一花はそこまでお腹が減っていなかったし、午後はずっとワイナリーでたくさんのワインを試飲していたので、この時少し酔いが回っていた。幸雄の友人たちと少し座っておしゃべりしていてから、先に帰ることにした。ワイナリーは幸雄の家から少し距離がある。一花が車に乗ろうとしたところ、徹に呼びとめられた。「一花さん、今日僕もお酒を飲んだので、幸雄さんがここに一晩泊まっていいって言ってれたんです。一緒に乗って行ってもいいですか?」秘書など同行している人はおらず、徹は大きな歩幅で向かってきた。「二塚さん、同行していた方たちは?」一花は気になって尋ねた。徹は小声で答えた。「彼らは幸雄さんの手伝いで、お客さんを送りに行ってるんです。僕は家には帰らないから、それで一花さんと一緒に戻ろうと思って」亜由と一花は互いに目を合わせた。どのみち車にはまだ空いている席があるので、一花も多くの事は言わず、頷いて軽く返事をすると先に車に乗り込んだ。一花の同行者も一緒に乗っているので、車の人数は多く、一花は最後列の奥に座り、一番最後に乗り込んできた徹とは席が離れた。そして数分ほどで、彼らは幸雄の邸宅に戻ってきた。徹が泊まるゲストルームはちょうど一花と同じフロアだったので、二人は最後まで一緒にいた。一花の部屋は一番奥にあり、彼の部屋は手前側だったので、彼のほうが先に到着した。しかし、彼はすぐに自分の部屋に入ることはなく。一花と亜由について行き、一花を部屋の前まで送ろうとした。「二塚さんも今日はお疲れでしょう。わざわざ部屋まで送ってもらう必要はないですよ。早めに休まれてください」一花は彼がついて来ようとするのを見て、そう言った。一花からそう言われて、徹もただ笑って頷くしかなかった。「分かりました。一花さん、おやすみなさい。また明日」「おやすみなさい」一花はそう言うと、サッと背を向けて歩く速度を早めた。徹がここまで積極的になるので、彼女はどうも居心地が悪かったのだ。彼にはすでに自分に夫がいると伝えている。昼のパーティーでは、徹はそれを理解したように感じたが、どうして夜になってまたしつこく付きまとおうとするのだろうか。「一花お嬢様、今日は心地よくお過ごしいただけましたか?」亜由は一花を部屋の前まで送り、礼儀をもって一花がどう感じたか
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