Share

第2話・ついてくる妹

Author: 新矢識仁
last update publish date: 2026-05-07 14:42:26

「あああ~……」

 エアヴァクセンが見えなくなった辺り、森を切り拓いてできた街道の真ん中で、ぼくは思わずしゃがみこんだ。

「レベルMaxって、どういうことだよ……」

 どんなスキルであっても、レベル上限が1では、伸ばしようがない。

 ミアスト町長が移転先も決めずに追い出したのも無理はない。

 町のランクはEから、D、C、B、A、S、SS、SSSの順で上がっていく。最下位のEランク居住条件はレベル上限が100程度。ぼくのレベル上限は1。

 つまり、最低のEランクの町に住む価値もないってことだ。

 ……エアヴァクセンに住めなくても、両親の血を継いでいればせめて1000はあって、A~Bランクの町には住めると思っていたけど。

「……これから、ぼく、どうやって生きていけばいいんだろう……」

 町を出る新成人は、エアヴァクセンが出す身分証明と、紹介された町へ行くまでに必要な分と暮らし始めるまでに必要な分が町を出る資金として与えられる。あとは両親が用意してくれた私的持ち出し物。それも町の審査がいる。SSランクの町の品物をランクが下の町へ持ち出されたら困るということで。

 ところが、ぼくには身分証明もお金も与えられなかった。

 行く町がないから、という理由で。

 両親が行く町も当てもないぼくの為に持たせてくれたのは、サバイバル道具一式と、「必ず火が付くほくち箱」と「水の尽きない水筒」だった。

 人のいないところで生きていくには必要だからと両親が拝み倒して許可を得たものだ。

 ……森かどこかで生きて行けってことか。

 住む町がない侘しさ。行く当てのない寂しさ。

 世界のどこにもぼくの住める町はない。

 一人で生きていくしかないってことだ。

 ……悲しいなあ。

 涙がにじんできた。

 レベル1でMaxのスキルって何なんだよ。スキル名は結構役立ちそうだったのに、レベル上限があんまりだ。何もできないって言ってるようなもんじゃないか。

「お兄ちゃん!」

 やべ、幻聴まで聞こえてきた。

 アナイナ、ぼくが追い出された時泣いてたな。なんでお兄ちゃんを追い出すのって町の役人に訴えてたなあ……。

「お兄ちゃんてば!」

 ん?

 今の声、確かに鼓膜に響いたぞ?

 幻聴じゃ、ない?

