All Chapters of 王子様じゃなくてもいいですか?: Chapter 71 - Chapter 72

72 Chapters

第71話 笑顔の仮面

「いでででっ! く、日下……っ! てめぇには関係ねぇだろうが!?」 みっともなく喚くタオに、日下先輩はにこりと笑う。「関係ない……? 残念だけど、それを決めるのは君じゃないんだよねー」 そう言いながら、ギリギリと太い腕をねじり上げると野太い悲鳴が上がった。「人の彼女に気安く触らないでくれる……? この腕、へし折ってやろうか?」 低く、地の底から這い出るような声で日下先輩は威喝する。かと思えば、優しく由香里ちゃんの肩を抱き寄せると、ころりと表情を変え眉を垂れた。「由香里ちゃん、大丈夫? 酷いことされなかった? ちょっと待っててね、害虫はすぐにすり潰すから」 突然のことに、由香里ちゃんは呆然と日下先輩を見上げている。そして頬を真っ赤に染めると、無言で日下先輩をどつき始めた。「え、なに、ちょ、由香里ちゃん痛い!」 その言葉とは裏腹に、日下先輩は楽しそうに笑っていた。涙目でどつき続ける由香里ちゃんの腰を抱き寄せると、腕の中にとじ込める。「由香里ちゃん、顔真っ赤だよ? どうしたの? あー……やっば……可愛い……」 そのどこか色っぽい空気に、周囲はいたたまれずに視線を泳がせた。私もつられて頬が熱くなるのを感じる。だけど、それを面白く思わない輩がいる訳で。「てめ! ふっざけんな! なにイチャついて……いってぇ!」 まだ腕をねじ上げられたまま、タオが声を上げるけど、日下先輩は無視して由香里ちゃんの髪を撫でる。手下達も口々に暴言を浴びせていた。「ごねんね、怖かったよね。すぐ静かにするから」 そう言いながら、そっと額に口づけるとタオを足蹴にした。顔から地面に激突する形になったタオは、鼻血を垂らして日下先輩を睨みつける。「この……っ!」 手下達に手を借りて立ち上がったタオは、その腕を振り払うと勢い任せに殴りかかった。 日下先輩は、振り抜かれた拳をひらりと躱す
last updateLast Updated : 2026-07-21
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第72話 ふたりの王子様

「瀬戸……! 女の前だからってスカしてんじゃねぇよ!」 鼻血を押さえながらタオが吠えると、手下達が一斉に先輩を取り囲む。 先輩は私を安心させるように小さく微笑むと、ガラリと表情を変え、タオに視線を向けた。「ざまぁねぇな道男。女に手ぇ出すとか、だせぇことしてんじゃねぇよ」 その言葉に、タオはカッと顔を紅潮させ、唾を飛ばして叫ぶ。「道男って言うな! 俺はタオだ! そんなだせぇ名前じゃねぇ!」 そのやりとりに、私はポカンとしてしまった。日本人にしては珍しい名前だなとは思ったけど、自称だったのか……ちらりと目を向けると、周囲の手下達の肩が震え、必死に笑いを嚙み殺して知るのが分かった。 なんだか可哀そうだけど、同情する気にはなれない。 そんなタオに対し、先輩は心底呆れた表情で溜息を吐く。「はぁ? なに、お前まだタオとか名乗ってんの? 親からもらった名前大事にしろよな」 たぶん今までも繰り返されてきた会話なんだろう。とうとう手下達は吹き出し、タオは顔を真っ赤にして先輩を睨みつけている。タオはゆらりと立ち上がると、鼻血を乱暴に拭い、低い姿勢をとって臨戦態勢に入る。先輩も瞳に鋭さが増した。 一触即発の状態に、私は息を呑む。  その時。「そこまでだ!!」 不意に怒声が響き渡る。生活指導の近藤先生だ。「全員離れろ!」 先生はタオ達を押しのけるように前へ出ると、今度は瀬戸先輩達を睨み付けた。「瀬戸! 日下! これ以上は暴力沙汰だ! 停学どころじゃ済まんぞ!」 たしかに、先輩は二年の終わりに停学させられている
last updateLast Updated : 2026-07-28
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