Masuk美貌の外科医、二階堂神楽31(にかいどうかぐら)と1年間の契約結婚をした片桐紅29(かたぎりべに) 理想の妻を演じ、きっかり1年後、契約満了で豪邸を出て行った。 ところが……残された神楽の心に残る紅。 実は契約結婚は紅で3度目の神楽。 以前の妻たちは契約を守らず、神楽を愛し、体を開いた。けれど紅は思い通りにならない。 それが神楽は悔しくてならない。 実は紅も、神楽との契約結婚には、ある思いを持って臨んでいた。 神楽は覚えていないものの、2人は因縁の関係で、この契約結婚は、紅とって復讐、そしてやり返しの意味があったのだ。 離婚しても形を変えて2人は繋がり続け、攻防戦は激しさを増していき、結果、2人の着地点は…
Lihat lebih banyak「……そ、そういうとこ、見てるんですか?」「当然、嫌でも目に入るだろ」中断したコートで立ち尽くす紅に近寄り、細い肩についた砂を払いながら神楽は続けた。「正直に言えば、今まで女性の体は娯楽のようなものだった。でも紅は違う。男の色眼鏡で見るのは失礼だと思うし、君をそんな目で見る男がいたら殺したい」「……ショートパンツ、はきます」殺したい、まで言わせて希望を無視する私じゃない。一旦サンデッキに戻ることになった。「あの、貸して下さい」「……ん?」「ハーフパンツ。神楽さん、来るときはいてたやつ」しばらく固まる神楽……「そんな準備はしてこなかったんです。パレオはスカートみたいなものだから、そんなものはいたら遊べないし……」手を差し出す紅。早くハーフパンツをよこせ、という意味。神楽は目を閉じて、片手で胸元を押さえた。……少し息を整えているように見えるけど、変なこと言ったかな。「天然が怖い……」言われた通り自分のハーフパンツを差し出し、紅がはくのを待ってから、先ほどのスタッフを呼んだ。「薄い素材の涼し気なタンクトップをいくつか持ってきてください。……彼女に水着の上から着てもらいたい」スタッフは言われて紅に視線を向け、笑顔になった。「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」「あ……ちょっと待って」立ち去ろうとしたスタッフを神楽が呼び止めた。「陽射しを避けておとなしく寝そべってる人じゃないんだ。……まだまだ遊びたいみたいだから、動きやすいものを選んで」スタッフはさっきよりもっと笑顔になって……紅の頬は赤く染まる。「少し水分補給をしようか。このあたりは湿気は少ないが、陽射しは強いからな」アイスボックスから出したのが医療用の経口補水液だったのを見て笑ってしまった。……キャップを開けて渡してくる表情がちゃんと医者だ!「ありがとうございます。……それじゃ神楽さんも」ちょっとふざけて、スイカジュースなるものを手渡してみる。スイカ模様が派手に描かれたボトルは子供向けのようで神楽には似合わない……「うん。うまい」なのに躊躇なく受け取り、飲みはじめた。「この商品、去年俺が監修して商品化したんだよ。……夏休みの小学生の熱中症対策ってコンセプトでな」「そんなこともしてるんですか?……毎日忙しいのに、どこの時間を使ってそんなことを……」「
「な……なんですか?」 玄関先でハグされて、紅はどうしたものかと腕の中で神楽を見上げた。 「今見上げないでくれる?」 「……はぁ??」 ますます謎だ……何をしたいというのだろう。こんな、人の自由を奪って。 しばらくして腕を緩めた神楽は、紅に着せたシャツのボタンをしめる。その顔は少々赤い気がするが……もう何も言わないほうがいいような気がしてされるままになっていた。 「わぁ……海だ」 シーズンだというのに道路はたいした混雑もなく、スムーズに2人を海岸へと連れて行く。 「海風が気持ちいいかもしれないな」 窓にへばりつくようにして外を眺める紅を見て、神楽はエアコンを切って窓を開けた。 潮の香りがさらに海を感じさせ、紅を子供のような笑顔にしていく。 神楽の運転する車は、海辺にそびえるホテルへと入っていった。エントランスで待ち構えるスタッフが、神楽の指示で荷物を運び出し、2人もロビーへと案内される。 「え……すごい、全面ガラス?」 ロビーの正面に広がる青い海と白い砂浜……色とりどりのパラソルと、かすかに聞こえる波の音。 「すぐに海岸に行く?