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第6話

Auteur: 静穂
結衣は、蓮とこれほど早く再会することになるとは思ってもみなかった。

翌日、アシスタントが興奮に声を震わせながら、知らせを持ってきた。

「社長……あなたの体にある毒の出所が分かりました!」

「海外のある研究所で開発された新型の毒物で、少し前にスタッフの一人が盗み出したそうです」

アシスタントは大きく息を吸い込み、言葉を継いだ。「そのスタッフというのが……白河紗良だったんです!」

結衣の表情が、一瞬で鋭くなった。

つまり、一ヶ月前に蓮を拉致したのは紗良だったのだ。

おそらく、彼女と蓮の運命的な出会いさえも、最初からすべて仕組まれた計画の一部にすぎなかったのだろう。

「……彼女はどこ?」結衣は低い声で問いかけた。

「すでに捕らえさせました。地下室にいます」

三十分後、結衣は自宅の地下室で、激しく抵抗する紗良と対峙していた。

「今すぐここから出しなさい! 蓮さんに知られたら、あなたたち、ただじゃ済まないわよ!」

結衣は冷え切った瞳で、騒ぎ立てる女を見つめた。「一ヶ月前、蓮を拉致して私に毒を打ったのは……あなたね」

紗良の顔色が一変した。だが、すぐさま声を荒らげてしらを切った。「……何のことか、さっぱり分からないわ」

「いいわ。今から思い出させてあげる」

結衣の言葉が終わるか終わらないかのうちに、誰かの蹴りが紗良の腹部へとめり込んだ。

紗良の口から苦悶の悲鳴が漏れる。

それからしばらくの間、静まり返った地下室には、彼女の絶叫だけが響き渡った。

どれほどの時間が経っただろうか。結衣はようやく手を止めさせると、ボロボロになり、血の気が引いた紗良の前に車椅子で進み出た。そして、逃げ場のない視線で冷酷に見下ろした。

「……そろそろ、話す気になったかしら?」

紗良の体は、激しく震えていた。

目の前にいる結衣は、病に侵され、今にも死にそうな姿をしているはずなのに。紗良は、骨の髄まで凍りつくような恐怖が、自分の手足を侵食していくのを感じていた。

「私は……」

彼女がようやく口を開きかけた、その時だった。 一つの人影が、凄まじい勢いで地下室へと飛び込んできた。

パシンッ――

乾いた音が地下室に響き渡り、結衣の頬にはくっきりと手形が浮かび上がった。

蓮は怒りのあまり全身を震わせ、その瞳には底知れぬ殺意が宿っていた。

「結衣……お前という女は、どこまで虫酸が走る真似をすれば気が済むんだ。自由にしてやると言いながら、裏では俺の大切な人を拉致するなんてな!」

口の中に、鉄の味が広がっていく。

結衣は指先で口角に滲んだ血を拭うと、一瞬で周囲を圧するような鋭い気配を放った。

怒りに燃える蓮の視線を真っ向から受け止め、彼女は低い声で言い放った。「……紗良があなたを拉致した犯人だと知っていて言っているの?」

蓮の瞳が大きく見開かれた。彼は眉をひそめ、吐き捨てるように問う。「……証拠はあるのか?」

傍らにいたアシスタントが、すかさず調査資料を差し出した。

「桐生様、あの日あなたを救い出したのは、他の誰でもない浅見社長です」

「犯人との激しい争いの末、逃げ際の犯人に毒の注射を打たれたのも、社長です」

「そしてその毒は、間違いなく白河紗良が手に入れたものだという裏付けが取れています!」

蓮は資料に目を通したが、次の瞬間、嘲笑うかのようにそれを投げ捨てた。

ひらひらと舞い落ちる紙片の中で、彼の瞳はさらに冷たく凍りついていく。

「……これっぽっちの紙切れが証拠だと?」

「結衣、相変わらずいい加減な嘘を並べるのが得意だな。紗良が研究所から毒を盗んだことは、とっくに俺に話してくれたし、目の前で破棄するのも確認している」

「それに」と、彼は残酷な言葉を重ねた。「あの時、俺を救ってくれたのは紗良だ。お前なわけがないだろう?」

結衣の表情が、一瞬で凍りついた。視線を紗良へと向けると、彼女は蓮に見えない位置で、勝ち誇ったような挑発的な笑みを浮かべていた。

……すべて、先回りされていたのだ。

結衣は再び蓮に視線を戻した。「……つまり、私を信じないというのね?」

「信じろと言う方が無理だ」蓮の言葉には、ひとかけらの慈悲もなかった。

結衣は何も言わなかった。

かつての彼は、「結衣、何があっても俺は君だけを信じるよ」と言ってくれていたのに。

今、彼は誰よりも残酷に自分の対極に立っている。

これ以上の皮肉があるだろうか。

結衣の口元に、自嘲気味な笑みが浮かんだ。彼女は冷徹な声で命じた。「……続けなさい」

どんなに口の固い奴でも、吐かせられない秘密などない。

「蓮さん、助けて!」紗良が悲鳴を上げた。

それとほぼ同時に、蓮もまた絶叫した。「浅見結衣!」

結衣が振り返ると、そこには自分の頸動脈に果物ナイフを突き立てている蓮の姿があった。

「結衣、これ以上紗良に指一本でも触れてみろ。今すぐ、お前の目の前で死んでやる!」

覚悟を証明するかのように、彼がナイフを強く押し当てると、鮮やかな赤がその首筋を伝い落ちた。

「桐生様、その毒のせいで社長の命はもう……! 無駄にできる時間なんてないんです!」アシスタントが悲痛な声を上げる。

「この女がそばにいるのは、絶対に何か目的があるからだ!」

だが、蓮は全く取り合おうとしない。

結衣は、彼の首筋を流れる、目に刺さる赤を、ただじっと見つめていた。

長い間、空気は凍りついたように静まり返った。

やがて結衣は、ゆっくりと瞼を閉じた。「……失せなさい」

蓮は警戒を解かずに動かない。

「消えなさい!」結衣の声が地下室に響き渡った。

蓮はすぐさま紗良を引き寄せ、逃げるように地下室を去っていった。

遠ざかっていく彼の背中を見つめながら、結衣の唇がわずかに動いた。 「蓮……いつか後悔する日が来ないことを、願っているわ」

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