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クリスマスラプソディ20

「陽さん、はじめてですよ。こんなにイったの」「はじめて?」「すごくないですか、これ」 ニコニコ微笑まれながら、目の前に差し出されたものは、宮本自身につけていたゴムだったのだが――。「……ずっと、イってるなとは思っていたが。その量、半端ねぇな」「陽さんにたいする、愛情も含まれているせいですけどね」「あ~はいはい……」 いつものようなやり取りに橋本は照れて、ぱっと視線を逸らしながら、自身の汚れを手早く拭っていった。 宮本は手にしたゴムを捨てて、橋本の傍に寝転んぶ。「ねぇ陽さん」「あのさ、雅輝」 妙な間のあと、同じタイミングで話しかけたふたり。互いの顔を見合わせながら、唇を動かそうとしたのに、そのタイミングも同じで、あまりの仲の良さに吹き出した。「やべぇな、俺たち」「まるで、鏡合わせみたいでしたね」 クスクス笑いつつ額をくっつけて、どちらからともなく手を握る。「雅輝と同じことを考えてるって自信、俺にあるんだけど」「俺も。だから一緒に、せーので言ってみません?」 宮本が触れるだけのキスを橋本にしてから、ふたたび見つめ合う。「わかった。せーの!」「「指輪っ!」」 部屋に響いたふたりの短い言葉は一瞬でなくなったのに、不思議と耳の奥に残った。「俺としてはモテモテの雅輝に、付き合ってる相手がいることを知らしめるべく、指輪をしてやりたいんだけどさ」 橋本は繋いでいた手を目の前にかざし、宮本の左手の薬指に反対の手ですりすり触れた。その感触がちょっとだけくすぐったくて、宮本は笑いをかみ殺しながら口を開く。「俺だって陽さんが他の人に目がいかないように、指輪をしてほしかったりするんですけど」「いかねぇよ、そんなの」「今日行ったレストランでも、会計のときフロアを歩いたら、女性だけで食事していたグループに、熱視線を飛ばされていましたけど!」「それはおまえにだろ」「違いますって。俺があげたネクタイピンがキラッキラ輝いていて、陽さんの男前度があがったせいです」 異様に自分を持ち上げる宮本に、橋本は辟易した。「雅輝、今日はやたらと俺を持ち上げてるけど、何か思うことでもあるのか?」「ないですけど。ん~やっぱり、俺の家族に陽さんが認められたのが嬉しかったからかなぁ」 言いながらくすぐったい原因の橋本の手を取り、同じように薬指に触れてから、宮本
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クリスマスラプソディ21

「おまえさ……」「はい?」「いや、いい」「言いかけてやめないでくださいよ、気になります!」 瞬時に今後の展開を悟り、言葉を飲み込んだというのに、宮本は橋本の耳元で騒ぎたてた。「陽さん、そうやってわざと意地悪して、俺の気を惹こうとしてますよね?」 橋本を見つめる宮本の視線は、言わないと何かするぞという、脅しのようなものを感じさせる。「別に意地悪じゃねぇよ」「だって好きな人の言葉は、どんなものでも気になるのに。俺が同じことをしたら、知りたくて堪らないでしょう?」「どうだろうな」 言いながら視線を逸らして宮本から逃げると、わざわざ耳元に顔を寄せてきた。「もういいです。意地悪な陽さんなんて知らない!」 宮本は大声で叫ぶなり、握りしめていた橋本の手を放り投げ、ぷいっと背中を向ける。 そこまで怒ってる感じは伝わってこなかったものの、直前までイチャイチャしていたので、余計に寂しくなった。「雅輝……」 逸らしていた視線をもとに戻すと、大きな背中が目に留まる。その肌には自分がつけたらしい、爪痕がくっきり残っていた。散々感じさせらて、しがみつくように宮本に抱きついた記憶がある。「…………」 宮本を傷つけないようにすべく、きちんと爪を短く切ったはずなのに、残ってしまったひっかき傷は、橋本の中にある黒い部分を引き出すものになった。