それとも飲み物でも……」 紅はガラスに近づいていく。 まるで水族館で悠々と泳ぐイルカを見るように、海辺の景色に釘付けになった。 それを見た神楽は、スタッフに外へ行くと告げる。 「ここまで来ると、日本の海も綺麗だな」 ふと隣に立つ神楽。自然と腰に手を回し、普段では考えられないほど距離が近い…… 「海外……行ったことないです」 「そう?今度連れて行くよ。長めの休みを取ろう」 当たり前のように言われたが、紅は一瞬返事に困り……神楽の視線を感じた。 「二階堂様、ご用意できましたのでこちらへどうぞ」 「ありがとう」 スタッフが指し示す方へと、神楽は紅をエスコートした。 何の用意なのかわからないままついて行くと、そこは屋外のサンデッキ。 ホテルのマークが入ったおしゃれなパラソルとデッキチェア、ビーチベッドにテーブルが配置されている。 「こちらから海へとご自由に行き来できます」 スタッフはにこやかに立ち去り、辺りを見渡した紅は、用意してきたアイスボックスの中に、いつの間にかたくさんの飲み物が冷やしてあることに気づいた。 「食べ物でも何でも
「明日、ドライブに付き合ってくれないか」「え……」「海辺の高級レストランで食事付き」朝食の席で、神楽にいたずらっぽい笑顔を向けられた。「もうひと声……ですかね」「はぁ?!……」呆れながらも、少し考える神楽。「ブランドショップでデートに着ていく服を買ってやる。……もちろん靴もバッグも」思わず眉をしかめて見上げてしまった……まさかこんな簡単に、金に物を言わせる案を出してくると思わなかった。……思わずため息が出る。「なんだよ?!俺はそういう方法でしか女を喜ばせたことがない。何か希望があるなら言ってみろよ?!」「デートに誘っておいてノープランですか。……一昨日おいでと言いたいところですが、仕方ないですね。アイディアを出してあげます。ぜひ、今後女性を誘う時の参考になさってください」「……今後誘うのは紅だけだから」「……っ!」聞こえないふりをして、まずは食べかけの朝食を平らげる。……ちなみに今朝のメニューは焼き鮭のお茶漬けと焼き鮭のおにぎり、そしてインスタント味噌汁。神楽は小さく「ご飯&ご飯……」と呟いていたが当然無視した。「海まで行くなら当然海水浴!」「……げ」「何ですかその反応?!」「俺の美肌が陽射しに耐えられるかどうか……」確かに男性にしてはキメの細かいお肌ではあるが、言い方が気にいらない。「今どきラッシュガードは当然だと思いますけどね。別にいいですよ、神楽さんはテントの番でもしていてください」紅はお茶碗を片付けながら席を立つ。「とりあえず、明日出かけるのはOKだな?」「……はい。別に、何も予定ないし」「よし!それじゃ早朝から出かけようか。そのつもりでいてくれ」嬉しそうな神楽の表情に少し落ち着かない気持ちになり、紅は先に玄関を出る。……そういえば水着なんて持ってたかな?!「……え?!海水浴の持ち物?」昼休み、紅は坂谷を捕まえて昼食に誘った。よくよく考えてみると、海水浴なんて子供の頃に行ったかどうか……?という曖昧な記憶しかない。「必需品とか、あると便利なものとか……ほら!坂谷さんならファミリーで散々行ったんじゃないですか?」「そうねぇ……確かに夏休みの我が家は毎週末海に行ってたけど……必需品といえばサメだったかしら」「サメ……」「空気を入れてパンパンに膨らませて、海に浮かべてかわりばんこに上に乗るわけ
「お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます」ここに来るたび、毎回思う。都内とは思えないほど静かな邸宅だが、高台にあるせいで歩いて来たら地獄だと。……この道を、中高の6年間通った。「そう忙しくはないよ。神楽先生が外科をまとめてくれてるから」院長は60代とは思えない姿勢の良さで、窓際に立っていた。家政婦がお茶を出すテーブルの前に、ゆったり腰掛ける母の姿。「神楽さん、颯真さんが帰ってだいぶ楽になったんじゃない?」「……そうですね」母にかけられた言葉は、逆らわず認めておく。実際は、外科をまとめている自覚も事実もないし、颯真も俺を助けるとか病院のためだと思って動いちゃいないだろう。……それぞれの仕事をしているだけだ。「この度は、院長……お義父さんのご心配も知らず、勝手なまねをしてすみませんでした」「3度目の結婚のことかな?」