最初のカボチャは、夕方の色が庭に沈みきる頃に見つけた。庭のベンチの下、掌に収まるほどのオレンジの球が転がっていた。 つるの名残が、猫のしっぽのようにくるりと曲がっている。持ち上げると、皮に彫り込まれた文字があった。細い刃で綴られた詩。 灯りは小さいが 道になる彫ってあるのでカクカクとした字ではあるが、しっかり読み取れた。刻まれた溝は新しく、そこに指を当てるとほんの少しカボチャの生々しさが残っている気がした。庭越しに隣家を見れば、背の高いヒマワリが秋の名残を振っている。その陰に、薄い色のシャツの人影。隣に住む笹川さん――だ。影は動きを止めた。私も、カボチャを手にしてしばし動きを止めた。 しばらくして、その影は姿を現すことなく建物の向こうへと去ってしまった。祖母の家に戻ってきたのは、今年の春。ほこりを払って暮らしを置き直し、地域が運営する図書室で非常勤司書の職を得た。昨年の夏までは、東京の都心にある雑貨店で働いていた。昔から小物づくりが好きで、大学卒業後に雑貨販売の会社に就職をしたが、どうやら私は作るのが好きなのであって、売るのは性に合わなかったようだ。追われるような仕事の日々に心が追い付かず、祖母の入院を機に仕事を辞めた。春に祖母が亡くなるまでは、その世話を一手に引き受けた。母からは、仕事を辞めさせて申し訳ない、と言われたが、祖母の介護を言い訳に仕事を辞めたところもあり、少し後ろ暗い気持ちではあった。小学2年の頃に母が離婚し、私は学校が休みに入るたびによく祖母の家に預けられた。 だから、この場所は第二の故郷と言っても過言ではない。地域の図書室も、歩いていける植物園も、小さい頃は毎日のように通った場所だ。 祖母と最後の日々を過ごせたことは、自分の中の祖母への思慕の整理にもなった。翌日の夕方にも、ベンチの下にミニカボチャが転がっていた。 風の手紙は 季節を運ぶ昨日のとは違う言葉が彫ってあった。持ち上げてしばし周囲を眺める。――お隣さんよね? どうしよう。うちの庭に入ってましたよ、って持っていくべきかしら大きな口をあけたようなカボチャは、中がくりぬかれ、その中にろうそくがおけるように作られている。結局、もう暗いから、と自分に言い訳をして、家にそれを持って入り、昨日のカボチャの横に並べてみた。 ふと思いたって、祖母の仏
Last Updated : 2026-07-03 Read more