 僕は顔を上げて、声のした方を見た。

 栗色の髪に青い瞳。ぼくと同じ配色なのに、僕と違って可愛らしく見える妹。

「アナイナ!」

 背にたくさんの荷物を担いだ、ぼくのひとつ下の妹、アナイナが、ほんわか笑顔でこっちを見ていた。

「何でここに?」

 呆然と聞いたぼくに、アナイナは笑顔で応えた。

「も〜、お兄ちゃんたらわたし一人おいて出てくなんてひどいよ」

「答えになってにない」

「町を捨てて出てきたの」

「お前、まだ子供だろうが!」

「一つしか違いませ~ん」

 ぼくをからかうような言葉の使い方に、……正直言って、ぼくはイラッとした。そして、怒鳴りつけた。

「成人式を終えてないお前が町を出たらいけないんだぞ!」

「お兄ちゃんのいない町なんて、いる意味ないよ。わたしはお兄ちゃんと一緒にいたい」

「だから!」

 ぼくのスキルは何ができるかまださっぱりわからないけれど、魔物や賊から妹どころか自分自身さえ守れるような力じゃないだろう。

 妹は当然成人じゃないからスキルはない。剣術とかを学んでいるわけでもない。つまり自分の身を守れない。

 可愛い大事な妹に言い放つには厳しい台詞だけど、アナイナに現実を見てもらわなきゃならない。

「お兄ちゃん、わたしが大事じゃないの?」

 うるうると見上げてくる瞳。昨日までのぼくだったら、「分かった、ぼくが何とかするから」と安請け合いしていただろう妹のおねだりの目。

 大事だ。大事な妹だ。

 だからこそ。

「ハッキリ言う。お前は足手まといなんだ」

 キッパリと言った。心を鬼にして言った。

 だって、つい昨日までぼくの後をついてきて、何かあったら「お兄ちゃん助けて!」って泣きついてきた妹だぞ。

 だけど、もう立場は違う。

 エアヴァクセンの仮住人と、町を追放された用無し。

 アナイナを守るどころか自分の身が危うい状態。

 ぼくは、頼れるお兄ちゃんじゃない。今日寝る場所すらない放浪者なんだ。

「ぼくがぼくの足手まといなのに、お前まで養っていける余裕はない。分かったらさっさと町に戻れ」

 だから、諦めて、回れ右して、エアヴァクセンへ帰って。

 お願いだから!

「やだ!」

 アナイナはきっぱり言い切った。

「お兄ちゃんと一緒じゃないと帰らない!」

「ぼくは帰れないんだ! ぼくはもうエアヴァクセンの人間じゃない!」

「だからお兄ちゃんと一緒に行く!」

「ダメ!」

 ああもう、このワガママで可愛い妹は!

 こうなったら、一旦エアヴァクセンまで戻って、アナイナを引き取ってもらおう。

 ぼくは追放者だけど、アナイナはまだ仮住人だ。引き取ってくれるだろう。

 仮住人は将来町に相応しい住人になるかもしれない希望の種。連れ戻すのに否はない、はず。

 ぼくが戻れば嫌な顔をされるだろうけど、妹を引き渡して回れ右すればいい。

 追放される時「エアヴァクセンからできるだけ離れろ」と言うご命令が下ったけど、これは仕方ない。うん、仕方ない。

「分かった。戻ろう」

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第83話・条件、飲むか飲まないか

    「私を副町長にしないか?」 あ。予想通り。「む、無論、君の方針に従う。私の町長経歴は長い。若い君の役に立てる!」「貴様! 俺様を差し置いて……!」「ど、どうだね? 私を活かしてみる気は……」「ありませんね」 ぼくは起き上がらず答える。「さすがに若くて経験の浅い私でもわかりますよ。副町長という立場から少しずつ切り崩して行って町を乗っ取ろうって考えでしょう? グランディールには優秀で私の考えを実行して行ってくれる頭脳が複数人いますのでね、わざわざ他所から元町長を引っ張ってこなくても十分です」「クレー町長!」 デスポタの声はひっくり返っていた。 ぼくが断るとは思ってなかったのか? グランディールで町長の座に返り咲き、Aランク以上の町長になろうと思ってたんだろうけど、アパルやサージュじゃなくても気付くよその猿芝居。「ああ、優秀な頭脳がいるからこそ私をここで言いくるめて無理矢理にでも副町長の座を得ようと思っていたんですかね? 生憎、私も、彼らも、そこまで馬鹿じゃありませんよ。町民をごっそり引き抜いた町の元町長なんて危険分子を副町長に就けるなんてありえませんよ」 ましてや人を拉致監禁しといてその被害者に採用を望むなんて、どうかしている。「わ、私の知識は役に……」「あなたが町の役に立つというなら、食堂の下働きをしてください。一生下働きで。それならばグランディールに入れましょう」 黙り込んでしまったデスポタに代わって、今度はピーラーが叫んでくる。「デザイナーを! デザイナーを譲ってくれれば何でもやる! 金でも、名誉でも、俺様に与えられるものならば、何でもだ! グランディールにとっても悪い話じゃないだろう! 芸術の町メァーナス一番の俳優の勧める町という!」「何でもやるんですか?」「ああ!」「ならば、これからメァーナスの町へ行き、自分は新しい町のデザイナーが欲しかったので、その町長の頭を殴って拉致監禁し脅しましたと触れて回ってください」「…………!」 ピーラーの顔色は赤かな、青かな、紫かな、それとも白かな。 ピーラーはスキル「演技」を持っていると聞いた。それを使えばまた話は違っただろうに、ぼくみたいな小僧に「演技」しても無意味だと思ったんだろうなあ。残念だけど、例えあんたが「演技」してきても、町長の仮面は見抜け

