The Beatlesの『Golden Slumbers』のカバーは、麦畑の穂が風に揺れるような穏やかな雰囲気を再現していて特に印象的だ。アレンジがシンプルなのに深みがあり、オリジナルとは違った温かみを感じる。
最近ではBirdyのバージョンも素晴らしい。ピアノの旋律がまるで夕焼けの中を歩いているような感覚を呼び起こす。彼女の繊細な声質が曲の持つ郷愁をさらに引き立てている。カバー曲の可能性を感じさせる一枚だ。
『民衆の歌』といえば、まず思い浮かぶのは『レ・ミゼラブル』のあの力強い合唱シーンですね。この歌の誕生には少し複雑な背景があります。原作小説を書いたヴィクトル・ユーゴーが直接作詞したわけではありません。ミュージカル版の作曲家クロード=ミシェル・シェーンベルクと作詞家アラン・ブーブリルが、ユーゴーの革命描写を基に新たに創作したものです。
興味深いのは、この歌が単なるミュージカルナンバーを超えて、実際の抗議運動で使われるほど社会的影響力を持った点。2012年のウォール街占拠運動では英語版『Do You Hear the People Sing?』が市民の連帯のテーマソングとなりました。歌詞の普遍性は、ユーゴーが描いた人間の尊厳への思いが、現代のクリエイターによって見事に昇華された証と言えるでしょう。