「今の愚痴、江藤ちんに報告するんだろ?」 恋人を傷つけたくないのに、言いたくないことをわざわざ告げてしまう、自分の不器用さに、イライラが増していく。「どうでしょうね」 橋本の言葉を真似したのか、同じ対応をされてしまった。「あのさ、俺……」「――なんですか?」「ふざけていないと、つい口走りそうになってさ」 渋々橋本が話しかけたら、ちょっとだけ顔を向けた宮本。見つめられるその視線に耐えられなくて、まぶたを伏せながら言の葉を紡ぐ。「雅輝が好きだって言いそうになるんだ。その……変なタイミングで気持ちが込み上げるってゆーか、脈略もなく言いたくなるときがあって、すげぇ困ってる」 橋本は一気に言い終えたあとに、ぶわっと頬が熱くなるのを感じた。
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クリスマスラプソディ22

「なんですか、それ」「なんですかって、そんなことばかり言ったら、ウザすぎると思われても嫌だし、さ」 どうにも堪らなくなって、視線を彷徨うように動かすと、はーっという大きなため息をつかれてしまった。「俺が陽さんのこと、可愛いって言うじゃないですか」「ああ……」 しょっちゅう言われてるので、なんだかなぁと思っていた。「本当は好きって言いたいんです」「ぶっ!」「でも好き好き言いすぎて嫌われたら困るなぁと思って、可愛いに変換してました」 宮本は瞳をくちゃっと細めるなり、縮まっていた距離を埋めるように、橋本の躰に抱きつく。じわりと伝わってくる体温に、橋本は心の底からほっとした。「陽さん、大好きです!」「わかってるって。おまえの気持ちは、ケツに当たるブツと同じだって、言いたいんだろ?」 なんのタイミングで大きくなったのかわからない、宮本自身に困惑しながら、息つぎもままならない状態で告げるしかなく――。「陽さんだって、ほら……。俺と同じになってるじゃないですか」 あっと思ったときには、隠す間もなく触れられてしまった。「陽さんの、しゃぶって可愛がってもいい?」「だっ、ダメだ。おまえのフェラで、すぐにイっちゃうかもしれないから」「我慢せずに、イけばいいのに」 言いながら相変わらずお触りを続ける宮本の両手を掴み、なんとか動きを封じることに成功した。「雅輝と……、一緒にイきたい」「陽さん?」 掴んでいる自身の手に力が入り、宮本の手ごとカタチが変わってしまったモノに触れているため、いやおうなしに快感が駆け巡ってしまう。「大好きなおまえと一緒に感じて、愛されながら一緒にイきたいんだっ」 告げたことや躰の事情が恥ずかしすぎて、顔から火が出そうだった橋本。真後ろで宮本が嬉しそうに、くすくす笑う。「んもぅ、陽さんってば卑猥!」「ど、どこがだよ?」「だって陽さんの中を、俺のが出たり挿いったりして、散々感じさせるってことでしょ?」「うっ。ま、まあな」「卑猥だけど、一緒に感じられるのってやっぱり、愛し合ってるなぁって思えるよね。陽さん、こっちを向いて」 宮本の両手を拘束していた自分の手の力を抜き、モゾモゾしながら寝がりして対面する。
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クリスマスラプソディ23

宮本と視線が絡まった瞬間、さらに頬の熱を感じて、思わず顔を俯かせる。「いつもの男前の陽さんもいいけど、照れてる陽さんも大好きです」「……てっきり、可愛いって言うのかと思った」 上目遣いで宮本を見つめると、目の前にある唇がにゅっと尖がった。明らかに宮本の機嫌が悪くなったことについて、ヤバいと思ったもののすでに遅し。「俺が可愛いを言わずに、自分の気持ちを告げたことを、陽さんに褒めてほしかったのに」 不機嫌にさせるつもりがなかったため、橋本は変な焦りを感じてしまった。額に、変な汗がじわりと滲んでくるのを感じる。俯いているため、それが流れ落ちてくるんじゃないかと、無駄な心配をした。