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偽典のダーク・ブレイブ
偽典のダーク・ブレイブ
Author: 理乃碧王

チュートリアル

Author: 理乃碧王
last update publish date: 2026-04-10 20:45:21

≪このゲームを始めるにあたり≫

 ――その輝きヒカリは、絶望を切り裂く剣となるのか?

 漆黒の視界の奥で、白磁のシステムメッセージが静かに――。

 そして、確かな熱を帯びて灯った。電源のスイッチは入ったのだ。

 さあ、退屈な現実の時間は終わりだ。ここからは、君が世界の主役となる物語を始めよう。

 君がこれからプレイするゲームのタイトルは――『創典のラディアント・ブレイブ』。

 剣と魔法、そして選ばれし者の運命が交錯する、完璧に計算された王道ファンタジーRPGだ。

 まずは、君が降り立つこの世界の『ルール』を脳髄に刻んでもらいたい。

                           製作者:エクスル・アルバースより。

***

≪World Setting:異世界ブライトス≫

 争いの歴史は、もはや泥沼と化していた。

 人と人、種族と種族、そして国と国。

 流された血と涙の河を越え、人類はようやく『争わぬための知恵』という名の危うい均衡を手に入れたはずだった。

 法を編み、互いを理解し、妥協し、譲り合う――そんな微かな希望の光。

 だが、運命とは常に非情なものとしてプログラムされている。

 ――平和は長くは続かなかった。

 突如として現れた、一人の魔族の男によって世界は混沌カオスに包まれる。

 圧倒的な魔力と、冷徹なまでの統率力を備えた絶対の魔族――魔王ドラゼウフ。

 彼は凶悪な魔軍を率いて世界を蹂躙し、希望を絶望へと塗り替えていった。

 これに対抗すべく、瀬戸際に立たされた諸国連合が打ち出した最後の切り札。

 それこそが、神の代行者たる『勇者』の選出である。

 各国は同盟を結び、勇気ある若者を死地へと送り出す。

 そして今日もまた、新たな英雄が誕生する――。

 ▶ New Game

***

≪聖なる加護の国・イリアサン≫

 物語の幕が上がるのは、豊かな自然と文化を誇る大国・イリアサン。

 魔王軍の猛攻を唯一退け、世界の防波堤となっているこの国の要は『ルビナスの霊泉』と呼ばれる不可侵の聖域だ。

 慈愛の女神ルビナスの祝福を帯びた聖なる水脈が、邪悪なる者の侵入を強固に拒んでいる。

 その王国の中心地にそびえ立つ大寺院――シテン寺院。

 極彩色のステンドグラスから差し込む光のシャワーを浴びて、一人の若者が祭壇の前に立っていた。

「来たか、未来を担う勇者よ!」

 厳かな声が、神聖な空間に響き渡る。

 女神像の前に立つのは、サイネリア色の頭巾と純白のマントを纏った小柄な男。

 この寺院を統べる最高責任者であり、若者たちを導く大聖師ナビゲーター、その人である。

「魔王ドラゼウフを討伐するのだ。過酷な『勇者試験』を突破した君になら、この世界に平和を取り戻せると、私は確信しているよ」

 勇者試験。

 それは、イリアサン王国に集う数多の優秀な才能が脱落していく、死の予感すら漂う選別儀式。

 その過酷な試練を勝ち抜いた、ただ一人の生存者プレイヤーだけが、その重すぎる称号を身に刻むことができるのだ。

 そして君は、すべてのフラグを完璧に回収し、いまここに立っている。

「さて……冒険の旅に出る前だ。何か聞いておきたいことはあるかな?」

 慈父のような、しかしどこか感情の欠落した完璧な微笑みを浮かべる大聖師。

 初めての旅立ちを前にした若者の不安を取り除くための、いわゆる『チュートリアル』の時間だ。

「……一人では心細い、か。ふむ、賢明な判断だ」

 プレイヤーの無言の選択肢を読み取ったかのように、大聖師は深く頷く。

「仲間が欲しいなら、戦士、魔法使い、僧侶――この三人を加えるのがいいだろう。バランスの取れた王道のパーティこそが、過酷な旅を生き抜く成功の鍵だからね」

 いかにも攻略本めいた、システム側からの模範解答。

 ソロプレイも自由だが、システムが推奨する『最適解』は常に決まっている。

「仲間を探すなら、まずは街の酒場へ行くといい。そこに『ジル』という名の優秀な魔法使いがいるはずだ。まずは彼に話しかけてみるといいよ」

 特定のNPCの名前まで丁寧に指定してくるあたり、親切というよりは強引な『シナリオの誘導』を感じさせる。

 だが、選ばれし主人公はそんな不自然さに疑問を抱くようには作られていない。

「勇者イグナス。君の活躍に期待しているよ」

 ――勇者イグナス・ルオライト。

 それが、君というプレイヤーがこの世界に刻む、光り輝くアバターの名前である。

 金髪碧眼、誰からも愛される容姿と、神に祝福された才能を持つ完璧な主人公だ。

「はい。必ず、この世界に平和を取り戻してみせます!」

 大聖師の前で、プレイヤーであるイグナスは一点の曇りもない澄んだ声で力強く答えた。

 こうして、偉大なる勇者の、輝かしくも残酷な冒険の幕が上がるのである――。

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