Masuk席に着き、食事を待ってる間に、他の客の様子を見る。食事を早々と切り上げて、さっそくリバーシに興じているテーブルを見つける。そして、今日からリバーシが三台に増えたことに驚きを隠せないまま、さっそくやろうとする人でごった返していた。
「誰か、一勝負やらないか、俺に勝てたら飯代はおごりでいいぜ! 」
「乗った、俺はなかなか強いぞ? 」
早速、飯代をかけてギャンブルに興じる人がいる。ここまでは予想済み。これ以上の金額でギャンブルに走ったりしないかを監視しないといけないところだな。飯代ぐらいなら現世でも賭博罪には該当しないはずだ。その範囲で済んでるうちはまだ大丈夫だろう。
そもそも、賭博罪があるかどうかも分かんないな。あまり高額な賭博が行われている、ということでしょっ引かれたりしたら問題だが、その前に店である程度ブレーキをかけてやる必要があるだろうな。
「よし、勝った! 」
ゆっくり食事をしながら周りの音を聞いていると、さっきの二人組の勝敗が決まったらしい。どうやら賭けを提示したほうが勝ったらしい。
パルム、というのがこの村の名前らしい。それほど人口は多くないらしく、村というよりさらに小さい集落、というほうがしっくりくる程度の、数十人程度が暮らしている様子の場所だ。村の裏手……街道から見て反対側には畑が広がっている。 この畑がある都合でここに集落があるのだとすると、毎日ボコマズの街やその更に向こう側の村から通うとなると中途半端な上に、きっとここが作物を育てるのにちょうどいい場所だったのだろう。 しかし、街の城壁に囲まれない場所では周辺のモンスターの状態によって環境や危険度を左右されるのは仕方がないところ。今回も”そういう依頼”ということなんだろう。 パルムの村の中に入り、一番大きい家のほうへ向かっていく。村長や代表なんだから一番大きい家に住んでいるだろう、という偏見でしかないが、それでもおそらく間違ってないだろうところに向かう。「すいません、誰かいますか」「なんじゃい、どちら様かな」 爺さんらしき人が一人出てきた。長老って威厳はないが、気安そうな爺さんが一人出てきた。気難しそうな人でなくて良かった。「冒険者ギルドから来ました。ミニボアの繁殖で困ってると聞いたので」「おお、来てくれたか。待っとった。今年はグレートボアの大繁殖期らしくてな。そのおかげでワイルドボア、ミニボアの数も増えておってな。畑を掘り返されて困っとるところなのよ。その畑の警備をお願いしたいんじゃが……一日銀貨二枚、倒したミニボアは二匹を除いて好きにしてもらって構わない、という条件のはずだが、聞いておるか? 」「ミニボア二匹を残す件以外はおおむね。ちなみに、ミニボア二匹の理由を聞いても? 」「単純に、畑を荒らされてる分食い物がないからその腹いせに食い返してやろう……というだけじゃ。深い意味であるとか、少しでも依頼料をごまかそうとかそういう意味ではない。一匹残らず狩った自分たちのもんだと言い張るなら、それでもかまわんて。ただ残してくれるといろいろ手間が省けてうれしい、程度のもんじゃ」 なるほど。なら、二匹ぐらいなら
常設ではない依頼を見ていく。村に現れるゴブリンの定期駆除、わかっている場所のゴブリンの巣の掃除、ミニボアの大発生による畑の警備、村の倉庫の整理手伝い、いろいろある。しかし、ゴブリン退治や定期駆除のほうはDランクからの依頼となっている。まだ受けられないな。 村の倉庫の整理手伝いなんかはFランクからでも受けられるようになっているが、村までの距離と受け取れる報酬なんかを考えると、効率はあまりよろしくないな。ちょっと悪いけどパスさせてもらおう。 そして、ゴブリンはどうやらこの世界では面倒なモンスターの範囲らしい。きっと、駆除するにも集団行動をしっかりしてくる、統率の取れたモンスターなのだろう。 コボルトがその分弱いというわけではないのだろうが、コボルトは低ランク向けのダンジョンのモンスターとしても出るところを見ると、ゴブリンのほうが厄介なのだろう、と考えておいたほうがいいな。