「だってこんなふうに、好き好き言われ慣れてないから、困ってるっていうか」「だったら――」 宮本は言いながら、俯いた橋本の顔に両手を添える。鼻先まで顔を寄せて、にっこり微笑んだ。「陽さんも好きって言えばいいだけですよ、言ってください」「えっ、す、す…す、好きぃ?」 ひっくり返ってしまった橋本の声。そんな言葉を聞いているのに、宮本は目尻を下げて、あからさまに喜ぶ。「陽さん、もっと言ってください『雅輝が好きだ』って」「さっき言ったろ……」「言われ慣れる前に、陽さんが言い慣れてください。そしたらきっと俺が言っても、そこまで照れたりしないと思いますよ」 説得力がありそうで実際はどうなのかわからないものの、言わないと先に進まないことが容易に想像ついたので、意を決して口にしてみる。「……雅輝が好き」「俺も陽さんが大好きです!」「俺のほうが雅輝が好きだ」 告白することに神経を集中していたため、思いっきり無防備になっていた。宮本はそのタイミングを計ったかのように、ふたたび橋本自身に触れる。「んっ、ああっ!」「まだまだ足りない。もっと言ってください」 橋本の耳元で告げるなり、かぷっと耳朶を甘噛みする。唇を使って柔らかく噛む行為に、次第に息があがっていった。「そ、そんなこ、と、された、んじゃ、言えねぇ、って」
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クリスマスラプソディ24

感じるように自身に触れる行為と、耳を愛撫する宮本に、橋本はなすすべがなかった。躰を震わせながら、抵抗の言葉を発する。「まっ、雅輝っ…そんなに、するなって」「したいよ、もっと感じさせたい。乱れまくる陽さんを見せて」「乱れまくってるとこ、ンンッ、あぁっ恥ずかしぃっ」 なんとか逃げようとした瞬間に、仰向けにされた。すかさず跨った宮本は、橋本の両肩をベッドに押しつける。「恥ずかしがることなんてない。俺だけしか見てないんだし」「だけど……」「これから先も、俺だけしか見ないんだよ。それとも陽さんってば俺に飽きちゃって、他の人とこういうことをしたいわけ?」「それはない」 断言した橋本を見降ろす宮本は、無言のまま左手を優しく掴んで、じっと眺める。大切なものを扱うような所作に、胸がどくんと疼いた。「雅輝?」「ここにお揃いの指輪をつけて、ずっと一緒にいるんだなって考えたら、すごく幸せを感じちゃって」「指輪をつける以前に俺の心は、おまえに縛りつけられてるけどな」 宮本は掴んでいる左手から、橋本の顔に視線を移した。注がれる視線から真実を見極めようとしているのを感じて、口にせずにはいられない。「雅輝、おまえ以外欲しくない。俺と結婚するのはおまえだけだ」「あ~っ、俺が言おうとしたセリフを、陽さんに言われた!!」「今くらい、年上の俺に花を持たせろよ。いいだろ?」 瞳を細めてにっこり微笑んだ橋本に引き寄せられるように、宮本は顔を寄せた。「その代わり、エッチなことをするときは、俺が優位に立たせてもらいますよ?」「いっつも優位に立ってるだろ。俺が嫌がってるのを知りながら、いろんなことをしやがって」「俺としては、嫌がることをしてるつもりはありません。だって愛してるから」 クスクス笑いながら、熱い口づけを交わしたふたり。このあと、一緒に指輪を買いに行く約束をしたのだった。
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クリスマスラプソディ25

