Accueil / BL / 血と束縛と / 第1話(24)

Partager

第1話(24)

Auteur: 北川とも
last update Date de publication: 2025-10-18 15:00:43

「……なんの、つもりだ……」

「血を見て、体がざわつかないか?」

「ぼくは医者だ。毎日見ている」

「そうか。だが、俺は違う。案外ヤクザは、そうそう血は見ないものなんだ」

 ワイシャツの襟首に賢吾の手がかかり、あっという間に引き裂かれる、ボタンが千切れ飛び、フローリングの床の上に落ちた音がする。和彦は愕然としながら、まばたきも忘れて賢吾を見上げる。

「あんた……、息子が男とつき合っていることを、嫌がってたんじゃないのか……」

「つき合う相手によるな。手塩にかけて育てた大事な息子が、性質の悪い男に弄ばれて、バカに拍車がかかったら困る。うちの組絡みで、千尋を利用しようとしているのかもしれないしな。だが実際は、千尋がつき合っていたのは悪い男なんかじゃなく、遊び好きの美容外科医だった。しかも、俺たちに協力的な」

 それが、今のこの状況にどう繋がるのかと言いたかったが、どんなとんでもないことを言われるのかと思い、
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Dernier chapitre

  • 血と束縛と   第40話(21)

     龍造がきっぱりと言い切り、低く声を洩らして笑った。人によっては不快と感じる笑いかもしれないが、和彦は、奇妙な既視感に襲われる。何かと思えば、和彦にとっては馴染み深い、〈オンナ〉と関係を持つ男特有の、悪意のない傲慢さを、龍造からも感じ取ったのだ。 龍造の理屈に危うく流されそうになり、寸前のところで弱々しく抗弁する。「それは……、伊勢崎さんの話で、玲くんの場合とは違うはずです」「違わない。俺たちの理屈ではな。玲についても、あいつは事情を知ったうえで、自分の意思で〈オンナ〉に手を出した。悪いオヤジである俺は、そのことを利用しようとしている。現に、あんたが断れないことをわかっていて、こうして呼び出した。一度繋がった縁を断ち切らないようにな。だから佐伯先生、あんたは罪悪感なんてものを感じる必要はない。性質の悪い父子と縁を持っちまったと、むしろ舌打ちしてもいいぐらいだ」 どう返事をするべきかと、戸惑いながら御堂を見ようとして、すかさず龍造に言われた。「言っておくが、見かけによらず、秋慈も食えない奴だぞ。俺の気質を十分知ったうえで、それでもあんたを誘ったんだ。こいつも、あんたを利用する気満々ってことだ」 龍造の言葉を肯定するように、御堂の横顔に一切の表情はなかった。和彦なりに、御堂のしたたかさは知っているつもりで、自分と同類というのもおこがましい。御堂は、極道として生きている男なのだ。 ふっと息を吐き出した和彦は、ようやく表情を和らげる。「はい、罪悪感は捨てました。理由もわからないまま優しくされるより、利用したいと言われたほうが、すっきりします。……警戒もできますし。ぼくの警戒なんてあてにならないと、賢吾さ……、長嶺組長は、渋い顔をするかもしれませんが」「一度、会って話してみたいもんだなあ。長嶺組長に。昔、遠目に見かけたことがあるんだが、そのときは、傍らに怖いオヤジがいて、近づくこともできなかった」「そんなことを言いながら、もうあれこれと算段をしているんでしょう、あなたは。わたしと佐伯くんは巻き込まないでくださいね」 御堂の言葉に龍造が唇を歪めるようにして笑い

  • 血と束縛と   第40話(20)

