セット割、それは私に縁のない話のようだ。彼氏の浅野駿(あさの しゅん)とデートをするたびに、なぜか最後にはいつも三人になってしまうのだ。「商店街の店、セット割やってるから早くおいでよ」駿はそう言って、私の親友・小林柚葉(こばやし ゆずは)に電話をかけ、当然のように注文した。知らせを受けて、柚葉がすぐにやってきて、駿の手からストローが刺さったアイスコーヒーを受け取った。それから、二人はオンラインゲームの話で盛り上がり、言い争いながらも楽しそうだ。私・一ノ瀬瑠璃(いちのせ るり)はレシートを握りしめた。どうやら今回の「セット割」も私には無縁で、私だけはいつも定価のものを注文させられてしまうのだ。私が注文したものを受け取った時には、二人はもう店から出ていた。私は大急ぎで二人に合流しようと、向かいの映画館へと向かった。中に入ると、柚葉が駿に対してむくれていた。どうやら駿のカードのセット割は二人分までらしく、私の分まで買えなかったらしい。私を見かけた柚葉が焦ったように言う。「瑠璃、急いで。チケットあと1枚買ってきて。あと10分で始まるよ」そう言いながら、彼女はポップコーンを無理やり私に押し付け、はにかんで笑った。「セット割のやつ、1つあげるから食べていいよ。私と駿くんで1つあれば十分だし」私は言葉を飲み込み、二人を交互に見た。隣同士の映画チケット、お揃いのアイスコーヒーにスマホケース、チャームペンダント。その瞬間、私はすべてを悟った。二人には「セット割」がお似合いだ。なら、私から身を引くのが一番ね。私が背を向けて歩き出すと、駿が追いかけてきて腕を掴んだ。「たかが映画のチケットくらいで怒るなよ」駿はスマホ画面を突きつけ、少し冷たい口調で言う。「買ってやればいいんだろ?もうすぐ始まるんだ、柚葉を待たせるなよ」突きつけられて、私は座席番号を見つめた。4列目の5番。二人は8列目の6番と7番。駿は、ずっと気が付いていない。チケットがどうこうじゃない。セット割で買ったチケットのペア席には私じゃなく、柚葉が座るべきだと駿が黙認していることこそが問題なのだ。そう思って、私は聞き返した。「駿。恋愛映画を3人で見なきゃいけないなんて、変だと思わないの?」そう聞かれて、駿は呆れたよう
閱讀更多