LOGIN扉をくぐると視界が一気に明るくなった。
そこは昨日現実へ帰還したのと同じ場所だった。
黎慈(れいじ)と景佑(けいすけ)は目配せを交わした。
ふと空を見ると、少し遠くに明らかに異彩を放っている空気がある。
そこまで離れてはいないはずだ。
おそらく、あれが夢の核とやらなのだろう。
二人はそれを目指して歩き始めた。
黎慈(れいじ)が後衛で周りを見渡す。
景佑(けいすけ)が前衛で前方の安全を確認する。
少し歩いた頃だろうか。
突然、先に進んでいる景佑(けいすけ)が何かに気づいた様子で黎慈(れいじ)を呼んだ。
指差す先には、この世界の風景とは明らかに異なる巨大な建造物があった。
遠くからでもその威容がわかるほど大きく、まるでRPGに登場する魔王城のような禍々しいシルエットをしている。
「あれが……夢の核か」
二人は
二人は教室の中に入り、黒板の前でうずくまっている女子生徒の元まで行った。脇腹を抑え、苦痛の表情をしていた。「大丈夫か?怪我は?」黎慈は反射的にその女子生徒に手を差し伸べていた。女子生徒はその手を振り払い、床に落ちていたバッグを持って立ち上がった。そして、何も言わずに教室の扉の方に歩き始めた。黎慈は咄嗟に彼女の肩に手を掛けた。「待ってくれ!まだ聞きたいことが…」女子生徒は手を振り解くように素早くこちらを向いた。「うっさい。死ね。お前らには関係ないだろ」肩から手を振り落とし、そのまま教室を出て行った。二人残された教室には静寂だけが呼応した。「ひどいな…」黎慈は頭をガクンと落とし、見るからに落ち込んでいる。景佑は口から吹き出しそうなのを堪えていた。「いや笑わんでよ…」「いや笑ってない」絶対に嘘だ。心の中で絶対爆笑してる。そんな風にふざけ合っていると、景佑が話し始めた。「まあ、とりあえず“何か“が行われているのは分かったんだ」「これを衣百合にでも報告すれば、色々調査してくれるだろう」「それもそうだな」黎慈は一つ疑問に思っていた事があった。「…これも共通夢に関係あるのか…?」「最初の方に聞いたセクハラの共通夢か?」景佑の発言に黎慈は頷く。「どうだろうな。その辺も衣百合に調べてもらおう」「どちらにせよ、犯罪行為を犯しているのは間違いないだろうな」「これで行動を起こすこともできる」景佑の言う通りだ。和寿の過去の記憶を見て少し同情していた部分もあった。だが、同情する余地もないことが今日で分かった。そうして二人は帰路についた。黎慈が寮に着くと、ロビーに衣百合がいた。どうやら本を読んでいるようだった。玄関の扉が開いた音に気づかないほど没頭している。黎慈は一旦、自分の部屋に戻り、荷物を置いて一階に戻った。衣百合はまだ本を読んでいた。黎慈は衣百合の正面にあるソファーに座った。数分間、眺めていたが特に気づく様子がなかった。話しかけてみた。「あのー衣百合さん?気づいてます?」衣百合はハッとした表情で本を閉じた。「えっと、いつからいた?」「5分前くらいかな」「全然気づかなかった…」黎慈は学校であったことを衣百合に話した。「教員が生徒に暴力…」「本当だったら早急に解決しなきゃいけないね」「分かった
二人は城壁に腰掛けた。状況を立て直すことにした。「どうするよ。あれ」黎慈は真っ当な考えが出てこなかった。「ぶっちゃけ、あの力は俺たちの持っているブラムよりも格上だ」今勝つ方法は無いに等しいだろう。二人はそう感じていた。「あいつしかいなかったら正面でもやれそうだが…」「でも、あの少女が言うには、夢で殺したら現実でも…」現実でも死ぬ。そう決まったわけではないが、助けた女子生徒の前例を考えると現実にも何らかの影響があるのは確かだろう。そう考えを巡らせていると、景佑が何かを思いついたようだ。「なあ黎慈。前に少女にこの世界について説明を受けたのを覚えているか?」「ああ、もちろん」「その時にさ、『夢の主人が並外れた欲望がないと具現化しない』みたいな話をしていたよな」「この話、使えそうじゃないか?」黎慈の頭には困惑が浮かんできていた。景佑はその黎慈の様子を汲み取り、詳しく説明を始めた。「この世界で起きたことが、現実でも影響がある」「この話が本当なら、逆説で現実で何らかの作用を起こせば、夢の世界も影響が出るんじゃないか?」