Masukイケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブショートストーリー。 ※キャラクター、イラストはAIです
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この春に入社したばかりで、周囲に馴染めず、慣れない仕事にひとり残っていたある日。
時計はすでに21時を回っていた。
(もうこんな時間か……あともう少し)
パソコンと向き合い集中していたせいか、背後からの気配に気付かなかった。
「……お疲れ。これ、食べとけ」
差し出されたのは紙袋とペットボトルのお茶。
驚いて振り返るとそこにいたのは、直属の上司で入社当時から存在感を放っていた、営業部のエース・
「あっ……すみません、私……まだ終わってなくて……」
「知ってる。でも、飯も食わずにやってたら倒れるぞ」
ごく自然な仕草で莉央のパソコンを閉じてしまう。
「続きは明日。ちゃんと食って、帰ること。それが社会人の基本だ」
「はい……ありがとうございます」
その言葉が優しくて、でも甘えさせてくれる余地がなくて……ぐっと胸に残った。
紙袋の中には、莉央の好きそうなサンドイッチと小さなドーナツ。
「……なんでこれ、私が好きなやつ……」
ぽつりと呟いた声に、慧は少しだけ口元を緩めて言った。
「見てれば分かる……お前、チョコよりクリーム系、よく選んでたろ?」
そう言ってスタスタと去っていくその背中。
(……ずるい。そんなの、勘違いしちゃうじゃん)
莉央はその瞬間、静かに心を持っていかれた。
◆
当時、慧にとって職場は戦場だった。
結果を出す、誰にも弱みを見せない。
余計な情なんか持ち込むな。
それが自分の信条だった……でも。
ある日、ふと見かけた新人の女の子。
書類の山に埋もれ、先輩の指示を聞きながらもメモをとって、何度も頷いていた。
だが、帰り際のエレベーター前で、その子の目が少し赤かったのを見逃さなかった。
(……泣いてたか)
別に優しくする理由はなかった。
ただ、気になった。
なぜか、その頑張りすぎる不器用な姿が、妙に引っかかった。
数日後。
その子がまた、夜遅くまで残っていた。
「……あの子、また残ってるのか」
そのとき、自分の足が勝手に動いた。
コンビニで、なんとなく選んだサンドイッチと甘いドーナツ。
気づいたら差し入れを持って、彼女のデスクまで行っていた。
(……なんでこんなことしてんだ、俺)
後から自分で思った。
けど……。
ありがとうって笑った顔が、まっすぐで。
媚びるでもなく、遠慮がちで。
(……やばいな)
その夜、自分の手が無意識にスマホに触れて、彼女の名前を検索していた。
――――『白石莉央』
ただの後輩で……部下のはずのその子の名前を打ち込んでいた自分に気づいて、苦笑する。
(……完全にやられてる)
これまでの人生で女に苦労したことはなかった。
どんなに告白されても誰にも揺れなかったこの心が……あの笑顔ひとつで、なぜか……。
…………ずっと、目で追ってしまうようになった。
To be continued
会社の飲み会で、二次会が解散になった頃。 帰ろうとした慧の腕を引っ張ったのは……酔ってふにゃふにゃの莉央だった。「えへ……慧さんっ……次はバー……いきましょ〜ぉ?」「……莉央、もう飲みすぎだ。今日はもう帰ろ……」「んー、まだいけます……!」 そうして向かったバーに到着して10分後。 莉央はソファ席でぐったり、完全に潰れていた。「……はぁ、やっぱりこうなったか」 困った顔をしながらも、慧は莉央を優しく抱き上げる。「……ったく、酔っても可愛いとかずるいだろ」 仕方なく近くのホテルの一室にチェックインし、莉央をベッドに寝かせて、額に冷えたタオルを置いた。 1時間ほどして、莉央がゆっくりと目を覚ます。「……ん、ここ……どこ……」「起きたか?」 ベッドの傍に腰をかけた慧が、静かに言う。 莉央はぼんやりした顔のまま、ふと慧を見上げた。「……私、なにか、やらかしました……?」