All Chapters of マーサ〜愛の老婆〜: Chapter 11

11 Chapters

11話

 客室に来たトニは、ヘアスプレーをウエストバッグに入れ、廊下に出る。足音を立てぬよう、慎重にかつ素早く移動し、クローゼットルームとトイレの間の廊下を進む。「トム、どこだい? おばあちゃんと遊ぼう」 少し離れたところからマーサの声が聞こえる。とっさに口を覆い、声が出ないようにする。「トムはかくれんぼが好きだねぇ。ここかな?」 マーサはどこかのドアを開ける。音からして、テッドの部屋の隣だろう。トニは素早く移動し、客室の向かいにある部屋に入った。 部屋に入ってまず目に飛び込んできたのは、大きなベッド。それからドレッサーにクローゼット。ベッドの横には、小さな収納棚。棚の上には結婚式の写真と、トムと思われる男の子と3人で撮った写真。男の子はまだ赤ちゃんで、リビングにあった写真から連想しにくい。どうやらここは夫婦の寝室のようだ。 ベランダに続く大きな窓もある。トニは音を立てないように窓をゆっくり開けると、ベランダに出た。下を見下ろすとコンクリートの地面。花壇だったら飛び降りることも考えたが、これではほぼ確実に死んでしまう。それでも希望はあった。 トニはウエストバッグから紙とペンを出すと、紙に「Help」と書き、丸めて投げた。だが紙は虚しくコンクリートの地面に落ちただけ。7歳の力では、そんなものだ。 今度は紙飛行機にして飛ばしたが、敷地内で落ちてしまう。「うぅ……!」 うまくいかず、泣きそうになるが、ぐっと堪える。「冒険者の心得その5。いつでもクールにスマートに。パニックになった奴から死ぬぞ」 トニはアレクサンダーの教えを胸に、深呼吸をして自分を落ち着かせる。(他の方法で飛ばせばいい) 部屋に戻り、様々なものを漁る。だが、今回はあまりいい収穫がない。カーテンやタオルケットなどてロープを作って降りることも考えたが、結びつけられそうなものがない。ベランダは手すりがないタイプだし、ベッドは年季が入っていて、小さなトニが慎重に乗っても軋む。そんなものに命を預けられるほど無謀ではない。 トニはベッド横にある収納棚の引き出しを開ける。そこにはコンドームが入っていた。用途は知らないが、アレクサンダーが水風船の代わりになると言って、どこからか入手してきたコンドームを持ってきて一緒に遊んだ。その後、アレクサンダーはトニの母にものすごい剣幕で怒られていたが。(使える
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