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第5話

Auteur: 四果
夕依は前に立ち、わざとらしく頬を赤らめながら最初の問いを口にした。

「もし過去に戻れるとしたら、今とは違う恋愛を選びますか?」

場がざわついた。

私は足を組み、スマホの画面で明日のフライトを選んでいた。自分には全く関係のない話のように聞き流していた。

朔帆は少し戸惑った顔をして、首を横に振った。

その答えに、夕依の口元から笑みがスッと消える。

「次は朔帆さんの番です」

朔帆は尋ねた。「夕依の一番好きな食べ物は何だ?」

夕依はすかさず得意げに答えた。「それ、朔帆さんが一番よく知ってるんじゃないですか?」

その親しげな言い方に、周囲からヒューヒューと囃し立てる声が上がった。

隣に座っていた上司が、気まずそうに私の肘をつついてきた。「旦那さん、呼ぼうか。ふたりで先に帰ればいい」

私はそこでやっとスマホから顔を上げた。

「結構です。どうせ今日が終われば、もう夫ではなくなりますから」

私は立ち上がって会場の外へ出た。

背中に朔帆の強い視線を感じたが、扉が閉まるとそれも完全に途切れた。

私はまっすぐ家へ戻った。

少し遅れて、朔帆も帰ってきた。

「機嫌悪いのか」

近づいて私を抱き寄せようとしたその体を、私は横へずらして避けた。

「別に」

「嘘だろ」

朔帆は私の顔を覗き込んだ。「秋楓、付き合い長いんだぞ俺たち。お前が何考えてるかくらいわかる。

少し口を尖らせただけで、何が食べたいのかも当てられるんだ」

私は何も言い返さず、ただ静かに朔帆を見つめていた。

見られ続けて、朔帆の余裕が少しずつ崩れていくのがわかった。

「なんだよ。何がしたいんだ」

「一番よくわかってるなら、当ててみれば?」

私がふっと笑うと、朔帆は露骨に安堵して気を抜いた。

そのまま重いため息をつき、ソファへ座り込む。

「俺にそばにいてほしいって顔してる。わかったよ、二日くらい休みを取るから。

前に言ってただろ。お参りにでも行って、子どものこと願いたいって。一緒に行くか」

私は何も言わず、そのまま部屋へ戻って寝た。

翌朝、朔帆は早くから家を出ていった。

昼近くになっても戻らない。SNSで見かけた投稿で、昨夜飲みすぎた夕依が帰りに転んで怪我をしたと知った。朔帆はそのまま夕依の家に入り浸り、看病の世話を焼いているらしかった。

私は全く気にせず、ひとりで淡々と自分の荷物をまとめた。

離婚届に署名し、水の入ったコップを重しにして、中絶処置の書類と一緒にローテーブルへ置いておく。

準備を終えると、私はスーツケースを引いて家を出た。

向かう先は空港だった。

外はもう、夕闇がゆっくりと濃くなり始めていた。

搭乗前、スマホが激しく鳴り始めた。

メッセージの通知が、途切れることなく滝のように流れ込んできた。

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