「あくまで仮説だが…」確かに、使えるかもしれない。二人はこのことを衣百合に相談するために、一度現実へと戻った。「ふーん。なるほどね」放課後に集まった三人は、衣百合にその仮説を説明した。「多分なんだけど、夢で起きたことは夢の主人は覚えてないんだと思うよ」「前に生徒会で少し話した時にサラッと聞いてみたんだけど、覚えてない様子だったよ」また話が変わってくる。三人は黙り込み考えを巡らせていた。「もしかしたらだけど…」衣百合が静寂の中、話し始めた。「景佑の仮説通り、現実で何か強烈な印象を残すことができれば、それが夢の中にも反映されるのかもね」「現実であの人に何かを強く意識させれば、夢の中でもその影響が出る…はず」衣百合は少し自身がなさそうだった。だが、現実で実害が出ているのも事実だ。どうにかして解決しなければいけない。「とにかく強烈な感情や印象を現実で植え付けて、夢の中でその力を弱める方法があるかもしれない…」少し間を置き、景佑が話し始めた。「その行動を起こすためにも、しばらくは証拠を集めるために、主任を監視しよう」「確固たる証拠があれば、こちらも行動を起こせるわけだし」二人は景佑の提案に呼応
二人は再び夢の核を目指して歩き出した。道中、何度か化け物に遭遇したが、ブラムを駆使して難なく撃退しながら進んだ。周囲の空気は重く、足を進めるたびに緊張が募っていく。おそらく夢の中に久しくきていなかったからだろうか。体が重く感じられる。黎慈は前回とは違う正面からの侵入に、内心で警戒を強めていた。やがて目的地に到着した。黎慈にとっては、正面から入るのは初めての試みだった。まずは景佑を先頭に安全を確認し、手の合図で中へ入った。正面は広いロビーのような空間になっていた。幸い、敵の姿は見当たらない。「あれ?前回来た時はうじゃうじゃいたのに……」景佑が奥の方を目を細めて見ながら首を傾げた。「とりあえず進もうぜ」黎慈の呼びかけに景佑が頷き、二人はさらに奥へと進んだ。右側にある大きめの扉に景佑が進むのを見て、黎慈も後を追った。扉を開けると、そこは長い廊下だった。壁には前回と同じように肖像画が飾られている。足音を殺しながら進んでいると、誰かの話し声が聞こえてきた。どうやら右側の部屋からだ。二人はそっと近づき、聞き耳を立てた。「あと半月ぐらいで消えるらしいじゃん?ここも」「え、マジ?また前のとこと同じになんの?」「せっかく住み心地良かったのに……」「まあしゃあないっしょ?いつかはこの世界も無くなるわけだし」世界が無くなる?「てか消えるってことは、前と同じくニンゲン?ってのが来るのか?」「さあな。でも主人が言ってたからそうなんだろ」「またあのクソめんどくさい“あれ“やんなきゃいけないんだろ?」黎慈と景佑は目を見合わせ、一旦その場を離れることにした。ロビーに続く扉を開ける。ロビーに続く扉を開けると、来た時には誰もいなかった階段の踊り場に誰かが立っていた。その前に、二人は突然の気配を感じて身構えた。さらに、廊下の奥から数体の鎧姿の兵士が現れた。「侵入者だ!捕らえろ!」兵士たちが一斉に武器を構えて突っ込んでくる。黎慈は即座にブラムを起動させ、先頭の兵士に向かって手の平を突き出した。触れた瞬間、爆発が起こり、兵士の胸部が灰となって崩れ落ちた。「景佑、右!」「了解!」景佑はブラムを連射し、レーザーのような光の弾を浴びせて二体の兵士を同時に焼き払った。しかし、残りの兵士が左右から挟み撃ちにしてくる。黎慈はスライディ
黎慈は眩しい光で目を覚ました。窓から差し込む輝かしい朝の光に、軽く目を細める。着替えてロビーへ降りていくと、いつも通りの朝が待っていた。4月下旬。色々あった4月上旬から二週間ほどが過ぎた。夢での探索で疲労が溜まっていた二人は、一度休息期間を取ることになった。和寿のタイムリミットはおそらく5月下旬。まだまだ時間はある。そこから黎慈は夢の世界に行くこともなく、普通の学生生活を送っていた。黎慈も学校生活にだいぶ慣れてきていた。いつものようにジャージに着替え、部活へ行こうとする。すると、スマホに連絡が入った。景佑からだった。『今日、久しぶりに行かないか?