*** 次の日、榊を迎えにいつものマンション前にハイヤーを停めて、わざわざ車の外で待った。昨日の礼を、直接言うために――。「橋本さん、おはようございます!」「おはよ。昨日はありがとな」 微笑みながら駆け寄ってきた榊に、橋本は右手をあげて挨拶しつつ、お礼の言葉をしっかり告げた。「もしかしてクリスマスプレゼントは、そのネクタイピンだったんですか?」 目ざとく気づいた榊の視線に、ちょっとだけ照れてしまう。「まぁな……。雅輝がこれを渡すタイミングを、なかなか掴めなかったところに気づいてもらえて、すげぇ助かったって言ってた」「その石の色、橋本さんの愛車の青色と同じなんですね。宮本さんって、いいセンスしてる」 ニヤニヤして自分をおちょくる榊から逃げるように、さっさと運転席に腰を下ろした。「その言葉、アイツに伝えておくな」 橋本を追いかけるように後部座席に乗り込んだ榊に言うと、「ついでにお幸せにという言葉も、付け加えてください」なんて、わざわざオマケまでつける始末。「了解! きちんと伝えるよ」 言いながらシートベルトをしっかり締めて、ギアをドライブにいれる。ウインカーを点灯後、車がいないかしっかり確認してから、アクセルを柔らかく踏み込み出発した。「橋本さんってば、てっきり指輪を貰ってると思いました」「俺もな―、あのビロードのケースを見た時点でそう思ったんだが、その前にちょっとした事件があってさ」「事件?」「ソムリエ野郎が、雅輝をナンパしてきた」「それって、大事件じゃないですか!!」 ちょうど信号が赤になる手前で、榊が大声をあげたので、橋本は驚きながらブレーキを踏んだ。いつものような振動を感じさせないブレーキングができず、上半身が前のめりになるものだった。「橋本さん、よく喧嘩になりませんでしたね。俺ならブチ切れしてますよ」「ブレーキ、驚かせて済まない。喧嘩になる前に呆れちまってさ」 後ろを振り返りながら告げると、気難しい顔をした榊が首を傾げながら、橋本の視線を受けつつ口を開く。「恋人が目の前でナンパされてるっていうのに、呆れる意味がさっぱりわかりません」「だってよソイツ、雅輝のヤツがネコだと思って、誘いをかけたんだぞ」「あ~……、宮本さんのあの雰囲気だと、そうとられても仕方ないと思いますけど。でもそこはきちんと、牽制したんですよね
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クリスマスラプソディ26

「恭介なんだよ、その態度。俺は間違ったことしてないぞ」「そうなんですけど年上の恋人として、もっと宮本さんを守ってあげるような言葉が、橋本さんにはなかったのかなぁって」「俺が守る以前に、雅輝が恋人らしく堂々と対処してくれたから、俺の出番はなかったというわけ」「いやそこは橋本さんが、ビシッと言ってやるところだと思いますよ」 やり取りしてる最中に、信号が青に変わった。額に手を当てて、うんうん唸る榊をルームミラーで確認後、アクセルをゆっくり踏み込む。「俺さ、嬉しかったんだ。何かあっても、今まではオロオロしていたアイツが、「陽さんとは兄弟以上の関係ですので、お引き取りください」なんて、きっぱり断ってくれたのが、すげぇ進歩だなぁって」「兄弟?」「ソムリエ野郎が言ったんだ、ご兄弟かと思ったんだと。全然似てねぇのにな」 通い慣れた道すがら、昨日の出来事をアレコレ語る橋本に、車窓を横目で見ながら榊は穏やかな笑みを浮かべた。「あのさ、恭介……」「はい?」「おまえがつけてる結婚指輪って、ふたりで選んだものなのか?」 ふたたび話題が指輪のこととなり、榊は目を見開きながら前を見据えた。「実はサプライズで、和臣が用意したものなんです。もしかして橋本さん、指輪の購入を考えているんですか?」「なんつーか、自然な流れで買うことが決まってさ。近いうちに雅輝と見に行く約束をしたんだが、宝飾品関係はとんと疎くてな」「橋本さんが宮本さんと結婚。お似合いのカップルだなぁと思っていたのが、ついこの間なのに、ずいぶんと早い展開ですね」 意味深に瞳を細めた榊の視線が、ルームミラーからビシバシ刺さってきたが、華麗にスルーしながら返事をする。「早くしないと若い雅輝が、誰かに目移りするかもしれないだろ。とっとと、首輪をつけておこうと思ってさ」「宮本さんが目移りするわけないですって。あんなに橋本さんにぞっこんなのに!」「あんなにって、なんだよ……」 軽快な会話に比例して、赤信号に当たることなく、ハイヤーは順調に進んだ。右ウインカーを点灯して右折したら、目と鼻の先に榊が勤める証券会社が見える。 残り時間が僅かだからこそ、榊がたたみかけるような早口で言った。「ちなみに俺は、そこまで宝飾品には詳しくないのですが、橋本さんがプレゼントされたそれは、とってもセンスのいいものだというのがわ
