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第4話

Penulis: 森崎駆
その頃、ネット上ではすでに生配信が始まっていた。

タイトルは【冷血医師・平山一希が公開謝罪――診察の様子を生配信】。

渋谷グループが裏で手を回していたうえ、昨日の炎上もまだ収まっておらず、大勢のユーザーが怒りに任せて配信に押し寄せていた。

配信開始から10分もたたないうちに、視聴者数は100万人を突破した。

コメント欄には、罵倒や批判がものすごい勢いで流れ続けていた。

【このクズ、やっと謝る気になったんだ。さすが渋谷グループ、今回はよくやった!】

【このヤブ医者がどんな顔で謝るのか、最後まで見届けてやる】

【智史くんがかわいそう……こんな最低な医者に診てもらわなきゃいけないなんて】

智史はベッドに横たわったまま、相変わらず青ざめた顔をしていた。僕の姿を見るなり、怯えたように身をすくませる。

「姉さん……」

今、自分の姿が何百万人もの人間に見られていることを、彼は知らない。

「大丈夫よ。あなたを診てもらうために、先生に来てもらったの」

雪乃は智史にりんごを手渡すと、立ち上がって僕の前までやってきた。配信されていると分かっているからか、いつにも増して居丈高な態度だった。

「ほら、早く弟を診なさい。治せなかったら、二度と医者としてやっていけないようにしてあげる」

僕は相手にせず、そのままベッド脇の処置用ワゴンへ向かった。

手袋をはめながら、雪乃に冷たい視線を向ける。

雪乃は悔しそうに唇をかんだが、カメラの前ではそれ以上騒ぐことはできなかったらしい。鼻で笑うと、一歩下がって腕を組んだ。

病室が静まり返る。

僕は隠しカメラに背を向けたまま聴診器を手に取り、智史の胸に当てた。

「息を吸って、吐いて」

智史は言われたとおりにしながら、苦しそうな息を漏らした。眉間には深いしわが寄っている。

コメント欄はたちまち、智史への同情と僕への罵倒で埋め尽くされた。

僕は黙って聴診器を外すと、そばに積まれていた検査結果の束を手に取った。智史がこれまでいくつもの病院で受けてきた検査の記録だ。

末期の心不全、心筋虚血。どのページにも、深刻な診断名がずらりと並んでいる。

僕は1枚ずつ、じっくりと目を通していった。読み進めるうちに、眉間のしわが少しずつ深くなっていく。

五分ほどたった頃、僕は検査結果の束をベッドの上に放り出した。

手袋を外し、振り返る。

「智史さん。あなたの病気は、確かにかなり厄介です」

雪乃は隠しカメラのほうを向き、意味ありげな笑みを浮かべた。

「どういうこと?名医なんでしょう?あなたにも治せないの?やっぱり、噂どおりのヤブ医者じゃない」

コメント欄が再び荒れ始める。

【やっぱりヤブ医者じゃん!】

【治せないから言い訳してるだけだろ。渋谷家、早くこいつを追放して!】

僕はそんな反応には目もくれず、静かに続けた。

「なぜなら、弟さんはそもそも病気ではないからです」

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