夢の中に』ここ数日、景佑からの連絡は特になかった。もちろん、夢の中にも行っていなかった。黎慈はすでに万全の体調だったが、景佑の黎慈は返信した。『体調大丈夫なのか?』すぐに返事が来た。『もうバッチリって感じだな』どうやら大丈夫そうだ。『分かった。夢で集合で』『また連絡する』黎慈は部長に部活を休む連絡を入れ、快く承諾してもらった後、寮へ戻った。部屋でスマホを眺めながらリラックスしていると、下の階から衣百合の声が聞こえてきた。「黎慈く~ん!ちょっと下来て~」言われるがままロビーへ降りていくと、衣百合がスーパーの袋を二つテーブルの上に置いていた。彼女は黎慈に気づくと大きな声で呼んだ。「あ!ちょっとこれ冷蔵庫に入れてくれる?」黎慈は片方の袋をキッチンまで運び、食材を適当にしまった。少し時間がかかったが、なんとか全て入れ終わった。「黎慈くん、いきなり呼んで手伝わせてごめんね?」「ここまで持ってくるのに精一杯でさ……」「全然!気にしてないよ。これぐらいお安い御用」「にしては少し疲れてない?」二人は談笑しながらロビーのソファーに座った。衣百合がこちらを見て話しかけてきた。「どう?学校にはだいぶ慣れてきた?」「おかげさまで。衣百合がいなかったら、今頃クラスでどうなってたか……」最初は馴染めなかったが、衣百合や亮のおかげで少しずつ楽しくなってきている。会話をする程度のクラスメイトもでき始めていた。「なら良かった」「ところでさ……」衣百合が声のトーンを変えた。「前に色々話してくれて、夢にもいたあの子いたじゃん?」おそらく、夢で異様な消え方をした一年生の女
二人は衣百合に、昨日夢の核で起きた出来事を簡潔に説明した。「夢の核に、あの女の子、大きな揺れ、かあ~」衣百合は難しい顔で腕を組んだ。「いや、ね?」「実際に見てないからなんとも言えないっていうか……」数秒置いて、彼女は再び口を開いた。「ただ……」「ただ?」「大きな揺れ、が引っかかるよね……」「ああ、全くの同意見だ」黎慈も景佑も同じように首を傾げた。あの揺れは明らかに異常で、地震のような揺れではなかった。まるで世界が鼓動をしているようだった。「今は気にしても仕方ないのかもな」「あの世界で起きる全ての現象に対して」机に突っ伏していた景佑が、ゆっくりと顔を上げた。「それもそうだな」その後は昼食を取り、それぞれ教室に戻っていった。無事に授業が終わり、昨日と同じく部活へ向かおうとしていたところ、教室に亮が現れた。「部活に行こうとしてるところ悪いんだけど、ちょっと付き合ってほしいことがあるんだけどさ、良いかい?」「問題ないよ。先に昇降口に行ってて。部長に連絡してから行く」「ありがとう。じゃあ、また後で」亮が出て行った後、黎慈はスマホで部長に休みの連絡を入れ、昇降口へ向かった。正門まで行くと、亮がすでに立っていた。「早かったな」「そんじゃ、行くか」亮はそう言い、歩き始めた。「ところで、どこ行くの?」「ちょっと服買いたくてさ。近くにある古着屋だよ」「しゃーないな、着いていくよ」二人は歩きながら近況を話した。「そういえば、衣百合となんか進展あった?」黎慈は一瞬動揺したが、すぐに平静を装った。「な、なんもないよ」「いやいや、流石に無理があるでしょ」「たまに寮で話したりしてるじゃん」「なんなら、同じ部活に入ったんでしょ?」「ちょっと仲良すぎじゃない?」黎慈は胸を撫で下ろした。「それは、ただ誘われただけで、特に深い意味は無いっていうか」「本当かあ?」「まあ、あんまり詮索しないんだけどさ」そんな会話をしているうちに、古着屋に着いた。店内にはレトロな洋楽が流れ、ヴィンテージの服が並んでいる。亮はすぐに目当てのパーカーを探し始め、黎慈は店内を眺めていた。店の奥へ進むと、他の商品とは明らかに違う謎の物体が置いてあった。それをじっと見ていると、暖簾の奥から店員が出てきた。「お客さん、それ興味あります?」「
