Tous les chapitres de : Chapitre 21 - Chapitre 26

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誘拐~宣言4

 晩餐会の予定も、次の国への渡航も、あれもこれもキャンセルになり、宮内庁職員は大わらわだった。あの動画を見た後、大使館では天地がひっくり返るような大騒ぎになったが、国から同行してきた宮内庁職員、近衛兵たちは、さほど驚かなかった。尊人が国王を辞めたがっている事はよく分かっていた。あの誕生日会見もあったし、普段から、国王の仕事を愉しんでいない事は承知していた。何か言おうとすれば、政府から止められる事も多い。それは政治案件ですから、と遠回しに言われて口をつぐむ尊人を、いつも見て来たのだ。若くて優秀な尊人には、お人形のような仕事では満足いくはずがない。見ていれば、誰もが思う事だった。「どうしたらいいのだ。身代金を払う必要はないという事なのか?いやいや、たとえ国王でなくとも、国民を見捨てるわけには行かないのだから、身代金は用意すべきなのか?いやいや、テロに屈してはいけない。要求を呑むわけには行かないのだ。だから、つまり、身代金は、ああ、どうしたら。」大使はうろうろ歩き回っていたが、頭を抱えて座り込んだ。「大使、落ち着いてください。政府の方で結論は出すでしょうから。」部下に諭されて、差し出されたコーヒーを一口飲んだ。「宮内庁の方はキャンセルのオンパレードで大変そうだな。しかし、よりによって国王が誘拐されるなどと。前代未聞だ。ああ。」大使はまた頭を抱えた。 バン!とドアが開いて、猟銃を持った男が3人ほど入って来た。尊人は顔を上げた。男たちは尊人を椅子ごと運び、動画を配信した部屋へ戻った。先ほどと同じ位置に座らせ、覆面をしたリーダーが動画の録画ボタンを押した。「よく聞け!こいつは国王ではなくなったかもしれないが、それでもお前たちの国の国民だろう。これから大使館に電話をかける。こちらの要求に対する答え次第では、こいつを撃つ!」リーダーはそう言うと、部下に合図をした。覆面をした部下が猟銃を構え、尊人に銃口を向けた。リーダーはスマートフォンを操作し、大使館に電話をかけた。「大使、LIVEを見ているか?このミスター尊人は、お前の返事次第では命を落とす事になる。さあ、身代金を払う気はあるんだろうな?仲間の解放も、政府に要請してくれたんだろうな?どうなんだ?」電話口で、大使は大きく目を見開いた。その目は、ライブ配信されている映像を見ていた。尊人が銃を向けられている。尊人
last updateDernière mise à jour : 2026-07-20
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誘拐~宣言5

 健斗と未来は、廃屋の入口の陰に身を隠していた。「ここだな。見張りは1人か。どうする?俺たちは丸腰だぜ。」健斗がひそひそ声で言う。「応援を呼んでから突入だな。だがその前に、尊人がいる場所を突き止めたい。なるべく見つからないように動こう。」未来はそう言い、先に敷地内へと入って行った。暗闇の中だが、建物のあちこちからは灯りが漏れている。覗けるところがあれば、覗いて回った。 ある鉄格子のはまっている小さな窓を見つけ、健斗に肩車をしてもらい、未来はその窓から中を覗いた。しかし、中は暗く、廊下に続くドアの存在しか分からない。「どうだ?尊人はいたか?」一度肩車を解除して、健斗は聞いた。「いや、暗くて分からなかった。だが、あの感じからして、独房だ。一か八か、声をかけるか……。」2人が思案していると、「誰かいるのか?」暗闇の中、入り口とは反対側から人が現れた。ターバンを巻き、猟銃を持っている男だ。見つかった。健斗と未来は同時に両サイドへ飛び、相手を挟んだ。敵は銃をどっちに向けるか一瞬迷って、未来の方へ向けた。その瞬間、相手の頭に健斗のかかと落としが決まった。相手はその場に倒れた。尊人が壁に寄りかかってうとうとしていると、パタっという小さな音がした。尊人は立ち上がり、窓から外を眺めた。耳を澄ますが何も聞こえない。「誰か外にいるのか?」尊人は声をかけた。廊下に聞こえるとまずいので、ごく小さい声で言った。「あ、尊人の声だ!」未来が小さい声で言った。手で合図をし、健斗にまた肩車をさせる。窓の鉄格子に手をかけ、中を覗くと、暗い中に、こちらを見て立っている人物の姿が見て取れた。「尊人か?」「未来!よくここが分かったな!」「尊人、大丈夫か?怪我してないか?」「大丈夫だ。」「よく聞け。これから応援を呼んでくる。それまで、そこで辛抱していてくれ。必ず助けるから。」「ああ、分かった。未来も、そして下にいるのであろう健斗も、十分気を付けて。」少し、涙が出てきたので、尊人はそこで言葉を切った。未来の姿はすっと消え、音もなく2人は去った。 健斗と未来は一旦敷地の外に出た。そこで、藤堂に電話をかけた。「尊人を見つけました。応援をお願いします。場所を送ります。」電話を切り、現在地が表示された地図をスクリーンショットして、それを送った。
last updateDernière mise à jour : 2026-07-20
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誘拐~宣言6