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第82話・三人きりの誘拐犯

     声の主の姿は見えないけど、相当頭に来ているのは分かる。「一生でも閉じ込めておけば? ぼくが死んだ時点で何も手に入らないことが確定なんだ。こちらはグランディール町長の意地に賭けてもイエスとは言わない。監禁でもなんでもすればいい」「ク・ソ・ガ・キ・がああ~!」 ピーラーが切れる寸前。でも、まだここから出す気はないらしい。 いや。 ……出せない? 町長の仮面のおかげで冷静な頭が、一つの答えを導き出す。 サージュが語ったピーラーやデスポタの性格からして、拉致する時に一発ぶん殴った程度じゃ気は済まないはず。 なのにこの空間に閉じ込めて、手出しをしない、ということは……? ……そう。手出しをしないんじゃなくて、出来ないということじゃ? 閉じ込めたら出せない? いやそれじゃ最初からぼくをここに閉じ込めたりはしないはず。町民を取り戻すにもシエルを連れていくにもぼくのサインと印が必要。だけどこの空間には契約書もペンもない。契約書を書くには一旦ぼくを外に出させないといけない。いずれはぼくを出さなきゃ二人とも目的達成できない。 なのに出さないってことは……。 ……いや、ちょっと待て。 この二人、あの時、言ってたよな。 ってぇことは……。「残った町民にも見限られた気分はどうです、デスポタ町長?」「な?!!」「あと、追っかけはどうしましたピーラー氏?」「ぐ!!?」 ……この声の調子だと……予想通り……。「やはり、外にいるのはお二人だけ……お二人の身を守る誰かも、手伝ってくれる誰かもいないということですか」 ぼくは喉の奥で笑ってやった。「まあ……そうでしょうねえ。町長殿は陶土と町民を引き換えにした方。残った町民ももう協力する気はないでしょうね……。町民を取り戻す計画、立てたはいいが誰も協力しなかった、そんなところでしょうか?」「でっ、出鱈目を……!」「ピーラー氏のお連れの方々がいらっしゃらないのも、長い間尽くした人間を役立たずとあっさり切り捨てたせいでしょうね……。哀れなことだ。一人切られれば次は自分の番かも知れない、だったらこっちから捨ててやる、そう思った人は案外多かったんでしょう……。Dランク以下の町長と二人してやっと成人になったばかりの人間一人拉致するために自分の手を汚すなんて、世界一とも言われている俳優のや

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第81話・町長を舐めるな!