「はい。……それから谷村さんとの結婚をお義父さんは望んでいるようですが、私たちにそのつもりはないのでお伝えしたく参りました」窓を向いていた体をゆっくりこちらに向ける義父を見て、母がスッと椅子から立ち上がったのが見えた。視線をやった次の瞬間、頬に冷たい痛みが走る。「お義父さまのせっかくの好意を、あなたはどうしてそう無下にするのですかっ?!」頬に飛んでくる手は自分よりずいぶん小さくなったのに、痛みは子供の頃から変わらない。見上げてくる険しい視線を捉えながら、この人はいつもこんな目で自分を見ていたことを思い出す。……もう20年も前のこと。小さなアパートの一室で、父親の怒声が響いた。「……何だってお前は、そんなに勝手な事が言えるんだよ、」声だけで、涙が含まれていることを感じた。さっきまで一緒にボールを蹴り合っていた父親が、一足先に家に帰った時のこと。サッカーチームの仲間とアパートの前で別れ、昼ご飯を食べたらまた集合だと約束してボールを膝でコントロールしながら入った家の中はひどく冷たい雰囲気……「だって、このままこんな生活するなんて、私には耐えられないもの!」「普通に暮らせてるだろ?俺だって、休日は日曜だけにして、土曜日は出勤してる。その分貯金も増えて、神楽が中学生になったら家を買おうって話あったばかりだぞ?」「もう……チマチマ節約するような生活、嫌なのよ!」母親の金切り声がした直後、ガラスが割れるよう
「英語は大丈夫だけど……」『じゃあ歌ってみる?ラバークラブMiAってガールズバーなんだけど』「うん。期間は?」『まずは一晩、2回ステージ。バラードを歌ってほしいみたいよ』亮子はクラブやBARの起ち上げやプロデュースをする仕事をしている。その関係で、こういうバイトの情報が早い。亮子が関わった店なら大丈夫だろう……その日の夕方、紹介された店に行ってみた。「亮子さんに聞いてます!まずは一曲、聞かせてもらえますか?」面接は歌のみ。難なく合格をもらった。手渡された衣装はシルバーグレーのシンプルなドレス。ヘアメイクはプロが入ってやってくれた。呼ばれるまで待機するよう言われ、若い女の子た
「紅か……?」神楽との契約結婚を終え、まず向かったのは実家だった。「……お久しぶりです」手を止めず、顔も向けずに返事を返す娘に、父はわかりやすくイラ立つ。「はんっ!久しぶりに来たと思えば……なんだ?泥棒のマネごとか?」「お母さんの服を取りに来ました。そろそろ暑くなるので」「お前は、口を開けば母さんのことしか言わないな?」……あんたが口にしないからだ。今日も、ギリギリのところで言葉を飲み込む。父と言い争ってスッキリした事など一度もない。むしろ逆……怒りと悲しみ、そして絶望。父は昔から、私にそんな感情しか教えなかった。「……多分、今回持ち出せば、この家からお母さんの私物はなく
「君が契約結婚を引き受けたのは、俺への復讐か?香織と同僚だったってことは、当時から俺の話を聞いていた?」「香織さんは、別れた夫とセフレ関係になってつらいって言ってました。だから契約結婚を終えてからの相談ですね」「俺と出会ったのは偶然?……それとも探し出して、」ずいぶん話が意外な方向へ行くので……らしくもなく、動揺していた。それにまさか、梨沙子のことも知っているとは。「香織さん、夫の名前は伏せてましたよ。でもある日酔った勢いで「神楽」って名前と医者だって漏らして。あの料亭で出会ったのは偶然です。めずらしい名前だったからピンと来たんですよね」紅はソファから立ち上がり、携帯に表示される
「荷物、それだけだったか?」やがて、契約満了の日。見せつけるようにスーツケースを転がし、神楽の目の前に置く。「はい。このお宅にはすべてそろっていたので、ありがたく使わせていただきました」枕、毛布、シーツ、バスタオル、バスローブ……「引っ越し先の住所を教えてくれたら送るよ?使い慣れたものは手放したくないだろ?」「……あなたはそうかもね」使い慣れた契約妻を、今も時々美味しくいただいてる。「……え?」「……使わせてもらった枕、抱きしめて寝てくれません?私のことを思い出して」不思議そうな顔に作り笑いを返した紅に、今度は驚いた顔をするので、本気で吹き出してしまった。「冗談ですよ!
Ulasan-ulasan