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第1030話

Author: 星柚子
熱風が押し寄せてきた、その瞬間。

奈穂の世界から、音という音が一斉に奪われた。

鼓膜の奥では、ただ甲高い耳鳴りだけが鳴り響いている。

まるで赤く焼けた無数の針が、容赦なく突き刺さり、かき回しているかのようだった。

暴力的な爆風が真正面から彼女を吹き飛ばす。

体は宙に浮き、そのまま廃棄された反応槽の鋳鉄製の外壁に激突した。

鈍い衝撃音が響く。

痛い。

あまりにも痛く、痛覚そのものが失われそうになるほどだった。

骨の内側から体を無理やり砕かれていくような感覚。

悲鳴を上げる自分の脊椎の音さえ聞こえてくる気がした。

彼女は冷たい金属壁を滑り落ち、反応槽の陰に崩れ込む。

口を大きく開け、必死に息を吸い込もうとする。

だが肺に流れ込んでくるのは、焦げたプラスチックの臭いと、鼻を刺す粉塵だけだった。

激しくむせ返り、涙が一気に溢れ出す。

――やはり。正景は最初から、自分を生かして帰すつもりなどなかった。

命を奪うだけでは足りない。

死ぬその瞬間まで、父に対して抱いてきた最後の信頼さえ、自分の目の前で徹底的に引き裂こうとしている。

意識がゆっくりと霞んでいく。

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