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第656話

Author: 桜夏
お爺さんはドアのそばで跪いている男を見つめ、指を一本立てた。その威厳ある仕草に、ドアのそばにいたボディーガードがすぐさま蓮司を抱え上げて連れ去った。

こうして、病室はようやく完全な静けさに包まれた。

理恵と聡、そして駿は視線を戻し、再びベッドの上の透子を見つめた。

理恵はベッドに近づき、その縁に腰を下ろすと、透子の手を握り、無言で見つめ合った。

聡は椅子を引き寄せて腰を下ろし、何気なく口を開いた。

「新井グループの五パーセントの株式が、どれほどの価値か知ってるか?」

透子は淡々と答えた。「たとえ天文学的な金額でも、ただの数字の羅列にすぎません。

今の私には、もう十分すぎるものがあります。もしそれで、これからの人生で永遠の平穏が手に入るなら、すべてを差し出す価値があると思います」

駿は透子を見つめた。ここまで追い詰められて、初めて新井のお爺さんにあのような言葉を口にしたのだろう。その目には、彼女へのいたわりと、自分の無力さへの挫折感だけが浮かんでいた。

彼は、透子を守るにはあまりに非力だった。蓮司は、旭日テクノロジーにいとも簡単に圧力をかけ、彼に協力を強いることができる
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