戦が今夜の場合、呼び戻しているだけの時間はない。 「陛下。かのスカーデット王国の革命は、空の王と炎の巫女。たった2人で成し得たと聞いております。アルバレム村に、その炎の巫女がいるのであれば、何の心配もないと思われますが…。」 伯爵の1人がそう告げると、周りからは有象無象の小声が飛び交う。 「そちの意見もその通りではあるが…。その炎の巫女からの直々の書簡。無視すれば国として如何なるものか…。」 国王がそう呟いた時、木製机を叩く音がドンッと鳴り響いた。 「私たちの国で起きる戦争に。私たちが出向かない。そんなことがまかり通るとお思いですか?」 シュプルーン王国第2王女。カダイン。声の主だ。 「姫。しかし。現状では戦地に向かわせる隊長級の騎士がいないのも事実でございます。」 「私が行く。」 カダインの言葉に、周囲の雑音は消えた。 「お父様。いや!国王陛下。シュプルーン騎士団の代表として、私カダインが軍を率いて、アルバレムの平定へと向かいます!」 「カダイン…。」 国王は上手く言葉が整理できていない。 「姫。あまりにも危険です!」 伯爵の1人がそう言うと、カダインは鋭い眼光で見据えた。 「そこに住まう民の危険には目を伏せて、王宮に住まう我々の危険は案ずる。そんな国で良いはずがないのでは?」 返す言葉もなかった。 「国王陛下。適任は私しかおりませぬ。どうかご命令を!」 ……。 少し沈黙が続いた。 ……。 国王の声。 「カダイン。シュプルーン騎士団の代表として、1万の軍を率い。アルバレムへと向かって、炎の巫女の援護を命ずる。」 周囲から音が消えた
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: EP4 グリンベールの未知Ⅱ
「もう1日ここにいるだって?英雄さんよ!あんたも昨日の夜の騒ぎ知ってんだろ?とっとと離れた方がいいと思うぜ?」 「運転手さん。どうしても確かめたいことがあるの!お願いします。」 カタリナは深々と頭を下げた。 「参ったなぁ…。英雄さんにそう言われちゃ断れねぇよ…。」 運転手は馬の首を撫でながら頭を掻いていた。 「お母さん。どうゆうこと?」 「ルーナ。少し私についてきて。」 カタリナは歩き出す。ルーナも後ろを追う。 村の防御柵はことごとく焼け焦げていた。 その横を2人は歩いていく。 「ルーナ。実は昨日ね。私も戦ったの。」 ルーナは想像以上に冷静に話を聞いていた。 「それで?」 「ここを攻めている山賊は、生身の人間だけじゃない。」 カタリナの言葉に、ルーナは首を傾げた。 「生身の人間だけじゃないってどうゆうこと?」 「私たちが昔、平和のために戦っていた相手は機械だったの。」 「機械って。紙芝居とかにでてくるロボットみたいなってこと?」 カタリナは被りを振った。 「人の身体に機械を埋め込んで作った人型の機械。その体は刃を通さず。銃弾を弾く。さらに人の何倍も強い力を持っている。」 「人と機械の融合…?」 カタリナは首を縦に振る。 「お母さんたちは、それらと戦って平和を勝ち取ったのね。それで?今回の山賊にそれが関係してるの?」 カタリナは重い口調で話す。 「15年前の戦いで、私たちは革命を成し遂げて平和を手に入れた。昼も夜もない国に、太陽と月を取り戻した。」 「なんとなく理解してるよ。続けて。」 カタリナは頷く。 「本来、太陽の光を浴びていないと活動できないはずの人型兵器の中に、その弱点を克服して逃げ出したものがいると聞いたことがある。」 「なるほど。」 ルーナは相当頭が良い。 「その人型兵器は、機械と融合される前は、優秀な科学者だったと聞いたわ。おそらくその科学力を使って、太陽問題を克服したのだと思う。しかもその力を使って今度は、自分の国を作ろうとしている。」 「そうゆうことね。」 ルーナは若い頃のカタリナにそっくりだ。 もしもロシェが生きていたら、あまりにも似過ぎていて腰を抜かしていただろう。 「グリンベール。それがその人型兵器が作ろうとしてる新たな国の名前。」 「グリンベールねぇ…。ここら一帯の山賊を
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: EP3 グリンベールの未知