ダイニングに戻るまでの道も、館内は閑散としていた。扉を開けても廊下と変わらず何もなかった。三人はダイニングから外につながる扉に向かい、ゆっくりと開けた。黎慈が先陣を切り、外へ出る。だが、外も中と同じように気配がなく、ただ中庭に高い外壁があるだけだった。「さて、外には出れたが……」「ここで大丈夫です。ありがとうございました」黎慈と景佑が困惑の表情を浮かべていると、少女はその場に横になった。二人の困惑した顔をしていた。二人が黙って見守っていると、少女の体がどんどん透明になっていった。「おい、これ大丈夫なのか?」景佑が黎慈に疑惑の目を向けた。「しばらく見守ろう」数秒後、少女の体は灰のように崩れ、跡形もなく消えていった。まるで化け物を倒した時のようだった。「消えたな……」黎慈は少女の消え方に強い不信感を覚えた。「景佑、一旦建物に戻ろう」「そうだな」二人は再びダイニングへ引き返した。疲れが一気に噴き出し、二人は床に座り込んだ。天井を見上げながら、黎慈が先ほどの不信感を口にした。「なあ、さっきの少女の消え方、おかしくないか?」「……」景佑も右上に視線をやり、思い出すように言った。「確かに、さっきの消え方…」「化け物を倒した時と同じような……」「ホログラムのような消え方。何かおかしくないか?」黎慈は俯きながら独り言のように言葉をこぼす。「俺らは互いに消えるところを見た事がないから、一概には言えない」「確証はないが…やはりおかしい」二人は顔を見合わせ、重い沈黙を共有した。「戻って衣百合の意見も聞こう。今は外に出る方法を考えよう」「でも、どうやって……」中庭には到底登れない高い外壁がある。正面から出るのは危険すぎる。「上から……」黎慈の独り言に、景佑が反応した。「屋上からってことか」「確かに、それしかないのかもな」この建物の構造が学校と同じであることは、すでに確信していた。屋上があるはずだ。「ものは試しだ。行ってみる価値はあるはず」「じゃあ、行きますか」二人は立ち上がり、屋上を目指した。屋上までの道も廃墟のように静まり返っていた。屋上に着くと、そこも同様に人の気配はなかった。「とりあえずついたが……」「ここからどうするか、だな」二人は屋上の壁に寄りかかり、外の様子を窺った。すると、屋
「ようこそお越しくださいました」黎慈はゆっくりと瞼を開けた。目の前に、いつもの少女が立っている。「お連れ様の場所にお連れしましょうか?」「ああ、頼む」少女は何かを小さく唱え始めた。数秒後、視界が一気に明るくなった。目を開けると、景佑が複数の化け物に囲まれ、苦戦している最中だった。黎慈は即座にブラムを起動させ、助太刀に入る。二人の連携で化け物を一掃すると、景佑が息を
黎慈は一度公園を離れるためにバスに乗り、市内で一番栄えている光里山駅へと向かった。「お客様へお願いです。車内は大変揺れますので、完全に停止するまで立ち上がらないようにお願いします」車内アナウンスが流れた。どこか懐かしさを感じさせる音質だ。「次は、光里山駅前、光里山駅前。お降りの際は、お忘れ物のないようご注意ください」黎慈は降りて、駅前を少し歩いてみることにした。この駅は県内で新幹線が停まる数少ない大きな駅で、東京から来た時
黎慈(れいじ)は夢の中で覚醒した力の余韻が、まだ体に残っている気がした。体が気怠い気がするが、無理やり頭と体を起こす。昨日の出来事を共有するためにも、いつもより早く寮を出た。衣百合(いゆり)も亮(りょう)もまだ眠っている早朝だった。学校に着くと、教室も廊下も無人だった。静まり返った朝の廊下を歩きながら、黎慈(れいじ)は昨夜の混沌とした夢の世界を思い出していた。体に流れ込んだ熱い奔流、あの声、そして化け物を殴り飛ばした時の衝撃。
時間は7時半、衣百合(いゆり)が食器を洗いながら、ロビーの椅子に座っている黎慈(れいじ)に話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんは、今日の学校はどうだった?」「まあ、楽しそうな雰囲気でしたよ。一年間、楽しみです」「なら良かった。私、こう見えても生徒会の人間だからさ。そう思ってもらえて嬉しいよ」 衣百合(いゆり)は笑顔で黎慈(れいじ)を見ており、また衣百合(いゆり)が話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんはさ、部活動とか入る予定はある?」「今は







