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第2話

Auteur: 黄昏の暁(たそがれのあかつき
彼女は結局、無理やり私からウェディングドレスを奪った。

「百萌は最近すごく痩せちゃって、このドレス着られるか心配だわ。

もっと早くから千暁に食事制限させればよかったのに」

そんなことを口走りながら、彼女はウェディングドレスを抱えて、百萌のもとへと駆けていった。

その時になって、滉一はやっと私の手を無造作に振り払った。

私の骨ばった手首を見て、一瞬驚いた表情を浮かべる。

「千暁、なんでそんなに痩せたんだ?」

鼻の奥がツンと痛む。

二年前、私は百萌と同じ交通事故に遭った。

それからというもの、鈴美は毎日百萌のために、あの手この手で料理を作り続けた。

百萌が残したものだけが、私の分だった。

私と百萌の好みはまるで違う。百萌が好きなものは、私の苦手なものばかり。

私が少しでも嫌そうな顔をすれば、鈴美は泣きながら「どんなに大変か分かる?」と訴えてくる。結局、私は無理やり数口だけ飲み込むしかなかった。

あの時からだ。私は拒食症になった。

急激に痩せていった私を、誰も気に留めなかった。

家族も、みんな百萌のことばかり。

あのウェディングドレス、百萌が着るにはかなり厳しいんじゃないか。

私は小さく笑って答える。

「それが、お兄ちゃんに何の関係があるの?

百萌が元気なら、それでいいでしょう。

私みたいな人間、死んだらみんな気が楽になるのに」

「いい加減にしろ!」

滉一は苛立ったようにドアを強く閉めて出ていった。

去り際に、捨て台詞を残す。

「この件は愼吾も同意してる。もう騒ぐな。

ここで大人しくしてろ。二人の結婚式を邪魔するな」

自嘲の笑みが漏れる。

そうか、私は愼吾さえも、引き止められなかったんだ。

すると、再び部屋のドアが開く。

鈴美が満面の笑みで、ピンク色のドレスを持って入ってきた。

「千暁、百萌は、まだブライズメイドが足りないのよ。これに着替えてちょうだい。

それから、その顔の花嫁メイクも落としなさい。百萌の邪魔になるでしょ?」

私が動かないでいると、鈴美は自分の手で私にドレスを着せ始める。その間も、式の段取りを一方的に言い聞かせてくる。

「あとで愼吾をじっと見たりしないでよ。

あの人はもう妹の旦那になるんだから、ちゃんと距離を取りなさい」

滑稽だ。私が避けなきゃいけないなんて。

つい、声を出して笑ってしまう。

鈴美は私を睨みつけ、呆れたように呟く。

「本当に、年々ひねくれていくわね。

百萌みたいに可愛げが全然ないんだから」

そのまま鈴美に引きずられるようにして、私は式場へと連れていかれる。

愼吾はタキシード姿で司会者と何か話していて、百萌は彼の腕に寄り添い、憧れと愛しさを込めた目で見つめている。

私に気づくと、愼吾は百萌の手を振りほどいて、私の方へ歩み寄ってきた。

百萌は怯えたように彼の腕を掴み、上目遣いで彼を見つめる。

愼吾は優しく彼女をなだめる。

「心配しないで。必ず百萌をお嫁さんにするって約束しただろう?」

百萌は、勝ち誇るように私を一瞥して、ようやく彼を手放す。

愼吾が私の目の前までやってくる。

「ご招待ありがとう。あなたの愛を見届けられて嬉しいよ。結婚おめでとう」

私は彼の手に、婚約指輪を返した。

十九歳の愼吾は、闇試合で手に入れたこの指輪を握りしめて、「絶対に千暁を嫁に迎えに行く」と言ってくれた。

もしも、二十六歳の愼吾が私を結婚式で置き去りにすると知ったら、あの頃の彼はどんな顔をするんだろう。

カランと、指輪が床に落ちる。

愼吾は一瞥して、眉をひそめた。説明とも、通告ともつかぬ口調で言う。

「千暁、ワガママやめなよ。俺が本当に愛してるのはお前だ。

でも今は、百萌の方がこの結婚を必要としてる。後で、必ず償うから」

「もういいよ」

私は無理やり微笑みを浮かべる。

「私は百萌と違って、要らなくなったゴミを回収する趣味はないの」

「千暁……」

愼吾が何か言いかけたとき、遠くから滉一が声をかける。

「愼吾!式が始まるぞ!」

「千暁、待っててくれ。

終わったら、ちゃんと説明するから!」

愼吾は深く私を見つめて、そのまま百萌の手を引いて去っていった。

私は一人、式場の片隅に立ち尽くす。

冷たい風が吹き抜けて、思わず身を縮めた。

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