生まれてからアルフレアを一度も離れたことのないルーナにとってはワクワクとドキドキの共存だった。 対してカタリナは、幼い頃からあらゆる街を見てきた。他国の恐ろしさや、移動の危険性を全身で理解している。 アルフレアを出てから、馬車で丸2日が経過している。途中小さな集落で小休憩を挟んだりもしていたので、カタリナの予定よりも2日は遅れる見込みだ。 「おーい英雄さんよ。この先に少し大きい村があんだ!今日はそこで休まねぇか?」 運転手がそう言うと、カタリナはカーテンの隙間から外を見た。 (もうすぐグリンベールか…。) 「そうね。その村にお邪魔しましょう。」 カタリナは運転手にそう告げると、ルーナの方に顔を向ける。 「ルーナ。ここから先はアルフレアの領地ではなくなる。何が起きても私から離れてはダメよ!」 ルーナは静かに頷いた。眠たかったのだ。 (アルバレム村) 大陸最強と謳われる大国シュプルーン王国の領土であり、(霹靂の村)とも呼ばれている。 夜になると山賊が暴れ回っており、王国騎士団と激しい戦闘の音が常に響いていることからそう名付けられたとか…。 「英雄さん。嬢ちゃん。着いたぜ!オラは馬に水浴びせてくっから、また朝落ち合おう。」 運転手はそう言うと、馬車を走らせた。 「さて。ルーナ。宿で休みましょう。」 「そうね。」 2人は宿に向かった。村には小さな宿があった。 宿主は親切に部屋へと案内してくれた。 「旅のお方。夜になると騒がしくなりますが、騎士団様が守ってくださりますので、ご安心してお休み下さい。」 「わかりました。ありがとうございます。」 宿主の話にカタリナは例を告げた。 宿主は深々と頭を下げて、部屋を出ていく。 「ルーナ。今日はもう寝なさい。」 「お母さんもね。」 2人は寝床に着く。 母の横の安心感を久しぶりに感じることが出来て、ルーナはすぐに眠りについた。 カタリナは、その寝顔を見て少し微笑んだ後、小箱からフレアリングを取り出し自らの右手につける。 嫌な予感が拭えない。いつでも戦える準備を整えておいたのだ。 深夜2時を越えた頃。 外が騒がしい。激しくぶつかる金属音。さらに生身が焼けるような異臭。 (始まったか…。) カタリナはルーナを起こさないようにゆっくりと起き上がる。 (シュプルーン
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: EP2 悪夢の再来Ⅱ
地下室には、ダイヤル式の大きな金庫がある。 ルーナもちょくちょく地下室には入っていたので、金庫の存在は認知していた。 しかしその中身に関しては、聞いても答えてくれないことを重々承知していた為、尋ねたことはない。 ……。 何も語られないまま、2人は自然と金庫前へと立った。 「ルーナ。今から(炎の巫女)と(空の王)について教えるわ。でもまずは見てもらう方が早いと思う。」 カタリナはそう言うと、金庫のダイヤルを回していく。 カチッ という音とともに、中から小箱と、封筒が出てきた。さらにカタリナは小箱の鍵を開ける。 「綺麗…。」 小箱の中から出てきた赤いリングに、ルーナは思わず声を漏らした。 「これは(フレアリング)。これこそが(炎の巫女)の力を引き出す特別な指輪なの。」 「よく…分からない…。」 ルーナの返答に、カタリナは軽く頷いてから、封筒の中から数枚の紙を取り出した。 「これって…。」 ルーナは1枚の写真を指さして聞いた。 「あなたのお父さんよ。」 カタリナは淡白に答えた。 「空を…飛んでる…?」 「あなたのお父さんはね。(空の王)と呼ばれた英雄なの。名前はロシェ。」 カタリナは少し俯きながら話を続ける。 「空を操る特別な力を持っていたの。この国の平和を、命をかけて取り戻した英雄よ。そして私は…。この(フレアリング)を使って、ロシェと共に戦った。(フレアリング)は特別な資質を持つ者に、炎を自在に操る力を与えてくれる。だから私は(炎の巫女)と呼ばれているの。」 あまりに唐突で、複雑な話に、ルーナの脳は追跡が追いついていない。 「少し落ち着きましょう。」 カタリナは話を止めて、地下室の椅子に腰掛けた。ルーナも横に座る。 ……。 20分ほど沈黙が続いた。 「お父さんとあ母さんがすごい人だというのは分かった。」 ルーナがそう言うと、カタリナは少し微笑む。 「私たちは守りたかっただけ。でも私自身は1番守りたかった人を守れなかった…。」 「お父さん…。」 「ずっと黙っててごめんね。」 カタリナはそう言うと、ルーナの頭を撫でた。 「お母さん…。私こそ、本当にツラいのお母さんなのに…。強く当たってごめんね。」 2人は束の間抱きしめあった。 本がぎっしりと並ぶ地下室の中。 丸テーブルに簡素な椅子が2つ。 カタ
Last Updated: 2026-06-30
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status