七年目に、愛は氷河に沈む
雪ノ硯執着逆転ドロドロ展開愛人ひいき/自己中妻を取り戻す修羅場不倫
飛行機が中東のとある都市に着陸したのは、現地時間の午後八時三十分。
背後では戦争の砲火が夜を昼のように照らし出している。私は夫の渡辺舟(わたなべ しゅう)にメッセージを送った。
【着いたよ。迎えに来たから、一緒に帰ろう】
返事はなかった。
慌てて彼の親友、北村真(きたむら まこと)に電話をかけると、相手は言葉を濁した。
「お、お前、本当に中東まで行ったのか?」
耳元で爆発音が響く。私は焦りで目の前が真っ赤になるようだった。
「彼は一体どの地区にいるの?」
電話の向こうで数秒の沈黙。
「実は、あいつ、出国なんてしてない」
風が襟元に吹き込み、冷たさに身震いした。
彼の声はさらに低くなった。「出張だって言ったのは、嘘なんだ」
電話を切ると、スマホに一枚の写真が届いていた。日付は今日。
舟が目を細めて幸せそうに笑っている。腕に女を抱き、誕生日ケーキのろうそくを吹き消しているところだった。
一目でわかった。
彼女は林優奈(はやし ゆうな)だ。
三年前、舟が私に跪いて誓った相手――「もう二度と会わない」と約束した、あの女。
舟はどうやら忘れているらしい。今日が私の誕生日でもあることを。
スマホがもう一度震えた。
【咲季、実は舟、ずっとあいつとは切れてなかったんだ。二人の仲が良さそうだったから、言い出せなくて】
私は画面を見つめた。
【迎えに来たから、一緒に帰ろう】
そのメッセージは、送信エラーで結局送れなかった。
――それなら、私ももう、彼の帰りを待つのはやめよう。
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