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ハンドルはふたりの誓いのリング

 指輪を一緒に買いに行く約束をしたが、互いに忙しい身ゆえ、そろって休日をとることがなかなかできなかった。 それでも仕事をなんとか調整して、隙間時間を見計らい、ネクタイピンをオーダーした店に向かう。(――やれやれ。時間に遅れがちな雅輝より、俺が先に着くことは想定していたが、中に入って待っていてもいいものだろうか) 男ひとりでジュエリーショップの前に、待ちぼうけすることを考えたら、あまりにもシュールな絵面だったので、思いきって店の中に入ってみた。「いらっしゃいませ!」 入店したと同時にかけられた声に若干ビビりつつ、反射的に愛想笑いを浮かべる。奥から顔を覗かせた男性の店員の視線が、痛いくらいに突き刺さった。「すみません、連れと待ち合わせしているのですっが、まだみたいで……」 橋本が重たい口を開いたというのに、男性店員は難しい表情で黙ったまま、じーっと見つめ続ける。「あのぅ?」 あまりに凝視するので、恐るおそる声をかけたら。「橋本だったのか……」 男性店員からのいきなりの名指しに、驚きを隠せなかった。「なん、えっ⁉︎」「ひでぇな、僕のこと忘れたのかよ。芸能界に入れって背中を押してくれた、張本人のくせに〜」「芸能界? ちょっ、まさか野木沢?」 芸能界のひとことで、高校の頃のことをあっさり思い出し、男性店員の名字を告げてみら、満面の笑みで肩を竦める。「しょうがないか。モテる橋本の、お相手の一人だっただろうし」「そんなことないって。野木沢は今は、どうしてるんだ?」 いやらしさ満載の過去の話題の矛先を変えるべく、現在の話に無理やりすり変えた。橋本の愛想笑いが、引きつり笑いに変化する。「高校を卒業してから、5年ほど芸能活動していたけど、あんまりうまくいかなくてさ。もともと興味のあったジュエリーデザインの勉強をしながら、こうして店を構えたっていうわけ」「もしかして、このネクタイピンーー」 言いながら橋本がそれを、胸元から引っ張り出したら、野木沢がカラカラ大笑いした。「宮本様がネクタイピンを贈る相手のことを、詳細に語ってくれた相手が、まさに橋本像って感じだったのは、間違いなかったんだな」「橋本像って、なんだよそれ……」「誰よりも男気あふれていて、頼りになる頑固者で優しい男って」 大笑いされながら告げられた内容が微妙すぎて、橋本の眉間に皺
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ハンドルはふたりの誓いのリング2

 してやったりなその態度に、橋本は苛立ちを隠せなかった。「それ、アイツが言ったのか?」「お客様のプライベートな話だからな。言えないよ」「野木沢っ!」 眉間に皺を寄せて怒る橋本を見て、野木沢は肩を揺すりながらクスクス笑う。「橋本の気の短さは、相変わらずなんだなぁ。そういう子どもっぽいところに、宮本様は惹かれたのか」「なんだよ、子どもっぽいって」「はいはい、訂正。見た目とのギャップにやられたんだろうね」「優柔不断のくせして、口だけは達者なんだよな。まったく……」 つんと顔を逸らした橋本のネクタイに、野木沢は手を伸ばした。「自分でデザインしたものだけど、想像以上に似合ってる」「そうか?」 顔を逸らしたまま視線だけで前を向くと、満足げに微笑んだ顔が目に映った。「スターサファイアの煌めきと橋本の雰囲気がマッチしていて、互いの良さを相乗効果してる感じ」「そうなんだ。