気づけば愛人に実子を殺された夫は死で償った
うぬぼれ屋愛人不倫女性の成長物語冷酷クズ後悔切ない恋逆転ドロドロ展開
夫・一ノ瀬義治(いちのせ よしはる)が、彼の愛人・桜井彩葉(さくらい いろは)との関係を継続する「愛人契約」の更新をする代わりに、母の入院と手術の費用を支払ってくれる。そういう約束が私との間にあった。
しかし今回、義治はもうすぐ出産を控えた私・一ノ瀬澄花(いちのせ すみか)を気にかけたせいで、その愛人とのデートに1分だけ遅れてしまった。
怒った彩葉は「澄花さんの子供をおろさせない限り、契約を更新しない」と駄々をこねた。
義治は、中絶同意書と6億円の小切手を私の前に差し出した。
「ほら。サインしろ。
子供なんてまた作ればいい。彩葉のような若い子が泣きすぎると、顔にシワができちまう」
義治の態度は落ち着いていて、まるで今日の天気のことを話しているかのように軽々しかった。
私は信じられない思いで、顔を上げて彼を見た。
長い沈黙のあと、私は震える指先で同意書にサインした。
涙を拭うと、小切手を彼に突き返した。
そして、最後に一つだけ条件を伝えた。「この前の形だけの離婚届、本当のものに替えてちょうだい」
彼の工面してくれた手術費なんて、母にはもう使うチャンスがなくなった。
それに、今の私だって、もう彼なんて必要ないのだから。