「いや、飲みすぎて潰れただけ。送ろうと思ったけど、無理そうだったからここに」「ここ……?」 ぐるりとあたりを見渡して、そこがホテルだってことに気付く。「!!?? すみません! ほんと……すみません……」 顔を覆いながら、うつむく莉央。 「謝るな。明日は休みだしゆっくり休んでから帰ろう」「………はい」 どんな時でも優しい慧に莉緒の目がじんわりと熱くなる。(慧さん……普通だなぁ。私だけかな……こんなに意識してるの……) ぽつりと湧き出た不安が莉央の口から溢れ出す。「慧さん……」「どうした?」「…………やっぱり、私って……魅力ない、ですか?」「……は?」 慧は鳩が豆鉄砲を食ったような目で莉央を見た。「それは……どういうことだ?」「だって慧さん……全然その気配ないし。私が酔ってても、手ぇ出さないし。優しいけど、なんか、私って……女として、全然だめ……ですか?」 慧の目が、すっと細くなった。「……莉央、それ、酔って言ってる?」「……よく、わかんない、ですけど……ちょっとだけ、本音」 一瞬の沈黙。 次の瞬間、慧はそっと莉央の頬をつかんで、顔を近づけた。「言わなかったか? 俺、酔ってる女には手ぇ出さないって」「……はい」「でも、それが魅力ないっていう話になるなら……」 吐息が触れる距離で、目を伏せずに言った。「責任取ってもらうけど、
夜中の1時。 静まり返った部屋の中で、莉央は眠れずにベッドの上でゴロゴロしていた。(……ねむれない)「辛いのか?」 隣で眠っていると思っていた慧が、ふいに目を開ける。「っ、すみません。起こしちゃいましたか?」「いや、起きてた。眠れないのか?」 コクリと頷く莉央を見て、慧は体を起こし彼女の頭をそっと自分の膝にのせた。「じゃ、こっちおいで」「……え?」「眠れない夜は、眠くなるまで甘やかそうって決めてるから」 そう言って、慧は莉央の髪をゆっくり撫でる。「まだしんどいか?」「いえ、大丈夫です。慧さんの看病のおかげです」「そっか。そうだと嬉しい。寝すぎて寝れないか?」「ううん……なんだか……そわそわして寝つけなくて」「じゃあ……」 慧は莉央の手を取り、指を絡める。「莉央が寝るまでこうしていよう」「それは、だめです……」「なぜ?」「………たぶん、ずっとドキドキして寝れないから……」 うっすらと赤い莉央の首筋。 それを見て慧の口角が上がる。「そういうことを言われると、もっとしたくなるなぁ」「え……慧、さん?」 驚いた莉央が慧を見上げると、慧の唇が耳元に触れて……。「……好きだよ」「っ、慧さん!?」「お前が可愛くて仕方ない」 優しくて甘い言葉がぽつぽつ落ちてくる。「す、す、す、ストップ!」「…………」 莉央は両手で慧の口を塞ぐ。 これ以上は恥ずかしすぎて顔が見れない。「もう、わかりましたから……」「………そう? でも俺は……」 慧が優しく莉央の両手首を掴んで。「まだ足りないな……」「っ!?」 柔らかな舌の感触が莉央の手に伝わる。 慧に掴まれた手首のせいで、逃げることはできなかった。「あ、あの……待って……」「クスッ……」 甘い甘い、世界でいちばん心地いい時間は莉央を夢の入口から遠ざけるだけだった。◆ 莉央の風邪が治って数日後の金曜日。 その日は社内の軽い飲み会があった。 部署も役職もバラバラ、他愛もない話題で盛り上がっていたとき……。「そういえば、白石さんって、最近めっちゃ可愛くなったよな~」「わかる! 雰囲気も柔らかいし、あの笑顔……あれは可愛いって」「俺、けっこう気になってるんだよね~。あのタイプ、めちゃ好み」 軽いノリの、男同士の会話。 誰もいないと思っていた背後に男
