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14 Chapters

美術館デート

 デートと言っても、美術館巡りは俺の日課のようなもので、言ってみれば仕事の延長だ。それに成海をつき合わせてしまうのだ。少し罪悪感がある。 俺たちは、ミュージアムショップで売られるグッズを発案する仕事をしているので、新しいアート展が始まると通える範囲で足を運び、グッズを視察するのだった。美術館巡りは元々好きだし、休日にはよくやっている事だった。「成海!」待ち合わせた上野駅前で、成海を見つけた。相変わらず、スーツ姿とはがらりと印象の変わるやつだ。ガタイの大きさが際立つというのだろうか。半袖のTシャツの下にタンクトップを重ね着して、わざとずらしてタンクトップが見えるようにしているようだ。それは色のコントラストからの推測だが。Tシャツがカーキ色で、タンクトップが白。Tシャツには白い英文字が流れるような筆致で書いてあり、タンクトップもその白い文字に合わせて選んだに違いない。 いつもは上が白、下がジーンズという服ばかり着る俺だが、今日は白い半そでパーカーの下に水色のTシャツを着て、下はくすんだ黒のデニムだった。ちょっとしゃれてみたつもりだが、俺に似合っているのかどうかは分からん。「仁さん、今日は一段とオシャレですね。」成海がそう言って微笑んだ。思わず赤面。「あ、今日は俺につき合わせて悪いな。」照れ隠しもあって、そんな風に言って歩き出した。「とんでもない。俺もこのアート展には行きたかったので。」成海も一緒に歩き出しながら言った。たとえ仕事の延長でも、成海と一緒に歩けたら楽しい。 アート展を観終えてミュージアムショップに入ると、俺たちは真剣に品定めを始めた。「これはステッカーですね!ステッカーってお手頃価格で買いやすいし、スマホケースの中に入れられるし、すごくいいと思うんですけど、意外と売ってるミュージアムショップが少ないんですよね。」成海が展示されていた絵のステッカー、つまりシールを手に取って言った。「そうだな、確かにそれほど多くない。絵葉書や付箋は必ずあるのに。」俺はそう答えながら、物色して歩く。「お、ネックレスがある。こういうの、俺はいいと思うんだよなー。」俺が手に取ったのはアート展の作品にちなんだ形のネックレスだった。高価な物ではないが、他にはないオリジナリティーがある。「ネックレスか。同じようにブレスレットや指輪もあるといいですよね。
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父と母の画策

 結局ステッカーとネックレスを買った俺たち。ネックレスはそれぞれ違うアーティストの作品のものを買って、同じ物ではないが、何となくお揃い気分を味わう。ステッカーも違う作品のものを買ったが、お互いに買ったステッカーをスマホケースに入れた。「なんか、いいっすね。」成海が隣でニッコリ笑うのを見て、俺もすごく嬉しくなる。が、ほっこりしているところ申し訳なくなるが、この後は俺の実家、というか家に成海を連れて行かねばならない。どうしてこんなにプレッシャーを感じるのだろうか。「じゃあ、うちに行こうか。」俺がさりげなく言うと、「は、はい!」成海が急に緊張した声で言った。「なんか、ごめん。」「どうして謝るんですか、大丈夫です。俺、すごく楽しみです。」無理してるなあ、と思いながらも仕方がない。とにかく一度母に紹介して、その後はなあなあにして……と俺は考えていた。 「ただいまー。」家の玄関に入り、そう言ったか言わないかの内に母が台所から出てきた。「仁さんお帰りなさい、まあ、まあ、良くいらっしゃいました。成海さんよね?」母は満面の笑みだ。「あ、はい!本日は、お招きありがとうございます。」成海は元気よく言って、思い切り頭を下げた。「どうぞ上がって~。あ、スリッパをどうぞ。」母はスリッパを成海の為に揃えると、リビングの方へと入って行った。「お邪魔します。」成海はそう言って靴を脱ぎ、スリッパを履いた。何だか俺まで緊張する。 リビングに入ると、父が既にテーブルに着いていて、俺たちが入って行くとやあ、と片手を挙げた。「お父さん、こちら成海準一君。」「どうも初めまして。さあ、座って。」父は上機嫌で言った。「初めまして。ありがとうございます!」成海はやはり深々と頭を下げ、椅子を引いて座った。俺も成海の隣に座る。「りーんー!ご飯だから、下りてらっしゃい。」母が階段の下から妹の凛を呼んだ。「あ、凛というのは妹なんだ。」俺は隣の成海に説明した。「ああ、そうですか。」成海は緊張しているようで顔が硬い。 母がリビングに入ってきて、続いて凛が入って来た。凛の顔を見ると、成海の事を見てハッとしている。来ることを知らなかったのだろうか。「あ、こちら成海準一君。」凛にも成海を紹介した。そして、「妹の凛。」と、改めて成海にも妹を紹介した。「初めまして
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繰り返すキス

