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第20話(5)

مؤلف: 北川とも
last update تاريخ النشر: 2026-03-15 08:00:03

「本当は誕生日当日に渡したかったんだけど、俺はじいちゃんに同行してるから時間が取れそうにないからさ、今のうちにと思ったんだ。――と、じいちゃんで思い出した」

 千尋が反対側のポケットをさぐり、てのひらサイズの桐箱を取り出す。なんとなく嫌な予感を感じて和彦は身構えたが、それに気づいた様子もなく千尋は嬉しそうに言った。

「これは、じいちゃんから先生への誕生日プレゼント」

「えっ、ぼくに、って……。会長がそう言ったのか?」

「うん。先生に、けっこう前から準備してたみたい。思いついてすぐに準備できるものじゃないから。この〈特別な〉プレゼント」

 開けてみるよう促され、長嶺の男二人の強い視線を受けながら和彦は、そっと蓋を開ける。

 桐箱に納まっていたのは、バッジだった。精巧な象眼ぞうがん細工によって描かれているのは総和会の代紋で、和彦は息を呑んで指先を這わせる。バッジの表面に打ち込まれているのは、おそらく純金だろう。

「ダイヤモンドを埋め込むような悪趣味さはなかったようだな、総和会会長に
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  • 血と束縛と   第40話(30)

    **** 俊哉と再び対面することが決まったからといって、特別な変化が起こるでもなく、いつものようにクリニックで過ごす月曜日は始まった。「……うーん」 診察室のイスに深くもたれかかって、一声唸った和彦はこめかみを押さえる。前夜、中嶋の愚痴につき合ったあと、自宅マンションに帰宅した和彦だが、今度は一人で深酒をしてしまったのだ。おかげで、朝から頭痛がする。 次の予約まで時間があるため、紅茶を飲みながらのんびりしているが、頭の中ではめまぐるしく懸念事項が駆け巡っていた。この辺りも頭痛と関係しているのだろう。 和彦は深いため息をつくと、デスク上の卓上カレンダーを手に取る。週末まであっという間だと思ったあと、十一月ももうすぐ終わることに気づかされる。今年最後の月が巡ってくるということに、ささやかな感慨に耽っていた。 そこでふと、去年の今頃、自分はどうしていたのだろうかと思い返す。男たちの事情に振り回されてはいたが、それでも比較的穏やかな日々を送っていた。守光とはまだ顔も合わせたことはなく、鷹津は相変わらず嫌な男ではあったが、なんとなく接し方がわかりかけていた頃で――。「佐伯先生」 突然呼びかけられて、和彦は姿勢を正す。メモを片手にスタッフが傍らに立っていた。「どうかした?」「十二月三日の午前中に予約を入れられている患者さんから、さきほど連絡があったのですが……」 和彦はすぐにパソコンを操作し、言われた日付の予約状況を確認する。確かに予約が入っており、先日カウンセリングを行った患者の名が表示されている。「まさか、キャンセル?」「いえ、そうではないんです。予約の日は都合が悪くなったそうで、できればもう少し早い日に変更できないかとおっしゃられて。佐伯先生はまだ診察中だったので、折り返し連絡を差し上げるとお伝えしました」「あー、そうだね。施術の予約だから、空いているところにポンッと入れるわけにもいかないし」 和彦は、患者のカウンセリング表と予約状況を交互に眺めて検討し、メモにいくつかの日付と時間を

  • 血と束縛と   第40話(29)