     和彦は慌てて肉を掬い上げる。さきほどから龍造が、こちらのペースを一切無視して、次々に鍋に肉を入れてしまうため、いくら食べても追いつかない。すかさず御堂が龍造を窘めた。「しゃぶしゃぶなんですから、佐伯くんのペースで食べさせてあげてください。しかも肉ばかり……。人のことはいいから、自分が食べることに集中したらどうです」「……すっかり、佐伯先生の保護者だな。秋慈」「彼に何かあったら、面倒なことになるのは、あなたですよ」 大仰に肩を竦めた龍造が、すかさずまた猪口の酒を呷る。「玲の奴が、こんな〈大物〉と知り合うのは予想外だった。せいぜいお前の伝手で、長嶺組の幹部でも紹介してもらえたらラッキーだと思っていたんだがなあ」「結果としては上出来だったでしょう。北辰会の〈大物〉幹部のあなたとしては」 龍造が苦々しげに唇を歪めた理由は、やはり、御堂の言葉を皮肉として受け止めたからだろう。 この二人の会話は傍らで聞いていて心臓に悪いと、密かに和彦は嘆息する。だからといって玲の話題が出て知らない顔もできず、おずおずと会話に割って入った。「……玲くんは、元気にしていますか?」 この問いかけに対して、龍造は満面の笑みを見せた。「おう、元気も元気。秋の連休にこっちに来てから、高校を卒業した後の自分の生活が具体的に見えてきたんだろうな。受験勉強も、必死にやっているようだ。それに、部活を引退してから走るのもやめていたくせに、気分転換になるといって、夜、一人でまた走り始めた」「そう、ですか……」「身が燃えて仕方ないんだろう」 さりげない言葉とともに、男の色気を含んだ眼差しを龍造から向けられる。瞬く間に和彦の頬は熱くなった。動揺のため微かに震える手で、なんとかグラスを取り上げると、冷たいお茶を喉に流し込んだ。「俺の前ではなんとか取り繕っている……つもりなんだろうが、やっぱりまだガキだ。のぼせ上がったまま突っ走っているという感じだなあ」「……すみ

  • 血と束縛と   第40話(19)

     さっそく出た玲の名に、和彦の心臓の鼓動は大きく跳ねる。意識するまいと思っても、顔が強張りそうになる。ゆっくりと息を吐き出して気を静めながら、さりげなく龍造の様子をうかがう。 初めて会ったときにも思ったが、やはり龍造はオシャレだった。ジャケットは脱いでいるものの、ライトブルーのスリーピースで、今晩の集まりが気取らないものであるという表れかノーネクタイだ。やはり髪は後ろで一つに束ねられ、寒い季節だというのに艶々とした肌は日焼けしている。 朗らかさを感じさせながらも、老獪なワンマン経営者を思わせる風体なのは、本人も計算してのことなのかもしれない。両目に宿る鋭さと力強さは、堅気が持つにしては物騒すぎる。それを誤魔化すための外見のアクの強さだと考えれば、しっくりくるのだ。 掘りゴタツとなっているテーブルに御堂と並んで腰掛けると、正面の席に座った龍造が上機嫌といった面持ちで、しかし油断ならない無遠慮な視線を向けてくる。「けっこうな贅沢だ。特別なオンナを目の前に二人も並べて、メシが食えるなんて」 ドキリとするような龍造の発言に対して、表情を変えることなく御堂が応じる。「わたしは、〈もう〉違いますよ。何より、デリカシーに欠ける発言はやめてくださいね。笑って受け流せるわたしと違って、佐伯くんはそうではないので。今晩は楽しく食事をするのが目的でしょう?」「……すっかり怖くなったねー、お前は」「そうですよ。あなたが知っている頃のわたしとは、違うんです」「そうだったかな――」 意味ありげな視線を龍造が投げかけ、御堂は無表情で受け止める。そんな二人を控えめに眺めながら、和彦はもうすでに居心地の悪い思いを味わっていた。 龍造と御堂が体を重ねている光景を目にしたのは、遠い過去のことではない。そのとき和彦の隣にいたのは、よりによって龍造の息子である玲だった。おそらく、伊勢崎父子は〈オンナ〉という存在に魅入られている。いや、執着していると言ってもいいかもしれない。玲は、龍造に影響を受けたのだ。 親しげではあるが、腹の探り合いのようなものも透けて見える二人のやり取りに、どんな顔をすればいいのだろうと和彦が困惑していると、仲居

  • 血と束縛と   第40話(18)