ある日の昼休み直前。 エレベーターに向かった莉央は、角を曲がった先で慧とばったり会う。「……あっ」「……よかった。会えた」 慧は穏やかに微笑み、エレベーターホールの壁際へ莉央を促す。 ランチタイム直前、廊下は混み合い始めていて、ふたりの距離は自然と近くなる。「あの、誰かに見られたら……」「大丈夫。すぐ混むし、こっちの死角、気づかれにくいから」 そう言って、慧は莉央の手を……そっと、でもしっかりと、握った。「……っ、ここで……?」「ん、ダメ?」 声は低く甘く、耳元に落ちるささやき。 莉央の手を握ったまま、慧の親指がそっと手の甲をなぞる。 さらに指を絡めてきて、その指先同士をゆっくり撫でてくる。(触り方……ずるい) 手を繋ぐより、ずっと恥ずかしい。 なのに、逃げられない。「莉央……かわいい顔してる」「えっ、見てたんですか……?」「うん、反応見て楽しんでる」 くすっと笑う慧は、完全にいつもの余裕のある態度。 一方、莉央は赤くなるばかりで、冷静でいられない。「……ちょ、ずるい、です……」「俺ね。莉央とこうしてるだけで、めちゃくちゃ癒されるんだよ。こっちの方がずるいでしょ?」「……っ!」 エレベーターが開く直前、慧は絡めた指をほどいて、莉央の手の甲にそっとキスを落とした。「じゃ、いってらっしゃい。午後もがんばって」 誰にも気づかれない、ふたりだけの時間。 でも、指先がまだ熱くて、胸の奥がくすぐったい。 莉央は小さくうなずきながら、心の中で呟いた。(午後どころか……今日ずっと頑張れる気がする……)◆ 珍しく莉央が風邪をひいた。「すみません……せっかくのお休みなのに……」 ベッドの上でかすれた声を出す莉央に慧は静かに首を振る。「何言ってんだ。俺が甘やかすチャンスだろ」 そう言いながら、おでこに冷えピタを貼って、優しく髪を撫でる。「はい、水。あと、プリン。好きだろ?」「う……食べたい……」「なら、じっとしてろ」 スプーンで小さくすくって、莉央の口元に差し出す。 されるがままに口を開くと、すぐにふわっと甘さが広がる。「ん……おいしい……」「そうか。食べられそうで良かった。しんどくないか?」「はい……慧さんがいてくれるから……安心します」「ならもっと甘えてくれていいぞ」 そっと莉央の手を握っ
退勤後、窓の外は雨。小さな水の音が、静かにオフィス街を包みこんでいた。「莉央、傘ある?」「えっと……ないかも……」 莉央が鞄をあさっていると、慧が迷いなく、持っていた傘を差し出す。「じゃ、入って」 慧の傘は少し小さめ。 自然と、ふたりの距離はぎゅっと近くなる。(うわ……近い……)「ありがとうございます」 雨の音にかき消されるような静けさのなかで、ふたりだけの世界が、そっと始まる。 歩くたび、腕がかすかに触れる。 慧は当たり前のように莉央の方へ傘を傾けて、自分の肩を濡らしながら守ってくれる。「……なぁ」「はい?」 立ち止まった慧が、ふっと莉央の顔をのぞき込む。 髪にかかった雨粒を、指先でそっとぬぐってから……。「キス、していい?」「……っ!!!」 雨の音しか聞こえない静かな帰り道。 小さな傘の中はふたりだけ。 それなのに、そんな声で、そんな優しい目で言われたら……莉央は、コクリと小さくうなずいた。 慧の手が頬に触れて、唇がそっと重なる。 それは、雨に似た静けさ。 だけど、心を優しく溶かしていく熱を持っていた。(やばい……胸くるしっ……) キスのあと、慧は莉央の耳元でささやいた。「かわいすぎ……このままさらってもいい?」「……っだ、ダメです……」「ふっ……なら今度……覚悟してて」 笑いながらそう言って、また歩き出す彼の肩は、相変わらず少しだけ濡れていた。◆ 付き合い始めて数日。 まだ誰にも知られていない、ふたりだけの関係。 会社では、表面上これまで通り。でも……。(やっぱり……無理。冷静でいるの、むずかしいな……) 資料の確認に追われながらも、莉央の目は自然と慧を追ってしまう。 デスクで何気なく横を通るとき。 会議の移動で、廊下ですれ違うとき。 たったそれだけでも、胸が高鳴ってしまう。 だけど……慧はまるで何事もなかったかのように振る舞うから。(私ばっかり、浮かれてる……) そんな風に思えて、ちょっぴり切なくなる。 昼休み、コーヒーを取りにいく途中。 曲がり角で偶然……慧とすれ違った、その一瞬。「……お疲れ」 その低い、小さな声が、莉央の耳元に届いた。「……っ!」 言葉を飲み込み、振り向くこともできなかった。 でも、確かに聞こえた。 後ろ姿のまま、何もなかったように歩き