夢に散る花、君にさよなら
同窓会の二次会。
クラスのマドンナだった林堂小夜花(りんどう さやか)と、片瀬水輝(かたせ みずき)が相性ゲームで次々と正解を出し、周囲の熱気は最高潮に達していた。
「相性度ナンバーワンの祝杯だ」と囃し立てられるまま、ぴったりと身を寄せてグラスを飲み干す二人。耳まで真っ赤に染まった彼らを見つめながら、私は目の奥がツンと熱くなるのを堪えていた。
「なに、まだ不貞腐れてんの?」
隣に座る同級生が、私――片瀬結音(かたせ ゆね)を横目で見て鼻で笑う。
「さっきのゲーム、水輝は結音がワサビ苦手なことすら知らなかったじゃん。あの二人、学生時代からずっと両想いだったんだから、ようやく結ばれるってわけよ。みっともないから、もうつきまとうのやめなよ」
私は何も言い返せず、ただ視線を逸らした。
「ずっと両想いだったから、ようやく結ばれる」?
――私と水輝が、極秘結婚してすでに3年になるというのに。
今日こそみんなに打ち明けようと思っていた矢先、当の夫は別の女と腕を絡ませて笑っている。
喧騒の中、スマホが震えた。水輝からのメッセージだった。
【怒らないでくれよ。今日は仕事の繋がりもある連中がいるから、ただ場の空気に合わせただけだって】
【そのうちちゃんと、二人の関係を公表するからさ】
それを見て、ふっと乾いた笑いが漏れた。
テーブルの向こうで私を見た水輝は、機嫌が直ったと勘違いしたのか、安堵したように微笑み返してくる。
違うよ。私が笑ったのは――もう公表なんてしなくていい、と思ったからだ。
誰にも言えず、こそこそと隠し続けるだけの結婚生活は、もう終わりにしよう。