     なかなか道を開けようとしない若者たちに苛立つ。なんとか追い抜こうとしながら、思い出していた。 前にもこんなことがあったのだ。賢吾と街中を歩いていて、人ごみに紛れるようにして立っていた鷹津を見かけた。あのときは、単なる見間違いかと気にも留めなかったが、今にして断言できる。 鷹津はあの場にいて、和彦を見張っていた。いや、見守っていたのだ。そして今夜も。 ようやく人が#散__ばら__#け、和彦が駆け出そうとしたとき、背後から腕を掴まれて引き止められた。「先生っ」 ハッとして振り返ると、中嶋が立っていた。「どこに行くんですか。一人で」「あっ、いや……」 和彦は気もそぞろに応じながら、鷹津が歩いて行った方角を見つめる。完全に姿を見失ってしまった。肩を落とし、ため息をつくと、中嶋に顔を覗き込まれる。「何かあったんですか?」「……知り合いがいたような気がしたんだ。けど、見間違いだったようだ」 中嶋から探るような眼差しを向けられ、それが嫌で強引に話題を変える。「加藤くんは? 一緒に帰ったかと思ったんだ」「まさか。先生を放って、そんなことしませんよ。あいつは電車で帰ったようです。俺は、タクシーを捕まえようと思ったんですけど、こんな場所ですから、なかなか。一旦先生のところに戻って、店から連れ出そうとしたら――……」 中嶋は露骨に、和彦が誰を追おうとしていたのか気にしている。もし、鷹津がいたと知ったら、和彦が懇願したところで黙ってはいないだろう。まっさきに南郷に報告するか、それとも賢吾か。なんにせよ、自分のために最大限利用するはずだ。「気になりますね。先生が必死で追いかけようとしていた相手……」「医大時代の知り合いだ。聞いたところでおもしろくはないぞ」「先生の話は、なんだっておもしろいですけどね」 ニヤリと笑いかけてきた中嶋だが、心なしかいつもよりぎこちない。今から別の店に移動するという心境ではないだろう。和彦も、すぐにでも体からアルコール分を抜いて、ついさ

  • 血と束縛と   第40話(28)

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  • 血と束縛と   第40話(27)

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  • 血と束縛と   第40話(26)

     毛皮特有の上品な光沢を帯びたロングコートにセカンドバッグという出で立ちは、美貌の怪しい青年実業家という肩書きを実によく演出しており、似合ってはいるものの、いつも以上に胡散臭く見える。 おやっ、と思ったのは和彦だけではなく、中嶋も軽く眉をひそめていた。「部屋を出たとき、そんな格好はしてなかったでしょう。……なんだか、ホストをスカウトしていた頃のあなたに戻ったようですよ」「人と待ち合わせをするのに、目立つ格好のほうが都合がよかったんだ。このコートは、うちの店のホストに借りた」「……面倒くさいことを……。それで、野暮用は片付いたんですか?」 呆れたように問いかける中嶋に対して、秦が一瞬ドキリとするような鋭い笑みを向けた。華やかだが、同時に胡散臭さもつきまとう男を、その笑みはまったくの別人のように見せた。 和彦がよく知る、独占欲と執着心の強い、厄介な男たちのような――。「まあ、片付いたと言えば、片付いたな。予定通り、連れて来ることができたから」 和彦と中嶋は同じタイミングで首を傾げ、数秒後には驚きの声を上げていた。秦に続いて、遠慮がちにカーテンを開けて個室に入ってきたのが、まったく予想外の人物だったからだ。「加藤……」 ぽつりと中嶋が呟く。 トレーナーの上からライダースジャケットを羽織った格好の加藤は、状況がよく呑み込めない様子ながら会釈をしたあと、その場にいる三人を見回す。一体なんの集まりかと問うように視線を向けたのは、中嶋だった。一方の中嶋のほうは、困惑したように秦を見た。 和彦は不穏な空気を感じ取り、ソファの上で動けなくなっていた。秦の鋭い笑みを目にしたあとで、突然の加藤の登場だ。〈偶然〉によって作られた状況のはずがなかった。 秦は悠然とロングコートを脱ぐと、空いているソファに腰掛け、居心地悪そうに立ち尽くしている加藤にも座るよう促す。我に返った中嶋が口を開こうとしたが、秦は片手をあげて制すると、二人を案内してきたスタッフに注文を頼む。 スタッフが立ち去ったあと、今度こそ中嶋が秦に問い

  • 血と束縛と   第40話(25)

