18回目の離婚に失敗した後、神崎蒼介(かんざき そうすけ)はぱったりと離婚を口にしなくなった。これまで毎回、あれほど酷い修羅場を演じてきたというのに。私、柊琴音(ひいらぎ ことね)は手首を切り、ビルから飛び降りようとし、さらには彼と女性アシスタントのベッド写真を会社のロビー一面に貼り出したりもした。記者会見の場では衆人環視の中、そのアシスタント、星野莉乃(ほしの りの)の服を剥ぎ取り、彼女をPTSDにまで追い込んだ。彼は私を憎んで当然だった。それなのに、彼は二度と離婚のことを口にしなくなった。毎日定時に帰宅し、スマホを私に預ける。1時間おきに行動予定を報告し、出張中であっても24時間私とビデオ通話を繋ぎっぱなしにしている。だが、私の心はどうしても落ち着かなかった。なぜ離婚しないのかと、毎日彼にまとわりついては問い詰めた。すると彼は逆に問い返してきた。「俺のどこが不満なんだ?」不満などない。現実とは思えないほど、すべてが完璧すぎるのだ。再び彼を尾行して見つかった時、彼はひどく疲れた目をして、ついに本当のことを話した。「10年後の自分から電話がかかってきたんだ。離婚したら後悔するって」私は呆然とした。「それを信じたっていうの?」「お前が莉乃を焼き殺したと聞いた」顔を上げた彼の瞳には、底知れぬ絶望が潜んでいた。「お前は狂ってる。そんな危険な賭けはできないし、俺にはその余裕もない。この先は、もうこれでいい」「もうこれでいい」というその言葉が、私をその場へ縫い付けた。一言も離婚には触れていないのに、言葉の端々から私への憎悪が滲み出ていた。生気を失ったその両目は、鋭い刃のように私の胸を深く抉った。後悔でも、改心でもない。ただ怯え、妥協したのだ。自暴自棄になっていたこの生活を、私はいきなり終わりにしたいと思った。……私がまだ呆然としているのを見ても、彼はいつものように機嫌を取ろうとはしなかった。静かに上着を羽織り、先ほどの取り乱した様子を隠す。そして、淡々と今後の予定を報告し始めた。「14時に会社に着いて、15時から会議だ。時間は2時間」歩き出したところで、彼は突然振り返った。「そうだ、その間は電話にもビデオ通話にも出られないから。信じられないな
اقرأ المزيد