「うーん、社会的信用もそうだが、きちんとした依頼っぽいものを受けるためにはまだまだ努力が足りないらしいな。Dランクからということはかなり大変な戦いになるらしいし、まだ常設依頼以外をするにはちょっと効率が悪そうだな。どうする? 一応Eランクでも受けられる依頼はあるようだけど」「そうですね……せっかく朝から活動できるんですし、近くの村へ行って移動時間分だけ稼ぐお金が少なくなりますが、それでも名前を売りに行くのはありだと思います。私たちも名を売りに出かけましょう。一番近くの村で何か仕事がないか探してみるのがいいと思います」「一番近くの村……地図が必要だな。まずは地図を探そう」 書棚を漁って周辺地図を探しだし、近くの村の位置や隣町までの距離などを、この街に来て十数日目にしてようやく拝むことになった。そういえば、俺も南門から入った当初は近所の村から出稼ぎにきた、という表向きの理由で来てることになっているんだったな。 隣村の名前を近い順に頭に思い浮かべて、近くて楽そうな依頼を探す。すると、やはり近くの村ではミニボア……またミニボア狩りか、と思うところではあるが、うっかりワイルドボアなんかが出てきた場
今日もいつもの朝を迎える。本当に、このあたりはあんまり雨が降らないんだな。時期的なものだと思いたい。きっと、梅雨ではないにしろ雨期は存在するんだろうな。でなければ草原など自然に維持されるようなものではない。「おはようございます、ご主人様。今日も頑張りましょうね」 セルフィも昨日はリバーシに勝ってからゆっくり眠れたからなのか、いつもより目覚めも快調の様子。さて、今日は何をしようかな。 清潔魔法を使って服を洗って体の身支度を済ませて、綺麗に服装を整えたところで昨日の残り物のご飯をもらいに食堂へ。「おはようリンカちゃん。今日も朝食と、お出かけ用のお昼ご飯もよろしく」「おはようございます。座って待っててください、すぐお持ちしますね。お昼は朝を食べ終えたぐらいで用意できるように頑張ります」 テーブルに座ってしばらく待ってる間に、今日やることを決めようと考える。 三日前は薬草採取と肉集め。二日前は一日豚骨スープ作り。昨日は骨焼きと午後から肉集め。そうすると、今日はできるだけ被らないようにするには……薬草採取かダンジョンかってところだな。 もしくは、新しく依頼を探してそれを受けてみる、という手もある。しかし、Eランクでも受けられる常設以外の依頼というのは、ちゃんと稼げる範囲で存在するんだろうか。それを色々と確かめてみるか。特になかったらダンジョンに行こう。「よし、今日の予定を決めた。とりあえず冒険者ギルドで依頼探しだ。何かEランクでも世の中に貢献できる、胸を張って人の役に立てたと言えるような依頼があればそれをこなすことにしよう」「そういうのもいいですね。みんなのお腹を満たすことも必要ですが、もっとより明確に他人の役に立てることがあればそれに越したことはないと思います。やる気も名誉も信用も得られて何重もお得ですね」 名誉や信用が欲しくて仕事をするわけではないが、ないよりはあったほうがいいからな。お金にはならないけど、お金を呼んでくれる条件として名声や信用は大事だ。信用があれば金も借りれるし、すぐ返せと言われなくて済む。 それに名誉や信用があれば、ちょっとした
食事を食べ終わり、水を飲んで休憩をしていると、リバーシ待ちで声を上げる人がいたので、セルフィとそれぞれの席に向かってリバーシを楽しむことに。「よろしくお願いします」 お互いに礼をして、リバーシを始める。ルールを完全に知っているのと、ルールを活かして勝負ができるのと、読みあいや棋譜の基本が頭に入っていてどう相手に打たせればこっちに有利になるかまでを誘導するように打たせられるかはレベルが違う。 俺にできるのはせいぜいルールを活かして読み合いが軽くできる程度だ。ちょっとだけ、ルールを覚え始めたプレイヤーよりは強いぐらいの腕しか持ち合わせていない。 