    「三流だと?! 小童が!」 デスポタが完全に頭に来ている。「人の町から人を奪わなければ町にもならない小童が!」「その小童に人を奪われたのはどなたです?」「なんだとぉ!」「それに、こちらは何も悪いことをしていません。そちらが引き渡す町民の重量分の陶土を引き渡す。印を押した契約も交わした。それの何処が問題です?」「町民をごっそり持って行った!」「何処に契約違反が?」「町の大多数を持って行っていいとは書いていない!」「私の記憶が確かなら、契約書には、自分の意思で町を出たいという町民を受け取る、というものでしたが? そしてこちらは町民の受取書を渡し、お約束の陶土もお渡しした。ファヤンスにいたくない町民がそんなにたくさんいたというのに、町長殿はお気付きにならなかったと?」 たっぷり、沈黙。 多分、激怒状態だな。怒りが暴走して頭が飛んで、何と言えば自分の感情を表現できるのか悩んでいる。「坊主、貴様が素直にデザイナーを差し出さなかったのが悪い。今からでも遅くない、貴様の町のデザイナーを俺様に寄越せば、此処から出してやる」「無駄だと思いますけどね」「無駄じゃない。貴様らは金を得る。俺様は素晴らしい専属デザイナーを得る。問題は……」「うちのデザイナーははっきり言いましたよ。金持ち一人の好みしか作れない専属デザイナーなんてお断りだって」 またも、沈黙。 多分、いつも注目されている俳優だから、ここまできっぱり断られるとは思わなかったんだろう。 あと、「小童」「坊主」扱いしてることから、誰も味方がいない状況で脅せば町民もデザイナーも簡単に手に入ると思っていたんだろう。「小童、ファヤンスを戻せ! でないと貴様をこの場で殺すぞ!」「……甘く見られたものだ」 確かにぼくは若いというか幼い。見た目が幼いので、なおさら舐められる。そのための無表情、そのためのアパルやサージュ。 でも、若かろうが幼かろうが、百人以上の町民の上に立つ町長だ。「私が守らなければならないのは私自身ではない。町民だ」 盗賊やってたことがばれたら大変なことになる人たちから、ファヤンスから逃げてきた人まで、守る責任が町長にあるんだ!「自分の益しか考えてない貴方に、町民を一人たりとも渡すわけにはいかない!」「な?!」「町長を舐めるな!」

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第80話・口喧嘩をBGMに

     さて、何処からともなく聞こえる口喧嘩で、大体の状況は分かった。喧嘩はまだまだ続くだろうけど好きにやっててくれ。長ければ長いだけありがたい。 後ろ頭は痛いけど、今すぐに考えなきゃいけないことはたくさんある。 まず、現在の状況。 ぼくは今、デスポタのスキルで、何処かに閉じ込められている。逃げ出すことも、スキルで発見することも出来ないらしい。 だけど、リューとアレは逃げることが出来た。 ぼくが拉致られたことは二人からグランディールに伝わるはず。 問題は、その時、ピーラーあるいはデスポタどちらかの顔を見ていたか。 見ていたなら、アレが逃げるのに「移動」を使ったとしても、そう時間もかからずに誰かがここを見つけ出す。 見て居なかったら……サージュやアパルが判断してくれるのを待つしかない。 グランディールに明らかに敵対というか恨みを持っていて町長を拉致するほどのことが出来るのは、ピーラーとデスポタだと判断してくれるだろうか。いや、アパルとサージュは頭がいいし、元ファヤンス町民の皆様だったら町長がそういうことをやりかねない男だと知っているだろう。これは期待してもいいと思う、うん。 そして、今ぼくのやれること。 それは、時間稼ぎ。 ひたすらこっちに集中させて、グランディール側が動いていることに勘付かれてはならない。 このまま気絶しているふりでもいいかもしれないけど、口論中の二人の頭がいつ冷えるかもわからない。二人とも頭が悪いように思えるけど、世界一の俳優と立派な町の町長だ。まだ他に打つ手があるかもしれない。 頭が冷えてろくでもないことを考え出す前に、こっちから仕掛けた方がいいかもしれない。 グランディールからすれば、町の存続に関わる事件に、とんだ足手まとい。 ここは、ぼくが何とかしなきゃ。 ……ぼくが勝手にやらかした失敗。 ぼくが取り戻さなくてどうするよ。 腹具合から考えて、ぼくが殴られて気絶してから恐らく二刻以上は経っている。予想だとそろそろ捜索隊が出されるか。 だとすれば、この空間から出なければならない。 にしても、町長のスキルが、人を真っ暗闇に閉じ込めるスキルだなんてなあ。そりゃあスキルと町長職は何の関わりもないけれど、クイネが言ったことを思い出すと、何とも。 ファヤンスで町長の陰口を叩いたり悪口を言っ