 現地の政府軍と、我が国の近衛兵が10分で到着した。藤堂と合流した健斗と未来は、他の軍隊とは別行動で、尊人のいる部屋の外へ回った。敵がこちらの軍隊に気づけば、尊人は人質として連れていかれてしまう。その前に救い出さねばならない。そのためには、普段訓練している、忍術を使うしかない。 3人は外を調べたが、外から尊人を上手く出す手立てはないようだった。そこで、正面突破、ではなく、正面入り口からこっそり入るしかない。見張りはやはり1人。3人は防弾チョッキを着て、入口へ回った。しかし、既に入口の見張りは、軍隊に気づいたようだった。「何だありゃ!まずい、まずいぞ!」そう言ったかどうだか、言葉は分からなったが、何かをわめきながら知らせるために中へ入って行った。その隙に、3人は入り口の中へ侵入した。 中には、猟銃を持った男たちがうろちょろしていた。けれども、見張りが何か言ったので、みんなでリーダーの元へ集まろうとしているようだった。3人は黒い服で暗闇を通り、尊人のいる独房の近くまで来た。そこにも見張りがいるが、みんなが浮足立っているので、気もそぞろだ。 忍法隠れ蓑の術を使う時が来た。ドアと同じ色の布でドアを覆い、その中へ入り込んで部屋の中に入る。これは、未来がやってのけた。ドアをそっと開けて中に入ると、尊人が高い窓の外を見上げていた。「尊人、来たよ。」急にドアの方から声をかけられて、尊人はびっくりして振り返った。「未来!」未来はさっと唇の前に人差し指を立てた。尊人は黙って頷いた。未来は尊人に防弾チョッキを着せ、黒いマントをその上から着せた。そして、そっとドアに手をかける。すると、ドアが外開きのはずだったのに、なぜかスライドして開いた。未来は尊人の手を握ると、走り出した。尊人は、視界が全く開けないのに驚いた。前を走る未来の後ろ姿しか見えない。横はいつも壁。しかし、これは隠れ蓑だ。隣を健斗が走っているのだ。敵は混乱しているが、リーダーが、「人質を連れてこい!」と叫んだ。見張りをしていた者が、ドアを開けようとして悲鳴を上げた。「わー!ドアが、ドアが布になっちまった!」 尊人たちは何とか建物の外に出た。敷地の外に出た時、藤堂が合図を出し、突入の命令が下され、政府軍が突入を始めたのだった。尊人たちは軍の後ろに待機していた車に乗り込んだ。「ありがとう、みんな。迷惑を
last updateDernière mise à jour : 2026-07-20
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クーデター~浅薄1

 犯人グループは捕まって、事件は一件落着し、尊人たち一行は国に引き返してきた。当然、国に帰れば報道陣が待ち構えている。飛行機の中で、つかの間の安らぎの時を過ごす尊人であった。「上手くやったわね、尊人さん。でもほんと心配したのよー。」麗良はいつも明るい。けれども、麗良自身もこれからの事が不安でないはずはない。「麗良さん、君は、実家に帰るかい?我が国の国籍がない状態だけれど、だからこそ結婚した事にもなっていない状態だし、復籍すれば元通りなんじゃないかな?」尊人が言うと、「私ね、どこか海外へ行こうと思うの。イタリアがいいかなあ。イタリア国籍を取得してさ、向こうで生きるわ。だって、今の国じゃあ、有名過ぎて息が詰まるもの。フランスもいいわね。」「麗良さんなら、どこでもやっていけるだろうね、きっと。」未来がそう言うと、麗良は未来と健斗を順番に見た。「あなたたちはどうするの?2人は国籍があるんだし、ただ就職先を探せばいいだけよね。けど、尊人さんは国籍がない。尊人さんもどこか海外で国籍を取得した方がいいんじゃないかしら。」そう言って、今度は尊人の方を見た。「有名なのは、私以上なのよ。」麗良は大真面目な顔で言ったが、尊人はふふふと笑った。「私は、王族の皆さんに対しての責任がある。自分だけ外へ逃げるわけには行かないよ。」「……「私」モードになってるわよ、尊人さん。……責任、か。」麗良は、最後の方は独り言のように言った。「もうお別れね。最後に、これだけはさせて。」麗良はそう言うと、尊人の顔に顔を近づけ、キスをした。健斗と未来はギョッとして凍り付いた。唇を離すと、麗良は健斗と未来の驚きの顔を見て、にやっと笑った。「いいじゃないの。私と尊人さんは結婚式まで挙げた仲なのよ。ねえ?」といい、尊人に向かって同意を求めた。尊人は穏やかに笑った。 無事本国に到着し、空港に降り立った。報道陣に囲まれたが、政府の出迎えがあり、規制が張られていたので、写真を撮られるのみだった。今まで通りに警護されながら宮殿に帰ると、そこへ首相が会いに来た。「陛下、この度は大変でございましたね。ご無事の御帰国何よりです。」そう言って、深々とお辞儀をした。「首相、私の言葉は聞きましたか。勝手をして申し訳なかったが、もう私は国王ではない。この国に国王はいなくなりました。」尊人が静か
last updateDernière mise à jour : 2026-07-21
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クーデター~浅薄2