俺がリバーシの考案者ということは広まっていないので、考案者の癖に弱い、ということまではばれていない様子だ。ただのリバーシをルールだけは覚えた宿泊者、という立場を崩したくないので、ここは精一杯戦って勝てるかどうか試すことにしよう。 もし相手の腕に自信があるなら、俺に勝てたら飯代はおごりでいい、と自主的に言い出して奮起させる方向に行くだろうが、この相手はそんなことは言いださなかったので、そこそこの腕前、というところなのだろう。 実際、十手ずつほど進めたところで、まだいい感じの勝負を続けている。それほど強いと感じないあたりが……いや、もしかするとそこそこの腕前に見せかけているだけかもしれないな。油断せずいこう。「参りました」「お粗末様でした」 ほぼ同時に始めたはずだが、セルフィのほうはセルフィが勝って終わったらしい。やっぱりセルフィ、頭が柔らかいのか、かなり強い気がする。俺が弱いわけじゃないんだな、という自信がさらについた。よし、ここは俺も勝って……あれ、どんどん俺の色が減っていくぞ。 とりあえず……ここで、いや、ここにおくとこっちに置かれるから……うん、これ微妙に詰んでないか? 相手の顔を見ると、ニコニコとしている。どうやら、こっちの手の内を読んで、何手か先までは見通されているかのようだ。これは……負けかな。 どこ
しばらくミニボアを狩り続けていたところ、足音が響く。この足音は間違いない、ワイルドボアだ。 周囲を急いで見渡すと、一直線にこちらへ駆けてくる一匹を見つけることができた。「ワイルドボア来たぞ、攻撃のほうよろしく、こっちは前回と同じく、受け止めつつ頭を狙う」「わかりました。十分ご注意を」 セルフィが俺のそばにきて、いつでも飛び出せるポジションに立つ。俺が正面からしっかり腰を落とし、ワイルドボアの体当たりと牙を確実に避けられる姿勢を取る。 やがてワイルドボアはそのままのスピードを殺さず、全力で俺に体当たりを敢行してきた。その体当たりをショートソードと手首、腰、そして足首と足裏で完全に受け止める。 そして、ショートソードの先はちょうど脳天を突き破り、ワイルドボアの頭を割ったところで止まった。そのままセルフィが横から飛び出し、いつもの場所に傷をつけ、効率的に血を垂れ流させる。 脳は傷つけたが心臓には一切ダメージを残していないため、心臓はかろうじて動き続けてはいる。その間に一滴でも多めに血を抜いてやらないとな。ワイルドボアを半分アイテムボックスから出し、血を抜き続ける。 頭に一撃入ったから血は完全に抜けないかもしれないなあ。脳の、心臓の駆動に関する部分を傷つけていたらアウトだろうが、そこ以外に当たっていたらまだ見込みはあるか……まあ、実際どうなるかは解体結果書次第か。うまく行ってくれてますように。 ◇◆◇◆◇◆◇ ワイルドボアはその後も二匹来た。三匹目を倒したところで俺とセルフィの剣術、剣聖レベルもレベルアップ。ワイルドボアをより楽に倒せるようになったはずだ。 次のワイルドボアが楽しみだなあと思いながらミニボアを倒していたが、そういう時に限って出てこないものなんだなあ。結局その後ワイルドボアが道沿いにまで出てくることはなかった。 その代わり、ミニボアに限っては充分な数を倒すことができて食料にできる分だけしっかりと倒すことができた。 日が暮れ始め、時刻を時空魔法で確認すると17時。今から戻って冒険者ギルドで解体結果書を受け取って、銀の卵亭に