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第79話・拉致監禁

     ……痛い。 意識を取り戻して見れば、後ろ頭のズキズキと、気持ち悪い沼に引きずり込まれるような感覚。 異常事態。 一体、何が……。 落ち付け。 頭が痛いのは辛いけど、今は状況を把握しなきゃ。 アレとリューと一緒に町を降りて、ヴァローレの気がかりの元を探しに行って。 そして、後頭部に強い衝撃を感じた。 リューが目を見開いて、「町長危ない」と言っていた。つまり、後ろから誰かがぼくをぶん殴ったってことか。 そして、今の状況……。 ズキズキに耐えて、薄目を開ける。 真っ暗い場所。何処だろう。少なくとも場所はあそこから移動されている。 人の気配はない。 だけど、誰かが……。 誰かがこっちを見ている感覚。 まだ動かないほうがいい。まだ気を失ったままだと思わせたほうがいい。 後ろ頭がズキズキと痛むけど……。 痛い素振りを見せてはいけない。心の中で町長の仮面をつけて、気絶していると思わせる。 アレとリューの気配もない。上手く逃げたか、捕まって別の場所にいるのか。 一番理想的なパターンは、逃げたにしろ捕まったにしろ二人が同じ場所にいること。「場所特定」と「移動」があれば例え何処であっても逃げ出してぼくの居場所を特定して逃げられる。 最悪のパターンは……三人とも捕まって、別々の場所に囚われてるってとこだな。 その場合、グランディールからの助けを待たなければならなくなる。 町を出る時にアナイナに事情を話せたのは良かった。心配性のアナイナなら帰りが遅いと思ったらすぐにでも会議堂にすっ飛んでいく。そうすれば捜索隊が出るだろう。元ファヤンス町民の中にも探索系のスキルの持ち主はいた。ヴァリエと話したのは三日前、「追跡」は効くだろうか。 とにかく、現状を把握しなければ。 今転がされているのは木の板か? 土の上か? 石か? ……どれでもない。 とすると、誰かのスキルが関わっている? スキルで閉じ込められたんだったら話がもっとややこしくなる。スキルを「合わせ」るのではなく「ねじ伏せ」るのはそれこそレベル勝負になる。 とにかく、今のぼくに出来るのは時間稼ぎだ。 気絶したままなんだ。本当は痛くて頭抱えて転げ回りたいけれど、町長の仮面は弱みを外へ出さない。傍から見れば気絶して起きないように見えるだろう。「……まだ起きないのか」 声。 だけど、

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第78話・ヴァローレの気がかりが気になる

     でも、気になるなあ。 あのヴァローレがあそこまで気にしていた……本人は解決済みと言っているけれど、それでも町一番の「鑑定」使いが気にすることだ、町長としては放置できない。 とはいえ、ぼく一人じゃ何にもできないし……。 グランディール町長と呼ばれ、ある町では敵視され、ある町では警戒されているその正体は、「まちづくり」のスキルがなければ何もできない十五歳。シエルやクイネのようなスキルとは別の才能は……多分、ない。 ああ~このもやもやを抱えて湯処や食堂に行けない~! うろうろと門の辺りを歩き回っていると、ぽん、と後ろから肩を叩かれた。「アレ? リュー?」 旅姿から着替えてもいない二人が、真剣な顔で立っていた。「やっぱ気になるんすね、ヴァローレの気がかり」「きみらも?」「当然だろ。あのヴァローレが気にしたことで外れたことはほとんどないんだ。本人は珍しく疲労でそれ以上の追及を諦めたようだけど、あいつと長いこと一緒に行動してた人間としては、ちょっとな」 アレが眉間にしわを寄せている。「あいつのスキル以上に、あの勘でヤバイことから逃げられたことも多いんすよ。そんな俺たちがあいつのあの発言を見過ごせるはずないっす」 リューが熱弁する。「……確認したほうがいい、ってことか?」 うん、と二人が頷く。「スキルは様々っす。スキルで出来ないことはないとも言われてるっす、俺のように居場所を特定できるスキルもあれば、アレのように長距離を一瞬で移動するスキルもあるっす。特に俺みたいなスキルでレベルが高かったりしたら、空の上にあるグランディールに気付く可能性もあるっす」「そしてこの町を手に入れようと画策する、か」 頭が痛い。 本当はヴァローレについてきてもらいたいけど、あの疲れ様だと連れていくのは難しそうだ。 とはいえ、ぼくら三人だけと言うのも厳しいよなあ……。「不安なら、サージュに頼んでみるっすか?」 リューが、ぼくの顔色を見たんだろう、こう提案してきた。 サージュかあ……。 確かに、この町では一番スキル学に詳しくて、「知識」で正しい知識を手に入れられるサージュなら、付いてきてもらうにはもってこいだ。 でも……。「……ぼくら結構、サージュに頼ってるよな」「……そうっすね」「町の運営とか、動向とか、結構任せてるよな」「……ぼくらだけで、調