    「体調を崩されているようなら、すぐに長嶺組に連絡して、連れて帰ってもらおうかと思ったんですが、違いますよね。――何かありました……ね」 返事は、沈鬱なため息だった。 昨日、総和会本部で守光と夕食を共にとったあと、ある要求をされた。 曰く、来週の金曜日に俊哉が和彦との対面を求めており、そのときは、人目のない場所で父子で時間を気にせず語り合いたいと希望が出されたそうだ。 守光が切り出した時点で、それはもう決定事項で、和彦に否という権利はない。能天気に構えていたわけではないが、再び俊哉と顔を合わせるのはもう少し先ではないかと、切望にも似た気持ちで考えていたのだ。 和彦を一層精神的に追い詰めるのは、俊哉との定期的な対面を考えているという、守光の言葉だった。 間に総和会が入ることで、和彦は俊哉を避けられない。求められるまま、総和会の護衛に守られ――見張られて、俊哉の放つ毒気を浴びることになる。 守光は、疎遠だった父子を結びつけて、ただ偽善的な喜びに浸るような人間ではない。総和会を率いている狡猾な化け狐は何かを計算しているだろうし、そこを十分理解したうえで、俊哉も接触しているはずだ。 聞きたいことはいくつかあったが、何も聞けずじまいだった。聞いてしまえば、さらに厄介な事態に引きずり込まれると考えたからだ。とにかく和彦の立場は、聞けば、従わずにはいられないという弱いものなのだ。 今回は守光から口止めされなかったため、本部をあとにしてすぐに、賢吾に連絡し、報告した。もちろん、二人の権力者による計画を止めてほしかったわけではない。そんなことをすれば、賢吾と守光、長嶺組と総和会との間に要らぬ不和を生み出しかねないと、冷静さを失った頭でもわかる。 電話越しに賢吾に対して何度も、堪えてほしいと和彦は訴えた。賢吾は納得していない様子だったが、不承不承、諾と言ってくれた。守光が決めた以上、賢吾もまた、それ以外の返事を持っていないのだ。 自分が苦々しい思いを味わうのは仕方ないといえるが、同じものを賢吾に味わわせるのは、和彦にはつらかった。「――……君は、両親と連絡を取り合っているか?」

  • 血と束縛と   第11話(22)

     さすがの賢吾も、和彦の心を煩わせるものすべてを見通すことは不可能らしい。「……最初にぼくを狙って、あんなことをした人間が、どんな顔をして、そんなことを言うんだ」「俺はいい。俺は、許されるんだ」 さすがに図々しい発言だと思って和彦が顔を上げると、待っていたようなタイミングで唇を軽く吸われた。「先生を狙って自分のものにして――見事に、骨抜きにされたんだ。そんな哀れなヤクザを、愛情深い先生なら、たっぷり甘やかしてくれるだろ?」 本当に図々しいと思いながらも、和彦はつい笑みをこぼしてしまう。 自

    last updateآخر تحديث : 2026-03-27
  • 血と束縛と   第6話(22)

    「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく

    last updateآخر تحديث : 2026-03-21
  • 血と束縛と   第4話(27)

    「――先生」  呼ばれて、おずおずと振り返ると、そこに真剣な賢吾の顔がある。何か言われたわけでもないのに、和彦は小さく喘いでから賢吾の唇にそっと自分の唇を重ねた。すると、賢吾のもう片方の手に、和彦の柔らかな膨らみは包み込まれる。 「ひっ、あぁっ」  泡で滑る手に柔らかく揉みしだかれ、たまらず和彦は、ビクッ、ビクッと腰を震わせ、背をしならせる。下肢が、甘く溶けてしまいそうだった。 「あとでたっぷり、ここを揉んで悦ばせてやる。最近、弄られるのがよくなってきたみたいだからな。今は、洗うだけだ」  賢吾の的確に動く指は貪欲に、和彦の官能を刺激する

    last updateآخر تحديث : 2026-03-19
  • 血と束縛と   第11話(20)

     外から男二人のにぎやかな話し声が聞こえてくる状況で、求められるまま、やむをえず舌を絡め合い、唾液を交わす。引き出された舌を痛いほど吸われると、たまらず和彦は鷹津の肩にすがりついていた。 ますます鷹津の腕の力が強くなり、和彦の中で奇妙な変化が起こっていた。鷹津のことがどうしようもなく嫌いで、嫌悪しているのに、そんな男にねじ伏せられるように口づけを交わしていると、高揚感に襲われ、体の奥深くから強引に官能を引き出される。 官能に形を借りた、サソリの毒かもしれないと、ふとそんな考えが脳裏を過る。鷹津の毒を注入され、体も心も侵されていくのだ。 思わず身じろごう

    last updateآخر تحديث : 2026-03-27
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