    『俺は、独占欲と執着心は強いが、だからこそお前に対して寛容でありたいと思っている。〈浮気〉を大目に見たのも、そのためだ。鷹津の件で塞ぎ込んでいたお前が、たまたま目の前に現れた高校生のおかげで気が晴れた。それだけの話だ。それ以外の面倒臭い話は、俺や秋慈に任せておけばいい』「……そう言われると、ぼくはどうしようもない人間だと思えてくる。別に、立派な人間だったつもりはないけど」『いいじゃねーか。どうしようもない人間で。三世代の男たちのオンナでありながら、極道どもの面倒を見て、有り余る愛情を気に入った男たちに分け与えて、クリニックの切り盛りをして。ひれ伏したくなるほど、どうしようもない人間だ』 話しながら興が乗ってきたのか、賢吾がくっくと笑い声を洩らしている。ひどい言われようだが、すっかり毒気を抜かれた和彦も、唇の端にちらりと笑みを浮かべる。 そんな、どうしようもない人間をオンナにして、大事にしているのだから、賢吾もまた、どうしようもない人間なのだ。そう思ったら笑うしかなかった。『まあ、しっかり美味いものを食わせてもらってこい』 賢吾に背を押されたことにいくらか安堵して、吐息交じりに和彦は応じた。**** 伊勢崎龍造との食事会は、火曜日の夜に設けられた。 クリニックを閉めた和彦は、いつものように長嶺組の迎えの車に乗り込み、途中で、御堂が乗る第一遊撃隊の車と合流する。 あくまで建前は、個人的な食事会に招待されたというもので、長嶺組も第一遊撃隊も護衛はいつも通り――と和彦は聞かされていた。 店の駐車場に降り立ち、風の冷たさに首を竦める。午後に入ってから曇り空が広がり、急激に冷え込んできた。「――こんなに寒くなるなら、伊勢崎さんの誘いに乗るんじゃなかったよ」 隣に停めた車から降りた御堂が、秀麗な顔にうんざりとした表情を浮かべてこぼす。黒のスーツを身につけているせいか、印象的な灰色がかった髪が引き立ち、御堂の存在をより特別なものに見せている。 対する和彦は、仕事を終えたばかりで着替える時間もなかったため、ありふれたシャツにパンツ

  • 血と束縛と   第40話(17)

     賢吾の言葉に歓喜したわけではない。しかし和彦の体が示した反応は、そう取られてもおかしくはないものだった。淫らに蠕動する内奥が、高ぶる一方の逞しい欲望をきつく締め付けながら、粘膜と襞をまとわりつかせる。 腕を掴まれ引っ張られた和彦は上体を起こし、背後から逞しい両腕に抱き締められる。両足の間に片手が差し込まれ、濡れた欲望を手荒く掴まれて扱かれていた。「あっ、もう、無理だ――……」 内奥を突かれ、執拗な愛撫を与えられているうちに、泣きそうになりながら和彦は小さく喘ぎ声をこぼす。 和彦の欲望が何度目かの高ぶりを示し始めたと知り、賢吾が吐息とともに呟いた。「ああ……、最高だ、和彦」** すぐ耳元で携帯電話が鳴っていた。 まるで深い水の底から引き上げられるように、意識が覚醒していくのを感じながら、和彦は枕の下をまさぐる。 電話に出ると同時に目を開けると、カーテンの隙間からわずかに光が差し込んでいる。まだ日は落ちていないようだった。『よく寝られたか?』 起きてすぐに聞くには刺激的ともいえるバリトンに、一瞬眩暈に襲われた。和彦は声を発しようとして、軽く咳き込む。寝る前に加湿器を入れておくのを忘れていた。『もしかして風邪を引いたのか――』「違う、部屋が少し乾燥しているだけだ。……それより、筋肉痛がひどくなった気がする」 非難がましくぼそりと呟くと、電話の向こうから微かに笑い声が聞こえてくる。どうやら賢吾の機嫌のよさはまだ持続しているようだ。『起こして悪かったが、また寝る前に、ダイニングに行ってメシを食え。笠野に言って、準備させておいた。俺が搾り取った分、またしっかりと精をつけてもらわないといけないからな』 起き抜けに自分は何を聞かされているのだろうと、和彦は絶句する。『……和彦?』「呆れてるんだ。あんた、組長だろ。威厳とか、そういうものを大事にしないと。いい歳なんだし」『お前にだけだ。俺がこういうことを言えるのは』

  • 血と束縛と   第40話(16)