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第8話・スキル学

    「えっと。アパル、さん?」 綺麗に焼けた焼き魚の身を歯でむしり取りながら、アパルさんは「ん?」と言う顔をした。「スキル学を、勉強してらっしゃったんですか?」「んん? んん、まあ。「法律」なんてスキルのせいか、色々学ぶことが楽しくてね。盗賊に身を落としても勉学だけは捨てられなかった」 身を噛んで飲み込んでから、アパルさんは頷いた。そう言えば宴会前、洞窟から大量の本を家に移動させていた。どうやってあれだけの本を持って出られたのかちょっと不思議な気がする。 それはさておこう。今欲しい情報はそれじゃない。「スキル学って、どんなことを勉強するんですか? 確か「スキル学におけるレベルか上限1

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第12話・森の知識人

     アパルさんと一緒に光の輪に入った瞬間、なんていうか、浮遊感? があって、次の瞬間には森の拓けた場所にいた。 唖然としている、アパルさんを更に真面目にしたような人。「久しぶりだな、サージュ」 アパルさんが軽く手をあげて挨拶する。「アパル……本当にアパルなのか?」「ああ」「あの大きな浮遊物体は何なんだ? 君、あれに乗ってきたのか?」「ああ。グランディール。私たちの町だ」「町?」 不審そうにアパルさんを見て、そしてこっちに視線が移る。それで思い出したように、アパルさんはぼくの腰を押して自分の前に出した。「彼が町長。クレー・マークンだ」「随分と若い……いや幼いというか……」

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第10話・町長と町名

     門まで行った、その光景。 塀で囲まれた部分と、門のすぐ外。 さっくりと切り取られたようになって、その先に地面がない。(まさか?!) その、まさかだった。 恐る恐る切り取られた先を見下ろすと、下には緑のもこもこ。森だ。 つまり……浮いている!「うっそ、本当に……」 盗賊団の皆さんも、ぼくと同じ思いだったらしい。「本当に空を飛ぶとは……」「嘘だろおい……」「なんで……」 呆然とした声が空に流れていく。 真下の山肌に洞窟が見えることから、今はこの町は真上に浮いているようだ。 それだけでとんでもない話だ。 しかも、それがぼく一人のスキルで。 レベル1、Maxの力で。

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第9話・ならこっちから行けばいい

     ほっとしたぼくの耳に届いてきたのは、雄叫び。 なんだ、何があった? 何かあった? 服を着替える暇も惜しく飛び出すと、町はそのままで、並んだ六軒の家の一軒で、ヴァダーさんが雄叫んでいた。「ヴァダーさん?!」「家が……家が消えていない! 町も消えていない!」 ……そうだね、ヴァダーさん、ぼく以上に心配していたからね。目が覚めたら夢だとか消えてたとか。「さて、これからどうしよう」 変な場所に町を造っちゃったなあ……。 森の奥深く、野獣や魔獣が平気で出る場所。エアヴァクセンに気付かれない土地。他の町との交流しようがない僻地。 確かに畑があって獣を捕らえて捌く場所があって水も豊かな

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status