 翌朝、朝食の席に着いた尊人は、まだこの建物の中に部外者がいないので、普段ここに寝泊まりしている職員や近衛兵たちを全員集めた。「皆、聞いてくれ。私は、クーデターを起こそうと思う。」一瞬ざわっとしたが、誰もが尊人の次の言葉を待つために、再び静かになった。「私は、皆も知っている通り、この国の国王制を廃止しようと思っている。しかし、政治的権限のない私には、それは出来ない。しかし、私は……私はこんな、意味のない国王でいたくはない。政府の操り人形は嫌なんだ。いや、お飾りの人形かな。私は、ただ、人間になりたいんだ。」一度言葉を切って、尊人は皆を見渡した。「クーデターを起こし、国王に権力を再び持たせ、その上でこの国の王制を廃止する。そうしたらまた、元の通りだ。このクーデターを起こすには、皆の協力が必要だ。もし協力してもらえなければ、諦める。」尊人は一瞬目を閉じた。「だが、もちろん危険が伴うものだ。今のうちに、ここから去りたい者は、そうしてもらって構わない。ただ、この計画を外に漏らしてはもらいたくない。それだけは、頼む。」そう言って、尊人は頭を下げた。「陛下、本気なんですね。」藤堂が発言した。「藤堂、すまない。」また、尊人は頭を下げた。「陛下、いえ、尊人様。頭を上げてください。私は、尊人様が苦悩なさる姿を、ずっと見てきました。何とかならないかと、私も上司に訴えてみたものの、誰も取り合ってくれませんでした。これは、クーデターしかないと私も思います。あなたが決心したなら、私は従います!」藤堂はそう言って、後ろを振り返り、他の近衛兵たちを見渡した。近衛兵たちは、口々に「やります!」「私もやります!」と言って手を挙げた。「皆、ありがとう。恩に着ます。」尊人は涙をこらえて左胸にこぶしを当てた。 ほどなくして、内閣改造が行われ、大臣の任命式が行われる事になった。国王である尊人が形だけ、大臣を任命するのだ。それはこの宮殿で行われる。普段SPがくっついている首相だが、宮殿にいる間は、近くにはいない。報道陣も数が限られ、一般人はもちろん入れないので、油断しているのだ。 この時を狙って、クーデターの計画が練られた。失敗したら逮捕される。いや、命を奪われるかもしれない。それでも、皆快く尊人に協力してくれた。
last updateDernière mise à jour : 2026-07-21
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クーデター~浅薄3

 9月中旬、任命式のために、新しい大臣たちが続々と宮殿に到着した。尊人は燕尾服を着て、謁見の間に待機していた。報道陣が10人ほど入り、近衛兵は部屋の壁に沿ってずらりと並んで立っていた。実は、いつもよりも多い。20人ほどいる。首相のSPは中に入るものの、入り口付近に3人ほど立っているだけだった。 任命式が始まろうとした頃、食事係の職員が素っ頓狂な声を出した。「あら、これ首相の忘れ物じゃないかしら?あらやだ、どうしましょう!」それを聞いて、首相のSPの3人はそろってドアの外を覗いた。その時、健斗が3人を部屋の外へ押し出し、強引に扉を閉めた。「何だ!?」SP達は訳が分からず、扉を見つめて佇んだ。さっきの素っ頓狂な声を出した職員は既に姿を消していた。 謁見の間では、尊人の合図で、近衛兵たちが一斉に大臣たちを取り囲んだ。「何だ?どうしたのだ?」大臣たちは何が起こったのか分からず、きょとんとしている。「皆さん、私はクーデターを起こします。恐れ入りますが、行政府の権限を、私に今、譲っていただきたい。」尊人が言った。報道陣から「えっ」という驚きの声が漏れた。「陛下、このような事をして、一体何を考えているのです。」首相が言った。「私は、再三王制の廃止を訴えてきましたが、全く聞き入れてもらえませんでした。話し合いがなされているようにも思えません。そこで、私が行政権を得て、その私が王制を廃止すればよいと考えたのです。」尊人が言った。すると、首相は近衛兵の静止を振り切るようにして、前に出てきた。「もし、断ると言ったら、どうなさるおつもりですか?」すると、首相ののど元に、藤堂が短刀を突き付けた。「大人しくしてください。誰も怪我をして欲しくないので。」尊人が言った。場内がざわつく。どうしても、武力行使が必要なようだ。「こんなことをして、ただで済むと思っているのか!」首相は声を荒げた。生中継ではないものの、テレビカメラは回っている。「陛下、何が不満なのです。自由が欲しいのですか?けれども、陛下は何かをしたいなど、訴えた事はないではありませんか。何かしたい事があれば、出来る限り叶えて差し上げますのに。」首相はそれでも果敢に言葉を発する。「私はただ、人間になりたいのです。お飾り人形ではない、自立した人間に。私には、苗字すらない。……王制を廃止する。それ
last updateDernière mise à jour : 2026-07-21
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