昼食がまだだ。移動やこの後の仕事の手間も考えて銀の卵亭で取ることにする。久しぶりに昼食を銀の卵亭で取ることになるな。お弁当を除けばだが、普段の昼食は買い食いかお弁当だし、ここのところは外で食べることのほうが多かった。 久しぶりに昼に食堂へ入ると、昼間からそこそこにぎわっている。これもリバーシのおかげ、ということなんだろうか。「リンカちゃん、白二つね」「はい、白パンセット二つ! 今日はまだどこにもお出かけしてないんですねえ」「今一旦用事を終えて帰ってきたところだよ。今日はこれから肉集めかな」「頑張ってくださいねー」 周りを見ると、やはり食事を終えてすぐにリバーシの台に向かう人がちらほら。リバーシの台数もちゃんとあるおかげで、スムーズに新しい対戦相手を見つけることはできているらしい。むしろ、三台に増えたことで新しい対戦相手を待つ時間すらできている模様。 常に満員で順番待ちができるのはやはり昼より夜らしい。夜なら、宿に泊まる住人達もリバーシに参加しやすい。それから一仕事終えたギルド職員も、昼休憩だと仕事を抜け出すことなく堂々とプレイできる、ということだろう。少なくとも昨日の夜はそんな感じだった。 今はさすがに昼だからか、ギルド職員の姿は見かけていない。もしかしたら商人ギルドの近くで新たに店に売り込みをかけて、リバーシを置いてもらってわざわざここまで来なくてもプレイできるようにしているのかもしれないな。ずるい。 白パンセットが運ばれてきたところで、今日もありがたく食事をいただく。この白パンも安定供給されているのはヤマナリパンのおかげ。それなりに策は講じてきたのであとはうまく回ってくれるかどうかだけ。 とりあえず今は、サンプルの一枚だけが綺麗に焼きあがればそれでいいのだ。後は実際にお皿に手が届きそうになったところで枚数や物がちゃんと存在していればいい。 本当に量産する必要もないのだから、そろそろ何人ぐらい交換されそうだ、というところでヤマナリパンからデクレール親方のところへ連絡をして、それから焼き上げるのでも問題はないことになる。むしろそのほうが無駄がなく、より高級さがあっていい。
「あ、いました。一日どうでしたか。リンカちゃん、安いほう一つ」「あいよー、黒パンセット一つ! 」 ふと気が付くとイアンちゃんが訪ねてきていた。そういえば、夜にでも今日の一日の成果を確認しに来ると言っていたな。「やあ、イアンちゃん。一日ゆっくりできたかい? 」「それはもうゆっくりと……って、私のことは良いんですよう。お二人がどうなっているかが気になるんです」「それは、もうばっちり。この通り、今日のご飯は高級セットが食べられるぐらいには稼いできたよ」 テーブルの食器を指
身支度を整えたところで一階の食堂に降りて行って、リンカちゃんにリッチな夕食を二人分頼む。「父さん、白パンセット2つ! 」 席に座り、しばらく待っていると、しっかり両面を焼かれた白パンに具だくさんのスープとちょっとしたソースがかけられた肉が小さく一枚乗ってきた。どうやら今日はサービスがいいらしい。それとも、夕食の白パンセットには必ず肉がつくんだろうか。まあ、いい。 とりあえず食べよう……と、肉についているソースをなめとる。少しはちみつが混ぜてあるのか、ほのかな甘みとソースのこってり感がある、なかなかに味のあるソー
side:セルフィ 奇妙なお兄さん……私のご主人様、タカナシさんとの生活も二日目になった。思えば、初日にいきなり剣を持たされてさあ、振ってみろと言われたのはかなり無茶だった気がします。 でも、剣を持たされた私は急に世界が広がったように見えて、そしてモンスターの動きもゆっくりに見えて。まるで剣が私を欲していたかのように動き出すことができました。 戦うのは初めてだったけれど、それでもこの上なくうまくいった気がします。これが剣聖というスキルの効果だったのでしょう。 私にそんなすごいスキルが付属していた
結局ミニボアを3匹ほど倒し、心臓が動いてる間にできるだけ血抜きをしながら進んできたので思ったより時間がかかった。30分で間に合う道に40分かけて歩き、何とか2匹は血を抜いたが1匹は血抜きをしないままアイテムボックスに入れて持ってきた。 これはちょっと減額されるかもしれないな。でもまあ、セルフィが綺麗にさばいてくれたおかげで毛皮にもほとんど傷はついていない。肉の味にどうかかわってくるかだけが気がかりだな。 北門に到着して門で冒険者証を見せて通り抜ける。「素人質問で恐縮なのだが、北門だけ他の門と違う理由で通り抜けが可能だったりしないのか? た







