ふとあの映像が蘇ることがある。映像美と抑えた感情が重なって、浮かび上がるのは'In the Mood for Love'だ。
この作品は寝取られという言葉に典型的な曝露やスキャンダルを求める人には違和感があるかもしれない。けれど、私が惹かれたのは「裏切り」の肉体的な証拠よりも、関係の崩れ方とその余韻の描写だ。トニー・レオンとマギー・チャンが演じる二人の間にある静かな緊張、時代背景や服装、カメラワークが互いの距離感を物語る。
感情の寝取られを映す際の繊細さ、そして結局は満たされない欲望が残す寂しさを、美術と音楽が引き立てる。そういう意味で、この映画は単なる不倫劇を越えて、寝取られがもたらす人間の内面の崩壊を丁寧に描いた傑作だと私は思う。
今月公開の映画で特に注目したいのは、『鬼滅の刃 絆の奇跡、そして柱稽古へ』と『Dune: Part Two』の2作品だ。どちらもファン待望の続編で、それぞれ全く異なるジャンルながら圧倒的なクオリティを約束している。
『鬼滅の刃』最新作は、テレビシリーズで描かれた刀鍛冶の里編の後の展開を映画化したもの。ufotableによる映像美と感情に直撃するストーリー展開は、アニメファンだけでなく一般観客も引き込む力がある。特に音柱・宇髄天元の活躍と、炭治郎たちの成長が描かれる部分は、原作コミックを読んだ者としても映像化を心待ちにしていたシーンだ。
一方、『Dune: Part Two』は壮大なSF叙事詩の完結編。前作の砂漠の惑星アラキスでの政争から、主人公ポール・アトレidesの本格的な運命が動き出す。ヴィルネuve監督の圧倒的な映像センスとハンス・ジマーの音楽が、原作の深いテーマをどう表現するのかが最大の見所。砂漠の民フリーメンの反乱シーンや、巨大サンドワームとの関わり方が特に気になる。
選択に迷うなら、感情的で熱い展開を求めるなら『鬼滅の刃』、重厚な世界観と哲学的テーマを味わいたいなら『Dune』がおすすめ。劇場の大画面でこそ体験できる映像表現が、どちらも秀逸だ。