    「少し動かすぞ」「い、やだ……。まだ、痛い――」 和彦の拒絶は案の定無視され、綿棒をわずかずつだが出し入れされる。和彦は立て続けに切迫した声を上げ、腰をもじつかせる。そんな和彦の様子から感じるものがあったのか、ふいに賢吾が、小さな口から再び綿棒を引き抜いた。その瞬間、和彦自身も異変に気づき、上擦った声を上げる。 賢吾の見ている前で、わずかに漏らしていた。 これまでのつき合いで、賢吾の厄介な#癖__へき__#は薄々とながら気づいていた。全身を戦慄かせながら和彦が賢吾の様子をうかがうと、口元に薄い笑みを浮かべて、食い入るように濡れた下腹部を見つめていた。「――また、いいか?」 静かな歓喜を滲ませた声で問われ、和彦は顔を背ける。たった一つの返事しか求めていないのは、いつものことだ。 息を吐き出すと同時に、綿棒を押し込まれて苦痛の声を洩らす。無理な行為に及んでいるという自覚はあるのか、賢吾は時間をかけて小さな口を犯しながら、和彦の体の強張りを解こうとするかのように、ささやかな愛撫を加えてくる。 小刻みに震える内腿にてのひらを這わせ、膝に唇を押し当て、ときには柔らかな膨らみを優しく指で揉みしだき、思い出したように綿棒を繊細に蠢かし――。 痛みと異物感に、否応なく和彦は順応させられていく。そうしないと、いつまで経っても苦痛から逃れられず、和彦の反応の変化を待ち望み、一心に見つめてくる賢吾に応えられないのだ。「ふっ……、んんっ、はあっ、はあっ、はっ……ん」 我ながら度し難いと、和彦は震えを帯びた吐息をこぼす。こんなひどいことをしてくる男を喜ばせたいと思うなんて、と。 和彦が欲情に濡れた眼差しを向けると、賢吾はスッと目を細めた。「やっぱりな。俺の与える痛みに、もう馴染み始めてるだろ。性質が悪いが、だからこそ――大事で可愛い、俺のオンナだ」 囁かれた言葉に、全身に快美さが駆け抜ける。綿棒が一層深く押し込まれたが、口を突いて出たのは苦痛の声ではなく、尾を引く甘い呻き声だった。 もっと聞かせろと言わんばかりに綿棒が出し入れ

  • 血と束縛と   第11話(20)

     外から男二人のにぎやかな話し声が聞こえてくる状況で、求められるまま、やむをえず舌を絡め合い、唾液を交わす。引き出された舌を痛いほど吸われると、たまらず和彦は鷹津の肩にすがりついていた。 ますます鷹津の腕の力が強くなり、和彦の中で奇妙な変化が起こっていた。鷹津のことがどうしようもなく嫌いで、嫌悪しているのに、そんな男にねじ伏せられるように口づけを交わしていると、高揚感に襲われ、体の奥深くから強引に官能を引き出される。 官能に形を借りた、サソリの毒かもしれないと、ふとそんな考えが脳裏を過る。鷹津の毒を注入され、体も心も侵されていくのだ。 思わず身じろごう

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-27
  • 血と束縛と   第11話(22)

     さすがの賢吾も、和彦の心を煩わせるものすべてを見通すことは不可能らしい。「……最初にぼくを狙って、あんなことをした人間が、どんな顔をして、そんなことを言うんだ」「俺はいい。俺は、許されるんだ」 さすがに図々しい発言だと思って和彦が顔を上げると、待っていたようなタイミングで唇を軽く吸われた。「先生を狙って自分のものにして――見事に、骨抜きにされたんだ。そんな哀れなヤクザを、愛情深い先生なら、たっぷり甘やかしてくれるだろ?」 本当に図々しいと思いながらも、和彦はつい笑みをこぼしてしまう。 自

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-27
  • 血と束縛と   第6話(22)

    「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-21
  • 血と束縛と   第4話(27)

    「――先生」  呼ばれて、おずおずと振り返ると、そこに真剣な賢吾の顔がある。何か言われたわけでもないのに、和彦は小さく喘いでから賢吾の唇にそっと自分の唇を重ねた。すると、賢吾のもう片方の手に、和彦の柔らかな膨らみは包み込まれる。 「ひっ、あぁっ」  泡で滑る手に柔らかく揉みしだかれ、たまらず和彦は、ビクッ、ビクッと腰を震わせ、背をしならせる。下肢が、甘く溶けてしまいそうだった。 「あとでたっぷり、ここを揉んで悦ばせてやる。最近、弄られるのがよくなってきたみたいだからな。今は、洗うだけだ」  賢吾の的確に動く指は貪欲に、和彦の官能を刺激する

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-19
Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status