 成海を連れて階段を上がり、自分の部屋のドアを開けた。電気を点け、成海を先に中へ入れ、自分も入ってドアを閉めた。成海は部屋の真ん中に突っ立って、こちらを見ている。ちょっと複雑な表情で。「あの、仁さん、何か怒ってます?」成海が言った。俺は真顔で成海を見つめた。俺は怒っているのだろうか。誰に?「いや、怒ってない。」そう言って、成海に抱き着いた。「仁さん?」俺が黙っていると、成海はそのまま背中に腕を回してくれた。そして、そっと頭を撫でてくれる。そうしていると、だんだん心がほどけて行った。「なんであんなに、凛のこと見てたんだよ。」思わず言った。俺、やっぱり成海に怒っていたみたいだ。「え、そんなに見てました?」「見てたよ。」「それは、仁さんと似てるなーと思って、つい。」「それは、そうだろうけど。」そうだろうけど、それでも気に食わない。「怒らないでください。もう仁さんの事しか見ませんから。」成海が言う。「そんなの……」無理だ、と言おうとして顔を上げると、成海が顔を近づけてきて、キスをした。黙るしかない。すると、もう一度キス。顔の向きを変えてまたキス。キス、キス、キス……キスの嵐。何度も唇を重ね、だんだんと唇を吸われるようになり、それと同時に成海が俺の背中を撫でさする。俺も夢中になって成海の背中をさすった。チュッ、チュッとリップ音だけが響く。胸がドキドキする。こんな感覚は初めてだ。これが、恋、なのだろうか。これが愛のあるキス、なのか。 気づけば、成海は俺の唇から頬に、そして首筋にまでキスを繰り返している。クラクラする。もうダメだ。倒れそう。そう思ったら、成海がギュッと俺の腰を引き寄せた。「ちょ、ちょっと待った……。」と俺が言ったその時、部屋のドアがトントンとノックされた。ビックリ。「あ、はい。」急いで成海から離れ、ドアを開けに行く。だが、俺が開ける前にドアがガチャっと開いた。「よお!」そこに立っていたのは兄貴。「仁、お前男連れ込んでんだって?どんな男だ?」いきなりそう言って首を伸ばし、後ろを見ようとする。「ちょっと、その言い方!」だが、兄貴は俺の言葉を無視し、部屋に入って来る。「何か楽しい事やってたらしいんじゃん。知らせてくれないんだもんなー。知ってたらもう少し早く帰って来たのに。」そして成海の前に立ち、「どうも。成
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あなたの為

 成海を送り出そうとして、二人で俺の部屋を出ると、凛が自分の部屋から顔を出した。凛の部屋は俺の部屋のはす向かいにある。「成海さん、もうお帰りですか?」凛が言った。「はい。お邪魔しました。」成海がまた深々とお辞儀をする。すると凛は、「あの、連絡先交換しません?」と言った。俺は驚きで声も出なかった。成海は当然困惑し、俺の顔を見る。「ダメ、ですよね。忘れてください。」凛がそう言って部屋に引っ込もうとした時、「いえ、ダメじゃないです。交換しましょう。」成海がそう言って、ズボンのポケットからスマホを取り出した。俺は未だに声も出ない。何を言うべきか、見当もつかない。成海と凛はスマホをつき合わせている。俺は、どうしたらいいのだろう。このまま、ただ眺めているのが正解なのだろうか。「それじゃあ、また。」「はい、おやすみなさい。」凛と成海がそう言葉を交わし、凛は部屋に戻った。俺は黙って先に階段を下りた。 成海を玄関へ連れて行き、手を振って別れた。成海は笑顔で手を振っていた。だが、俺は笑顔を作れていたかどうか分からない。玄関のドアが閉まり、ぽつねんと取り残された俺に、後ろから母が声を掛けた。「仁さん、お茶でも飲む?」 母はティーカップ2つにお茶を入れ、ダイニングテーブルに運んできた。1つを俺の前に置く。「ありがと。」俺はそう言って受け取った。薄いグリーンのお茶は、飲んでみるとカモミールだった。心を落ち着かせるハーブティーだ。「成海さん、とてもいい人ね。さすが仁さんの御眼鏡にかなっただけの事はあるわ。それにカッコいい。」母もお茶をすすりながら、落ち着いた声で言った。「凛も気に入ったみたいね。成海さんの方はどう?ああ、聞かなくても分かるわよ。凛はあなたにそっくりだもの。あなたの事が好きなら、きっと凛の事も好きになるわ。」「え?」一瞬何を言われたのか分からなかった。俺の事が好きなら?「いや、成海は別に……」否定しようとして、言葉に詰まった。そうしたら母に先を越された。「隠さなくてもいいわよ。」「……どうして分かった?」「そりゃあね、若い人が毎週土曜日に出かけるようになったら、それは恋人が出来た証拠だもの。ただの友達なら、毎週って事はないわ。」母にそう言われて、確かにと思っておかしくなった。色々な友達としょっちゅう出かけている人ならとも
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