アイツがおまえに、なにを言ったか知らねぇけど、サンキューな」 告げられた言葉に照れた橋本は、ふたたび視線を逸らした。「宮本様とは付き合いは長いのか?」 いきなりプライベートなことを訊ねた野木沢の態度が気になって、ゆっくり顔を戻す。 自分よりも少しだけ背の低い彼を見下ろしながら、橋本はちょっとだけ微笑んだ。宮本に告白されたのがつい最近のような気がしたのに、他人に改めて訊ねられて、一緒に過ごした過去が脳裏に、鮮やかな映像としてよみがえる。「いや、そろそろ1年ってところ」「そうなんだ、へえ……」「倦怠期っぽいもん、俺から感じてる?」 付き合った期間を告げた途端に、野木沢の顔色が曇ったので、思わず訊ねてしまった。「まさか! 橋本の雰囲気から、仲の良さしか感じてない。羨ましいなって」「そういう言葉が出てくるということは、野木沢は独り身か」「残念ながら正解だよ。忘れられない恋をしたせいで」 忘れられない恋というワードで、榊への恋心を思い出した。友人がそんな恋をして、未だに独り身でいることがかわいそうになり、腰に手を当てながらレクチャーしてしまう。「叶わない恋を諦めた俺が言うんだ、そんなもん、とっとと忘れろ。案外すぐ傍で、おまえを見てるヤツがいるかもしれないぞ!」「叶わない恋、か……。橋本も苦労したんだな」
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ハンドルはふたりの誓いのリング3

「結婚したいと思った女性に逃げられた反動で、サラリーマン辞めてさ。今はハイヤーの運転手をしてるってわけ」 憐れむ視線を野木沢に注がれたせいで、参ったなぁと思いながら、過去の出来事をぽつりぽつりと語った。あえて榊のことを隠したのは、橋本の中で深いキズだったから。 一応笑って語れるネタを振ってみたというのに、野木沢はどこか暗い表情をキープしながら、淡々と口を開く。「お互い、いろいろあったんだな」「だけど今は幸せだ。アイツのお蔭で――」 微笑む橋本を見て、野木沢もやっと笑みを浮かべた。「なんだかな~。橋本にそうやって惚気られると、仕事を恋人にしてる僕が、不幸みたいに思えてくるだろ」 互いに目線を合わせて笑ったそのとき、店の扉が大きく開かれた。「すみませんっ、あの!」 息をきらして入店した宮本を、ふたり揃って出迎えた。「いらっしゃいませ!」「相変わらず遅刻とは、期待を裏切らねぇよな雅輝は」「午前中の仕事が押してしまって。陽さんは早めに来ていたんですよね? 待たせてしまって、ゴメンなさい」「大丈夫だ。ちょうど世間話に、花が咲いたところだったし。な、野木沢」 親しげに話しかけた橋本に、野木沢はにっこり微笑みながら、小さく首を傾げた。「まぁね。橋本のデレた顔が拝めるとは、予想外だったよ」「あの、おふたりって――」「野木沢とは、中学高校の同級生なんだ。15年振りの再会ってわけ!」 野木沢と見つめ合う、橋本の様子を目の当たりにして、宮本は微妙な笑みを唇に湛えた。 たじろぐ宮本の様子を察し、野木沢は指輪のコーナーのショーウィンドウをさし示しながら、丁寧に説明をはじめる。「さっそくなんですが今回はお揃いの指輪を、当店でご購入するとのことでしたが」 ニッコリ微笑んで、ところどころにアクセントを置きながろ喋る、商売上手な野木沢らしいセールストークに導かれて、宮本は橋本の隣に並んだ。互いに顔を突き合わせつつ、ショーウィンドウの中にある、たくさんの指輪を眺めた。 店内の照明を受けて光り輝く指輪を、隅から隅まで眺めるうちに、橋本が重たい口を開く。「う~ん。こうしてみるとパッと見、どれも同じに見える。雅輝はどうだ?」 顎に手を当てながら、なおもショーウィンドウの中を覗き込む橋本に、宮本は若干呆れながら話しかける。「確かにパッと見は、どれも同じに見え
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